映画の感想や好きな俳優の情報を発信します。新作以外はネタバレあり。
蝿男の恐怖
2011年10月29日 (土) | 編集 |

 
ハロウィンホラー特集 今日もホラーカウントダウンから
ジョルジュ・ランジュランの小説『蝿』を映画化した『蝿男の恐怖

 
蝿男の恐怖(1958) アメリカ
監督:カート・ニューマン
出演:アル・ヘディソン/パトリシア・オーウェンズ/ヴィンセント・プライス/ハーバート・マーシャル/キャスリーン・フリーマン/ベティ・ルー・ガーソン/チャールズ・ハーバート
 
ご存知デヴィッド・クローネンバーグの『ザ・フライ』のオリジナルですね。
 
 
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冒頭、とある工場の圧搾機に上半身つぶされた男の死体が発見される。
その場から立ち去ったのが物理科学者アンドレの妻エレーヌ(パトリシア・オーウェンズ)。
その後、エレーヌは義理の兄フランソワ(ヴィンセント・プライス)に「夫を殺した」と電話。
アンドレとエレーヌは人も羨む仲の良い夫婦なのに、なぜ??
 
クローネンバーグ版は、徐々に蝿男に変わっていく主人公の姿をみせながら
主人公と恋人の苦悩を描くというものだったけど
オリジナルの本作は、いきなり主人公アンドレの死が描かれ
その真相を追うという、ミステリー仕立てになってるんですね。
そこから時間軸が戻され、エレーヌの証言によりすべてが明かされるつくり。
 
物質転送のアクシデントにより・・というプロットはクローネバーグ版と同じなので
展開は予想がつくというものだけど
蝿男になってしまった主人公の焦りと悲しみ、科学者としても苦しみが痛々しく、こちらも名作。
最後には、夫殺しの罪に問われる妻エレーヌの扱いに触れ
哲学的なアプローチで終わるところも斬新でした。
 
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時代が時代なので、蝿男に変わったアル・へディソンの蝿のマスク姿にはちょっと笑います(笑)
仮面ライダーか!?w
大半は布を被って姿をさらないようにしたのは正解ですね。
見えないからこそ、想像力を刺激されるし、怖さも募るというもの。
勿論その姿を妻にさらしたくないという主人公の心情も痛いほど伝わりました。
 
蝿の羽音が耳に障るオープニングも、これから起きる事件を暗示していて効果的。
羽音も右のスピーカーから左に移動するため、目の前の蝿を私自身も追ってしまう錯覚に囚われましたね。
アンドレがあの蝿の口でミルクを吸い上げる音にもゾッとしたし
この時代にしては音響も凝ってたんじゃないかな。
 
夫の変化に驚愕しつつも、愛する夫を理解する妻の苦悩の描き方もよし。
まぁ、ちょっとその後の能天気すぎるところはご愛嬌だけどw
 
日本では劇場未公開だったようだけど、とっても面白い作品でした。


コールド・ソウルズ/COLD SOULS(原題)
2011年10月20日 (木) | 編集 |

cinema de しりとり 36回目 【こ】

『プレスリーvsミイラ男』から繋がって、今日は「こ」で始まる映画
ポール・ジアマッティが本人役を演じるSFコメディ『コールド・ソウルズ/COLD SOULS』です。
コールド・ソウルズ/COLD SOULS(原題)(2009) アメリカ/フランス
監督/脚本:Sophie Barthes
出演:ポール・ジアマッティ/デヴィッド・ストラザーン/Dina Korzun/エミリー・ワトソン
    
俳優ポール・ジアマッティポール・ジアマッティ)はチェーホフの戯曲『ワーニャ叔父さん』の
役の解釈に悩み、神経衰弱に陥っていたところ、
「魂を抜いて負担を軽減する」というハイテク会社の存在を知り、門をたたく。
半信半疑ながらも、この苦しみから逃れられるならと施術を受けるジアマッティだったが、
魂の抜けた彼の演技は散々で・・・。
 
女性監督Sophie Barthesの長編デビュー作です。
そもそものアイディアは監督が見た夢からきてるそうで
夢の中に出てきたウディ・アレンが、機械にかけられ魂を抜き取られる。
その抜き取られた魂がヒヨコマメの形で、ウディは「どうしてこんな魂で40もの映画を撮れるんだ!」とおかんむりw

監督はその夢を書きとめていたらしいのですね。
 
 
ウディ・アレンと出会うのは難しいかなと考えた監督は、結局ジアマッティに置き換え脚本を書き
酒の力を借り、ジアマッティと妻に直接交渉し作られたのが本作。
ジアマッティに断られたら、映画にするのは諦めようと思っていたとか。

「魂を保管する」というハイテク会社の所長をデヴィッド・ストラザーンが演じていて
ジアマッティとの掛け合いが最高.。
眉唾もののストラザーンとマシーンに笑うしかありませんw
 
さて、魂を抜きたい人がいれば、魂を欲しがる人もいるというわけで
ロシアでは、魂を売買する組織が存在してるという、
あり得そうなお話になっていくのもシニカル。(ちなみにロケはきっちりロシアで!)
ジアマッティの魂が、ひょんなことからロシアに運ばれてしまったことから
魂の運び人であるロシア人女性ニーナ(Dina Korzun)を巻き込んだ
文字通り魂探しの旅が始まるというわけです。
 
ポール・ジアマッティはというと、役作りに悩み神経衰弱に陥っているとき
魂を95%抜いたとき、ロシア人の詩人の魂を借りているwときと、
それぞれの魂の状態で劇中劇を演じているわけで、上手い役者じゃないと、こんなことできませんって。
 
映画の中で、魂は形も色も人それぞれと説明されていて
疲れた人の魂ってグレイとか黒っぽかったりするらしい。
大事に扱わないと乾いてしまうみたいだし
自分の魂はどんなかしら?って、気になりますよね。
 
人の魂が着脱可能!そんな新鮮なプロットで笑わせてくれながら
最後には魂を取り戻すことができない人間の哀しみが涙を誘います。
今まで意識したことのないに思いを馳せ、その重みを痛感する作品でした。
 
日本公開の予定はまだ聞かないけど、せめてDVDにしておくれ~。
 
 
 

  

グループ
2011年10月17日 (月) | 編集 |
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シドニー・ルメットの『グループ』を観ました。
グループ(1966) アメリカ
監督:シドニー・ルメット 
出演:キャンディス・バーゲン/ジョーン・ハケット/シャーリー・ナイト/ラリー・ハグマン
エリザベス・ハートマン/ジョアンナ・ペティット/メアリー=ロビン・レッド/ジェシカ・ウォルター
キャスリーン・ウィドーズ/ハル・ホルブルック
 
大学を卒業した8人の女性たちが辿る、7年の日々を描くヒューマンドラマです。
 
1933年、名門女子大ヴァッサー大学を卒業した仲良しグループの8人は
新しい人生をスタートさせる。
出版社に勤めるもの、さらなる勉強のため欧州に向かうもの、病院に勤めるものなど進路はさまざま。
 
ジョアンナ・ペティット演じるケイは、卒業後すぐに劇作家のハロルド(ラリー・ハグマン)と結婚。
しかしハロルドは酒におぼれ、浮気をするようになり、ケイは心を痛めることに・・・。

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不倫、結婚、家族の病気、育児など、
それぞれの問題に立ち向かいながら生きる女性たちの姿を描くものだけど
シドニー・ルメットは感心するくらい、女性の気持ちを丁寧に描いてますね。
 
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まず、メンバーはそれぞれ才媛で、上流階級の出であることもポイントで
ケイは夫に疲れているのに、それでも夫の才能を信じ、期待をかける。
それは自分の選んだ人生が失敗だったことを認めたくないからなんですね。
ケイの過度の期待に、夫は重圧を感じ身を落としていくわけで
こうなったら、夫も妻も不幸。こんな悲惨な関係はないです。
 
あと、印象的だったのは、育児ノイローゼに陥るプリス(エリザベス・ハートマン)の描き方。
2人目の子供を出産したプリスが、子供の夜泣きに憔悴しきっていると、
夫が「4時間ごとでお腹をすかせて泣くのなら、3時間ごとに授乳しろ」と言うんですね(笑)
誰もが経験することを経験してるだけだと。
夫の理解のない育児ってそりゃ大変だろうな。でもこの時代は我慢し、従うしかなかったんでしょう。
 
結婚に対する男女の考えの相違など、普遍的な問題としても興味深いものがありました。
 
でもね、8人を把握するのは大変で、結局2度続けて見ることになりました。
正直影の薄いメンバーもいるわけで、せめて5人にして欲しかったなというのが正直なところ。
 
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本作はキャンディス・バーゲンのデビュー作でもあり、allcinemaさんの作品紹介では
トップに名前が掲載されてるけど、彼女は渡欧組で、実はそんなに登場シーンも多くないのね。
ただし、終盤であることをカミングアウト。この時代には珍しい設定ですね。
見返してみて、最初は見落としていた微妙な表情を確認できました。
 
希望に胸を膨らませ、大学を卒業して7年
卒業式で華やかに流れていた女性コーラスは、
メンバーの人生の節目節目での流され、時に切ない響きを添えます。
ラストシーンで、卒業式のスピーチがフラッシュバックされたときには、さすがに泣けたなぁ。
 
最後は、第二次大戦突入前とあって、決して明るい話にはならないのだけど
女性たちの7年間の心の機微を丁寧に描いた秀作です。
多くの人に観て欲しいけど、日本ではDVDになってないのねぇ。
VHSも廃盤で入手困難だとか。(-ω-;)ウーン


アラン・ドロンのウエスタン『テキサス』
2011年10月14日 (金) | 編集 |
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テキサス(1966) アメリカ
監督:マイケル・ゴードン
出演:アラン・ドロン/ディーン・マーティン/ローズマリー・フォーサイス/ジョーイ・ビショップ
   ティナ・マルカン/ピーター・グレイヴス/マイケル・アンサラ/リンデン・チャイルズ
 
ルイジアナの大邸宅ではスペイン公爵ドン・アンドレア(実際にはもっと長い名前w)と
ネイラー家の美しい娘フィービーの結婚式が盛大に行われようとしていた。
ところがひょんなことから、ドンは殺人の罪をきせられ、お尋ね者の身に。
フィービーと後で落ち合うことを約束し、追っ手を逃れテキサスへと向かうドンだったが・・。
 

  
 
アラン・ドロンがアメリカに渡り、西部劇に初挑戦した作品ですね。
監督のマイケル・ゴードンはなんと ジョセフ・ゴードン=レヴィットのおじいちゃんなんだって 
本作は、どうやらあまり売れなかったようだけど
テキサスの歴史絡みでもあり、私にはツボな面白さでした。
 

まず、時代背景は19848年でしょうね。
テキサスで落ち合うことを約束したドン(ドロン)が、「テキサスのどこで?」と聴くと
「州でもないから、そんなに広くはないでしょ」とフィービー(ローズマリー・フォーサイス)。
テキサス大きいでっせーと突っ込みながら、まだ共和国の時代なんだと興味深し。
しかも終わりまじかに、州に統合されたという知らせに町が沸くんですよね。
あぁ、だからタイトルが『テキサス』なんだぁと、ちょい感無量。
(原題は『TEXAS ACROSS THE RIVER』(川の向こうのテキサス)
 
穴を掘ったら石油が噴出すシーンもあり
でも誰もまだ石油の価値を知らず、迷惑な「毒」扱い(笑)
ラストシーンの石油をめぐるインディアンとの会話に爆笑し、大満足で観終えました。
 

アラン・ドロンはというと、貴族らしい大らかさがありちょっぴり脳天気。
でも夢もあって、誠実で純粋な役柄なのね。
馬も乗りこなし、インディアン娘と恋をする。闘牛まで披露するしねw
こんな陽気なドロンさまを見るの初めてだったのもあって、意外な魅力発見でした。
 
テキシャン(テキサス人)の牛飼いのサム(ディーン・マーティン)とのカルチャーギャップも面白い。
テキサスの歴史を盛り込んだゆるい笑いにほっこりできる楽しい作品でした!



ソルジャーブルー
2011年10月12日 (水) | 編集 |
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西部開拓史の汚点となった“サンドクリークの大虐殺”を描く問題作です
西部劇観るなら、インディアンが出てくるものもってことで観たんですが・・
これ凄かった(/∀\*)
ソルジャーブルー(1970) アメリカ
監督:ラルフ・ネルソン
出演:キャンディス・バーゲン/ピーター・ストラウス/ドナルド・プレザンス/ジョン・アンダーソン
    ジョージ・リヴェロ/ダナ・エルカー/ジェームズ・ハンプトン
     
舞台となるのは1864年、インディアンと米騎兵隊の争いが激しさを増すコロラドで
アメリカ軍の一行がインディアンの奇襲攻撃を受けます。
生き延びたのは、クレスタ(キャンディス・バーゲン)と若き兵士のホーナス(ピーター・ストラウス)のみ。
インディアンについて意見を対立させながらも
幾多の危険を乗り越え、砦をめざします。
そうするうちに二人の間には愛情に近い信頼関係が生まれていく・・
 
という、アドベンチャーなロードムービーが展開されるわけなんですが
終盤にきて、そのほんわかムードは一変し、
衝撃の大虐殺シーンが再現されてしまうんですね~。
 
タイトルのソルジャーブルーというのは、キャンディス・バーゲン演じるクレスタが
若い兵士ホーナスをこう呼ぶところからきてますが、
タイトルになっているくらいだから、映画の主人公はホーナスであり
彼の視点で描かれた作品と言えるのでしょうね。
 
村を焼き尽くし、子供の首を撥ね、女を犯し・・
製作年が1970年ということで、想像もつくところですが
これは、ベトナム戦争における米兵の蛮行とオーバーラップさせているんですね。
 
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それまで、軍は正しいことをしていると信じていたホーナスも
目の前で繰り広げられる惨劇に愕然とし、やがて「ノー」と叫んで抵抗する。
兵士たちは、そんなホーナスを「狂ってる」と言い放つわけですが
どちらが狂っているのかは、言うまでもない。強烈な反戦のメッセージです。
 
歴史が繰り返させれることに空しさを覚えるところだけど
こうして真っ向から負の歴史を描き出すことも、映画として意味があることだと思います。
ホラー特集作品とも言うべき、過激な描写があるので
誰にでもお薦めはできないところだけど・・・
 
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純粋な目で真実を見つめていくホーナスを演じたピーター・ストラウスは好感の持てる演技。
リベラルで奔放なクレスタを演じたキャンディス・バーゲンも熱演。
時々サービスショットを交えながら、美しい肢体を披露してくれました。
 
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これ見ちゃうと、邪悪なインディアンと闘う 普通の西部劇の正義が
嘘っぱち~に感じてしまうでしょうね。