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【映画】サウルの息子
2016年05月02日 (月) | 編集 |
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サウルの息子(2015)
ハンガリー
原題:Son of Saul
監督:ネメシュ・ラーシュロー
脚本:ネメシュ・ラースロー  / クララ・ロワイエ
出演:ルーリグ・ゲーザ/ モルナール・レヴェンテ/ユルス・レチン/  トッド・シャルモン /  ジョーテール・シャーンドル 

 【あらすじ
アウシュヴィッツの収容所でゾンダーコマンダーとして働くハンガリー系ユダヤ人のサウルは、ある日ガス室でまだ息のある少年を発見する・・


【感想
アカデミー賞外国語映画賞を受賞したハンガリー映画。
1994年のアウシュビッツの強制収容所を舞台に、ゾンダーコマンダーとして働くユダヤ人サウルの孤独な狂気を描く作品です。

主人公のサウル(ルーリグ・ゲーザ)は収容所でくる日も来る日も同胞のユダヤ人をガス室に誘導し、その後の死体の片づけをしている。カメラはサウルのクローズアップをとらえ、その背景に死体処理の様子がぼやけた映像の中映し出される・・。

痩せこけた全裸の死体が引きずりまわされ片付けられるその背景の映像がホラーでねぇ。
ピンボケの撮影手法は、直接的なグロにベールをかけるから恐怖が安らぐかというと逆で、
そこで起きている一部始終をかえって想像してしまうし、匂ってくるような生々しさが半端ない。
収容所で起きていることが混乱とカオスでしかなく、ぼやけた映像はサウルの混乱そのものでもあるでしょう。

ある日、サウルは一連の作業中、ガス室で死に損ねた少年を発見。
サウルはある行動に出るんですが・・

16-10-2015-1_son-of-saul.jpg

これが初監督作品というハンガリ―出身のネメシュ・ラーシュローは10年の構想を経てこの映画を作り出したのだとか。実際にホロコーストを体験した生存者から話を聞きリアリティにこだわったことが伺えます。

同じホロコーストもので父と息子を描いた『ライフ・イズ・ビューティフル』を「違う」と言い切る監督が
本作で描こうとしたのは怒りと混沌に満ちたホロコーストの真実。
父と息子の描写でさえ混乱の中の狂気でしかないところがむなしいんですが
誰をサウルを咎めることができるでしょうね。

以下ちょっとネタバレします




サウルはわが子と信じたその少年を宗教にのっとった方法で埋葬してやりろうと奔走する。
勿論自分の息子かどうかさえ判断できないほどサウルの精神は崩壊しているし、仲間を危険に陥れるサウルの行動は常軌を逸してもいます。
それでもそこには切なる父の思いがあり、同胞の命をガス室送りにした自身への罪の意識を考えると
彼は宗教的な救済を求めていたのかもしれない。
共感できるできないのレベルを超えた切実さがあるのですよ。

ラストシーンにサウルが見たものはなんだったんでしょうか。
彼は少年に天国に無事召されたわが子の姿を見たのか
罪を浄化され死ねることへ安堵なのか
純粋に、子供の姿に安らぎを覚えたのか・・・

メロドラマを排し「観客を泣かせない」ことを一つのコンセプトにした作品らしいですが
最後は張りつめていたものが緩んで泣けてしまった次第です。


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コメント
この記事へのコメント
Son Of Saul
この映画知ってますよ、、って見たわけじゃないのですが、、。確かワールドムービーで内容に触れていた気がします。何時やるのか、、調べてみましょう。
2016/05/02(月) 22:03:56 | URL | guch #-[ 編集]
No title
ラストの少年に笑うサウルがなんとも意味深でいいですよね。
撮り方は凄く斬新。
凄く重要なシーン二つを曖昧にしていなければ最高。
(ラストの少年と途中のカメラ)
2016/05/03(火) 00:38:20 | URL | ゾンビマン #-[ 編集]
No title
「ウルサイ息子」って読んだ(笑)

最初の画像、目だけ出してる俳優さん、
ちょっとジョン達郎さんに似てない!?

オスカー獲った「孤独な狂気を描く作品」観たい!!
2016/05/03(火) 04:32:16 | URL | chaco #-[ 編集]
No title
実はインフル前に行こうとしてたんだけど、直前でしんどくて止めたの。止めて良かったかも。劇場で観るのはかなり勇気がいりそう。
容赦の無い物語は元気がある時に観ないと潰される。とても好きな(変な言い方だけどww)題材だけどホロコースト物はホラーよりも怖い。
あーわたしも『ライフ・イズ~』苦手。てか嫌い。あれは違うと言っちゃう監督が撮った作品かー。
大きな画面で観るの怖いのでソフトにする。
2016/05/03(火) 04:55:26 | URL | みーすけ #Tzg06d/s[ 編集]
Re: Son Of Saul
>guchさん
アカデミー賞もとり、前哨戦も席巻した話題作ですね。
ぜひチェックしてみてください。重いですがちょっと凄いものがります。
2016/05/03(火) 07:12:34 | URL | pu-ko #SFo5/nok[ 編集]
To ゾンビマンさん
> ラストの少年に笑うサウルがなんとも意味深でいいですよね。
ほんと。正確な意味を捉えてはいないんですが、それでも長い間の苦痛から一瞬解放されたようなサウルの微笑みに涙が出ました。
ラストの少年は普通の村人なのかなと思ったけど明かしませんでしたね。
サウルには天使に見えたのかもしれません。
途中のカメラは・・なんだろう
ゾンビマンさんの記事にお邪魔します。
2016/05/03(火) 07:22:50 | URL | pu-ko #SFo5/nok[ 編集]
To chacoさん
> 「ウルサイ息子」
ちゃうちゃう(笑)

主人公の役者さんはジョン達郎さんより私はジェフ・ブリッジスに似てると思ったな。
なんたってホロコースト映画、覚悟して観てね。

2016/05/03(火) 07:26:59 | URL | pu-ko #SFo5/nok[ 編集]
No title
映像と音響によるライド感がすごい映画でした。直接見せるわけではないのに、並みの想像力があれば、そこに地獄絵図を追体験できるという作りのうまさというか怖さを感じてしまいました。その中でストーリーは寓話的なのが、不思議なアンバランス感でした。
2016/05/03(火) 07:27:37 | URL | einhorn2233 #-[ 編集]
To みーすけさん
そう、これは体調良くないと辛いと思うわ。
臨場感半端ないし、サウルと一緒にカオスの中に放り込まれる感覚だから。
それほどグロい描写はないのにまさにホラー以上のホロコーストものに仕上げる力に感服。

>『ライフ・イズ~』はやっぱり苦手。てか嫌い。
あれはあれでとは思うけど、監督の「違う」を聞くと、腹立たしいと思う人もいるんだなと気づいた。
監督としてはホロコーストに笑いなんてとんでもない お涙頂戴のメロドラマにもしたくなかったそうです。
臨場感を体感するのもよしだと思うけど私もソフトでも十分怖かった。
2016/05/03(火) 07:35:23 | URL | pu-ko #SFo5/nok[ 編集]
No title
この映画は、時間が合わず映画館で観れなかったで、レンタルで是非観たいです。
2016/05/03(火) 08:54:35 | URL | yymoon #-[ 編集]
To einhornさん
偶然同じ日の記事アップになりましたね。
背景がぼやけているからこそ余計に想像力を掻き立てられたし、サウルの混乱ぶりも同時に表現してました。
こうゆう斬新が手法は先にやったもん勝ちなところがありますね。
劇場鑑賞での臨場感は半端なかったことでしょう。
寓話的なのかサウルの混乱なのか。そこはもう一つ理解できませんでした。
2016/05/03(火) 09:29:35 | URL | pu-ko #SFo5/nok[ 編集]
To yymoonさん
時間が合いませんでしたか。残念。
私も近くで上映がなくレンタルになりましたが、それでもホロコーストの恐ろしさを十分に感じる作品でした。
yymoonさんは特殊な映像技術にも興味を持たれると思います。
監督は若い方ですがタル・ベーラの助監督を務めた経歴を持つそうです。
是非ご覧になってください。
2016/05/03(火) 09:44:17 | URL | pu-ko #SFo5/nok[ 編集]
No title
これ、こう云う話なんですね。
見ようw
この間、久々にTVで
面白いと云うのもなんですけど、
ホロコーストのドキュメンタリー見ました。
戦後、アンネの父親と再婚した女性の娘の話なんですが、彼女もアウシュヴィッツにいたそうです。
ホロコーストは、
今だに様々な問題を投げかけますよね。
2016/05/16(月) 17:07:56 | URL | miskatonic #-[ 編集]
To miskaさん
わーい、お久しぶりです。
そうなんです。ホロコーストものだけど主人公の設定が特殊で、ちょっと変わってます。
でもいやでも想像力を働かせてしまうし、ある意味ホラーな怖さもありました。
観てみてください♪

> アンネの父親と再婚した女性の娘のドキュメンタリー・・
本当にホロコーストは色んな観点から観ることができますね。、
ドキュメンタリ―だと真実が掘り下げられているでしょうし興味ありますね。
2016/05/16(月) 19:10:04 | URL | pu-ko #SFo5/nok[ 編集]
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