映画の感想や好きな俳優の情報を発信します。新作以外はネタバレあり。
蝿の王
2009年07月25日 (土) | 編集 |
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関連映画祭り 17本目!

昨日の『ザ・ビーチ』に続いて、
今日は、隔離された土地で独自のコミュニティを築いていく繋がり(長っ)、『蝿の王』でっす。
蝿の王(1963)イギリス
監督:ピーター・ブルック
原作:ウィリアム・ゴールディング
出演:ジェームズ・オーブリー/Tom Chapin/ヒュー・エドワーズ/Roger Elwin
【ストーリー】
アメリカの陸軍幼年学校の生徒たちを乗せた飛行機が墜落した。とりあえず一命を取り留めた24人の少年たちは、近くの無人島へ漂着する。しかし彼らは、世間から隔絶されたこの島で、己の内に秘めた野性に目覚め、やがて理性と秩序を失ってゆく……。
■感想
飛行機事故で無人島に漂着した子供たちが、独自の社会を形成し人間の本性を露にしていく姿を描いた作品です。

無人島では子供たちが、一人の少年のホラ貝の音に引きよせられるように次々に姿を現わす。
飛行機が墜落し漂着したという設定の割に、子供たちは怪我を負っている訳でもなく、着衣に乱れもない。
↓だいたいこんな格好で聖歌を歌いながらやってくるし‥

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事故の恐怖を振り返るものもいないまま、互いに名乗り合い、リーダーを決める。

なんとも非現実的な展開に驚くところだけど、あくまで映画はフィクションで、寓話的ということの象徴なのか。

ここで子供たちは独自の社会を形成していきます。

秩序と話し合いを重んじ、救助を待とうとする理性派の少年をリーダーとするグループと
救助は一生来ないのだから、自分たちで生き延びることを考えようとする狩猟派のグループと2派に分れるのですが
だんだんとこの狩猟派が力を持ってくるのですね。

誰かが「野獣」を見たと言えば、それは全員の恐怖の対象となり、
恐怖から逃れるために豚の首をいけにえに、「野獣」の怒りを鎮めようとする。
蝿のたかった豚の首がタイトルの「蝿の王」です。

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子供たちが野生化していく様子が怖いんですよね~。
次第に秩序が消え、獲物を狩る快楽が引き金になるのか、芽生えてくるのは残虐性。

『ザ・ビーチ』では、いい大人が楽園を求めることに共感できない部分があったけど、
善悪の判断も曖昧で、人格も未完成の子供が、容易に強いものに流れるというのは説得力があります。

子供たちの狂気が描かれる終盤には戦慄。
サバイバル映画とは一線を画す不気味さのある作品でした。
90分と言うコンパクトさがいいですね。これ以上は耐えられない。

【映画】ミリキタニの猫
2009年07月01日 (水) | 編集 |



2006年(アメリカ)
監督:リンダ・ハッテンドーフ
出演:ジミー・ツトム・ミリキタニ/ジャニス・ミリキタニ/ロジャー・シモムラ
【ストーリー】
カリフォルニアに生まれたジミーは、その後母の故郷広島で育つが、強まる軍国主義を逃れて18歳でアメリカに帰国する。しかし第二次大戦中に日系人強制収容所に送られた彼は、アメリカ国家に抵抗して自ら市民権を放棄する。以来、様々な社会保障も受けられず、やがては不運も重なりニューヨークで路上生活を送ることになる彼だったが、自由と不屈の精神を失うことはなかった…。本作は、彼の絵を買ったのが縁で、ときおり彼を撮影していたリンダ・ハッテンドーフ監督が、911テロの直後、彼を自宅のアパートに招き入れ、2人が奇妙な共同生活を送る中で、彼の数奇な人生が次第に明らかとなっていくさまがカメラに収められていく。
■感想
ニューヨークで路上生活を送りながら、ストリートで独特の絵を描くホームレスのおじいちゃんがいました。
ジミー・ミリキタニと名乗る彼は、日系アメリカ人の自称ストリートアーティスト。
本作はジミー・ミリキタニにカメラを向け、そのルーツに迫るドキュメンタリーです。

アメリカで生まれたミリキタニは、その後母の故郷広島で育ち、18歳でアメリカに帰国。
ところが25歳の時に日本がパールハーバーを攻撃したことで、日本人は強制収容所に送られてしまったんですね。
戦争が終わり、収容所を出た彼は一時仕事につくものの、雇い主を亡くした後は路上生活を余儀なくされることに。
それでも彼は路上で絵を描き続けたのです。

そこに描かれるのは、日本への郷愁と憧れを強く感じる広島の真っ赤に熟した柿の実や、猫、
そして原爆の光景、強制収容所‥等々。





そんな彼の絵に惹かれ、彼を撮影し始めたのが本ドキュメンタリーの監督リンダさん。
911の後、路上で咳をするミリキタニを気遣い、自宅のアパートに招き入れたことから二人の奇妙な共同生活が始まります。

しだいに明かされるミリキタニの半生。
アメリカで生まれながら収容所で暮らすことを余儀なくされ、母の故郷を焼き付くし、家族をバラバラにした。
彼は80年間、アメリカを怒り、戦争を怨み、その思いの全てを絵に託して生きて来たのです。

絵を描き、多くの人にその事実を知らせることが彼の使命でもあったんですね。
彼の絵に多く描かれる猫は、強制収容所で少年にせがまれ良く描いたというもの。





リンダのペットの猫が、その絵にそっくりでね。
なんだか猫が二人を引き合わせたのかもって思ってしまいました。


この作品は15の映画賞を獲得。
アメリカに抵抗し、市民権まで放棄した彼の
80年間の怒りが消えていこうとする終盤には大泣きでした。
胸を打つ素晴らしいドキュメンタリーです。