映画の感想や好きな俳優の情報を発信します。新作以外はネタバレあり。
【映画】はじまりへの旅
2016年12月11日 (日) | 編集 |
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はじまりへの旅(2016 アメリカ
原題:Captain Fantastic
監督/脚本:マット・ロス
出演:ヴィゴ・モーテンセン/フランク・ランジェラ/アン・ダウド/スティーヴ・ザーン/ミッシー・パイル/キャスリン・ハーン

【あらすじ】
現代社会から切り離されたアメリカ北西部の森で、独自の教育方針に基づいて6人の子どもを育てる父親ベン・キャッシュ。子どもたちは皆アスリート並みの体力を持ち、6カ国語を操ることができた。ところがある日、母が亡くなり、一家は葬儀に出席するためニューメキシコを目指して旅に出る。


マット・ロス監督によるアドベンチャー・ロードムービーです。

アメリカでは学校に行かず、ホームスクーリングと言って自宅で教育を受けるシステムが合法化されてます。公立学校の教師のとんでもない実態を描く『Waiting for 'Superman' 』なんてドキュメンタリーがありましたが、まともな学校がないから家で学ばせるというケースもあるんでしょうね。

この映画の場合、ヴィゴ演じるベンは無駄や無意味にあふれた世界を嫌い、世間から離れた森で子供たちにサバイバルの実践を学ばせています。哲学や語学なども教育して、長男などは有名大学にすべて合格する学力も。そんな彼らが病気療養中だった母レスリーの死を受け、葬儀に参加するために旅に出る。それはレスリーのある願いを叶えるためでもありました。

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これは面白かった。
特殊部隊みたいな特訓を受けた子供たちの身体能力の高さを見せる冒頭から新鮮。
ロードムービーへと移行する中盤からは、それまで一つの王国だった一家が、世間の目からどう見られるかを目撃することになります。ベンの妹夫婦の家族、レスリーの両親(フランク・ランジェラ&アン・ダウド)等からなどの視点を入れたり、子供たちの中からも自然に疑問が湧き上がったりで、一家を多角的にとらえているのが巧いところ。

ヴィゴは思わぬ現実を突きつけられたリ、挫折しながらも、子供たちの幸せを願う父親をユニークかつ人間らしく(すみません。いつもクールすぎるので)演じていて素晴らしい。
インディペンデント・スピリット賞やサテライト賞で主演男優賞にノミネートされています。

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サバイバル暮らしをする一家にしては子供たちが色白すぎて現実味がなかったですが、子役がみんな可愛く、衣装などがキッチュで目に楽しい。
長男役には『パレードへようこそ』で印象的だったジョージ・マッケイ。
ポスターなどに少しウェス・アンダーソンっぽさがあるけど、そこまでふわふわじゃないのは好み。
家族の物語としてもあたたかく見ごたえがありました。



日本公開は来年の4月です









【映画】『涙するまで、生きる』閉ざされたアルジェリア戦争への思い。これはカミュ式ウェスタン
2016年02月08日 (月) | 編集 |
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涙するまで、生きる
2014)フランス
原題:Loin des hommes/Far from Men
監督/脚本:ダヴィド・オロファン
出演:
ヴィゴ・モーテンセン  / レダ・カテブ / ジャメル・バレク  / ヴァンサン・マルタン/ ニコラ・ジロー /  ジャン=ジェローム・エスポジト/ ヤン・ゴヴァン

 
【あらすじ
1954年。アルジェリアの独立運動が激しさを増す頃、アトラス山脈の寂れた山あいで教鞭をとるダリュのもとにアラブ人モハメドを連行した憲兵が現れる。モハメドを裁判にかけるために隣の町まで送り届けるよう命じられ断るダリュだったが聞き入れられず、翌朝二人は町を目指し歩き始める



【感想

何の知識ももたず、期待せずに観てとんでもなく好きな映画に出会うことがありますね。
これもそんな1本。

アルベール・カミュの短編集『転落・追放と王国』の一編をフランス人監督ダヴィド・オロファンが脚色しメガホンをとった本作は
、荒野に放たれた二人の男の自由とアイデンティティを模索するロードムービーにして、カミュ式ウェスタンというべき作品でした。
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主人公ダリュを演じるのはヴィゴ・モーテンセン
ダリュはフランス側でアルジェリア戦争を戦った元軍人ですが、
今は両親の眠るアルジェリアの地で、小学校に寝泊りし、子供たちに歴史や言葉を教えています。
校庭は小石ゴロゴロ、木の切り株も露な粗末なもの。
おそらくはダリュ自身の私費を投じたのか、帰り際には子供たちに食料を配布する姿が印象的です。

ダリュの言葉として詳しくは語られないけれど、そこには彼の複雑な立ち位置にあるダリュの孤独が浮かび上がります。
ダリュはフランス人の入植者の父を持ち、アルジェリアで生まれ育ちながら、アルジェリア戦争に物申して批難を浴びたカミュ自身の投影でもあるんでしょう。

アルジェリア独立に向けた不穏な動きがある中、ダリュとモハメドは様々な危険に遭遇するわけですが
まさに命からがらの旅を通し、二人は互いの孤独に共鳴し少しずつ心を通わせていく。
けれども、モハメドを送り届けることはすなわちモハメドの死を意味すること。
予測を許さない展開に目が離せませんでした。

それにしても孤独な世捨て人のように暮らすヴィゴがものすごく嵌っていてよかった。
モハメド役のレダ・カテブも報復の連鎖を断ち切るため、自らの死を覚悟する男を好演。
諦観の果てにあった彼の瞳が、ダリュの粋な計らいで子リスのようにおどけ輝く。
これまで観た映画にも出ていた役者のようだけど上手い人だった。
ダリュとモハメドの2人が本当に愛しくて最高でした。

『涙するまで、生きる』はカミュの言葉からとったものらしい。

悪意の連鎖を断ち切るためとか、掟に従って死ぬのは無意味じゃないか
自分で考え、涙が出るまでとことん生きろ と
カミュの思いと共に、今も争いのさなかにある人々にむけた監督自身のメッセージでもあるんでしょうね。

紛争を背景にした映画なのに凄く静かで、厳しくも美しい自然を映し出す映像、ニック・ケイヴの音楽も素晴らしかった。





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【映画】ギリシャに消えた嘘
2015年03月30日 (月) | 編集 |




ギリシャに消えた嘘(2014)イギリス・フランス・アメリカ
原題:The Two Faces of January
日本公開:4/11/2015
映画.comデータ


あらすじ

1962年、ギリシャのアテネでツアーガイドをしているアメリカ人青年ライダル(オスカー・アイザック)は、パルテノン神殿で優雅なアメリカ人紳士チェスター(ヴィゴ・モーテンセン)とその妻コレット(キルスティン・ダンスト)と出会う。夫妻のガイドを務め食事を共にした夜、忘れ物を届けにチェスターのホテルを訪ねたライダルは、思わぬ事件に巻き込まれていく・・


感想
『太陽がいっぱい』のパトリシア・ハイスミスの原作『殺意の迷宮』を『ドライヴ』の脚本家ホセイン・アミニが映画化したミステリーです。


ツアーガイドが偶然知り合った旅行客のトラブルに遭遇し翻弄される・・
と書くと、ありがちな巻き込まれ型スリラーのようですが、これそんな単純じゃない。
というのもライダルはその場から手を引くチャンスが幾度もあったのにそうせず、
あえて夫妻に関わっていくんですよね。

そもそも、ライダルがチェスターを気に留めるのは、夫妻が金持ちオーラを放っていたのと、チェスターが死んだ父親に似てると感じたからですが、チェスターは洗練されたセレブのように見えて、実は裏の顔も持っている。
ライダルは直感的にチェスターの二面性を含め、彼に父の面影を見たのかもしれず
その出会いには偶然を超えた因縁のようなものを感じます。
チェスターはやがて妻とライダルの仲を疑い、三人の関係が緊張する中
アテネからクレタ島などに移動しながらの逃避行を余儀なくされる彼らの運命は・・・





脚本も務めるホセ・アミニは本作が初監督。
『ドライヴ』で見初めたオスカー・アイザックに出演を依頼し
ヴィゴが加わることで20年来の夢が実現することになったそうです。

ヴィゴ、オスカー・アイザックキルスティン・ダンストによるノワールなスリラーは
ヒッチコック作品のようだとも言われ、クラシックで正統派の赴き。
60年代ファッションに身を包んだキルスティンも悪くないんですが・・
最初コレット役には別の女優をキャスティングしていたらく、キルスティンを使うにあたり、キャラクター設定を少し変えたんだそう。個人的にはこれは裏目に出たかなぁと思います。
というのも、キルスティン演じるコレットはイノセントでライダルが彼女を愛してしてもおかしくない存在となっていて、それでは映画の焦点がぼやけると思うんですよね。
ライダルが夫妻に近づいたのは、あくまで父親の面影を持つチェスターに興味を持ったからで、言い方は悪いけれど、コレットはあくまでチェスターを翻弄する道具という扱いの方が、スッキリする気がします。ま でも終盤に向け、テーマははっきりしてくるのでいいかな。

パトリシア・スミスの原作は犯罪者のたどり着く先には容赦ないけれど、犯罪を犯すに至る理由や心の弱さをきちんと描いているところに優しさがあって好き。


原題のJanuaryとは、ローマ神話のヤヌスのこと。
二つの顔を持つこの神の姿に、相反する方向を向いても互いに惹かれあうチェスターとライデルを重ね合わせたのだそうです。
ヤヌスは出入り口と扉の神。色んな意味で映画を表現しています。


日本公開は4/11





【映画】『クリムゾン・タイド』
2014年11月14日 (金) | 編集 |



クリムゾン・タイド(1995)アメリカ
原題:Crimson Tide
監督:トニー・スコット
出演:デンゼル・ワシントン/ ジーン・ハックマン/ ジョージ・ズンザ/ ヴィゴ・モーテンセン/ ジェームズ・ガンドルフィーニ/ マット・クレイヴン
クーデターが勃発しロシア情勢は一気に悪化、反乱軍が核施設を制圧した事で世界は第三次大戦の危機を迎えた。米海軍はベテランの艦長と新任の副長を乗せた原潜アラバマを派遣するが・・・。



ドン・シンプソン、ジェリー・ブラッカイマー製作、トニー・スコットがメガホンをとった潜水艦ものです。
艦長にジーン・ハックマン、副艦長にデンゼル・ワシントン
実践豊富で叩き上げの艦長は、エリートで臆せず自分の意見を言うデンゼルさんを最初から警戒。

2人がまさしく水面下で溝を深める中、魚雷攻撃のダメージにより、軍からの指令を受ける通信システムが停止。ミサイル発射の指示が中途半端な状態で止まってしまい、その判断をめぐって2人が完全に対立。
核戦争に突入するかどうかの究極の選択をタイムリミット付きで見せるのだから面白くないわけないですよね。



とにかくハックマン、デンゼルさんのキャラが立ちまくりで、2人の対立に説得力があります。
ハックマン演じる艦長はそもそも黒人エリートのデンゼルさんが気に入らない。
長い間培われた差別精神は簡単には変わるもんではないでしょう。
馬にたとえて差別発言が飛び出したのには「えげつな!」で、両者が溝を深めていく過程がとにかくスリリングで面白い。しかし、人として完全でない艦の長が核ミサイル発射の権限を持つというのには恐怖を感じましたね。
アメリカには赤い州と青い州があるのはご存知でしょう。
コンサバな共和党派が赤、リベラルな民主党派が青
ハックマン派が赤、デンゼルさん側が青のキャップをかぶるシーンは象徴的でした。
ヴィゴやギャンドルちゃんはじめ豪華な共演者たちも、それぞれ究極の判断を迫られる状況を手堅く演じてました。

頑固な指導者が似合いすぎるハックマンですが、本作は彼を必ずしも悪役に描いていないのもいい。
デンゼルさんとて、ときには非情な判断をせざるを得ない。
長い間現場を指揮するハックマン艦長が国を守るという使命感のもと、独裁的になっていっただろうことも容易に想像できますから。
軍記破りのペット持込みなどやりたい放題だけど、ワンちゃんがハックマン大好きだったもんね。
動物に好かれる人に悪い人はいないはず。
ラストシーンの後ろ姿に一抹の寂しさは感じるものの、わんことの穏やかな暮らしを想像して少しホッとした。

私の平和ボケのせいか、核戦争勃発の危機をイメージし難くかったという印象ではあるものの、人間を主体としたサスペンスとして見ごたえありました。



【映画】善き人
2011年11月26日 (土) | 編集 |

オスカーを騒がせそうなイイ男 ヴィゴ・モーテンセン

フロントランナーではないんですが、ヴィゴにはクローネンバーグの新作『デンジャラス・メソッド』で
オスカーノミネートの期待がかってますね。
第一次世界大戦前夜を舞台にカール・ユング(マイケル・ファスベンダー)とフロイト(ヴィゴ・モーテンセン)と
患者(キーラ・ナイトレイ)との精神分析にまつわる三角関係を描くというダークな心理ドラマらしいです。
むむ、難しそう(汗)
今日はヴィゴの作品から、ヴィゴがナチ党員となった大学教授を演じる『善き人』を観ました。
 
善き人(2008) イギリス
監督:ヴィセンテ・アモリン
出演:ヴィゴ・モーテンセン/ジェイソン・アイザックス/ジョディ・ウィッテカー/スティーヴン・マッキントッシュ
 
英国の劇作家C・P・テイラーの舞台劇『GOOD』の映画化で
ナチ政権下のドイツを舞台に、一人の大学教授の苦悩を描く作品です。
 
ヴィゴ演じるジョンは、半分ボケた母親を介護し、
妻に代わって子供の食事まで作る家庭人であり、熱心な大学教授。
戦争を共に戦ったユダヤ人モーリス(ジェイソン・アイザックス)の良き友でもあります。
ところが、彼の著書をヒトラーが気に入ったことから、
ジョンはナチ入党を余儀なくされ、次第に激化する反ユダヤの動きの中
彼は党員としての立場と友情との狭間で悩み、追い詰められることになるんですね。
 
20年ほど前には同じドイツ人として国のために戦った者同士が
片やSS、片やユダヤ人という相反する立場になってしまうという構図が恐ろしいです。
 
時代の流れとは言え、知識人が実感もないままにSSの指揮官にまで上り詰める。
ジョンのように、気づいたらホロコーストに加わっていたという人も多かったのでしょうか。
 
後半、ジョンが危険を犯し、モーリスの逃亡を助けようとするところが緊張をあおります。
最後の最後に、呆然とするジョンにかぶさる『GOOD』の文字が虚しいですね。
 
 
劇中 印象的に使われているのが、美しい旋律の音楽です。
あとで調べたらグスタフ・マーラーのシンフォニーからで、劇中3度ほど登場するんですが
その美しい歌声を耳にしたジョンは一度目は嬉しそうに一緒に歌うのですが
二度目はナチ党内で耳にし、つい口ずさんでしまうところを新妻に「何してるの?」と顔をしかめられます。
三度目はユダヤ人収容所で。ファンタジーとも言うべきシーンでしょう。
もはやジョンは口ずさむことはしません。ただ呆然と、自分が全てを失ったことに気づくんですね。
あの音楽は彼の中の「善き人」の象徴だったのかもしれません。
 
ただ、肝心なヴィゴの葛藤を描くところまでたどり着くのが長い。
それだけ、日々の生活にかまけ、ことの重大さから目を背けていたのかもですが
ヴィゴも、人物像を描き演じるのが難しかったかも。
 
監督のヴィセンテ・アモリンは本作が長編2本目とのことですが
次の作品『DIRTY HEARTS』では
伊原剛志と常盤貴子が日系人を演じ、高い評価を得てるみたいです。
 
 
『善き人』はお正月に公開です。
 
 

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