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【映画】『彼女が消えた浜辺』を推理する
2016年11月17日 (木) | 編集 |
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 彼女が消えた浜辺(2009 イラン
原題:About Elly
監督:アスガー・ファルハディ
脚本:アスガー・ファルハディ
出演:ゴルシフテ・ファラハニ/タラネ・アリシュスティ/シャハブ・ホセイニ/メリッラ・ザレイ/ペイマン・モアディ

【あらすじ】
テヘランからほど近いカスピ海沿岸のリゾート地に週末旅行へとやって来た3組の家族と独身のアーマドとエリー。しかし翌日エリは海岸で忽然と姿を消す。


【感想】
ミステリー映画特集4本目
別離』でオスカーを獲得したイランのアスガー・ファルハディ監督による心理ドラマです。

手違いで予約していたコテージを借りられず、海辺の古い別荘で休暇を過ごすことになった3組の家族と友人2人。
セデピーは独り身になったアーマドと引き合わせるため、娘の保育園の先生エリーを誘っていました。
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仲の良いグループに一人見知らぬ顔のエリーは、ぎこちなさを感じながらも次第に打ち解けてきます。
しかし滞在2日目、海で子供が溺れるという事故が発生。かろうじて救出さ命を取り留めるものの、浜で子供を見ていたはずのエリーの姿がどこにもない。

エリーは子供を助けようと海に入ったのか
あるいは誰にも言わず、どこかへ行ってしまったのか 

エリーの行方をめぐり、保身やなんやで残されたものが互いを攻撃し合うという展開になり、その心理合戦の面白さを堪能しました。
そうこうするうち、ある驚きの事実が発覚し映画は結末へと向かうんですが。。
私の中で何かモヤモヤしたものが残ってしまい、そこを語らずにいられないんです。
なので今回ネタバレで自分の推理を展開しますので、未見の方はご注意ください。


 結末から言いますと、
エリーは捜索しても見つからず、家族に連絡をしなければという話になり
エリーの携帯の着信履歴から兄に連絡をとることになる。
ところが、エリーに兄弟はおらず、それがエリーの婚約者だったことがわかるんですね。

婚約者のいる女性を他の男に紹介するなどあるまじきことと、セデピーは夫にも激しくののしられる。
しかしその後、エリーは実は婚約者のことを嫌っていて、婚約を破棄したがっていたということをセデピーから聞くことになります。ムスリム文化では女性が婚約を解消するなど許されないのでしょう。もう3年近くもエリーは結婚を延ばし続けていたらしい。

セデピーは仕切り屋で簡単に嘘をつく女と非難されがちですが、彼女はいつだってみんなのために最善を尽くそうとする人で、エリーがいなくなったと聞くと迷わず海に入って必死に探すし自分の非も素直に認める人なんですね。

そのセデピーが、用事があるから帰りたいというエリーを帰らせまいと、荷物まで隠してしまうのは違和感があります。
「一緒に来たんだから一緒に帰らなくちゃ」と、自分の計画を最後まで実行することにこだわるのだと捉えることもできるんですが・・。
もしも、エリーに婚約者以外に好きな人がいた。しかもそれは不倫だったと考えると、色んな事に合点がいく。

セデピーはエリーに不倫をやめ、まっとうな結婚をしてほしかった。
でも不倫のことなど女性として誰にも言えなかったのではないか。

↓まるで牢屋にいるようなこういうシーンもエリーの「罪」をにおわせる
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実際エリーはやたら携帯で誰かに連絡を取りたがっていて、セデピーはその携帯を隠していたという事実。
兄と思われる人物に連絡するため、男性陣がエリーの携帯を調べるとき、映画ではあえてエリーが着信を受け取った時刻を確認するというシーンがある。普通であれば最新の着信を確認する方が自然じゃないかな。

ラストシーン、溺死体があがったと連絡があり、婚約者が死体を確認する。
少ししか顔が映らず、私にはそれがエリーかどうかはっきり見て取れなかった。
婚約者が静かに涙を流し、メンバーからのお悔やみの言葉を受け入れたので、あーやっぱりエリーだったのかとその時は思ったのだけど、はたしてそうだったか。

もしもそれがエリーでなかったとしたら、エリーはどこかに意図的に消えた可能性が強くなる。
そしてもしも、婚約者がエリーの不倫の事実を知っていて、エリーが不倫相手とどこかに逃げたのだとしたら、
婚約者にとってはそんな事実を受けいれるよりエリーを死んだものとして納得する方が楽かもしれない。
あるいは、そうまでするエリーを解放してあげようと思ったかもしれない。
などと思うのであります。

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最後にエリーを映し出すシーン
もつれた糸を直し、凧を無心に上げる姿がやたらと印象に残ります。
何もかも捨てて、青空を自由に飛び回りたい そんな思いがあったのかなと。

アーマドから「永遠の最悪よりも、最悪の最後の方がまし」という言葉を聞いた時、彼女は好きでもない相手と結婚するという永遠の最悪から抜け出すことを考えたのではないか。

目の前で溺れる子供を、保育園の先生であるエリーが放って逃げたとは考えにくいけれど、子供が助け出されたことを確認した後、自分が死んだことにするチャンスととらえたと考えられるような気がします。

なんてね。勝手な推理ですが。
そんな想像を可能にするくらい、人物像の描きこみがリアルで明確なのがこの映画の素晴らしいところ。
エンディング曲の優しさも心にしみました。


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コメント
この記事へのコメント
No title
へ~中々奥深いね。

最後までネタバレバレで読んじゃった!
溺死体はいったい・・・??

イランってとこが、いらん感情が混じってきて(笑)
やっぱミステリーはいいね♪
2016/11/18(金) 02:09:39 | URL | chaco #-[ 編集]
No title
『別離』観た時にも思ったけど、この監督は人の心の裏とか、奥深くに隠れてる無意識の意識とかを深く追求するよね。
普段から鋭い目線で人を見てるんだろうな。あんま友達になりたくないかもwww

『エリーについて』 って内容原題そのまんまですね(笑)
エリーに関して深く鋭く追及したいような、知らんがなって投げちゃうようなwww 道徳観は宗教やお国柄によって多種多様なんで真相の受け取り方も違うかもなので正解がいっぱいあるかも。面白そう。スタチャン落として~www
2016/11/18(金) 02:23:11 | URL | みーすけ #Tzg06d/s[ 編集]
No title
私はこの映画を神隠しの話だと思っていたので、ここまで想像の輪を広げることができませんでしたけど、なるほど、そういう解釈もその気になればできそうですね。私は、色々な事情があっても、人は時として消えてしまうことがあるという見方をしてしまったので、まさか、エリーが生きてるなんて可能性には全然思いが届きませんでした。人間の描写がリアルだけど、本筋が曖昧なこの映画ならではの解釈ですね。
2016/11/18(金) 03:08:45 | URL | einhorn2233 #-[ 編集]
To chacoさん
人の心理をものすごく繊細に描く監督さんで、憤ったり納得したり、とにかく飽きさせません。
ははは、イラン感情も入るよw

溺死体は普通にエリーかもしれないんだけど、いろんなオプションが考えられて
そういうのもこの映画の面白いところでした♪

2016/11/18(金) 09:14:39 | URL | pu-ko #SFo5/nok[ 編集]
To みーすけさん
そうなの、そうなの。
心の裏とか表とかw深層心理を深くえぐりながら人間の本性を徐々に剝がしていく天才だよね。
確かに普段から人を観察しまくってるんだろうね。怖いねw

あ、そうそう。 エリーはタイトルロールでありながら早々に退場するわけで、追究したいけど実体のない存在でもあるんですよね。だからまさしく知らんがなww
正解もいっぱいあると思う。自分なりのストーリーを作り出すのもまた一興 的な(笑)
2016/11/18(金) 09:25:10 | URL | pu-ko #SFo5/nok[ 編集]
To einhornさん
あー、神隠しですか。
確かにエリーの名前にしてもイスラムの名前としては存在しない風だったし、実態を持たない描き方だったかも。
その代わり、周囲の人間の描写はやたらリアルでしたよね。
この人物像に反し仰るように本筋に曖昧な部分があって、なにか意図的ではないかとも思ってしまいます。
なので色々に想像を膨らませてしまいましたが、そうして観るのもこの映画の楽しみ方かもです。
2016/11/18(金) 09:32:36 | URL | pu-ko #SFo5/nok[ 編集]
No title
最後まで読みました。
面白そうな映画ですね。
良い映画って、映画の外側でぐんぐん想像力を刺激してくれる。
考えながらボ~っと見れる映画って、たまにありますね。心地良いのが。
2016/11/18(金) 09:43:23 | URL | ゾンビマン #-[ 編集]
To ゾンビマンさん
これは最後まで読んでも、ゾンビマンさんがご覧になったらまた全然違うストーリーとして楽しめるかもです。
(というか、私と同じ見解の記事に出会いませんw)
でも想像力を掻き立てられ、つい自分で真相を追究したくなる映画。
面白かったです。

2016/11/18(金) 10:01:51 | URL | pu-ko #SFo5/nok[ 編集]
No title
イランの映画って見たことないんではないかな  田舎だと上映しないし  というか 映画館ない   情報もないし
DVDで出されても知らない  こういったブログ記事での情報が頼りです
上のポスタ-でのおねいさん、 オリビアハッセーに似てる その写真だけだと
2016/11/18(金) 16:48:11 | URL | おみゃあ #-[ 編集]
ええと、
もう忘れちゃった。
けど、彼女、なにかの象徴としてあったのかもしれないですね。
2016/11/18(金) 19:45:37 | URL | ボー #0M.lfYJ.[ 編集]
To おみゃあさん
イランでは映画にもいろいろ制約があるようであまり作られてないんじゃないかと思うんですが
出てくるものは秀作が多いみたいです。
こちらでも・・というかアメリカは特に字幕映画はシネコンで一切やってくれませんわ。
これも当時は評判になった作品でした。
遅ること5年の記事ですが気にかけてもらえると嬉しいです。
オリビア・ハッセー似てますか。この女優さんも彫が深くてきれいでした。
この後ハリウッド映画に出たようで、イランから追放されたとか・・
2016/11/19(土) 09:02:15 | URL | pu-ko #SFo5/nok[ 編集]
Re: ええと、
>ボーさん
あー、そうですね。実態があまりない感じでもあったので
具体的な人間として色々想像するより、メタファー的にとらえて意味を見出す方が正解だったかもしれません。
2016/11/19(土) 09:05:09 | URL | pu-ko #SFo5/nok[ 編集]
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今回は、新作の「彼女が消えた浜辺」をヒューマントラストシネマ有楽町シアター2で観てきました。63席という小さな劇場ですが、スクリーンに向かうとやはり映画館で観る映画は違うという気分になります。スクリーンが小さくても、劇場の構造がちゃんとしてれば、そこは映画鑑賞の場になるんだなって改めて感心。(裏返すと、感心できないミニシアターもあるってことですけど) テヘランから海岸のリゾート地へ、三...
2016/11/18(金) 18:08:26 | 今昔映画館(静岡・神奈川・東京)
あまり知らないイランという国の人々の生活の一部が見られたり、ちょっとミステリアスな話で興味が続いた。
2016/11/19(土) 10:41:03 | 或る日の出来事
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