映画の感想や好きな俳優の情報を発信します。新作以外はネタバレあり。
【映画】『フィルス』ジェームズ・マカヴォイにやられた
2014年09月30日 (火) | 編集 |



フィルス(2013)アメリカ
原題:Filth
監督:ジョン・S・ベアード
出演:ジェームズ・マカヴォイ/ジェイミー・ベル/イモージェン・プーツ/ジョアンヌ・フロガット/ジム・ブロードベント
 
クリスマスで街中が賑わい始めたある晩、日本人留学生殺人事件が発生し、スコットランド警察の極悪刑事ブルース・ロバートソン(ジェームズ・マカヴォイ)が捜査の指揮を任される。この事件で手柄をあげ出世したいと目論むブルースだったが・・・。


 ジェームズ・マカヴォイの極悪刑事振りが話題になった一本。
『フランク』から英国俳優繋がりで観てみたらば、なんと本当に『フランク』繋がりだった。




いやいや、マカヴォイもやるもんですな。
文芸作品の似合う綺麗なお兄ちゃんが、いつのまにか汚れ役どんと来い
今回は故郷スコットランドを舞台に、賄賂に売春なんのその
子供のいたずらレベルの裏工作で仲間を出し抜くゲス野郎を嬉々として演じております。
原作者はトレイン・スポッティングのアーヴィン・ウェルシュとあって
本作でもブルースはコカインまみれのヤク中
フラフラで吐きまくる姿に「こんなマカヴォイは嫌だ!」と思ったファンも多いことでしょう。




でも彼のトランスが普通のそれと違うと感じ始める頃には、胸が疼き始めるのね。
ブラックコメディな作りにも関わらず、堕落の影に何があるのかが気になって仕方ないのは
マカヴォイの魅力と演技力あってこそでしょう。
愛しそうに指輪にキスするマカヴォイ。悲しみをたたえた青い瞳にもやられた。

共演者にジェイミー・ベルエディ・マーサンなど
同僚たちは皆面白いし、ブルースの姑息な陰謀を描くために必要だったんでしょうけど
それぞれのキャラを深めるまでは至らなかったという印象。時間が足りないよね。
その中で印象的なのはエディ・マーサン。




凶暴性を秘めた変態系といい人の両方を演じ分ける彼は今回はホンワカ系ですが・・・
もうね~、ブルースの唯一の友人でもある彼には、最後にある期待をかけたものだから 
このおっとりキャラが凄く残念だったのですよ。
ホンワカしてるバヤイか~??!って(涙)

監督は本作が長編二本目のジョン・S・ベアード
初めてマカヴォイと会った日、歩いてくる姿は15歳くらいに見えたマカヴォイが、
ミーティングで役について説明を始めた10分後には、中年の刑事の顔に変わっていたんだそうです。
マカヴォイ伝説として語り継がれそうだけど、それだけ監督自身による脚本も明確だったってことでしょうね


ちなみに
劇中、ブルースがテレビでフランク・サイドボトムのトークショーを見ながら
同僚の奥さんにフランクの声真似をして電話するシーンがあります。
今年は何故か『フランク』がひのめを見る年だったのね。
ファスベンダーの『フランク』とはテーマ的にも通じるものがありました。

      

【映画】被り物ファスベンダー 『FRANK -フランク-』 I love you all !
2014年09月26日 (金) | 編集 |


FRANK -フランク-(2014)イギリス/アイルランド
原題:FRANK
監督:レニー・アブラハムソン
出演:マイケル・ファスベンダー/ドーナル・グリーソン/マギー・ギレンホール/
日本公開:2014/10/4
 
マイケル・ファスベンダーがはりぼての被り物姿で演じていて話題の『フランク』
公開中のミニシアター系の映画館が少し遠いので、DVDを待つつもりでしたが
アマゾンのインスタントビデオにあったのでレンタルして観たよ。

イギリスのコメディアン故クリス・シーヴィーがネタとして生んだ張りぼて頭の“フランク・サイドボトム”というキャラにインスパイアされた作品です。
てっきりアニメとの合体みたいに、主人公の容姿をデフォルメしたファンタジー映画なのかと思ったら違った。
ファスベンダー演じる主人公のフランクは被り物をしたまま日常生活を送るインディーズ系のミュージシャンで、しかも誰も彼の素顔を知らないという設定だったのね(汗)

監督はアイルランドの俊英レニー・アブラハムソン
映画はドーナル・グリーソン演じる新メンバージョンの目を通してフランクとバンドメンバーたちの音楽活動を追いながら、フランクはなぜ被り物を取らないかに迫ります。



張りぼて姿でフランクを演じているのはマイケル・ファスベンダー
首の傾げ方や動き、間の取り方なんかも絶妙でとにかく可笑しい。
実は、主役がこれだからと、オフビートなコメディと思い込んで観始め
実際、奇人変人の集まりみたいなバンドメンバーのオフビートなやりとりを爆笑しながら観てたんですが
次第にこれは実にシリアスな映画なんだと気づくことになりました。
というのも登場人物たちは心の病を抱えていて、その苦しみが切々と胸に迫ってくるから。

インタビューによるとファスベンダーはフランクのキャラ作りにダニエル・ジョンストンなんかを意識したらしい。
私は存じ上げないのでドキュメンタリーを観てみようと思ってるんですが
才気と狂気は表裏一体という天才たちはきっと少なくないのでしょう。
天才に限らず、いまどきは精神を病む人が多くなっています。
一旦心が壊れてしまうと、元に戻るのは簡単ではなく、抜け出そうともがくほどに後退してしまうこともあるということ。映画はそんな現実を正直に描きつつ、周囲のものの理解にもヒントを与えています。



バンドメンバー、クララを演じるマギー・ギレンホール他キャストの演技も秀逸。
おそらく一般人の目線の役割を果たすのはグリーソン演じるジョンでしょう。
フランクを理解し心を同じにすることは難しいかもしれないけれど
でも少なくともその痛みを知り、彼の世界を尊重することはできる。
それでいいのかな と思います。

バンドの奏でる音楽は好みが分かれそうですがw
ファスベンダーが歌やピアノを聴かせてくれるんだからファンにはたまらないはず。
ラストシーンには泣かされましたよ。
繊細で優しくて うん、これ好き。
I love you all !




【映画】『es [エス]』 実験怖い
2014年09月25日 (木) | 編集 |



chacoさんお待たせしました!
es [エス](2001)ドイツ
原題:Das Experiment
監督:オリヴァー・ヒルシュビーゲル
出演:モーリッツ・ブライブトロイ/ クリスチャン・ベルケル/オリヴァー・ストコウスキ/ ユストゥス・フォン・ドナーニー/ アントニオ・モノー・Jr/ エトガー・ゼルゲ/ マレン・エッゲルト
 大学の心理学の実験の被験者募集の広告を目にしたタクシー運転手のタレクは、これに参加することにした。被験者は無作為に「看守役」と「囚人役」に分けられ、学内に設けられた模擬刑務所に収容された。





 1971年にスタンフォード大学で実際に行われ、2週間の予定が6日で中止になった心理学実験を基にした作品だそうです。
テレビで放送されたのでやっと観ました。これは面白かった。

 看守か囚人 与えられた「役」を2週間演じるだけの割のいいアルバイト 
誰もがそう割り切り、気軽に始めたはずの実験ですが
これがいつしかとてつもなく危険なものになっていくんですねぇ。こっわーー。




 面白いのは「看守役」が早々に威圧的になっていくこと。
まぁそうだろうと想像はできるのだけど、ややこしいのがコンプレックスを持つ人たちだ。
普段鬱々と負の感情を抱え込むしかない彼らが、「看守」という役を与えられると力を利用して自己防衛を果たそうとする。しかもこれが段々エスカレートしていくからたちが悪い。

エルビスの物まねをライフワークとする被験者の自己顕示欲が「強い看守」を演じることに執着させることにも なるほど。周囲の目が人の行動を左右するというのもよくわかる。

暴力に発展しそうになっても大学側はギリギリまで黙認
これが被験者に勝手にルールを解釈させることになるわけで
わずか数日で制御不能な状況に陥る様子に、文明人のモラルがこんなに脆いものかと身震いする思いでした。緊張の高めかたが巧い。
しかし事態の悪化が予想される後半戦で、実験の場を若造一人に任せるというのは
映画上のご都合主義でしょ。
スタンフォード大学はこの映画にどういう反応をしたんでしょうね。気になる。

 やめればいいのに看守を煽りまくるタレクには「お前が~」と思わないでもないけれど
モーリッツ・ブライブトロイってなんか憎めない(笑)



数日前に出会ったドラのことが頭から離れずフラッシュバック

軍人カッコえーとか、おばさんキターとかエンタメ的にも楽しめました。
なんちゅう締めやw


【映画】 ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー
2014年09月23日 (火) | 編集 |


ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー(2014)アメリカ
原題:Guardians of the Galaxy
監督:ジェームズ・ガン
出演:クリス・プラット/ ゾーイ・サルダナ/ デイヴ・バウティスタ/ ジャイモン・フンスー/ ジョン・C・ライリー/ グレン・クローズ/ベニチオ・デル・トロ/ リー・ペイス ロナン/ マイケル・ルーカー
日本公開中
 
幼くして地球から誘拐されたピーター・クイルは、今や宇宙をまたにかけるプレイボーイのトレジャーハンター。ある日、クイルは強大な力を秘めたパワー・ストーン“オーブ”を手に入れるが、そのせいで銀河の支配を目論む闇の存在と、銀河の秩序を司るザンダー星の壮大な戦いに巻き込まれることに・・



  ひょんなことから銀河の平和を守るために力を合わせることになる はみ出し者たちの活躍を描くマーヴェル原作のSFアクション大作です。

 評判良さそうなので観てきました。公開から3週間経ってることもあり、案の定貸切り(汗)
会場の反応を楽しめない貸切はいつもだとかなり残念なんですが、今回は正解。
泣いて笑って、音楽に合わせ椅子まで揺らして ノリノリで楽しんじゃいました(笑)

 スター・ロードことピーター・クイルを演じるのはクリス・プラット
子供のときに宇宙人に誘拐され、以来宇宙で暮らす彼は軽いノリのトレジャーハンターに成長。
アダプトされたときに持っていた母の形見のカセットテープで聴く70年代のポップスは地球とクイルを結ぶ全てであり彼を形付けているものなんですね。
音楽も勿論ですが、ウォークマンというのがまた懐かしくて私ら世代にはツボ。
冒頭の悲しい別れから一転、宇宙で繰り広げられる痛快アクションと音楽とクイルのダンスに
一気に引き込まれましたから。

 映画はその後、絶大なパワーを秘めたオーブという石をめぐり、宇宙制覇を狙う者たちが暗躍することになり、クイルは刑務所で出会ったならずものたちと宇宙を守るために戦います。



 脱獄という目的のために手を組んだ寄せ集め集団が次第に正義に目覚め、
反撥しあいながらやがて友情を築いていくのが、ベタながら心地よく
しかもメンバーそれぞれに仕込まれたドラマに泣かされたりしてね。
勿論それ以上に笑える部分が大きくて、期待以上に心を動かされたわけです。

 クイルもかなりいいですが、モフモフのアライグマなのにデンジャラスなロケット(声:ブラッドリー・クーパー)とその相棒(持ち物?)の木 グルートのコンビが最高。
エンドクレジットでグルートの声がヴィン・ディーゼルだと知って吹き出したし。
「アイ・アム・グルート」しか言わないのにつぶらな瞳と優しさで観客の心を掴むグルート
映画観たあと、木を植えた人も多いのでは?(笑)
最後はめちゃ幸せな気持ちになるしね。
今年の忘年会の出し物はだるまさんが転んだ的なあれで決まりでしょ。フィギュア欲しいわぁ。

 人間やるより宇宙人役のほうがはるかに嵌るゾーイ・サルダナ
意外な技を繰り出すマイケル・ルーカー等共演者も豪華。
欲を言えば悪役にもう少しユーモアを滲ませて欲しかったかも。




 ちなみにクリス・プラットって『her/世界でひとつの彼女』でホアキンの仕事仲間を演じたズボンの位置が高すぎる彼ですよね? あのポチャ男がマーヴェルの主役張るなんて誰が想像したでしょう。
ジェームズ・ガン監督がこんなSF大作を撮るとも想像してなかったですが
ま でも、『スーパー!』でもトンでもSFに移行して驚かされたし、素地はあったってことかな。
すでに続編の製作も決まっているとのこと。
さらに楽しいスペースオペラで楽しませて欲しいですね。


      

【映画】『ボーグマン』は神か悪魔か:”シッチェス映画祭
2014年09月21日 (日) | 編集 |



シッチェス映画祭特集 9本目
最後はファンタスティックセレクションからの一本で
昨年のシッチェス映画祭で最優秀作品賞に選ばれた『ボーグマン』です。
ボーグマン(2013)オランダ/ベルギー/デンマーク
原題:Borgman
監督:アレックス・ファン・ヴァーメルダム
出演:ヤン・ベイヴート/ ハデヴィック・ミニス /イェロン・ペルセヴァル/ エヴァ・ファンデ・ウェイデーヴェン
日本公開:2014/10月
 
森の中に潜んでいたボーグマンが、武装した男たちに追われ森の近くの高級住宅地に逃げ込んだ。ある裕福な家庭のドアを叩き風呂を使わせて欲しいと頼むボーグマンだったが・・



この監督さんのことは全然知らなかったんですが、オランダの鬼才とされる方みたい。

冒頭、数人の男がライフルを携え森に入ったかと思うと、地面の下に掘られた穴を見つけ叩き壊しにかかる。
間一髪逃げ出す浮浪者風の男が、その後民家に現れるんですが・・
この冒頭のシークエンスが衝撃的なのが、地面の下に人が棲んでいるというのは勿論のこと、ライフルを構えた男たちの中に神父さんがいることなんですね。はじめは何が起こっているのかちんぷんかんぷん。

しかしながら、映画が終わる頃にはその理由もなんとなく理解できてしまう。
それだけのことが起きてしまうんですねぇ。




タイトルのボーグマンと言うのはアングロサクソン系のよくある苗字のようですが
本作では浮浪者風の男(ヤン・ベイヴート)やその仲間を総称してそう呼んでいる様子。
ボーグマンが目をつけた立派な邸宅には、夫婦と三人の子供が暮らしていて、若いベビーシッターも抱えるいかにも裕福そうな家庭。
しかし夫が浮浪者を暴力的に追い出したことが、妻マリーナ( ハデヴィック・ミニス )の夫リチャード(イェロン・ペルセヴァル)に対する漠然とした不信感に火をつけることになり、ボーグマンは巧みにそのひび割れに入り込むわけです。
ボーグマンは子供たちをマインドコントロールし、いつしか仲間を呼び、邪魔者を排除していきます。
唐突に起こる暴力シーンに思わず「ヒっ!」と声を上げてしまうこともしばしば。
しかしそのビジュアルがシュールなところもあり不謹慎ながらつい笑ってしまったり・・(汗)

ブルジョアのエゴをシュールに笑う作風というとブニュエルを思い出すわけだけど、本作はそんな可愛らしいものじゃない。『ザ・チャイルド』や『光る眼』を髣髴とさせるものもあり、この映画で言わんとすることはなんだろうと頭を抱えてしまった。



インタビューを読んでみると、監督はこの映画にメッセージを持ち込んでおらず
どう捉えるのかは観る者にゆだねるとのこと。
フム。私としてはボーグマンは悪魔か天使、どちらだろうと考えながら答えが見つかりません。
終わってみればブラックなSFホラーといったところでしょうか。
ちなみに監督さん自身もボーグマンの仲間として登場してました。

映画的には先が読めない展開に引き込まれるしシュールな映像にも釘付けになるけれど、
あまりの不条理さに「好き」とは言いづらい作品です。
勿論「好き」と映画の評価は別物だと思っているので、こういう作品がグランプリを獲ることに異存はないし、この異様な世界観を体験して欲しいとは思いますけどね。


シッチェス映画祭特集、本当は10本までいきたかったんですが、劇場で観た作品の紹介もしたいのでこで終わります。お付き合いいただきありがとうございました。
10月に公開される6本もどれもそれぞれに違った味のある秀作揃いでしたよ。