映画の感想や好きな俳優の情報を発信します。新作以外はネタバレあり。
【映画】20センチュリー・ウーマン
2017年03月30日 (木) | 編集 |
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20センチュリー・ウーマン(2016)アメリカ
原題:20th Century Women
監督/脚本:マイク・ミルズ
出演:アネット・ベニングルーカス・ジェイド・ズマン/エル・ファニング/グレタ・ガーウィグ/ビリー・クラダップ
【あらすじ】
1979年のカリフォルニア州サンタバーバラ、自由奔放なシングルマザーのドロシア(アネット・ベニング)は、15歳の息子ジェイミー(ルーカス・ジェイド・ズマン)の教育に頭を悩ませ、間貸ししているアビー(グレタ・ガーウィグ)と、近所に暮らすジェイミーの幼なじみジュリー(エル・ファニング)に相談する。


【感想】
『人生はビギナーズ』で、ゲイをオープンにした実の父親の物語を描いたマイク・ミルズ監督6年ぶりの新作です。

40歳で子供を産み、夫とは早くに別れたドロシアは15歳の息子を持つシングルマザー。
息子ジェイミーを心から愛しているけれど「アイラブユー」を連発するタイプでもなく、思春期の息子の冒険にも不安な思いをぐっと飲みこんで様子を見守る、ドロシアはそんな女性。
大恐慌時代を生き抜いてきた彼女は、近所で助け合って子供を育てた自分の時代に習って、身近な2人の女性に15歳になった息子ジェイミーの教育をお願いする。

前作で実の父親を描いたように、今回もドロシアには監督のお母さんを投影
これは育ててくれた女性陣へのラブレターであり、監督自身の青春のひと時を描くヒューマンドラマです。

甘酸っぱくて胸がきゅんとする作品でした。
アネット・ベニングがとにかくいい。
自分が得られなかった幸せを息子には目いっぱい感じて欲しいと願う母親。
さっぱりしてある意味男前な彼女は、その思いをストレートに表現しないことから確執を生むこともあるけれど、次第に親子が心を通じ合わせる過程に静かに感動。くりくりヘアーのルーカス・ジェイド・ズマン君もナチュラルにジェイミーの心情を表現していて巧いです。

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唯一の大人の男性として登場するビリー・クラダップのちょっとずれてるけど誠実な感じとか
赤いヘアーでがん患者を演じるグレタ嬢の切実なパンク感とか、大人と子供のはざまで背伸びしてるエルちゃんとか
出演者のキャラを引き立てる脚本もよし。(アカデミー脚本賞ノミネート)

70年代が舞台ということで、当時流行った音楽もたくさん出てくるし、『カサブランカ』の挿入歌「Time goes by」などドロシアが好んで聴くオールディーズも多くかかって、これがまた心地よいのです。

最近、ニュースで昔は宅配の品を近所で預かり合ったりしていたけれど今はそれがなくなったと言っていた。
この映画の舞台の70年代には、日本にもまだ近所で助け合う風潮があった気がするなぁと、自分の子供時代のことも思いだされる。そんなノスタルジーを引き出してくれるのもこの映画の魅力ですね。

しみじみといい作品。これはお薦め。

お気に入り度4.5

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【映画】エル(原題)
2017年03月23日 (木) | 編集 |
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エル(原題)
(2016)フランス
原題:Elle
監督:ポール・ヴァーホ―ヴェン
脚本:
デヴィッド・バーク
出演:イザベル・ユペール/ロラン・ラフィット/アンヌ・コンシニ/シャルル・ベルリング/ヴィルジニー・エフィラ/ジョナ・ブロケ

【あらすじ】
テレビゲーム制作会社のディレクター、ミシェル(ユぺール)は自宅で覆面の男に襲われる。
警察に通報しないのは、過去を蒸し返されたくないからだ。
その後、犯人と思われる男からEmailが届き、その日の服装をどこかで観ているらしき内容に恐怖を覚えるミシェルは・・


【感想】
ポール・ヴァ―ホ―ヴェンが監督し、イザベル・ユペールがアカデミー主演女優賞にノミネートされたサスペンスドラマ。
DVDで鑑賞しました。

あらすじを見て「あれ?ヒロインはエルという名前じゃないの?」と思った人がきっといると思う。
私も完全にそう思ってました。
じゃタイトルの【Elle】は何かというと、「彼女」という意味のフランス語らしいのね。
常識?すみません。。

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冒頭から強烈な強姦シーン
男が立ち去った後、ユペール演じるミシェルは割れた食器の散乱する床を掃き、湯船につかる。
表面に赤い血が浮かんでくる描写も生々しいけれど、
両の手でそれを揺らして混ぜ、何事もなかったかのように無表情のユペールに
なぜ彼女は静かにことを受け流そうとするのか と ここまでのシークエンスだけですでに衝撃的。

ミシェルが警察に通報しないのは、実は過去に関係があり、彼女は蒸し返されたくない秘密を持っている。
ところが、犯人からと思われるEmailが身近なものの犯行を匂わせたことから、誰がやったんだということに。
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90年代ならば、ヒロインの過去を暴きつつ、犯人を捜しリベンジするエロチックスリラーになりそうだけど
本作はそれだけに終わりません。
レイプをきっかけにミシェルの中で何かが弾け、ある転機とも重なって、彼女に変化をもたらす。

時にユーモアを湛え、ヴァーホ―ヴェンらしいインモラルな部分も盛り込みつつ
湯船のシーンのように、たおやかにことを受け流し前を向くヒロインを筆頭に
女はみんなサバイバーというヒューマンドラマが意外にも爽快でした。
還暦すぎとは思えない美しい肢体にも驚くけれど
ヒロインを辛辣に、でも正直で可愛らしく演じたユペールが最高。
受賞は逃したけど、間違いなくオスカー級!!

お気に入り度4.1



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【映画】LOGAN/ローガン 
2017年03月21日 (火) | 編集 |
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 LOGAN/ローガン(2017)アメリカ
原題:Logan
監督:ジェームズ・マンゴールド
脚本:マイケル・グリーン/
スコット・フランク/ジェームズ・マンゴールド
出演:ヒュー・ジャックマン/パトリック・スチュワート/リチャード・E・グラント/ボイド・ホルブルック/スティーヴン・マーチャント/ダフネ・キーン

【あらすじ】
ミュータントがほぼ全滅した荒廃した近未来。ローガンは治癒能力を失いつつあった。


【感想】
X-menシーリーズ、ヒュー・ジャックマン主演の『ウルヴァリン』スピンオフ、シリーズ3作目。
ヒュー・ジャックマンと、パトリック・スチュアートは本作でX-menシリーズ卒業だそうで、
何か寂しい思いに駆られて劇場に足を運びました。


舞台は2029年。
ミュータントはほぼ絶滅し、X-menはコミック誌の中の昔話となりはてています。
わずかな生き残りの一人、ウルヴァリンことローガン(ヒュー・ジャックマン)はしがないリムジン運転手として細々と生計を立て、年老いたプロフェッサーX、チャールズ(パトリック・スチュワート)の面倒をみている という、マジか?な設定。
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冒頭、車内で仮眠中のローガンのリムジンのタイヤを奪おうとする強盗集団が登場し、ローガンが制裁を加えるんですが、「あれっ?」と思うのが、アクションの残酷性。ウルヴァリンの爪が敵の頭を貫通しますからね。案の定R指定。

そしてもひとつあれ?となるのが、ローガンの傷が完全に癒えないこと。
ローガンは傷ついた足をその後もずっと引きずっている。
彼は回復能力を失いつつあるんです。
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その後ローガンは、ある女性に託されたローラという少女を安全な場所に連れていく役割を担う。
チャールズとローガンとローラ。
おじいちゃんと父娘と言った風な3人の旅は、『ペーペームーン』次第に絆を深めるロードムービーのごとし。

ユーモアもありつつ、信頼を感じさせるヒュー・ジャックマンとパトリック・スチュワートのやり取りもツボで
インタビューで「エモーショナルになったシーン」を問われたヒュー・ジャックマンが、
チャールズを抱えて階段上るシーンと答えていて、私も泣けてきた。
このシーン、特に泣かせるシーンではないし、ローガンも後ろ姿しか映らないのだけど
ヒューの思いに、年老いた親を持つすべての人が共感するよね。
長いシリーズを終える感慨みたいなのもあったんだろう。
logan movie still patrick steward hugh jackman



ローガンからローラへの言葉やラストシーンなどグッとくるシーンはいくつかあるのだけど
かつて家族を失い、怒りを力に変えてきたローガンが、ローラの膝で穏やかに寝息をたてる瞬間でさえ静かな感動がある。
X--メンに通じていればいるほど泣ける、渋い大人の映画だと思うな。



ビルを壊したり、空を飛んだり、X-men本来の派手なアクションはなく
生身のアクションが売りの西部劇&ロードムービー、そして愛のお話。
私としてはそこが良かった。

かなり身体を酷使したであろうヒュー・ジャックマンには心からお疲れさまと言いたいです。
日本公開は6月1日。

お気に入り度4.3



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【映画】マン・ダウン 戦士の約束
2017年03月17日 (金) | 編集 |
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マン・ダウン 戦士の約束
(2015)アメリカ
原題:Man Down
監督:ディート・モンティエル
脚本:アダム・G・サイモン/ディート・モンティエル
出演:シャイア・ラブーフ/ジェイ・コートニー/ゲイリー・オールドマン/ケイト・マーラ/クリフトン・コリンズ・Jr/トリー・キトルズ
【あらすじ】
愛する妻ナタリーと息子ジョナサンを故郷に残し、アフガニスタンでの任務へと旅立った米軍海兵隊の兵士ガブリエル・ドラマー。やがて死と隣り合わせの戦場で過酷な体験をすることに。その後、ようやく妻子の待つ故郷へと帰還した彼だったが、そこに待っていたのは、まるで終末世界を思わせる荒れ果てた街の姿だった。状況を飲み込めぬまま、姿を消した妻と息子を求めて荒廃した街を彷徨うガブリエルだったが…。(allcinemaより)

【感想】
アダム・G・サイモンの原作の映画化。
アフガニスタンからの帰還兵の心の傷を描く戦争ドラマです。

アフガニスタンからの帰還兵、ガブリエルにシャイア・ラブーフ
過酷な任務を終え、妻子の待つ故郷に戻ったガブリエル。
しかしそこは荒れ果て、住民もいない・・。

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時間は兵役中のアフガニスタンに戻り、ガブリエルはゲイリー・オールドマン扮するカウンセラー、ペイトンと面会。
ペイトンから勤務中のあれこれを聴かれ答えていくガブリエル。

映画は時間軸を交錯させ、2人の会話を再現する形で進むんですが
時々挟まれる、ガブリエルが故郷で妻子を探すというシークエンスが謎。

帰還したらわが町は終末世界の荒廃ぶり?アメリカで?
どゆこと??
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荒廃した街はカトリーナの爪痕の残るニューオーリンズで撮影されていて、傷んだビルも倒壊した橋もすべて本物。
それぞれの時間軸の色合いも変えていたり、帰還後のガブリエルがひげもじゃ(トムハに似てる!)だったりするので、時間が交錯すること自体には混乱しなくて済む作り。
どうしても終末世界を思わせる故郷のシークエンスが謎で最初から当惑してしまうんですが、この構成だから、終盤一気にすべてが繋がる瞬間に心をえぐられるんです。

タイトルの「マン・ダウン」というのは、ガブリエルと息子が「I love you」の代わりに言おうと決めた秘密の合言葉。
ただ、息子を、愛する家族を守りたい。
そんなガブリエルの思いが非常にやるせない。
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兵士の心の闇を描く作品はいくつも作られているけれど、本作では過酷な任務の中でどれだけ人の心は傷つくのかを思い知らされる。最近は反トランプで過激な言動が話題になるシャイア君だけど、これだけ繊細な演技ができる人だったことを改めて知りました。

キーワードを入れて深く書くことも可能だけど、情報を入れずに観て楽しめたので’、あえて浅く。
わかり難いとかスローということで、低く評価されがちな本作ですが、私には心に響く傑作でした。


【映画】クリーピー 偽りの隣人
2017年03月15日 (水) | 編集 |
クリーピーポスター

 クリーピー 偽りの隣人(2016 日本

監督:黒沢清
脚本:黒沢清/池田千尋
出演:
西島秀俊/香川照之/竹内結子/東出昌大/藤野涼子/川口春奈

【あらすじ】
大学で犯罪心理学を教える元刑事の高倉は郊外の一軒家に引っ越した。ある日、刑事の野上から6年前に起きた未解決の一家失踪事件の分析を依頼され、事件の鍵を握る一家の長女・早紀から話を聞くも事件の核心になかなか迫れない。そんな折、高倉と妻の康子は、隣人・西野の不可解な言動に振り回され始め…。


【感想】
久々の邦画です。
キャッチコピーの
あの人、
お父さんじゃありません。
全然知らない人です。
が結構衝撃的な一本。

新居に引っ越して、心新たに新生活をスタートさせようと思っても
隣人が変な奴だと憂鬱になるよね。
本作の隣人、香川照之扮する西野も、登場シーンから何か変で
高倉夫妻は違和感を感じまくりです。

そんな矢先、刑事時代の後輩が高野の犯罪心理分析能力を頼って
6年前に起きた未解決事件の協力を依頼してくる。
一家失踪と思われた事件は、やがて殺人事件へと発展

さて犯人は?となるわけですが、この映画いわゆる犯人探しのミステリーとはちと趣が違う。
というのも、犯人一択! ほかに怪しい奴など出てきませんから。

クリーピー
やー、気持ち悪かったね香川さん。
『レインマン』のホフマン歩きで、陰湿かと思えば妙に愛想が良かったり
人の心はどこに忘れてしまったのかと聞きたくなるような西野はとんでもサイコ野郎

これ観て思いだしたのが『ボーグマン』です。
いつのまにかやってきて、問題がある一家に入り込んでは人を殺す、
あるいは若い子は仲間にして、新しい住処を見つけるボーグマン。
冒頭、神父らに追われる様子から、彼らは「悪魔」なのかと想像するものの、正体は結局不明。
そんなボーグマンの雰囲気がこの映画にはあると思ったな。

クリーピー2


まずは問題のある家庭を選ぶ西野の嗅覚がボーグマン。
美男美女で素敵な夫婦に見える高倉夫妻だけど、妻の異常にも気づかない仕事バカ(しかも犯罪者の心理を追求するのはもはや趣味!)の夫との生活は壊れかけていたのかもしれない。

西野家の周囲で明らかに妙な「風」が吹くのは、よからぬことの前兆にも見えるけれど
近所のおばさんに「西野は鬼」と言わせているのも確信犯的で、私には西野は人間でないという演出にも感じられました。

終盤もはやファンタジーなのもボーグマン。
夏でもないのに扇風機に当たるという演出はよかったけど、薬剤の効用はリアリティ欠いたし
ま、そういう細かいことは追求しちゃいけないんだなと、振り上げそうになった拳を納めたよ。

何はともあれ、布団圧縮袋がボーグマンらによって爆買いされないことを祈ります。


お気に入り度4.0




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