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【映画】汚(けが)れなき祈り
2015年04月08日 (水) | 編集 |


汚(けが)れなき祈り(2012)ルーマニア
原題:Dupa dealuri
監督:クリスティアン・ムンジウ
映画.comデータ

あらすじ
ドイツに出稼ぎに行っていたアリーナは、同じ孤児院で育ったヴォイキツァに会うため故郷のルーマニアに戻ってくる。しかし、修道院で暮らし、信仰に目覚めたヴォイキツァとは、以前のように心が通わなくなり、アリーナは精神のバランスを崩していく・・

トレーラー

汚れなき祈り [DVD]









感想 
4ヶ月、3週と2日』でパルムドール賞を受賞したルーマニアのクリスティアン・ムンジウの監督作品。2005年にルーマニアの修道院で実際に起きた「悪魔祓いの儀式による悲劇」を題材にしたドラマです。

『4ヶ月、3週と2日』は友人の堕胎に付き合うことになったルームメイトの一日を描くドラマでした。チャウシェスク政権下で禁じられている堕胎を闇の業者に依頼するというのは勿論のこと、秘密警察の存在など、独裁政権下の国事情が得たいの知れない緊張を生む作品でしたね。

今回舞台となる2005年はチャウシェスク政権崩壊から16年経っているわけですが、主人公たちが生まれたのはまだ前政権の時代。堕胎や離婚を制限したおかげで人口は増えたものの、貧しさや育児放棄で孤児が増えたという、思わぬ煽りを食らっていて、アリーナとヴォイキツァも孤児院の出身。そのことが、映画の悲劇に大きく関係しているんですよね。




まずはアリーナの孤独。
彼女は里子に貰われたあとドイツに働きに出るも、社会になじめず故郷に戻ってきます。
里親の元ではなく、ヴォイキツァの暮らす修道院に身を寄せるあたりにも、里親との折り合いの悪さがうかがえます。
アリーナの望みはヴォイキツァと暮らすこと。この二人がもしかして恋人同士だったのかなというムードを漂わせ何気に怪しい(笑)

ところが、ヴォイキ(・・面倒くさいので以下ヴォイちゃんで(笑))、ヴォイちゃんは神父の言葉に従い修道院に留まると言うものだから、アリーナは心を乱していくことになるんですね。
おまけに修道女たちは、宗教心のないアリーナを「邪悪なもの」扱い。

この映画が怖いのは、精神のバランスを壊したアリーナが「悪魔憑き」とみなされること。
聖教者たちはアリーナの心の平安を取り戻すために「悪魔祓い」を実施する。
そうして悲劇が起きるわけです。



ルーマニアの悪魔祓いの話など、私たちの日常からかけ離れた話に見えて、実はそうともいえない怖さがあります。
修道女たちが宗教心のないアリーナをはなからよそ者扱いし、自分たちの価値観を植えつけようとする一方で異端なアリーナを恐れ、挙句排除しようとする。身近な学校や社会でも似た様なことは起きていてるわけで、決して特別の国の特別な話ではないのです。

貧困、孤独、マインドコントロール、ヒステリー、思い込み、無責任な医者の処方、里親のシステム等、事件を取り巻く複雑な背景をきちんと盛り込んだ脚本も秀逸。
刑事事件であるため、実刑判決を受けたものもいるけれど、個人ではなく国の仕組みを憎む姿勢に作り手の思いを感じます。不穏な緊張感を持続させるのも監督らしいところですね。

アリーナを演じた片桐はいり似のクリスティナ・フルトゥルはお顔の怖さも手伝って異様さを漂わせますが、本当は心のよりどころが欲しかっただけだよねとも感じさせる繊細な演技が秀逸。
ヴォイちゃん役のコスミナ・ストラタンと一緒にカンヌ女優賞を獲得しています。




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コメント
この記事へのコメント

うんうん、この記事から見たこともないこの映画の外側まで感じちゃうと、宗教じゃなくても堅苦しい日本の社会にも当てはまりますよね。<br />人と違う自由を凄く日本人は嫌い恐れる。<br />いろんな意味で自分に引きつけて感じる事ができる映画だというのがよくわかる。<br />下の動画の犬(汗)・・・私も汚い座敷犬を「雑巾」と呼ぶんやけど(汗)、あまりにもベタなんで逆に犬が可哀想に感じたわ(笑)・・・。

2015/12/29(火) 午後 4:10[ ゾンビマン ]


この映画、ついこの間レンタルで借りてきてたんですよっ。
でも忙しくて、結局未見のまま返却してしまいました。(泣)
片桐はいり似も確認したいし、また借りてきましょうっ!

2015/12/29(火) 午後 4:10[ Kaz. ]



ゾンビマンさん>
異質なものを畏れるのは、いわば本能でもあるわけで、誰にも起こりえるというのがやはり怖いですね。
あと、宗教絡みで自分たちの考えで物事を見てしまうのも不気味でした。雑巾ww
このモップ犬動画の関連にも同じようなベタなのがいっぱい出てきました。
本当にお掃除したくなるワンちゃんだけど、そのあと洗うのが大変そうだからやっぱりモップでいいかw

2015/12/29(火) 午後 4:10[ pu-ko ]


kazさん>
えーー!なんとなんと偶然。
でも観れずじまいになっちゃったんだ。残念~。
忙しそうだよねぇ。
落ち着いたらまた借りちゃってください。
はいりさんの確認もよろしく(笑)

2015/12/29(火) 午後 4:10[ pu-ko ]


『4ヶ月、3週と2日』は観てないけど、悪魔憑きだと聞くと
なにい!となるのでこれは観たなあ。
淡々とした映画だったという印象でだいぶ忘れてますが、
悪魔祓いしていて病院沙汰になるのは覚えています・・・って、これ
ネタバレ?(笑)
思い出そうとするとなぜか出て来る映画が『レクイエム』(05)。

2015/12/29(火) 午後 4:10[ HK ]



HKさん>
私も「悪魔憑き」に興味を持って観ましたよ。
ま、思ったものとは違ったんだけど、社会批判の側面を持ってるのは面白いと思うところでした。
そう淡々としてるのも監督らしいね。
『レクイエム』は録画してるはずだけど未見。
他にも「悪魔憑き」映画録画してるなぁ。今度あわせて観てみよう。

2015/12/29(火) 午後 4:10[ pu-ko ]


すみません、この前のコメントを無記名であげてしまったようです。この前のひねくれ発言はeinhorn2233でした。どうも失礼しました。

2015/4/11(土) 午前 8:04[ einhorn2233 ]


einhornさん>
ありゃ、無記名のものは受付けつけない設定みたいで、前にいただいたというコメントは残ってないため確認できてません。
ごめんなさいね。

2015/4/11(土) 午前 11:04[ pu-ko ]


ありゃあ、無記名だと出てこないのですね。大したことは書いてないのですが、これって、新興宗教の子供が、社会で怖れられて、迫害されるのと同じだなってことを書きました。住んでる人がみんなその宗教信じていたら、それが社会常識になりますからね。異端でいるだけで、反社会的存在になるのでしょうから。

2015/12/29(火) 午後 4:10[ einhorn2233 ]


einhornさん>
再びコメントいただきありがとうございます。
考えの違うものは常識ハズレの悪としてしまうのは、形は違っても社会の中ではありえることですね。
コミュニティの中で疎外されてしまうという点ではマッツ・ミケルセン主演の『偽りなき者』を思い出します。

2015/12/29(火) 午後 4:10[ pu-ko ]



極端にいうイジメみたいな感じなのかな。どこかオドロオドロしい雰囲気、、と思いきや片桐はいりで、なぜかホッコリしちゃいました。(笑)興味あるわw

2015/4/9(木) 午前 11:04[ 翔 ]


翔さん>
悪魔祓いをしようとする修道院側は、なんとか平和を取り戻してあげたいという思いがあるわけだけど、そこに至るまでの被害者に対する偏った見方がそもそも悲劇に繋がったという気がします。不条理な話でもあるね。わはは、片桐はいりでほっこりしてもらえてよかった。
顔は怖いんだけどw

2015/12/29(火) 午後 4:10[ pu-ko ]



片桐はいりと悪魔のコラボですか。
わたし「悪魔つき」とか「悪魔憑依」とか(あ、同じか)モチーフが好きなんですよ。
好きって言い方もあれだけど(笑)
今なら病気的な捉え方ができる事も医療や科学の知識の無い時代、地方では全部「悪魔」や「魔女」や「妖怪」になっちゃったんだろうな。
コミュニティから外れる価値観や考え方に対してもそうなのかな。
怖い事だけど、身近でも差別とか村八分的扱いであるかもなって思ったら更に怖い。
そこに宗教が絡むと更にもっと怖い。
これ観たいな。

2015/4/10(金) 午前 11:04[ みーすけ ]


みーすけさん>
私も「悪魔憑き」好き(笑)
そうそう、奇病とか精神疾患なんかも昔は悪魔憑きにされちゃったんでしょうね。
ヨーロッパではエクソシストも多く行われているようだし、ルーマニアでは魔女は職業として存在するらしい(笑)
偏った価値観や宗教観を押し付け、外れたものは異常で不幸とみなされる様子には憤りを感じちゃったよ。
怖いもんですね。

2015/12/29(火) 午後 4:10[ pu-ko ]
2015/12/29(火) 01:25:53 | URL | pu-ko #SFo5/nok[ 編集]
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