映画の感想や好きな俳優の情報を発信します。新作以外はネタバレあり。
【映画】ライオン ~25年目のただいま~
2017年02月15日 (水) | 編集 |
Lion poster  
ライオン ~25年目のただいま~(2015) オーストラリア
原題:Lion
原作:サル―・ブライアリー
監督:ガース・デイヴィス
脚本:ルーク・デイヴィス

出演:
デヴ・パテル/ルーニー・マーラ/デヴィッド・ウェンハム/ニコール・キッドマン/サニー・パワーll

【あらすじ】
5歳の時にインドの駅で迷子になったサル―は、その後オーストラリア人夫婦に引き取られる。しかし彼の心には常に母や兄への思いがあった。

【感想】
 サル―・ブライアリーが自身の数奇な人生を綴った自伝小説『25年目の「ただいま」』を、本作が映画初監督作品というガース・デイヴィスが映画化した感動のドラマです。

初監督作品で作品賞にノミネートされるとは凄いなと思ったら、もともとかんとくはCM筋の作家として高い評価を受けてきた人らしい。
インドで迷子になった5歳の少年がオーストラリアで暮らすことになり、25年目にグーグルの力で故郷に戻ることができた
ストーリー自体が映画みたいなものだから、どう転んでも面白くはなりそうだけど、美術、音楽、映像すべてが美しく一本の映画としてのクオリティーが高い。少年時代のサルー少年がむちゃくちゃ可愛らしくて、少年の冒険を描く前半にも大いに引き付けられました。
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どこのあらすじにも書いてるので書きますが・・サルーの故郷探しにはグーグルアースが大きな役割を果たしたんですね。
私も初めての場所に行くときなど、前もってグーグルでチェックするようにしています。
先日も、交差点がロータリーになってるのが分かったので、その場で戸惑わずに済みましたよ。ありがたいことです。

この世にグーグルがなかったら、おそらくサルー少年は一生故郷を見つけることはできなかったでしょう。
5歳の子供の記憶力では、土地名も駅名もわからないのだから。
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オーストラリアでの暮らしは普通に裕福で両親も優しい
でも少年が一番幸せだったのは、家族と暮らした少年時代だったのだろうと
何も説明されなくてもわかるほど、インドの描写がいい!
貧しくても互いに助け合い、家族と繋がることの素晴らしさを描いた作品でもありますね。
lion brothers

デブ・パテル君の助演もいいですが、私ならサルーを演じたサニー・パワー君に賞をあげたいです。




【映画】『幸せなひとりぼっち』ひとりぼっちはやっぱり寂しい
2017年02月10日 (金) | 編集 |
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幸せなひとりぼっち(2015) スウェーデン
原題:En man som heter Ove
監督/脚本:ハンネス・ホルム
出演:
ロルフ・ラッスゴード/イーダ・エングヴォル/バハール・パルスll

【あらすじ】
最愛の妻ソーニャを病で亡くし、長年勤めてきた仕事も突然のクビを宣告されてしまった59歳の孤独な男オーヴェ。絶望し、首を吊って自殺を図ろうとした矢先、向いに大騒ぎをしながらパルヴァネ一家が引っ越してきた。


【感想】
 オスカー関連作品。今日は外国語映画賞にノミネートされたスウェーデン発ヒューマンドラマです。

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集合住宅の一軒に一人で住む主人公のオーヴェは、住人のゴミの出し方をチェックするようなオヤジで、敷地内への車の乗り入れには特にうるさい。いつも苦虫をかみつぶしたような不機嫌なオーヴェは新しい住人にうるさがられる存在です。
しかし最近妻を亡くし、仕事までクビになったオーヴェは自ら死を選ぼうとしている。
そんな時、向かいに若いイラン人の家族が越してきます。


様々な国籍の人と接触して思うのは、お国が違うと、文化やものの考え方が違うということ
例えばアジアンマーケットのパーキングでは毎週のように、駐車スペースから出ようとしている車に驚くほど近づいて待ってる車を目にします。十分なスペースを空けてあげれば出やすいのに、近づきすぎるから何度も切り返して出なきゃならず時間がかかるだけ。日本人やアメリカ人は絶対にしないことを他のアジアの国の人はするんだわ。
そういうの見るにつけ、「もう、〇〇人は」と愚痴ってしまう。悪い面ばかりが気になるもの。
でも付き合ってみると、日本人にはないいい面もあるんですよね。

本作に登場するイラン人はオーヴェに平気でものを頼み一見図々しいのだけど、食事を持っても来てくれる。
他人と距離を保ってきたオーヴェは戸惑うものの、その距離の近さがオーヴェに変化をもたらすのです。

と、こう書くと「ははぁ、イラン版『グラントリノ』やね」と思うかもしれない。
でもこの映画は、過去と現在を交錯させ、オーヴェの頑固さがどこから来るのかを掘り下げます。
彼の頑固さには理由があって、本当はまじめでひたすら妻を愛した人であることが分かってくるんですが
そんなオーヴェが自ら命を絶つことを考えるのは本当に悲しい話。
他人との関係が希薄なのはスウェーデンも都会の日本と少し似てるのかもですね。
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最後は自分の過去を語り始めるオーヴェに涙。
心を開いて初めて人は人と近づけるのだということに、ものすごく心を動かされる作品でした。
猫も可愛くてね。これはよかったわぁ



ちなみに原題は「オーヴェという男」という意味。
邦題の「幸せなひとりぼっち」がどういうことを言うのか、よくわかりませんでした。
ひとりぼっちはやっぱり寂しいよね という映画だと思ったな。

若い頃のオーヴェを演じた役者さんが声の深みもあり、違和感がなくてよかった。




オーヴェ59歳・・・  え?
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お気に入り度4.2



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【追悼】ジョン・ハート『殺し屋たちの挽歌』
2017年02月02日 (木) | 編集 |
The Hit 1984
殺し屋たちの挽歌(1984
イギリス
原題:The Hit
監督:スティーヴン・フリアーズ
脚本:ピーター・プリンス
出演:
ジョン・ハートティム・ロス/ラウラ・デル・ソル/テレンス・スタンプ/フェルナンド・レイ

【あらすじ】
強盗仲間を裏切り、スペインで隠れ住む男の元へ二人の殺し屋が現れた。二人の目的は、組織のボスが待つパリへ男を連れていくこと。そこへ誘拐事件に巻き込まれた少女が加わり、奇妙な4人組の旅が始まった……。

【感想】
  ジョン・ハートの追悼2本目です。
本作でジョン・ハートが演じるのは渋い殺し屋ブラドック。
彼の任務は、強盗仲間を裏切り10年間もスペインに隠れ住んでいたウィリー・パーカー(テレンス・スタンプ)をパリのボスのもとまで連行すること。相棒に若いチンピラ、マイロン(ティム・ロス)、ひょんなことからマギーという15歳(多分ウソ!)の女性まで巻き込んで、4人の奇妙な旅が始まります。
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ところが間もなく、パーカーの落ち着きはらった態度が2人の殺し屋の心をざわつかせるんですね。
マイロンはパーカーが何か企んでいるのではと気が気じゃない
また、ブラドックは、死を恐れていないように見えるパーカーの心を理解できないのです。

殺し屋映画も数々あれど、殺す側、殺される側の心情にここまで踏み込むものは少ないんじゃないでしょうか。
10年間、いつ暗殺者がやってくるかと怯えて過ごしたはずのパーカーは、しかしついにその時が来て、むしろ喜んでいる。
読書家の彼はいくつもの本を読み、運命を受け入れ、最後の舞台を自分の納得のいく形で終わりたいと思っている。
それでも死の受容のステージは、ちょっとしたことで後戻りするのが人間というもの。
テレンス・スタンプはそんなパーカーを見事に演じていて素晴らしい。

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ジョン・ハートはベテラン殺し屋ですが、心優しいゆえの詰めの甘さに、自分が一番落ち込むという複雑な役どころ。
ティム・ロスは若気の至りのどチンピラを奔放かつ繊細に演じていて、3人ともが怪演ですね。
でも本作で最もたくましいのが紅一点のマギー。セクシー投入だけの要員じゃなかったのね。
ブラドックが用なしになったマギーを殺せないのは、単に優しいからだけでなく、マギーのたくましさへの憧憬と尊敬の気持ちがあったのかな。
それぞれの関りが4人の心模様を複雑に絡め合うという卓越した脚本。しかも半分コメディかと思うほどの可笑しみも交えて描き出したフリアーズ監督の演出の素晴らしいこと。

長い旅の終わりを微笑みとウィンクという穏やかな表情で決めたブラドック。
スーツ姿の寡黙なジョン・ハートももちろん最高でした。
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舞台はスペイン。フラメンコギターの音色も心にしみた、これ間違いなく傑作。


お気に入り度4.7

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【映画】沈黙 ーサイレンスー
2017年01月22日 (日) | 編集 |
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 沈黙 ーサイレンスー(2016 アメリカ
原題:Silence
監督:マーティン・スコセッシ
脚本:ジェイ・コックス/マーティン・スコセッシ
出演:アンドリュー・ガーフィールドアダム・ドライバー/浅野忠信/キアラン・ハインズ/リーアム・ニーソン/窪塚洋介/イッセー尾形/塚本晋也

【あらすじ】
17世紀、キリスト教が禁じられた日本で棄教したとされる師の真相を確かめるため、若き宣教師のロドリゴとガルペは日本にやってくる。


【感想】
 ようやく今年の劇場1本目
先日帰省の際、原作をゲットしたので読んでからと思っていたんですが、昼間の上映最終日ということで、慌てて観てきました。

隠れキリシタンが迫害を受けた江戸時代初期の日本を舞台に、信仰と向き合う若きポルトガル人宣教師の姿を描くマーティン・スコセッシ作品です。

「踏み絵」や「隠れキリシタン」というのは日本史の授業でも教わったことですけど
幕府による迫害の実態についてはイメージできなくて、ちゃんと習ったんだっけ?

本作は残忍な迫害シーンもたっぷり。信仰に篤そうなお年寄り夫婦とかに交じっての鑑賞だもので、キリスト教徒でもない日本人の私としては、ちょっと肩身の狭いものがありました。
『レイルウェイ 運命の旅路』の時の感覚にも近いもの。

もちろん段々には、これは「真の信仰とは」を問う映画だとわかって来るので、日本人としての肩身の狭さは薄れてはきます。
幕府に迫害されながらも、懸命に信仰を全うしようとする姿に心を打たれるのもあります。
出てくる隠れキリシタンたちは外観はうす汚れてはいても、心の清純さを感じさせるんですよね。
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そんな中、目を引くのが窪塚洋介演じるキチジロー。
インタビューでは自らを「踏み絵マスター」と称してましたがw他の信者が踏み絵を頑なに拒む中、彼は何度も踏み絵をする(笑)
でも軟弱なのに、それでも神にすがることをやめない=信仰を捨てないところに柳のような強さがあるんですね。キチジローが登場すると会場に笑いが起きたりして、裏切者でもどこか憎めない存在となっているのは窪塚のうまさかな。救いを求めようとするキチジローの存在が宣教師の信仰心を保たせることにもなっていたことを思うと、彼は完全にキーパーソンでした。

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個人的にツボだったのはイッセー尾形ですね。
一つ一つの動作に計算しつくされた可笑しみや、時には怖さがあって、和製クリストフ・ヴァルツとお呼びしたい。
塚本晋也もよかったんですが、私には英語がわかり難かったのが残念。
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ガーフィールド君ももちろん熱演で、宣教師の葛藤は観ていて辛くなるほど伝わりました。
神父さんと思しき方々の感想をyoutubeで聴いてみると、宣教師ロドリゴに対しはっきり「裏切者」と言い放つ人もいて、聖職者でも理解しがたいものがあるようす。スピリチュアルな表現をしてる部分は賛否の別れるところかも。
それでも背徳者の立場に身を置きながらも、誰かの命を救うことに生涯をかけたロドリゴの生きざまに心惹かれずにはいられません。

波の音を聞きながら崇高な気分になる、静かだけど力強い映画でした。

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【映画】シークレット・オブ・モンスター
2017年01月19日 (木) | 編集 |
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シークレット・オブ・モンスター(
2015 イギリス・ハンガリー・フランス
原題:The Childhood of a Leader
監督:ブラディ・コーベット
脚本:ブラディ・コーベット/モナ・ファストボルド
出演:ベレニス・ベジョ/トム・スウィート/ロバート・パティンソン/リーアム・カニンガム/ステイシー・マーティン  
あらすじ】
1918年、ベルサイユ条約締結のため、米政府高官が妻と息子とともにフランスに送り込まれた。少女のように美しい息子プレスコットは終始不満を抱え、不可思議な行動が目立つようになり・・

【感想】
 英エンパイア誌選出2016年のトップ25から、今日は21位にランクインのシークレット・オブ・モンスター。
US版『ファニーゲーム』でマイケル・ピットとともに悪質な若者を演じた俳優ブラディ・コーベットの初監督作品にして、ヴェネチア映画祭でジョナサン・デミ監督に絶賛されたということで食指が動きました。


原題『The Childhood of a Leader』は原作のタイトルである「一指導者の幼年時代」。
ベルサイユ条約締結のため、アメリカからやってきた政府高官一家の息子プレスコットの幼少時代を描き、彼がいかにモンスターになっていくかを見せていきます。

まず印象的なのがショッキングなまでに鳴り響き不安を煽ってくるオープニングの音楽。
いったいどんなモンスターのお話なのかと思わず構えました。

間もなくプレスコット(トム・スウィート)が教会に石を投げるという事件が発生。
以後、彼の両親やメイド、フランス語の家庭教師などとの日常が描かれ、プレスコットの中で静かに、しかし確実に澱が沈んでいくのを目撃することになります。母親を演じるベレニス・ベジョのうまさもあって、なるほど、これは心もゆがむわなと。
子役のトム君も、普通の子供の表情を見せたかと思うと、いきなり心を閉ざしてみたり、可愛いだけではない確かな存在感を放っているのが凄い。彼の美しさも、重厚感のある映像も映画の雰囲気にマッチしています。
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ただ、ラストが唐突で、え?え?
プレスコット君の話じゃなかったの?と一瞬唖然
でもその顔にほくろを見つけた瞬間、あーそういうことかと納得したんですよね。

同じように狐につままれた感じで見終えた人も多いのではないかなぁ。

あのラスト、時間の経過をわかりやすく提示してくれたら親切だと思うんですが
まぁしかし、説明が少ないからこそ謎が解けた瞬間の満足感もあるという作品でしょうね。
プレスコットが女の子と間違えられても髪を切るのを嫌がったのにも理由があったのだと
後から気づくことも多かった。
パティンソンがそんなちょい役ではないわなと早々に気づくべきでした。


なかなかにインパクトのある秀作でしたね。
不穏な空気が癖になりそうなのでw、監督の次の作品も楽しみにしたいと思います。


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