映画の感想や好きな俳優の情報を発信します。新作以外はネタバレあり。
悪夢の童話『狩人の夜』
2007年10月31日 (水) | 編集 |


1955年(米)
監督:チャールズ・ロートン
出演:ロバート・ミッチャム/リリアン・ギッシュ/シェリー・ウィンタース/イヴリン・ヴァーデン
ピーター・グレイヴス/ジェームズ・グリーソン/ビリー・チャピン/サリー・ジェーン・ブルース
【ストーリー】
ある死刑囚から、銀行を襲って手に入れた1万ドルを子供たちに託した事を聴いたハリーは、出所するや福音伝道師を装って未亡人と子供たちの住む町へ向かう。そして言葉巧みに未亡人に取り入り、結婚してしまう。彼の凶暴な正体を知り、母までも殺された幼い兄妹はふたりだけで逃亡を企てる。小舟に乗って川を下る兄妹はやがて身寄りのない子供たちの面倒を見ているクーパー夫人の家にたどり着くが、そこにもハリーは迫っていた……。

ハロウィンホラー企画第7弾 暗闇に迫り来る静かな恐怖!悪夢の童話「狩人の夜」

■感想
ハロウィンに観たい映画は?」の第11位にランクインした作品です。

うーーん、これまたカルトな一作でした。
これはいわゆる、モンスターなどが登場するホラーではなく、一般的なカテゴリーとしてはサスペンスですね。
どんな風に怖いんだろうと楽しみにしてみたんですが、そんなに怖い作品ではありませんでした。

怖さのかわりに感じるのはその映像の美しさです。
雰囲気でいうと「月の砂漠」のイメージでしょうか。

夜道、ロバにまたがり、伝道歌を歌いながら子供たちを探し追い続ける主人公ハリー。
月夜に浮かび上がるその姿は不気味でもありながら、なぜかとても美しく、
まるで一枚の影絵を見ているような気分になりました。



サスペンスなのに、静かでゆったりと流れる澄んだ空気感。

家の中のシーンも影を巧みに使って、迫り来る恐怖を子供の視点で表現しているんですが
一度見てしまったら、そのイメージがしばらく頭にこびりつきそう。
ストーリー説明のところにあった“悪夢の童話”という表現がピッタリです。

主演のハリーを演じたロバート・ミッチャム「デッドマン」でディッキンソンをやってた人なんですね。

本作では、左の指にHATE、右の指にLOVEの文字を刺青し、両手の指を絡ませて愛と憎しみの関係について云々する偽伝道師。
爬虫類系の精気の無い顔で、残忍な主人公を不気味に演じていました。

子供たちをかくまって、果敢にハリーに立ち向かうリリアン・ギッシュの潔さもいい。



両親を亡くしながら、必死の逃亡をしなければならない幼い兄妹が痛々しくてたまらなかったのですが、>ラストは家族的な温かさを感じる終わり方でホッとしました。

それもこの作品の人気の一因かもしれませんね。


監督は「情婦」などの名優チャールズ・ロートン

公開当時はあまり高く評価されず、このあと監督作品を撮っていません。
優れた俳優であることは勿論、監督としての資質も兼ね備えていたことを思うと残念ですね。
映像の美しさと静かな恐怖の絶妙なコラボを楽しめます。

ミツバチのささやき
2007年10月13日 (土) | 編集 |


1973年(スペイン)
監督:ヴィクトル・エリセ
出演:アナ・トレント/イザベル・テリェリア/フェルナンド・フェルナン・ゴメス
【ストーリー】
スペインのとある小さな村に「フランケンシュタイン」の巡回映画がやってくる。6歳の少女アナは姉から怪物は村外れの一軒家に隠れていると聞き、それを信じ込む。そんなある日、彼女がその家を訪れた時、そこで一人のスペイン内戦で傷ついた負傷兵と出合い……。

■感想
スペイン内戦の時代、6歳の少女アナが体験する現実と空想の交錯した世界を繊細に描き出した秀作です。

時代背景と少女の空想というところで「パンズ・ラビリンス」にも通じるところがあり、
「パンズ~」のオフェリアを演じたイバナ・バケロはこの「ミツバチのささやき」の主人公アナの再来と言われているようです。

これはとっても文学的な作品のように思いました。

叙景的な美しい映像に浮かび上がるのは、ノスタルジックなスペインの村の風景。
果てしなく続く黄色い大地は青い空に溶け込みます。

主人公アナは6歳。姉のイザベルと村の巡回映画で「フランケンシュタイン」の映画を観ます。
映画の中で、アナと同じくらいの少女が殺され、フランケンシュタインもまた村人に殺される。。。


アナの頭の中は映画でいっぱいになりました。

「なぜ少女は殺されたの?」

姉に問い続けるアナ。

そんなアナに姉イザベルは「少女は死んでいないし、フランケンシュタインも死んでない。彼は精霊なのだ」と教えます。





これは、少女のなかで生まれた「生と死の概念」を描いた作品でしょうか。
映画の中の「死」に始まり、多くの「死」に関わることが出てきます。

父と探すキノコ狩りでみつけた毒キノコ
姉イザベルの”死んだフリ”ごっこ
耳を近づける線路。迫り来る列車。
養蜂家である父のミツバチの研究、彼らの生態と死
猫の首を絞めるイザベル、そして精霊が住むという小屋で出会った脱走兵の死・・・。

 


「精霊ってなに?」

「いい子にはいい精霊、悪い子には悪い精霊・・・」と母。
「精霊と友だちになるためには、ただじっと目を閉じ、「私はアナ」と話しかけるの」と姉。

妄想の中でフランケンシュタインと遭遇するアナが恐怖に唇を震わせながらも
じっと目を閉じる姿が印象的。

思い出せば、幼い頃には、自分のまわりにいろんなオバケがいたかもなぁ。
お人形さんごっこも一種の妄想かもしれない。
映画を観ていると、懐かしいような、ほろ苦いような、色んな思いが込み上げてきました。

言葉による説明はほとんどない。
語る言葉の一つ一つ、画面の全てが大きな意味合いを持つ作品。
アナの大きく無垢な瞳、演技ではなく、少女の存在こそがこの映画の全て。凄い!

戦争の時代というのも押さえておくべきところでしょう。母の書き続ける手紙は誰のもとへ?
列車の窓から見える兵士たちの顔。人がみな、何かを無くし、何かを求めていた、そんな時代だったのかも。

これ好き!