映画の感想や好きな俳優の情報を発信します。新作以外はネタバレあり。
【追悼】ジョン・ハート『10番街の殺人』
2017年01月30日 (月) | 編集 |
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 10番街の殺人(1971 イギリス
原題:10 Rillington Place
監督:リチャード・フライシャー
脚本:クライヴ・エクストン
出演:リチャード・アッテンボロー
ジョン・ハート/ジュディ・ギーソン/パット・ヘイウッド/イソベル・ブラック/ミス・ライリー

【あらすじ】
アパートの管理人クリスティ(R・アッテンボロー)は、医師と偽って女性に声をかけ、部屋に連れ込んでは次々と殺していた。ある日、上階に住む若い夫婦が妊娠をめぐって争っている事を知り、二人に中絶を持ちかける・・・

【感想】
  ジョン・ハートの追悼に出演作品をいくつか観ます。
まずは初期の出演作品から、リチャード・フライシャーが実際にあった殺人事件を題材に描く犯罪サスペンス。
若い夫婦がアパートに越してきたらば、そこの管理人がとんでも連続殺人犯だった!という怖い話。

カタカナで書くとわからないけど、ジョン・ハートのハートはHurt 痛み。
映画の中で何度も死んだハートは、『エイリアン』の死にざまに代表される身体的な「痛み」はもちろん、広い意味の「痛み」を伴う役が多い気がしますね。
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本作でジョンが演じるのは10番街にあるアパートに越してくる妻子持ちの工員ティム。
妻が新しい命を宿しても、育てる余裕も、堕胎するお金さえなく、そのことがすべての不幸を呼ぶことになるのがなんとも痛い。
結果的に妻はリチャード・アッテンボロー演じる猟奇殺人犯、クリスティの餌食になるが、ティムは「不幸な夫」だけでは済まない。クリスティに丸め込まれ、死体遺棄を手伝い、あげく殺人の罪に問われることになるのです。

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見どころとしては、クリスティを演じたアッテンボローの怪演をあげないわけにはいかないですが
不条理に巻き込まれていくジョン・ハートの浮遊感が、映画を面白くしてるとも言えます。
呆然自失の中、虚脱感、憤り、恐怖、悔恨・・色んな思いが駆け抜ける
のちの『エレファントマン』を彷彿とさせる最後のお姿も印象的でした。

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監督のリチャード・フライシャーはじめじめと生々しい殺人事件を再現するのが上手いですね。
本作の舞台は、実際の事件の現場となったアパートだというから恐ろしい。
薄暗いアパート、死体を埋めた穴を掘り返そうとする犬、泣き止まない子供 
土からのぞく足、壁の中の背中等の演出の不気味さも極まる面白い作品でした。

ジョン・ハートの若く美しいお姿を見れたのもよかったなぁ。
というか、知ってる誰かに似てると思いつつ思いだせない・・



お気に入り度3.8

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【映画】ジャッキー/ファーストレディ最後の使命
2017年01月28日 (土) | 編集 |
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 ジャッキー/ファーストレディ最後の使命(2016 アメリカ/チリ
原題:Jackie
監督:パブロ・ラライン
脚本:ノア・オッペンハイム
出演:
ナタリー・ポートマンピーター・サースガード/グレタ・ガーウィグ/リチャード・E・グラント/ビリー・クラダップ/ジョン・ハート

【あらすじ】
1963年11月22日、テキサス州ダラスを訪れたケネディ大統領が、パレード中に何者かに射撃される。妻ジャクリーンは悲しむ間も与えられず、葬儀の取り仕切りや副大統領の大統領就任式への出席等対応に追われ・・


【感想】
  ケネディ元大統領夫人ジャクリーン・ケネディの視点で大統領暗殺を描く伝記ドラマ。
ナタリー・ポートマンがアカデミー賞主演女優賞にノミネートされています。

ケネディが銃弾に倒れた直後、ジャクリーン夫人が後ろに飛んだ頭蓋骨のかけらに手を伸ばそうと、リムジンのトランクに這い上がる映像は、世界中で何度も再生されたであろう衝撃的瞬間です。
夫人がどんな思いでその悲劇に対峙したのかに興味もあり、劇場に足を運びました。


もともとはダーレン・アロノフスキー監督、レイチェル・ワイズ主演で企画が進んでいたらしいですが、破局によりレイチェルが降板。製作に回ったアロノフスキーの代わりにチリのパブロ・ララインがメガホンを取り、ナタリー・ポートマンを主演に迎えて制作にこぎつけました。映画は暗殺直後のジャクリーヌ夫人(ポートマン)が、ファーストレディとしての最後の使命を果たす姿を描いていきます。


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大統領の仕事は待ったなしなので、目の前で夫を殺された2時間後には血の付いたままのスーツで次期大統領の宣誓式に臨むジャッキー。すぐにホワイトハウスからの退去も余儀なくされるわけで・・
大統領夫人の肩書も失い、自身の存在価値さえなくことになるなんて残酷ですねぇ。

彼女は大統領の記憶を最高のものとして後世に残したいと、暗殺から一週間後には雑誌ジャーナリスト(ビリー・クラダップ)を招きます。クラダップのインタビューに答える形でランダムなイベントがフラッシュバックで再現される中、ジャッキーの発言に段々と違和感を感じる部分が出てくるんですよね。ずっと煙草を吸ってるのに「タバコは吸わない」と言ってみたり。
言ったばかりの言葉をなかったことのように否定するシーンでは会場中が「へっ?!」でした。

ジャッキーはすでにPTSDに近い状況だったのか。
その辺が少し曖昧で、ジャッキーが変な人に思えてしまった。

終盤ジャッキーの孤独な悲しみと『キャメロン』の歌詞が重なり、その心情も理解できるのだけど、それまでにすでに心が離れてしまっていたのは残念。これレイチェル・ワイズがやった方が似合ってたかもなぁ。顔もレイチェルの方が似てますよね。

左は本物のジャクリーヌ夫人。 ポートマン(右)はファッションも再現

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大統領暗殺の瞬間をジャッキーの視点で見せる映像は新鮮で、本作のハイライトでした。
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終盤、神父役でジョン・ハートが登場します。
随分と歳をとったという印象で、一瞬彼とわからなかったんですが、まさかその日に訃報に触れることになるとは。
わずかな登場時間でも、含蓄のあるお言葉で映画にしっとりした余韻を残すのが流石でした。
心からご冥福をお祈りします。

追悼は次記事で。




お気に入り度3.4
・ジャッキーの喪失と困惑も最後には理解できるけれど、いい映画を観たという満足感を得られなかった。
・ポートマンの喋りに方に違和感。ジャッキーに似せたのだろうけど生理的になんか嫌w
などの理由で低めです。

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【映画】デンゼル・ワシントン監督&主演『フェンス』
2017年01月26日 (木) | 編集 |
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フェンス(2016 アメリカ
原題:Fences
監督:デンゼル・ワシントン
脚本:オーガスト・ウィルソン
出演:デンゼル・ワシントンヴィオラ・デイヴィス /スティーヴン・マッキンレー・ヘンダーソン/ジョバン・アデポ /ラッセル・ホーンズビー/ミケルティ・ウィリアムソン

【あらすじ】
1950年代のピッツバーグ。ごみ収集員として家族を養うトロイだったが・・

【感想】
  アカデミー賞のノミネーションが発表になりましたね。
今日は作品賞主演男優賞デンゼル・ワシントン)、助演女優賞ヴィオラ・デイヴィス)、脚色賞にノミネートされた『フェンス』を観てきました。オーガスト・ウィルソンの有名な戯曲をデンゼル・ワシントン監督で映画化した家族ドラマです。
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舞台は50年代のピッツバーグ。デンゼル・ワシントン演じるトロイは黒人リーグで活躍したプロ野球の選手でしたが、学もなく、引退後はごみ収集員として妻子を養う日々。昔の栄光を誇りに思いつつも、社会的立場の弱い自分に憤りを感じています。ある日妻ローズから塀を立てることを依頼されたトロイはフットボールに没頭し家の手伝いを怠りがちな息子とともに作業しますが、息子との確執は深くなっていきます。トロイは息子が自分を超えるのではないかと嫉妬していて、また、プロの世界に入れば黒人差別に遭うことも危惧してるんですね。
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タイトルの『フェンス』はおそらくトロイの心のバリアを表すもの。
差別社会で押しつぶされながら生きるトロイは、自分の弱さを見せたくないから家族に威圧的にふるまう。自分を塀の中の王にすることで自尊心と劣等感のバランスに折り合いをつけているんでしょう。

先日トランプがメキシコとの国境に塀を建設する大統領令にサインしましたけど、この映画を観てなんとなく共通点を感じてしまった。トランプは移民を排除すればアメリカが良い国になると言っているけど本当にそうか?
シャットアウトしたつもりで、実は悪は壁の内側にあって、じわじわと人の心を浸食していく気がしてならないんですよね。
相手を理解することを拒み壁を作れば摩擦が生じる。
トロイが自分を遮断することで、家族の溝が深まっていくように。

ただし、映画はマイナスな面だけを描いて終わるわけではありません。
それをどう打破すべきかを示唆しているのが素晴らしいんです。
息子との喧嘩の中で、トロイが息子に突き飛ばされて塀にぶつかるシーンは象徴的でしょう。
トロイは壁を壊さなければならない。それはおそらくローズも同じ。

やがて外からやってきた、家族を脅かす存在に思えたものを受け入れることで、ローズは変わっていく。
最後はその存在(ネタバレしたくないのでこんな表現になりますが)が懸け橋となって、家族の確執を溶かしていく様子に感動します。これは家族の再生の物語。

ただ元が舞台劇ということで会話が多いんですね。
しかもデンゼルは驚くほどにセリフが多いんですが、強い南部訛りのため私には聞き取りにくく困りました。

50年代ほどではないにしろ、いまだに黒人差別がはびこるアメリカ。
昨年の「オスカー・ソー・ホワイト」も記憶に新しいところだけど、デンゼルが今これを映画化したのはそれに対抗する意味があったのかなと勝手に思ったり。

差別を叫ぶ前に、自分たちの渾身の演技で実力を示せばいい!!
デンゼルとヴィオラの演技にはそんな気概を感じます。
ちなみに二人はリバイバル版の舞台劇でも同じ役を演じ、揃ってトニー賞の主演男優賞、女優賞をとってるので、うまさは折り紙付き。
最後、スピリチュアルな意味合いで使われる「道をつける(あける)」という言葉にも、作り手の思いを感じます。
幻想的な演出にもしみじみ感動。今こそ観るべき映画ですね。

登場人物は誰も力強いパフォーマンス。映像もよかった。





お気に入り度★★★★



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【映画】マギーズ・プラン 幸せのあとしまつ
2017年01月24日 (火) | 編集 |
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 マギーズ・プラン 幸せのあとしまつ(2015 アメリカ
原題:Maggie's Plan
監督/脚本:レベッカ・ミラー
出演:グレタ・ガーウィグイーサン・ホークジュリアン・ムーア/ビル・ヘイダー/マーヤ・ルドルフ/トラヴィス・フィメル
【あらすじ】
ニューヨークの大学で働くマギーは、妻子持ちの文化人類学者ジョンと恋に落ちる。仕事ひとすじで家庭を顧みない妻ジョーゼットに愛想を尽かしたジョンは離婚を決意し、マギーと再婚。数年後、ジョンとマギーは子どもにも恵まれ幸せな毎日を送っているかに見えたが、小説家になるため仕事を辞めたジョンとの生活にマギーは不安を感じていた。

【感想】
 ニューヨークを舞台に3人の男女の奇妙な関係を描くハートフルコメディです。

グレタ・ガーウィグ演じるマギーは、数学に秀でた男性の精子の提供を受け、シングルマザーになることを計画中のニューヨーカー。偶然知り合った小説家志望で妻子持ちのジョン(イーサン・ホーク)と小説を通じて親しくなり、やがて求婚され結婚するマギー。数年後、マギーには可愛い女の子が生まれています。

ところがジョンと幸せな結婚生活を送っているはずのマギーの心境は複雑。
元妻との間にできた子供たちの世話もマギーに任せ小説に没頭するジョンとの暮らしに不安を感じ、マギーは、まだジョンに思いを残す元妻ジョゼットにジョンを返すことを計画するのです。

グレタ・ガーウィグは実はたまたま観た出演作2本があまりピンとこなくて、これまで興味を持てない女優の位置づけでしたが、本作を見てイメージが変わりました。今やメグ・ライアンに代わるニューヨークの似合うラブコメ女優とされるグレタ。
決して垢ぬけてはいないし、メグ・ライアンみたいにキュートというのでもないけれど、不器用でも前向きに、自分らしく生きるヒロインがハマります。
ストーリーだけ読んだらまるで共感できそうにないマギーというキャラも、グレタだと嫌味がなくて自然に受け入れられるんですよね。

マギーの両親のエピソードに触れているから、マギーがシングルマザーを目指していたことも、結婚生活で孤独を感じることには耐えられないことも理解できる。マギーの部屋のインテリアや友人との会話からも、マギーの飾りっ気のない正直さがうかがえる演出は、脚本も手掛ける女性監督レベッカ・ミラーのうまさでしょう。
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ジョンにイーサン・ホークをキャスティングしてるのも絶妙ですよね。
そもそも好きな小説を書くことが最優先で、それを支えてもらいたいだけのジョンこそがトラブルの元凶なわけだけど、そんな優柔不断な役も大人子供が板についたイーサンだと憎めない。得な男だよねぇ。

『アリスのままで』とはまた違った種類のハイソな知的さを漂わせつつも、可愛い大人の女の情念と懐の深さを演じてみせるジョゼットにジュリアン・ムーア。お団子ヘアにモフモフファッション、フレンチ訛りもかわゆす。
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ビル・ヘイダーは相変わらず信頼できるバイプレイヤーだし、ガイ役のトラヴィス・フィメルもいい。

ラストシーンから想像するに、おそらくマギーはジョンに気兼ねなくオリジナルのプランに戻るのでしょう。
パパ付きのプランBもいいのでは?など想像を膨らませてみるのも楽しい。

複雑で滑稽で、でもそれぞれの方法で幸せを探そうとするニューヨーカーの生きざまを小粋なラブコメにした本作
ウディ・アレンほどくどくなく、終始ニマニマになる面白さがありました。これ好き。
でも邦題の副題「幸せのあとしまつ」っていうのはなんか違う気がするなぁ。



ちなみに監督のお父さんは劇作家で『クルーシブル』などの脚本も手掛けるアーサー・ミラー。
夫はなんとダニエル・デイ=ルイスだそうです。





お気に入り度★★★★


今年からお気に入り度で好き加減を(★5つで満点)記録に残すことにしました。
世間の評価とはかけ離れるものもあるかと思いますが、ご了承ください。


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【映画】沈黙 ーサイレンスー
2017年01月22日 (日) | 編集 |
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 沈黙 ーサイレンスー(2016 アメリカ
原題:Silence
監督:マーティン・スコセッシ
脚本:ジェイ・コックス/マーティン・スコセッシ
出演:アンドリュー・ガーフィールドアダム・ドライバー/浅野忠信/キアラン・ハインズ/リーアム・ニーソン/窪塚洋介/イッセー尾形/塚本晋也

【あらすじ】
17世紀、キリスト教が禁じられた日本で棄教したとされる師の真相を確かめるため、若き宣教師のロドリゴとガルペは日本にやってくる。


【感想】
 ようやく今年の劇場1本目
先日帰省の際、原作をゲットしたので読んでからと思っていたんですが、昼間の上映最終日ということで、慌てて観てきました。

隠れキリシタンが迫害を受けた江戸時代初期の日本を舞台に、信仰と向き合う若きポルトガル人宣教師の姿を描くマーティン・スコセッシ作品です。

「踏み絵」や「隠れキリシタン」というのは日本史の授業でも教わったことですけど
幕府による迫害の実態についてはイメージできなくて、ちゃんと習ったんだっけ?

本作は残忍な迫害シーンもたっぷり。信仰に篤そうなお年寄り夫婦とかに交じっての鑑賞だもので、キリスト教徒でもない日本人の私としては、ちょっと肩身の狭いものがありました。
『レイルウェイ 運命の旅路』の時の感覚にも近いもの。

もちろん段々には、これは「真の信仰とは」を問う映画だとわかって来るので、日本人としての肩身の狭さは薄れてはきます。
幕府に迫害されながらも、懸命に信仰を全うしようとする姿に心を打たれるのもあります。
出てくる隠れキリシタンたちは外観はうす汚れてはいても、心の清純さを感じさせるんですよね。
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そんな中、目を引くのが窪塚洋介演じるキチジロー。
インタビューでは自らを「踏み絵マスター」と称してましたがw他の信者が踏み絵を頑なに拒む中、彼は何度も踏み絵をする(笑)
でも軟弱なのに、それでも神にすがることをやめない=信仰を捨てないところに柳のような強さがあるんですね。キチジローが登場すると会場に笑いが起きたりして、裏切者でもどこか憎めない存在となっているのは窪塚のうまさかな。救いを求めようとするキチジローの存在が宣教師の信仰心を保たせることにもなっていたことを思うと、彼は完全にキーパーソンでした。

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個人的にツボだったのはイッセー尾形ですね。
一つ一つの動作に計算しつくされた可笑しみや、時には怖さがあって、和製クリストフ・ヴァルツとお呼びしたい。
塚本晋也もよかったんですが、私には英語がわかり難かったのが残念。
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ガーフィールド君ももちろん熱演で、宣教師の葛藤は観ていて辛くなるほど伝わりました。
神父さんと思しき方々の感想をyoutubeで聴いてみると、宣教師ロドリゴに対しはっきり「裏切者」と言い放つ人もいて、聖職者でも理解しがたいものがあるようす。スピリチュアルな表現をしてる部分は賛否の別れるところかも。
それでも背徳者の立場に身を置きながらも、誰かの命を救うことに生涯をかけたロドリゴの生きざまに心惹かれずにはいられません。

波の音を聞きながら崇高な気分になる、静かだけど力強い映画でした。

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