映画の感想や好きな俳優の情報を発信します。新作以外はネタバレあり。
【映画】『フランキー&アリス』:私の中の3人の私
2014年08月30日 (土) | 編集 |
フランキー&アリス(2010)カナダ
原題:Frankie & Alice
監督:ジェフリー・サックス
出演:ハル・ベリー/ステラン・スカルスガルド/フィリシア・ラシャド/チャンドラ・ウィルソン
日本公開:2014/9/20
1970年代初期のアメリカ。
ゴーゴーダンサーのフランキー(ハル・ベリー)は時折自分のしたことを忘れている時間があることに気づいていた。
ある日異常行動から警察に連行されたフランキーは、精神科医オズワルド(ステラン・スカルスガルド)により
複数の別人格を有する解離性同一性障害であると診断される。
 
 

もう一人の自分シリーズが続きます。
前回の『嗤う分身』が「分身」の正体を明確にしないまま、
自己と相反するもう一人の自分とのせめぎ合いをファンタジックに描いていたのに対し、
本作では「解離性同一性障害」という疾患に対峙する主人公を真っ向から描いていまして、
しかもこれ実話だそうです。
 
解離性同一性障害についてwikiで調べてみると
解離性障害は本人にとって堪えられない状況を、離人症のようにそれは自分のことではないと感じたり、
あるいは解離性健忘などのようにその時期の感情や記憶を切り離して、
それを思い出せなくすることで心のダメージを回避しようとすることから引き起こされる障害であるが、
解離性同一性障害は、その中でもっとも重く、切り離した感情や記憶が成長して、別の人格となって表に現れるもの 
と説明されています。
 
なるほど、映画はまさにそれ。
フランキーが過去の記憶を部分的になくしているのもダメージ回避なんですね。
おかげで医師は原因追求に苦労することになるけれど
その分、トラウマに迫る過程が謎含みのミステリーとなるため面白いんですよ。

別人格の一つに「差別主義的な白人女性」というのが存在するのも
フランキーの複雑な心の反映と思えば納得。
それが出てくる瞬間はゾクっとしますけどね(笑)

複数の人格を演じ分けたハル・ベリーはさすがの演技で2010年度のゴールデングローブ女優賞にノミネート
ただ少女の演技にはちょっと無理があったかな。
三つ巴で人格が現れるところは、研ナオコと谷村新二の物まねの入れ替わりみたいで
ちょっと笑ってしまったのはココだけの話ということでw

 

終盤は伏線が繋がっていく様子に満足し、ステランさん演じる精神科医とフランキーの信頼関係にもほっこり。黒
人差別が根底にある悲しい話ですが、終わってみればフランキーの再生に新しい時代を感じることができる作品。

解離性同一性障害についての認識も深まりました。

【映画】『嗤う分身』 最後に嗤うのはイケてる自分かそれとも・・
2014年08月28日 (木) | 編集 |



ドストエフスキー原作『分身』の映画化。
もう一人の自分の出現 によって全てを狂わされていく男の顛末を描く心理スリラーです。
サブマリン』のイギリスの新鋭リチャード・アイオアディがメガホンをとりました。
嗤う分身(2013)イギリス
原題:The Double
監督:リチャード・アイオアディ
出演:ジェシー・アイゼンバーグミア・ワシコウスカ/ウォーレス・ショーン/ヤスミン・ペイジ
日本公開:2014/11/8
 
ある日、空いてる電車で「その席は自分の席だ」と席を奪われた主人公サイモン(ジェシー・アイゼンバーグ)。電車から降りる際にドアに鞄を挟まれ、身分証明書をなくした彼は、職場に入るのでさえ困難を要した。7年も働き、顔見知りのはずのセキュリティ・ガードはサイモンを知らないと言うのだ。
その日から彼の周囲で不可思議なことが起こり始める・・・

 サエない僕の目の前に、 イケてる“僕”が現れた。
恋も仕事も存在さえも、“僕”が僕のすべてを奪っていく――。





『他人の顔』や『複製された男』などアイデンティティものが続きますが、マイブームにつきお許しください。

主人公のサイモンは優しいのだけど引っ込み思案で、自分の言いたいことも口にできない冴えない男で
職場からは認められず、ダイナーのウエイトレスにも軽くあしらわれる始末。
施設に入所中のゾンビみたいな母親から、どこにいても電話がかかったりしてね。
この施設がこれまた不思議空間なんですが。彼を取り巻く空間はストレスがいっぱいです。
そんなサイモンの前に現れるジェームズは姿かたちはそっくりなのに性格は間逆。
スマートかつ狡猾に立ち振る舞い、女性にもモテるカリスマティックなジェームズは、やがてサイモンの暮らしを侵食していくんですね。
ジェームズは何者か・・ というのは観て感じていただくとして
ジェシー・アイゼンバーグは、服装も髪型も同じサイモンとジェームズを、容易に判別できるほどに演じ分けていてお見事。




うじうじ男のとことん暗い不条理モノかと思いきや、ブラックユーモアを感じるところもあり。
向かいのアパートに住むハンナ(ミア・ワコースカ)に惹かれていくサイモンの
孤独な者同士が共鳴しあうラブストーリーとしてもちょっと素敵。
ラストはトリッキーですが、伏線を効かせ最後に嗤うのは誰かを見せてくれます。

設定のファンタジー性はそれとして受け止め、クレバーなストーリーを楽しむべし。
世の中には自分そっくりのダブルがいて、人生は椅子取りゲームなのかもしれません。
『イレイザーヘッド』のようなリンチの世界にも似たデストピアな空間に
「ブルーシャトー」や「上を向いて歩こう」などの日本歌謡が妙にはまる。
時代も国籍も不明なレトロな世界観がちょっと癖になりますよ。これ好きだわ。

第26回(2013年)東京国際映画祭コンペティション参加作品

     

【映画】『オン・ザ・ハイウェイ その夜、86分』丸ごとトム・ハーディ!
2014年08月25日 (月) | 編集 |
 

車の中だけでストーリーが展開するというトム・ハーディ主演の話題作です。
オン・ザ・ハイウェイ その夜、86分(2013)イギリス
原題:Locke 監督:スティーヴン・ナイト
出演:トム・ハーディ
日本公開:未定
建設会社のサイト・マネージャー、アイヴァン・ロック(トム・ハーディ)は、大事業のコンクリート搬入を翌朝に控えたある日、夜のハイウェイに車を走らせる。不倫相手の出産に駆けつけるためだ。車中のアイヴァンは仕事仲間に電話し、自分に代わって搬入をマネージするよう依頼するが・・
 
いや、これは面白かった。会社の将来のかかった大事業と不倫相手の出産。
アイヴァンはロンドンの病院に向かう道すがら、さまざまな問題に対峙します。
 
自分の決断を信じ、誠実かつ冷静にことをやり遂げようとするアイヴァンですが、そう簡単にはいかない。
問題にぶち当たりイラついたり、絶望の底に突き落とされたり
映画と同時進行で展開する物語をハラハラと固唾を呑んで見守ることになりました。
 
監督兼脚本を手がけるのは『イースタン・プロミス』の脚本家として知られるスティーヴン・ナイト
ドライブ中の車内という限られた空間だけで、アイヴァンの人柄や仕事ぶり家族の様子や人生観まで想像させつつ、諸問題をクリアしてみせる脚本が見事ですね。

画面に登場するのはハーディ一人のみ。
そもそも信頼される仕事人であり、よき家庭人であるアイヴァンが
大仕事を人に任せるというリスクを負ってまで不倫相手の出産に駆けつけるのは
彼の生い立ちに起因するある確執が関係してくるんですね。
が、詳しいことは言わないでおきますが・・
 
 

そんな主人公の複雑な心境を運転しながら繊細に演じたハーディはやっぱり凄い。
普段は寡黙な役が多いハーディがずっと喋りっぱなしで、喜怒哀楽を表現してくれるんだから
ファンにはもうたまりません。

電話してないときでさえ自分自身に向かって喋ってますからね(笑)
シェークスピアの舞台劇の世界です。

しかしながら映画はハーディの個人プレーにせず、
アイヴァンをサポートする周囲の者の成長まで描いているところが素晴らしく、
周囲の成長にアイヴァンが高揚するところが爽やかで感動的でした。

緊張の中、時々ユーモアも交える見せ方もうまい。
映画の終わる頃、アイヴァンにどんな変化が見えるかは観てのお楽しみ 
ということで。 秀作です。

【映画】 ジゴロ・イン・ニューヨーク
2014年08月22日 (金) | 編集 |



ジゴロ・イン・ニューヨーク (2013)アメリカ
原題:Fading Gigolo
監督:ジョン・タートゥーロ
出演:ジョン・タートゥーロ/ウディ・アレン/ヴァネッサ・パラディ/リーヴ・シュレイバー/シャロン・ストーン/ソフィア・ベルガラ 
レア本の本屋を閉めることになり困ったマーレー(ウディ・アレン
彼は友人のフィオランテ(ジョン・タートゥーロ)を誘い、金持ちの女性相手にいかがわしいビジネスを始めようともちかける。
「自分が?うそでしょ。」
気乗りのしないフィオランテだったが、お金は欲しい。
同意の上、女性の相手をしたらば、あらま意外や評判いいではないですか!!


ジョン・ターツゥーロが監督&脚本をてがけ、しかもジゴロを演じると言うことでとっても楽しみにしてた本作。
評判どおり面白い作品でした。





まずタートゥーロ・ジゴロがいいよね。
もっと決め決めに演じてるのかと思いきや、意外や静かで自然
それでもそこはかとなく気品が漂い、こんなタートルネックでダンスしても何故か素敵
女性を理解し優しい雰囲気まで醸し出すものだから、シャロン・ストーン姐さんもチップをはずみます。
「俄か」を悟られまいとする受け答えの「間」も絶妙で
低いテンションをキープしながらもコメディ演技がしっかり出来てるタートゥーロは流石でしたね。
思いつきが大当たりでホクホクと調子に乗るポン引きウディも「らしく」て可笑しいし
凸凹コンビに始終ニマニマしちゃいました。

そもそも、タートゥーロがこの映画を撮ろうと思いついたのは
ウディと同年代の友達が本屋を畳むことになり、これから生活どうするんだろうと思ったことがきっかけだとか。
ポン引きのアイディアをウディに話すととても気に入り、ウディは草案の段階から映画に関わってるそうで
どうりでタートゥーロ映画でありながらウディ・アレンテイストですよね。


女性との性を考えるときに、宗教が大事な要素になるとタートゥーロ。
その感覚は日本人の私たちにはピンと来ないところだけど
本作では、ユダヤ教指導者の未亡人との仄かな恋が描かれ
戒律を守りながら孤独と対峙するヒロインをヴァネッサ・パラディが演じています。

原題のFading Gigoloというのは、気乗りのしないという意味のreluctantでも良かったけれど
色あせた写真をイメージしてあえてFadingという言葉を用いたのだとか。
本屋が廃れていくように、時代と共に物事は変わっていく
けれども変わらないのは人との関係 ということで
ふたりの友情は、きっとこれからも続いていくんだろうなと思わせるエンディングが心地よいですね。
ちなみに変わらないものの代表がユダヤ人のコミュニティということでもあるようで
変わりゆくものとの対比が描かれた形でしょうかね。判りにくいけど。

花を扱うタートゥーロの手際のよさや粋な音楽も居心地よく
お洒落で優しく、洗練された大人のコメディを楽しみました。




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【映画】『ニンフォマニアック Vol.2』
2014年08月20日 (水) | 編集 |



ニンフォマニアック Vol.2(2013)デンマーク/ドイツ/フランス/ベルギー/イギリス
原題:Nymphomaniac: Vol.  II 
監督:ラース・フォン・トリアー
出演:シャルロット・ゲンズブール/ ステラン・スカルスガルド/ ステイシー・マーティン/ シャイア・ラブーフ/ ジェイミー・ベル/ クリスチャン・スレイター/ ウィレム・デフォー  
 日本公開:2014/11/01
 
後半を続けて観ました。
ヒロイン、ジョーを途中からシャルロット・ゲンズブールが演じ、完全にセックス・アディクトと化したジョーの性遍歴が回想の中描かれます。
ジェローム(シャイア・ラブーフ)を愛しているのに身体の火照りを抑えきれず
家庭を犠牲にしてまで性に走るジョー。
彼女の中で罪悪感は日増しに強くなり、ジョーは罪深い自分と対峙することになるんですね。



SMや同性愛が描かれたり、局所があからさまに映し出され、映画としてはポルノの域
しかし主軸となるのはセックス・アディクトのため社会に適応できず、抑うつの中生きるジョーの苦悩です。
ジョーはスカルスガルド演じるセリグマンに全てを話すうちに心の安らぎを獲得する。
ま、最後の最後に思いがけない展開が待ち構えているのだけど、そこは置いておいて・・
この映画で言いたいのは
常識や規制など社会のシステムに適応しようとする義務感が、人の心を蝕むこともある ということかな。
自らも鬱を患うトリアー監督ならではの切り口だと思います。

過激な描写もあるものの、それらを演じるのは全てポルノ俳優たち。
そこここにユーモアも散りばめられているため観やすいですね。
SM大王を演じたジェイミー・ベルなど役者陣の普段と違う顔が拝めるのも面白さのうち。

鬱の本質を描くために映画にポルノを持ち込むことに賛否はあるでしょうが
行き着く先は愛 と思うと、これもありかもです。


タイトルの「O」の文字が()となってるのがウケる
何を意味するか・・判りますよね。
()バージョンのポスターも(笑)




出演者はこちら
はい、みなさんご一緒に