映画の感想や好きな俳優の情報を発信します。新作以外はネタバレあり。
【映画】ギリシャに消えた嘘
2015年03月30日 (月) | 編集 |




ギリシャに消えた嘘(2014)イギリス・フランス・アメリカ
原題:The Two Faces of January
日本公開:4/11/2015
映画.comデータ


あらすじ

1962年、ギリシャのアテネでツアーガイドをしているアメリカ人青年ライダル(オスカー・アイザック)は、パルテノン神殿で優雅なアメリカ人紳士チェスター(ヴィゴ・モーテンセン)とその妻コレット(キルスティン・ダンスト)と出会う。夫妻のガイドを務め食事を共にした夜、忘れ物を届けにチェスターのホテルを訪ねたライダルは、思わぬ事件に巻き込まれていく・・


感想
『太陽がいっぱい』のパトリシア・ハイスミスの原作『殺意の迷宮』を『ドライヴ』の脚本家ホセイン・アミニが映画化したミステリーです。


ツアーガイドが偶然知り合った旅行客のトラブルに遭遇し翻弄される・・
と書くと、ありがちな巻き込まれ型スリラーのようですが、これそんな単純じゃない。
というのもライダルはその場から手を引くチャンスが幾度もあったのにそうせず、
あえて夫妻に関わっていくんですよね。

そもそも、ライダルがチェスターを気に留めるのは、夫妻が金持ちオーラを放っていたのと、チェスターが死んだ父親に似てると感じたからですが、チェスターは洗練されたセレブのように見えて、実は裏の顔も持っている。
ライダルは直感的にチェスターの二面性を含め、彼に父の面影を見たのかもしれず
その出会いには偶然を超えた因縁のようなものを感じます。
チェスターはやがて妻とライダルの仲を疑い、三人の関係が緊張する中
アテネからクレタ島などに移動しながらの逃避行を余儀なくされる彼らの運命は・・・





脚本も務めるホセ・アミニは本作が初監督。
『ドライヴ』で見初めたオスカー・アイザックに出演を依頼し
ヴィゴが加わることで20年来の夢が実現することになったそうです。

ヴィゴ、オスカー・アイザックキルスティン・ダンストによるノワールなスリラーは
ヒッチコック作品のようだとも言われ、クラシックで正統派の赴き。
60年代ファッションに身を包んだキルスティンも悪くないんですが・・
最初コレット役には別の女優をキャスティングしていたらく、キルスティンを使うにあたり、キャラクター設定を少し変えたんだそう。個人的にはこれは裏目に出たかなぁと思います。
というのも、キルスティン演じるコレットはイノセントでライダルが彼女を愛してしてもおかしくない存在となっていて、それでは映画の焦点がぼやけると思うんですよね。
ライダルが夫妻に近づいたのは、あくまで父親の面影を持つチェスターに興味を持ったからで、言い方は悪いけれど、コレットはあくまでチェスターを翻弄する道具という扱いの方が、スッキリする気がします。ま でも終盤に向け、テーマははっきりしてくるのでいいかな。

パトリシア・スミスの原作は犯罪者のたどり着く先には容赦ないけれど、犯罪を犯すに至る理由や心の弱さをきちんと描いているところに優しさがあって好き。


原題のJanuaryとは、ローマ神話のヤヌスのこと。
二つの顔を持つこの神の姿に、相反する方向を向いても互いに惹かれあうチェスターとライデルを重ね合わせたのだそうです。
ヤヌスは出入り口と扉の神。色んな意味で映画を表現しています。


日本公開は4/11





【映画】『ザ・ステイトメント(原題)』マイケル・ケインは哀しき逃亡者
2015年03月27日 (金) | 編集 |

南米の強豪チームが活躍するサッカーのワールドカップの中継を、モサドがナチ残党の捜索に利用していると言うのが話題になったことがあります。
『ブラジルから来た少年』などでも描かれているように、ナチスドイツ崩落後、ナチス幹部の一部は南米に逃亡。そのため、アルゼンチン側にいながらドイツの勝利に歓喜する90歳超えの老人は、ナチス残党の可能性があるとしてスクリーンをチェックしているというんですな。
そういう人がスタジアムに出向くかというのははなはだ疑問で、信憑性には乏しいところですけど・・・

前置きが長くなりましたが、今日紹介するのは、ちょいと変則なナチ残党もの。
フランスのヴィシー政権下でナチスドイツに協力し戦犯となった元フランス人オフィサーの逃亡生活を描く作品。ブライアン・ムーアの原作小説『逃走』をノーマン・ジュイソンが映画化した社会派スリラーです。




ザ・ステイトメント(原題)(2003)カナダ、フランス、イギリス
原題:The Statement
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冒頭、モノクロ画面で描かれるのは1944年フランスで起きたユダヤ人迫害のシーン。
その後映画は現代にシフトし、カフェで封筒を受け取る一人の老人を映し出します。老人は冒頭のシーンで指揮をとったフランス人警察ピエール・ブロッサード(マイケル・ケイン)。
7人のユダヤ人を殺した罪で死刑判決を受けるも逃走し、40年以上に渡って逃亡生活を送るブロッサードですが、ここに来て彼の周囲に不穏な空気が立ち込めます。
カフェを出たブロッサードは見知らぬ男に追われ、殺されそうになるところを咄嗟に射殺。
男の車からは「ブロッサードをユダヤ人殺害の罪で処刑する」との声明文(statement)が見つかります。ブロッサードの命を狙う組織とは?彼は逃亡生活を続けることができるのか? 


この映画、面白いのが、ブロッサードの暗殺を目論む組織自体をすぐに明かさず、ミステリー仕立てでその実態に迫っていくところ。それにブロッサードの逃亡を密かに助ける組織が複雑に絡み合う点が不思議な緊張感を生みます。

実はこれ2003年の作品ながら、日本では未公開でソフトにもなってないので、半分明かしますが、ブロッサードを匿い、経済的に支える組織のひとつがカトリック教会なんですね。その表向きの理由はブロッサードが信仰に篤いクリスチャンであることを挙げているのだけど、ブロッサードの台詞として無宗教の共産主義を非難していたりと、ナチスとヴァチカンの関係を垣間見せていて、奥が深い。ブロッサードは罪の意識に苛まれてはいるものの、懺悔し、神に赦されればいいと思っていて、それもある意味キリスト教批判に取れます。



マイケル・ケインは 心臓に問題を抱えながら逃亡を余儀なくされる哀れな老人ながら、危険が迫れば簡単に人を殺し、時にはキレて妻を脅してみたりと、身勝手で冷徹な面を併せ持つモンスターを好演しています。自分は教会の集会にもいけないと嘆くブロッサードに「あなたは隣に黒人が膝まづくのが許せないだけでしょ」と、妻の言葉でさりげなく彼のレイシストな一面を明かす脚本もよし。


共演者はティルダ・スウィントンシャーロット・ランプリングキアラン・ハインズアラン・ベイツなど実力者ぞろい。





両方の鼻から煙草の煙をプハーーッと吐き出す男前の裁判官ティルダと大佐(ジェレミー・ノーサム)が協力してブロッサードを追いつめるところは探偵ものの趣。しかしなんで裁判官と大佐が?と、フランスの司法とかの仕組みがよく解らない私には戸惑う点も多かったんですよね。最後もイマイチすっきりしなかったし。

マイケル・ケインは熱演ながら、ご自身が「過去の出演作で一番嫌い」と言うくらい彼らしくない役どころだったのは残念でした。余裕と気品とユーモアのないケイン様なんてクリープの入ってない・・古いからやめとこw
そもそも、監督はフランス人のナチ公になんで彼を使ったんでしょ って、そこか(笑)


【映画】天国の門
2015年03月25日 (水) | 編集 |



天国の門(1981)アメリカ
原題:Heaven's Gate
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(あらすじ)
ハーバード大学で青春時代をともに過ごしたエイブリルとアービン。20年後、保安官となったエイブリルは、ワイオミング州で牧場を営むアービンと再会を果たす。牧場主リーダーが牛泥棒根絶を名目に移民たちの殺害を計画していると知ったエイブリルは想いを寄せる娼婦館のエラにワイオミングを去るよう告げるが・・


『ディア・ハンター』でアカデミー賞監督となったマイケル・チミノ監督が次に撮った本作は、19世紀末のワイオミングで農場主と東欧からの移民らの間で実際に起きた争いを基にした一大叙事詩です。
その時代にタイムスリップした感覚に陥る重厚な映像と、壮絶なバトルシーンなどスケールの大きい作品に仕上がってはいるものの興行は振るわず、巨額な制作費が老舗映画会社を倒産に追い込んだのは有名な話。関わったものにとっては地獄の門となってしまったわけですねぇ。

80億も使う前に誰かお財布の紐を締める者はいなかったのかと思うところだけど
そもそも、なぜこれがそんなに受け入れられなかったんだろうか。

一つにはアメリカの暗部をほじくる作品のテーマ自体が受け入れられなかったというのはあるでしょうね。西部劇は廃れ、アメリカンニューシネマの時代も終わった80年代、観客はもっとポップなものを求めていた。あるいは、3時間越えで制作されたものを監督の監修なしに149分にカットして上映されたらしいので、チグハグな部分が出てもおかしくないでしょう。

今回私は2012年に監督自身が監修しデジタル修復された229分の完全版をテレビで観たんですが、すでに失ったフィルムは取り戻せなかったようで、時間が長く無駄が多い割りに、肝心なところが説明不足なんですよね。

以下、内容に触れているので未見の方はご注意願いたいんですが・・



個人的に気になるのが保安官のジム・エイブリル(クリス・クリストファーソン)と、娼婦エラ(イザベル・ユペール)と、ネイト・チャンピオン(クリストファー・ウォーケン)の関係性と人物像。
この三人は三角関係にあるのだけど、エラはチャンピオンよりもエイブリルを想っているのは、チャンピオンからはお金を取るという彼女なりのけじめをつけていることから判ります。
でもエイブリルとエラとのなり染めも描かれず、新任して来た保安官がエラとどの位長い付き合いなのかもわからない。エイブリルは殺害リストに挙がっているエラにワイオミングを去るよう説得するものの、一緒に行こうとは決して言わない。そもそも彼の部屋には女性と写った写真が飾られていて、しかもラストシーンから推察すれば、エイブリルは最初から結婚していた可能性さえあるんですよね(汗)




まぁ、そんなだから一途にエラを想うウォーケン演じるネイト・チャンピオンが一層切なく見えるのですけどね。あばら家を精いっぱいに整え、エラを迎える準備万端のウォーケンが可愛かったなぁ。
ネイトの愛に気づくユペールの表情もいい。でも彼女の背景が説明されてない故に、そこに留まろうとするエラの入植者としての意地とかを全て理解するのは難しかった。



ま、そんなこんなで気になるところはあるものの、映画的な魅力もたくさんあって
特にタイトルと同じ「ヘヴンズ・ゲート」という社交場で入植者たちがバンドの演奏をバックにローラースケートを楽しむシーンは躍動感あってお気に入り。
終盤のバトルシーンも生身の迫力があり、三角関係のほろ苦さも相まって作品としてはとても好き。儚き時代の愛と友情と悲しみを描く壮大な物語を楽しみました。

豪華客船から海を見つめるエイブリルのアンニュイな表情を映して終わるラストシーンは
冷酷に入植者を排除したアメリカへの揶揄を込めたのかな。
豊かな時代を迎えようと心は晴れるはずないよな。って




【映画】ホーンズ 容疑者と告白の角
2015年03月23日 (月) | 編集 |


ホーンズ 容疑者と告白の角(2013)アメリカ/カナダ
原題:Horns
日本公開:2015/5/09
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ストーリー
最愛の恋人メリンを殺されたばかりか、その殺しの容疑をかけられてしまった青年イグは、絶望的な日々を過ごしていた。そんなある朝、目を覚ますとイグの頭には、人に真実を打ち明けさせる「告白の力」をもった不思議な角が生えていた。



スティーブン・キングの息子ジョー・ヒルによる小説「ホーンズ 角」を『ヒルズ・ハブ・アイズ』の気鋭アレクサンドル・アジャが監督、ダニエル・ラドクリフが主演を務めたたホラーファンタジーの一本です。


冒頭、ラドクリフ君演じるイグと恋人メリン(ジュノー・テンプル)のラブラブぶりを見せたかと思うと画面は一転。眠りから覚めたイグを待っているのはテレビや雑誌のレポーターたち。
どうやら、イグは恋人殺しの罪に問われているらしいことがわかります。
愛し合う二人に何があったの??
いや、それよりも驚くのは、イグの頭に牛のような角が生えていること!


いやぁ、へんてこな映画だったわ。

まず角ね。
角は罪を象徴する内面の表れかと思いきや、どうやら他人にも見えるらしい。
しかもこの角には真実を告白させる力があるらしく、角を目にした面々はラドクリフ君に向かって何やら語り始めるんですね。
しかもみんなやたらエロい(笑)

時間を遡って、イグとメリンや友人たちとの少年時代が描かれ
いつしか映画はメリン殺しの真相を追うミステリーへとシフトしていきます。

それ自体は凄く面白いのだけど、ラドクリフ君はどんどんとんでもな姿になっていくんですわ(汗)
あ、『シックス・センス』のハーレイ君みたいな経時的な変化を言ってるんじゃなくて、ファンタジーとしてね。


レストランの名前がイブでリンゴのロゴがあったり、やたら蛇が出てきたり・・フム
ファンタジーに込められた意味合いをうまく説明できないけど、イグにとってメリンは子供の頃からひたすら愛してきた初恋の相手。アダムとイブの二人だけの世界を壊されたら悪魔にもなるだろう と納得。ラドクリフ君はどんな役にも嵌るよね。


終わってみればピュアなロマンスにジンとするところもあって嫌いじゃなかったんだけど、途中のエロとかいるんかな(笑)
まぁ、監督が『ピラニア3D』のアジャさんだからね。
ジャンルテンコ盛、やり過ぎファンタジーのちょっと変わった映画でした。

エログロありなので、よい子は見ちゃだめよ。


★★★★




【映画】ジェサベル
2015年03月20日 (金) | 編集 |


ジェサベル(2014)アメリカ
原題:Jessabelle
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新生活を始めようとしていた矢先、事故で恋人とお腹の子を失ったジェサベルは、自身も車椅子生活を余儀なくされ、父が暮らす古い一軒家に身を寄せる。
亡き母の部屋を使うことになる彼女はベッドの下から偶然母の遺したビデオレターを発見。
在りし日の母の姿を目にし喜ぶのもつかの間、ビデオの中で母は不吉な予言をしており、ジェサベルの周辺で不可思議な事件が起きはじめる・・


『プリデスティネーション』で注目したサラ・スヌーク主演のホラーということで観てみました。

父は車椅子のジェシー(ジェサベル)に「一階にあるベッドルームはここだけだから」と、亡き母の部屋を使わせてくれるんですが、何故か部屋のドアは家具で塞がれてるんですよね(汗)

嫌な予感は的中し、部屋では奇妙な現象が起きはじめる。
最初は夢なのかなと思わせ、徐々に現実味を帯びてくる演出がなかなかのもの。
引っ越した家で怪奇現象に遭遇するという類のホラーはたくさんあるけど、本作は怪奇現象の謎をジェシーの出生の秘密を絡ませ明かしていくところが面白い。
土地にまつわる風習などはアメリカ的ながら、これ結構な因縁話でして、トーンとしては金田一もののような日本のミステリーホラーに通じる趣がありました。

期待のサラ・スヌークは『プリデスティネーション』ほどのインパクトはないものの、表情豊かに恐怖を表現しています。ラストシーンの一言とあの表情はさすがと思うところ。
ビデオの中で母が言う「死は新しい世界への入り口」というのはかなりの伏線でした。


動きの取れないジェシーを高校時代のボーイフレンドが助け、ロマンス絡みで支えていくんですが、親身にジェシーに尽くす彼が背負うことになる運命はお気の毒だったな。


監督は『ソウ6』『ソウ ザ・ファイナル 3D』のケヴィン・グルタート。
怖がらせるだけに終わらないホラーで心霊ものとみるとなかなか面白い。
ただオカルトとの絡みが明瞭じゃないのが残念かな。
地元住人の役割自体もやや曖昧なのは勿体無い気がします。


日本公開中・・かな?