映画の感想や好きな俳優の情報を発信します。新作以外はネタバレあり。
終戦のエンペラー
2013年08月16日 (金) | 編集 |



第二次世界大戦後の日本を舞台に、戦争の真実に迫る歴史ミステリーです。
戦争責任を問うハリウッド映画だと思ったので、公開時に二の足を踏んでしまいましたが、
天皇と天皇を思う日本人の心を真摯に描いていて、とても興味深く観終えました。

終戦のエンペラー(2012)日本/アメリカ
原題:Emperor
監督:ピーター・ウェーバー
出演:マシュー・フォックス、 トミー・リー・ジョーンズ、 初音映莉子、 西田敏行、 羽田昌義、 火野正平、 中村雅俊、 夏八木勲、 桃井かおり、 伊武雅刀、 片岡孝太郎、 コリン・モイ
日本公開:7/27~公開中

マッカーサー(トミー・リー・ジョーンズ)から命を受けたフェラーズ准将(マシュー・フォックス)が、関係者からの聞き取り調査を行うという形で、戦争の真実に迫っていきます。
最終段階として、天皇の戦争責任について答えを出そうとするのですが
そこから見えてくるのは、日本人の天皇への忠誠と献身。国民は天皇のために命をかけ闘ったけど、実際には天皇は自分で何かを決める自由など持たず、祭り上げられたシンボルでしかなかったということ。

苦しいときに、人は心の支えとなるものが必要で、日本人にとってそれが天皇だったことに違いないんでしょう。一方、その心を間違って利用すれば、戦争というとんでもない過ちに繋がる。これは神のみ名のもと聖戦を繰り返す宗教に近い危険を孕むものだということも感じさせます。

原爆投下のシーンから始まり、アメリカが日本の平和的復興に尽力したという描き方に
傲慢さを感じるという向きも多いけれど、戦争における過ちを責めるのではなく
センシティブな世界情勢の中の日本の復興を公平な目で見つめているのは、
ハリウッド映画とはいえ、監督がイギリス人であることも大きいのかもしれません。

また、製作の奈良橋洋子さんは枢密顧問官、関屋貞三郎氏のお孫さんとのことで
皇室の敷地を撮影現場に使われてるのは、彼女の力によるものも大きいのかな。
世界で活躍するプロデューサーという点でグローバルに作品を見つめるとも感じます。
それでいて、中村雅俊演じる近衛文麿に、侵略を進める心情を語らせているのが
とりあえずそこだけは言っておきたいという本音みたいなものを感じて、ちょっと小気味よいw


関屋を演じるのは闘病中だったと思われる夏八木勲さん。
マッカーサーに「天皇の影を踏んではいけない」など、接見時の注意事項を伝えるシーンは、天皇の威厳を感じると同時に、一種コミカルでもあり 関屋の真面目で誠実な人柄が伺えるところも好きだったなぁ。

演出として面白いのは、天皇の姿を終盤まで見せず、神のごとくミステリアスに描いていること。
かのマッカーサーでさえ、畏怖に近い面持ちで天皇と接見したわけですね。

天皇(片岡孝太郎)登場のシーンはドキドキさせますが
現れた天皇が小さくて親しみやすいお顔だったりするのも
偶像とのギャップを感じさせるようで面白い。
それでもやはり天皇のお言葉には重みがあり、国民を思う心にはジンとします。




フェラーズ准将も実在の人物ですが、日本人女性アヤとのロマンスはフィクションです。
史実と違うということで反論も多いようだけど、アヤを演じた初音映莉子さんも素敵で
堅いだけの話にならなかったのは良かったし、何よりも、戦争で敵として戦う相手も、血の通う人間であるというのを思い起こさせてくれました。

西田敏行さんはじめ、名優たちが英語を見事に操るのにも感心。
ハリウッドでの評価は散々だけど、日本人の心が分からないと
感じるところのない映画になってしまうかもだな。

私には胸にストンと入ってくる一本でした。



      

トラックバック一覧

  1. 1. 「終戦のエンペラー」は外国人の目から見た日本を描いていて面白くて見応えあり。

    • [今昔映画館(静岡・神奈川・東京)]
    • August 16, 2013 22:27
    • 今回は、新作の「終戦のエンペラー」をTOHOシネマズ川崎4で観て来ました。以前は上映サイズに合わせてスクリーンサイズを変えていたのですが、シネスコサイズのままでずっと上映。ちょっとのことを合理化しても仕方ないと思うのになあ。手抜き感で印象よくないのに。 194
  2. 2. 映画「終戦のエンペラー」 2013年 監督ピーター・ウェーバー

    • [アンダンテ あっち行って ホイ♪]
    • August 23, 2013 00:00
    • 終戦記念日も間近になって来ました  映画冒頭の原爆の投下シーン 何度見ても凍りつきます 本作はノンフィクションではなく あくまでもフィクションですが 挟み込まれるフィルムなどから 真実では?と 思わずとらえてしまいそうです   日比谷通りを
  3. 3. 『終戦のエンペラー』

    • [京の昼寝〜♪]
    • August 24, 2013 08:07
    • □作品オフィシャルサイト 「終戦のエンペラー」 □監督 ピーター・ウェーバー□脚本 ベラ・ブラシ□原作 岡本嗣郎□キャスト マシュー・フォックストミー・リー・ジョーンズ、初音映莉子、西田敏行、       片岡孝太郎、中村雅俊、夏八木勲、桃井かおり

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コメント
この記事へのコメント
日本国内では総じて評判が良いようですね、、でも残念ながらオーストラリアでは現在配給権を確保したところがないとかで劇場公開はダメかも、、、ダメとなると余計に見たくなりますね、。ブログでもCMで宇宙人役をやっていトミー・リー・ジョーンズがダブってしまうとか言われてますが個人的にはその昔、マッカーサー元帥を演じたグレゴリー・ペックと比較してみたい、。

2013/8/16(金) 午後 1:13[ guch ]


ひと昔もふた昔も前のハリウッド映画における『日本』の扱いに比べれば、最近の映画は『日本』を真摯に考えてみようと言う姿勢が見えますよね。

いま公開中だから観に行く時間が欲しいところです。

2013/8/16(金) 午後 1:41[ Kaz. ]


この映画は、NZでは上映未定なんですよね…。
親日的な国なのですが、
どうしてなのかは、分かりませんが…。

もしかしたら、中国や韓国からの移民が多いからなのかな…。

特に劇場で観たい、と思っている映画です。



このような映画もそうですが、特に日本では戦後の客観的な事実を基本にした戦後史を教えてほしいと思います。この映画のように、他の国から教えられるようでは情けない…。いま問題になっていることも含めて、これからの世代のために必要ですね…。
映画の話題ではありませんが、戦後関係の記事を載せておきます。
http://blogs.yahoo.co.jp/nz_rr/55675840.html

2013/8/16(金) 午後 1:53[ NZ_RR ]


日本人には理解できるかもしれないけど、この内容で外国の人にきちんと伝わるのかなあって気がしました。戦争責任の追求という発端から、話がすり替わっているようにも思えますもの。そんな中で、日本人は言いたがらない「戦前の日本は傀儡政権で、敗戦の責任だけ傀儡天皇におっつけた」という事実をさくっと言ってのけるのが印象的でした。後、この題材で、泣き喚く人間が出てこないってのがドラマに知性を感じさせてよかったです。

2013/8/16(金) 午後 10:27[ einhorn2233 ]


天皇陛下が出てくる映画って、なんかタブーなような気がして気が引けるんですよね。
終戦・・ もう時代が違いますが、これは「観ておくべき」映画なんでしょうね。
我らがトミーリーおじさんも出てるし、機会あればいっときたいところです。

2013/8/16(金) 午後 11:01[ サムソン ]


真摯に丁寧に描かれているんだろうなぁというのが、レビューから伝わってきました。
確かにイギリス人監督というのもあったのかもしれませんね。
やっぱり観たくなりました。

2013/8/17(土) 午後 11:39[ じゅり ]


guchさん>
オーストラリアではあまりこの問題には興味持てないかもですね。
あはは、トミー・リーおじさんは宇宙人もこんな風なんだw
ペックもマッカーサーを演じてたんですね。映画も全然知りませんでした。
ちょっと興味あります。

2013/8/18(日) 午前 3:52[ pu-ko ]


kaz.さん >
そんな気がしますね。
昔は日本人がまともに映画に加わらない状態で、偏見のままに描いてたんでしょうね。
今は随分と日本への理解も違ってるのかなという気もしますね。
賛否は分かれてるようです。またkaz.さん の感想聞かせてくださいね。

2013/8/18(日) 午前 3:55[ pu-ko ]


NZ-RRさん>
日本では受けもいいようで、宣伝もされてるようだけど、アメリカでも公開館は多くなく、公開も短かったです。
日本人出演者も多いし、マイナーな扱いなので無理ないかもと思うけど、そうか、中国や韓国からの移民が多いということもあるかもですね。
戦後75年もたって、歴史問題が認識されないどころか、捻じ曲げられて伝わってしまうのはつらいものがありますね。リンクありがとうございました。

2013/8/18(日) 午前 4:01[ pu-ko ]


eihornさん>
ですね~。日本人の心を掘り下げる描き方は、諸外国人には興味も持てないかもという気がします。
天皇の存在価値や、立場について改めて言葉にするというのは斬新でしたよね。
色んな立場から冷静に捉えた作品といえそうですね。TBありがとうございました。

2013/8/18(日) 午前 4:38[ pu-ko ]


サムソンさん>
確かにタブーといえる題材ですが、あえて冷静に切り取ることに勤めているのが心に残る作品です
私も観てよかったと思いました。
トミー・リーおじさん出てると、日本人には親しむも沸くのがいいですね。

2013/8/18(日) 午前 4:41[ pu-ko ]


じゅりさん>
曖昧に白黒をつけない日本人気質みたいなものをえらく掘り下げてました(笑)
どちらかを悪く描くとか、偏った感じがならなかったのはイギリス人監督を選んだのは正解だったようにも思いますねぇ。
興味深いし、天皇のシーンは感動でもあります。
ぜひぜひ。

2013/8/18(日) 午前 5:01[ pu-ko ]


日本では興行的には苦戦
しています。殺風景な
話になると思い、
ロマンスを盛り込んだのが
仇となったかも。
この映画の観客は
年齢層が高いのであの
時代に色恋沙汰などと
心外だと印象を持ったに
違いないでしょうね。
堀川弘通の東宝作品
『激動の昭和史 軍閥』
も見ればもっとストーリーが見えてきます。

2013/8/18(日) 午前 8:21[ GH字幕 ]


字幕さん>
そうなんですか。てっきり興行も上々なのかと思ってました。
ロマンス部分に異を唱える人多いみたいですね。
そもそも二人が出会うのが日本ではなかったので、
あの形の恋愛はありだと思ったんですけどね。

歴史的な解釈をする映画はきっとたくさんあると思うのだけど
歴史の描き方的には、これはこれで十分。
、日本人の心と天皇への思いを描いていて興味深い作品でした。

2013/8/20(火) 午前 0:06[ pu-ko ]
2016/01/15(金) 17:22:41 | URL | pu-ko #SFo5/nok[ 編集]
和を持って貴しとなす、という精神とも通じるのかもしれないと思いながら観ました。テロか?平和か?といつもニ者択一の正義感から見ると異質に見えるであろうことを、きちんと丁寧に描いていたと思いました。
戦後生まれですが、天皇の言葉にはグっときました。
プロデューサに奈良橋さんがいらした功績もあるのかな?
TBさせてくださいね。

2013/8/22(木) 午後 11:59[ アンダンテ ]


アンダンテさん>
外国からみればおかしなことに感じるのかもしれませんが、日本は島国だから、あえて追求するのでなく、折り合いを付けながらやっていくという気質はありますよね。
そんなところ含め、日本人が「あるなぁ」と思える描き方になっていて」、日本人プロデューサーが加わってる功績を感じるところでしたね。
天皇のお言葉は知ってはいたけれど、やはり感動的でしたね~。
TBありがとうございました。

2013/8/23(金) 午前 5:10[ pu-ko ]


これみたいんですがね~
麦が落ち着くころには、終わってそうだよ

2013/8/25(日) 午後 2:46[ る~ ]


る~さん>
しばらくは自由が利かないねぇ。
落ち着いたら思いっきり観ておくれ。
これはDVDでもいいと思います。

2013/8/26(月) 午後 11:03[ pu-ko ]
2016/01/15(金) 17:23:31 | URL | pu-ko #SFo5/nok[ 編集]
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