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「闇」へ 米国の捕虜拷問の実態を暴くドキュメンタリー
2008年10月10日 (金) | 編集 |








「闇」へ(2007)アメリカ
原題:Taxi to the Dark Side
監督/脚本:アレックス・ギブニー
撮影:マリス・アルペルチ



マイケル・ムーアの話題の「シッコ」をおさえ、第80回アカデミー長編ドキュメンタリー賞を獲得した本作は、米国の捕虜拷問の実態を暴き、テロ対策に対する姿勢を批判するドキュメンタリー作品です。

原題は「Taxi to the Dark Side」
2002年、仕事に向かったまま行方不明になった22歳のタクシードライバーDilawarさんが、アフガニスタンの米軍基地内の拘置所で勾留され拷問の末死亡した事件を足がかりに、彼の剖検結果から、死因となった拷問の実態を検証していきます。

証言にあたるのが、拷問の罪で裁判にかけられ有罪判決を受けた元兵士たちやジャーナリスト、実際に捕虜となったアラブ人など。

驚きの証言内容の中で、捕虜を自白に追い込むために、真っ裸にする、獰猛な犬をけしかける(アラブ人に犬は特別な意味があるらしい)、不自然な姿勢を強いる、水攻めなど、数々のマニュアルがあるという実態にも驚きました。
先日観た「Rendition」に描かれていた拷問の方法も、このマニュアルにのっとたものなのか。。

証言を裏付ける写真の数々には怒りを覚えます。兵士たちにとって、すでに捕虜は人間ではないのです。
9.11をきっかけに、「テロリストとの闘い」を宣言したブッシュ大統領。
拷問の罪で捕まるのは、所詮下っ端の兵士たち。それでも彼らを動かしているのは明らかに国家の上層部であるという事実。

監督は『エンロン 巨大企業はいかにして崩壊したのか?』でもすでに高い評価を受けてるアレックス・ギブニー。
ギブニー監督は授賞式で、『「闇」へ』を今は亡き2人、Dilawarと父に捧げたいと語っていますが、このフィルムの製作自体も父フランクさんの勧めがあってのものだそうです。

フィルムはお父さんフランク・ギブニー氏の映像で締めくくられています。
カメラに向かって「自分が軍の審査員として任務にあたっていたときには、捕虜に対する厳密な規則があり、それは人権を尊重するものだった。ところが今の軍の「闇」に向かう方策はどうだ。これはかつてのルールに従わないだけでなく、アメリカの憲法までも無視するものだ。」と述べ、自分の愛し信じて来たアメリカがそこにはないことを嘆く氏の姿が印象的でした。

「アメリカは「闇」から抜け出し、明るい未来に向かって一歩を踏み出す努力をしなければいけない。」授賞式のスピーチでも語られたこの言葉に、監督は父の遺志のすべてをこめたのでしょうね。

軍、国家を批判する映画はことごとく評判が悪い中、本作は映画サイト「ロットントマト」のトマトメーター100%。
多角的に、忠実に事実を追う内容であることは勿論、お父さんの国家を愛する気持ちが通じるところが、この高評価に繋がったのかと思います。