映画の感想や好きな俳優の情報を発信します。新作以外はネタバレあり。
【映画】ヒトラーの忘れもの
2017年09月11日 (月) | 編集 |
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ヒトラーの忘れもの(2015
デンマーク/ドイツ
英題:Land of Mine
監督:マーチン・サンフリート
出演:ローランド・ムーラー /ミケル・ボー・フォルスゴー /ルイス・ホフマン /ジョエル・バズマン /レオン・サイデル /エミール・ベルトン /オスカー・ベルトン

【あらすじ】
1945年5月。ナチス・ドイツの占領から解放されたデンマークだったが、海岸線にはドイツ軍が埋めた無数の地雷が残ったままだった。その除去に、捕虜となっていたドイツ兵たちが駆り出され、除去部隊の一つをデンマーク軍のラスムスン軍曹が監督することになったが・・


【感想】
ナチス・ドイツもので、ヒトラーやその取り巻きの高官たち、あるいやユダヤ人迫害について描かれることは多いですが、ドイツ少年兵たちのその後を描いたものは珍しいんじゃないでしょうか。
彼らの一部は捕虜となり、デンマークの海岸線に埋められた地雷を撤去するという過酷な作業を課せられるのです。
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観ているうちに兵士たちはどこにでもいる普通の若者だとわかってきます。
彼らは両親が生きているか、死んでしまったのかもわからないまま、故郷に戻るという希望だけを胸に、ひたすら地雷を掘り起こすのです。

しかし、簡単な指導を受けただけの少年兵ゆえ、誤って地雷を爆破させてしまうことも度々。
年端のいかない若者に背負わせるにはあまりに大きな戦争の代償。その不条理さに泣けて仕方がなかった。
兵士の人物像や、仲間の絆などが見えてくれば見えてくるほど、撤去作業シーンの緊張度は増すばかり。
『ダンケルク』でノーランは時間を刻むような「音」の演出で差し迫る恐怖や危機感を煽ってきましたが、登場人物に対する思い入れが増すことで観客の緊張を高める本作の狙いは王道にしてホンモノ。

しかし、緊張するだけでは映画は面白くならないわけで、
そこに指導のデンマーク人軍曹と少年兵の指従関係を盛り込み、映画に厚みを与えているのがいい。
この軍曹さんがいい味出すんだ、また。
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戦争で受けた心の傷、未来への渇望、人と人の繋がりなどが深く描かれている点で、ヒューマンドラマとして大変見ごたえがありました。

日本でも『ダンケルク』が公開になり、英国の若い兵士の戦争体験がクローズアップされてますが、英兵もドイツ兵も、戦争によって運命を翻弄させられたという点では同じ。そういう意味で『ヒトラーの忘れもの』はダンケルクの合わせ鏡のような位置にある作品といえます。

デンマークがドイツ人捕虜に対し行ったこれらの行為は国の歴史として決して誇れるものではないでしょうけど、それを隠すことなく映画として表現することに寛容なデンマークは知的な国ですね。

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【映画】ハクソー・リッジ
2016年11月05日 (土) | 編集 |
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ハクソー・リッジ(2016 オーストラリア・アメリカ
原題:Hacksaw Ridge 
監督:メル・ギブソン
脚本:アンドリュー・ナイト/ロバート・シェンカン/ランダル・ウォレス/グレゴリー・クロスビー
出演:アンドリュー・ガーフィールド/ヴィンス・ヴォーン/サム・ワーシントン/ヒューゴ・ウィーヴィング/テリーサ・パーマー

【あらすじ】
逃子供時代の体験から武器を持たないことを誓ったエドモンド・ドスは、入隊後も銃を手にすることを拒否する


【感想】
第二次世界大戦中の沖縄戦で、衛生兵として戦地に立ったエドモンド・ドスの活躍を描く実話ベースの戦争映画です。
監督は『アポカリプト』以来10年ぶりにメガホンをとったメル・ギブソン

アンドリュー・ガーフィールド演じるエドモンド・ドスは子供の時の体験から、命の大切さを学ぶと同時に、人を傷つけることをしないと心に決めます。大人になり、入隊することになっても彼は信念を曲げず、敵を殺すためでなく仲間の命を救うため前線に行くと宣言。当然ひと悶着あるんですが・・

これはね、ものすごい映画体験でした。
予告でも手りゅう弾で吹っ飛ぶさまは描かれてますが、それだけではない地獄絵がこれでもかと繰り広げられる。
その長さと恐ろしさに「もう勘弁して!」となるけど、メル・ギブソンが許してくれるはずもなく、まぎれもないホラーを目の当たりにすることになりました。日本兵も米兵も国を守るために戦って、戦場では身を守るために相手を殺すしかないんだよなぁ。
戦争ものとあって会場はお年寄りでいっぱい。中にはご夫婦連れもいて彼らの心臓が止まるんじゃないかと心配したがな。退室者がいなかったのが不思議。
勿論沖縄戦が舞台なので、日本人としては辛く複雑な思いにもかられるんですが、ドスがひたすら仲間を救おうとする姿が痛快で感動してしまうんです。
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戦闘シーンにおけるギブソンの演出はひたすらリアルで、見せたくないものをオブラートで包むことを一切しない。
一方でドスの活躍はファンタジーと言いたくなるほどだけど、実話というのだから凄い。
神風以上に神がかりなドスを描くことは、進行に篤いメル・ギブソンならでは。
勿論、戦場の熾烈さもギブソン仕様。

共演者の中では、ドスの父を演じたヒューゴ・ウィーヴィングとドスの上司に当たるハウエル軍曹を演じたヴォンス・ヴォーンが印象的。特にヴォーンは前半はコメディ担当(笑)兵士を叱りつけながらのセリフがユーモラスで会場は笑いに包まれる。それでも戦場で指揮を執る様子はかっこよくて、初めていい役者だと感じたもんね。
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主演のガーフィールド君はどんな状況でも飄々としてユーモアを湛えているのがいいし、その誠実さに仲間が信頼を寄せていくのも気持ちがいい。テリーサ・パーマーとのラブストリーでもあります。
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ロープを縛る練習のシーンが見事な伏線となって後半に繋がるのも胸がすく。
メル・ギブソンは映画の面白味を知り尽くした人なんだと思う。

内容が内容だけに日本では物議をかもすかもしれないけど、IMDb8.7の好スコアは伊達じゃない。
間違いなく傑作です。公開して欲しいね。

ついでに本作も英国男優50人斬りに加えるとして、今回はアンドリュー君ふたたびと、隊のキャプテンとしてカッコよかったサム・ワーシントンの二人斬りだよ。

アンドリュー君とエマちゃんのカップルが一緒にオスカーノミネートされるといいな。

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【映画】戦場からのラブレター
2016年10月11日 (火) | 編集 |
 
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戦場からのラブレター(2015 イギリス
原題:Testament of youth
監督:ジェームズ・ケント
脚本:ジュリエット・トウィディ
出演:アリシア・ヴィキャンデルキット・ハリントンタロン・エガートン/コリン・モーガン

【感想
第1次世界大戦の最中、看護師として戦場で闘ったヴェラ・ブリテンの自伝小説を映画化した戦争ドラマです。

英国男優総選挙の投票も9月いっぱいで終わり、後は静かに結果を待つのみ。
Twitterのハッシュタグを検索すると「○○に投票しました」というポストを多く見かけます。
今年は『キングスマン』人気でコリン・ファース、タロン・エガートンの票が伸びてる印象。
特にタロン君は確実に順位をあげてきそうですね。

まだ出演作が少ないタロン君なので選ぶ余地がなかったですが、これは観て正解。
主演のアリシア・ヴィキャンデルはじめ、若手がたいそう頑張ってました。

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アリシアちゃん演じるヴェラはイギリスの中流階級に生まれ、兄のエドワードとその親友のヴィクター、友人のローランドらと穏やかに青春を謳歌しています。
ところが第一次世界大戦が勃発し、エドワードらは戦場に。
オックスフォード大学に入学したヴェラも何かせずにおれず、救急看護奉仕隊に志願するのです。

ヴェラを取り巻く人間関係を説明する前半は、何が言いたい映画なのかよくわからず正直退屈。
ところがヴェラがナースとして戦地に赴いてから、ガラリと様相が変わり面白くなります。

前戦のドンパチを見せることなく、救護室の惨状で残酷な戦争の実態を表現する手法は増村保造の『赤い天使』を思い出します。人手が足りず、自分で兵士の腕を切断したと武勇伝のように話し、瀕死の患者を前に「この人もうすぐ死ぬから気をつけて見ててね。」と平気で口にする先輩ナース。
ヴェラが配属されたのはドイツ兵を収容する施設だったにも関わらず、ヴェラが死にゆく兵士の手を握り安心を与える姿に心を動かされます。
死にゆく者に敵も味方もない。あるのは戦争の愚かさのみ。
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死の恐怖と向き合いながら懸命に戦う兵士に対し、本国で終戦を待つ市民の利己的なこと。
戦地の悲惨な状況を知りつくし、愛する者を失った原作者の思いがそのままヴェラの憤りとなって表現される。
アリシアちゃんはこれでオスカーとってもおかしくないほどの熱演で、綺麗なだけの女優じゃないことを改めて思い知らされます。
タロン君もよかった。


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英国男優でもう一人斬りたいのがヴェラの婚約者を演じるキット・ハリントン
未見ですが米ドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』に出演し人気だとか。

フラットな前半には少し我慢を要しますが、リアルな反戦映画であると同時にみずみずしい青春映画でもある本作、可憐でいて力強いアリシアちゃんの演技もあって観て損のない秀作でした。

アリシアちゃんのファッションもかわいい💛



 


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【映画】サウルの息子
2016年05月02日 (月) | 編集 |
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サウルの息子(2015)
ハンガリー
原題:Son of Saul
監督:ネメシュ・ラーシュロー
脚本:ネメシュ・ラースロー  / クララ・ロワイエ
出演:ルーリグ・ゲーザ/ モルナール・レヴェンテ/ユルス・レチン/  トッド・シャルモン /  ジョーテール・シャーンドル 

 【あらすじ
アウシュヴィッツの収容所でゾンダーコマンダーとして働くハンガリー系ユダヤ人のサウルは、ある日ガス室でまだ息のある少年を発見する・・


【感想
アカデミー賞外国語映画賞を受賞したハンガリー映画。
1994年のアウシュビッツの強制収容所を舞台に、ゾンダーコマンダーとして働くユダヤ人サウルの孤独な狂気を描く作品です。

主人公のサウル(ルーリグ・ゲーザ)は収容所でくる日も来る日も同胞のユダヤ人をガス室に誘導し、その後の死体の片づけをしている。カメラはサウルのクローズアップをとらえ、その背景に死体処理の様子がぼやけた映像の中映し出される・・。

痩せこけた全裸の死体が引きずりまわされ片付けられるその背景の映像がホラーでねぇ。
ピンボケの撮影手法は、直接的なグロにベールをかけるから恐怖が安らぐかというと逆で、
そこで起きている一部始終をかえって想像してしまうし、匂ってくるような生々しさが半端ない。
収容所で起きていることが混乱とカオスでしかなく、ぼやけた映像はサウルの混乱そのものでもあるでしょう。

ある日、サウルは一連の作業中、ガス室で死に損ねた少年を発見。
サウルはある行動に出るんですが・・

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これが初監督作品というハンガリ―出身のネメシュ・ラーシュローは10年の構想を経てこの映画を作り出したのだとか。実際にホロコーストを体験した生存者から話を聞きリアリティにこだわったことが伺えます。

同じホロコーストもので父と息子を描いた『ライフ・イズ・ビューティフル』を「違う」と言い切る監督が
本作で描こうとしたのは怒りと混沌に満ちたホロコーストの真実。
父と息子の描写でさえ混乱の中の狂気でしかないところがむなしいんですが
誰をサウルを咎めることができるでしょうね。

以下ちょっとネタバレします




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【映画】『アイ・イン・ザ・スカイ(原題)』アラン・リックマン遺作のドローン戦争映画
2016年04月05日 (火) | 編集 |
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アイ・イン・ザ・スカイ(2015)
イギリス
原題:Eye in the Sky
監督:ギャヴィン・フッド
脚本:ガイ・ヒバート
出演:ヘレン・ミレンアラン・リックマン/アーロン・ポール/ バーカッド・アブディ
日本公開:2016 

 【あらすじ
英国軍大佐キャサリン・パウエルは、ナイロビの爆弾テロ事件の犯人を捕らえるべく、遠隔操作による偵察を指揮している。犯人の拠点と目星をつけた建物で決定的な瞬間を迎え、空爆の指示を仰ぐパウエルだったが・・
 
【感想
アラン・リックマンの姿を見れる最後の作品ということで劇場に駆けつけました。

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ドローンを使った最先端の戦争を描く軍事スリラーというと、『ドローン・オブ・ウォー』が記憶に新しいですが
今回はさらに小さな昆虫型ドローンなんかも登場して、技術の進歩に単純にビックリ。

『ドローン・オブ~』では劇中何度も何度も空爆するシーンがあったけど、今回はなかなかスイッチを押さない。

予告にもあるので書きますが、
彼らが空爆にゴーサインを出さないのは一つには、幼い少女がターゲット内にいてどいてくれないから(汗)・・

監督上手い!と思うのは、フラフープをする少女の姿をドローンが早くから捉えていて、緊張した司令室の中でその子がオアシス的存在になっているというシチュエーションを最初から作り上げていること。
誰もその子を巻き添えにしたくないし、観客もその子の無事を祈らずにおれず、緊張感にも拍車がかかります。
しかし一人の少女を救うことで数百人の市民の命が奪われるとしたら・・
さて軍はどういう決断を下すのかという作品ですね。
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ともすれば会議室の討論会になりそうなところを、ケニアの現場のアクションや、役者のリアクションなど
ときにブラックユーモアを交えた見せ方で飽きさせません。
『キャプテン・フィリップス』で海賊を演じた バーカッド・アブディがナチュラルな演技で現場の緊張を盛り上げて最高。
一発屋じゃなかったことを証明しましたね。またオスカーノミネートもあるかも。


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長年追ってきたテロリストのアジトを掴み、米国の協力を得てドローン偵察を指揮するパウエル大佐を演じたヘレン・ミレン
脚本の時点では男性が想定されていたというこの役にヘレン・ミレンを抜擢した人選の素晴らしさ。
強さと冷徹さの中に女性ならではの優しさもあってかっこいい。
ピアスに薄ピンクのマニキュアも仕事が出来れば男女平等というあえてもの演出でしょう。
「これまでで一番飾り気のない衣装だわ」と仰ったらしい迷彩ユニフォームだってお似合いですから!

アラン・リックマンも台詞の絶妙の間(ま)に上手さが光ります。
知性とユーモアがあって、シニカルだけど確固とした信念を持ち誠実な軍人を
威厳を前面に出したステレオタイプにせず、ナチュラルに演じきったリックマン先生に惜しみない拍手を送りたい。
その美声ももっともっとお聴きしたかった。
ミレンさまとリックマン先生のライン(じゃないってw)のやり取りにも萌えました~。

監督は『ツォツィ』『国家誘拐』のギャヴィン・フッド。後で知ったのだけど中佐役で出演もしています。

最後の判断をくだすまでの過程にモラルや政治的な建前等、現代の戦争の様々な側面を描いてみせるところが非常に知的でスリラーとしても面白い映画でした。







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