映画の感想や好きな俳優の情報を発信します。新作以外はネタバレあり。
もうひとりの息子
2013年06月11日 (火) | 編集 |



もうひとりの息子(2012)フランス
原題:Le fils de l'Autre
監督:ロレーヌ・レヴィ
出演:エマニュエル・ドゥヴォス、パスカル・エルベ、ジュール・シトリュク、 メディ・デビ、 カリファ・ナトゥー
日本公開:2013年秋
イスラエルに暮らすジョセフは、兵役用健康診査で両親の実子でないことが判明。
出生の際に、パレスチナ人の子供と取り違えられたことが明らかになった。

2012年の東京国際映画祭でサクラグランプリと優秀監督賞の2冠に輝いた作品です。
出生時の赤ん坊の取り違えというドラマは珍しくないですが、本作が特殊なのは彼らがパレスチナとイスラエルの家族であること。
国同士が対立し合い、イスラム教徒とユダヤ教と宗教も異なることから、取り違えられた子供は勿論、互いの両親も戸惑うことになるんですね。
映画は、双方の家族のメンバーが、アイデンティティに揺れながらも家族として情を交わしていく様子を描きます。

まず興味深いのが、女性と男性の違い。
双方の家族が取り違えについて説明を受ける場面、女性は本当の息子の写真を見た瞬間に母の顔を覗かせ、別れ際には母親同士互いに手を取り合う。
そこに「長い間自分の息子を育ててくれてありがとう」という気持ちが見えるんですね。
自分のお腹を痛めた母親ならではの実子との繋がりの強さでしょう。
一方、男性陣はそうはいかない。
血の濃さの前に、それまで育てた息子と父親という関係が、新しい本当の息子を受け入れる障害になり、何よりも、敵対する国で育った我が子に対する違和感を拭いきれない。
複雑な両国間の関係が絶妙に反映され、どう折り合いをつけるのかと興味がつきませんでした。

そんな中、徐々に親子の絆を獲得する様子には、やはり血は水よりも濃いのだと思わせます。
お涙頂戴の感動ものにせず、彼らの関係の始まりを静かに描いている作品なので、劇的な結末を期待すると、やや物足りないと感じるかもしれません。

さり気ない台詞にパレスチナとイスラエルそれぞれのお国事情が見て取れます。
経済格差や、人なつっこさ、宗教に対する思い入れなど
両国の違いなどこれまで考えたことのなかったので、凄く興味深かった。
また国同士がいかに敵対していても、人と人は分かり合えるのだという描き方に、平和への希望をも感じさせました。
揺れる気持ちを表現する際に流れる主題歌も美しく、良かったです。




      

トラックバック一覧

  1. 1. 「もうひとりの息子」は過酷な運命への結末は楽天的すぎるのか、リアルな希望なのか。

    • [今昔映画館(静岡・神奈川・東京)]
    • October 21, 2013 19:59
    • 今回は新作の「もうひとりの息子」をシネスイッチ銀座1で観てきました。フラットな場内にスクリーンが低い位置なので、前の人の座高があると画面が欠けちゃう難点があります。全席指定で、他の席へ移れないのですから、もっとスクリーンの位置を上げてほしいわあ。 テル


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コメント
この記事へのコメント
これ、映画祭でみそこねてるんですよね~

グランプリをとったから
公開してほしい作品では
あるんですが、サラの鍵も
公開まで2年くらいかかってるし

どうなるのか、まったく状態なんですよね~

2013/6/11(火) 午前 8:32[ る~ ]



あら~子供取り違えですか。
でも良さそうっていうか辛そうなんだけど
見てみたいです うん。

2013/6/11(火) 午前 8:44[ 翔 ]



これは興味深いです。
お国事情が絡むだけに、静かに描かれる中にも、深いものがあるんでしょうねぇ。
希望を感じさせてくれるというのはいいですよね。観たいです~

2013/6/11(火) 午前 10:00[ じゅり ]



子供の取り違えっていうとカンヌで審査員賞を受賞した『そして父になる』を思いおこしますね

たしかにバックグラウンドをパレスチナとイスラエルを持ってきたことでグッと社会派な作品になりますよね

お国事情の違いとか・・すごく興味深いな
これははやく観たいです

2013/6/11(火) 午後 0:58[ SHIGE ]


国や宗教が違うと話になりませんよね。
どこまでも平行線。
面白そうな題材の作品で興味あります。

2013/6/11(火) 午後 5:48[ ゾンビマン ]



ほぉ~こういう内容だったんですか、これは。
イスラエルとパレスチナで、しかも子供の取り間違えとは、これまた厳しい。
それだけに物語には興味津々になりますね。
秋公開かぁ~。

2013/6/11(火) 午後 7:32[ Kaz. ]



血は水よりも濃いというお話なんですね。私は氏より育ちだと思っていますので、そういう感覚が理解できないだけに、この映画で、どこまで血の濃さを納得させてくれるのか大変興味あります。どっちが正しいという問題ではないだけに、どう見せてくれるのか期待しちゃいます。

2013/6/11(火) 午後 8:57[ einhorn2233 ]



る~さん>
あ。これは観てなかったっけ。
最初からグランプリとか分ってるとチョイスしやすいけど分らないものね。
これは一応晩秋とあるので、公開されるでしょ、きっと。

2013/6/12(水) 午前 0:20[ pu-ko ]



翔さん>
親御さんならこの複雑な思いに大いに共感すると思いますね~。
題材的にも面白い作品でした。

2013/6/12(水) 午前 0:21[ pu-ko ]
2016/01/11(月) 13:14:34 | URL | pu-ko #SFo5/nok[ 編集]
じゅりさん>
そうなんですよ。それじゃなくても大変なことなのに、プラスしてお国事情が緊張を生むことにもなり、これでもかです。
理路整然と将来の見通しを語ってはくれないけど、分かり合える部分があったことに希望を感じる作品でした

2013/6/12(水) 午前 0:24[ pu-ko ]



SHIGEさん>
そうでしたね。是枝作品はお父さんに焦点を当ててるのかな?凄き気になります。
そそ、これはパレスチナとイスラエルという、頼むで~という取り合わせがポイントで
家族の問題に終わらないところが一筋縄でいかないところでした。
町並みや人の素朴さとか、違いが見てとれるのも興味深かったですよ。

2013/6/12(水) 午前 0:51[ pu-ko ]



ゾンビマンさん>
これだけ敵対している国の話なので、最初は相容れない部分もあるんですが、
20年ほども育てた親子、血を分けた親子、それぞれの情など根本的なものは世界共通なんですよね。そのあたり丁寧に見せてくれました。

2013/6/12(水) 午前 0:55[ pu-ko ]



Kaz.さん>
厳しいですよね~。しかもイスラエル側の父親は軍のお偉さん。
息子も意外に宗教心が強くて、ユダヤ教を捨てることに戸惑いがあったり
様々な問題が提示され興味深かったです。

2013/6/12(水) 午前 0:58[ pu-ko ]


einhornさん>
血は水よりも濃いという部分が早々に描かれるのを私も意外に思ったのですが、子供たちの設定をひとり立ちも可能なじきにすることで、自らのアイデンティティを求める比重を大きくすることが可能になってると思いました。なかなか面白い作品でしたよ。

2013/6/12(水) 午前 1:26[ pu-ko ]


タイトルを見る限り親の視点でこの取り違えを語っているということになりますか。
敵に育てられた自分の子を愛せるのか、あるいは自分の愛した子が敵の子供だった時どうするのか、という辛い話ですね。
イデオロギーと愛情とどちらが大事か、ということで、母親にとっては自明の理なのでしょうね。
これは是非観たいです。

2013/6/12(水) 午前 6:53[ おまけ ]



是枝裕和監督の
『そして父になる』と
同じ題材じゃないですか?
民族問題はないですが。
公開も同じ時期とは

2013/6/12(水) 午前 11:43[ GH字幕 ]



お久しぶりです(^_^;。
ちょっといろいろあってご無沙汰してました;
カンヌでも賞を取った邦画「そして父になる」も取り違え物でしたね。
評価で、欧米の養子文化的に、
日本よりこの問題に関心が高い、と云うのがあって、興味深かったです。
特に扮装地の問題を入れる場合、
身近な題材と云うのはある意味マストなのかもしれませんね。
ともあれ、この映画は見たいです。
こっちで公開される予定はあるのかな?

2013/6/12(水) 午後 3:44[ miskatonic ]



おまけさん>
あ、そうか。「息子」ってことだから、そうですね。気づかなかった(≧∀≦)
確かに、同じ親でも父親と母親では実の息子に対する思いも違うわけで
そういった「親」の視点が具体的に描かれていたと思います。
ぜひ観ちゃってください。お楽しみに。

2013/6/13(木) 午前 1:15[ pu-ko ]



字幕さん>
そうそう、是枝作品と題材が同じだなぁと思いながら観ました。
同じくらいの公開になるんですか。
それは面白い対比になるかもしれませんね。
でも日本人としては、本作の、民族紛争が背景にある父親の確執は理解しにくいかな。

2013/6/13(木) 午前 1:19[ pu-ko ]


miskaさん>
お久しぶりです~。
病気でもされたのではないかと心配してました。
ご無事でなによりでしたが、やはりお忙しいのですね。

カンヌでの『そして父になる』の評価にそんな意見があったのですか。
なるほど、欧米の思わぬ興味も評価の高さに繋がったのかもしれませんね。
国の環境により、対峙する問題もそれぞれというのも興味深いところです。
一応晩秋wに公開が予定されているようです。

久々にお名前を拝見して嬉しかったです。無理せずボチボチでね。

2013/6/13(木) 午前 1:49[ pu-ko ]



親子の情が長きに続いてきた憎悪の連鎖に打ち勝つように見えるあたり、希望は感じるものの楽観的すぎないかとも思ってしまいました。実際に現在進行形で殺し殺される関係なのに、それを迂回してしまうと、コミュニティを捨てることにもなりかねないなあという気がして、観終わってしばらくしてから、苦い後味が残る映画でした。

2013/10/21(月) 午後 8:03[ einhorn2233 ]
2016/01/11(月) 13:18:59 | URL | pu-ko #SFo5/nok[ 編集]
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