映画の感想や好きな俳優の情報を発信します。新作以外はネタバレあり。
『パトリオット・デイ』 ボストンマラソンテロ事件で強固になる愛国心
2017年05月04日 (木) | 編集 |
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パトリオット・デイ
(2016)アメリカ
原題:Patriots Day
監督:ピーター・バーグ
脚本:セオドア・メルフィ
出演:マーク・ウォールバーグジョン・グッドマン/ケヴィン・ベーコン/J・K・シモンズ/ミシェル・モナハン
【あらすじ】
13年4月15日。ボストン警察の殺人課に所属する刑事トミーはボストンマラソンの警備にあたっていた。50万人の観衆で会場が埋め尽くされる中、トミーの背後で突如として大規模な爆発が発生し・・


【感想】
『ローン・サバイバー』から快進撃を続けるピーター・バーグ監督が今回選んだのは、2013年に起きたボストンマラソン爆弾テロ事件。膝から下が引き裂かれたカーテンみたいになって車いすで搬送される被害者の様子などショッキングな映像が映し出されたのも印象的でしたが、まもなく犯人と思われる2人の写真が公開され、犯人が潜伏したウォータータウンの民家を捜索する映像などニュースから目が離せない数日間でしたね。
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犯人の特定に関しては、ここでも監視カメラが大活躍。
現場の観衆から集めたスマホ映像などを解析する捜査の鮮やかさには感心しきり。
クールなFBI捜査官を演じたケヴィン・ベーコンと地道で実直なボストン警察の殺人課の刑事トミー(マーク・ウォールバーグ)のキャラクターは対照的で、だからこそそれぞれの役割が強調されてもいます。

タイトルのパトリオット・デイというのはボストン・マラソンがパトリオット・デイに開催されたからというのもあるんですが、事件によってより強固なものになるアメリカ人の愛国心がこの映画のテーマになってるからなんですね。

そのため、犯人側の思惑にはあまり深入りすることなく事件の進展を描き、関わった人々の活躍にフォーカスする作り。
銃と爆弾を武器に抵抗を続ける犯人に果敢に立ち向かう銃撃戦のシーンの緊張感たるや!
警察の勇気には敬意を払うしかありません。
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ただ一つ疑問に思うのは、ウォールバーグ演じるトミーが架空の人物である点。
目の前で起きた事件の衝撃をリアルに伝えるという点では成功してるし、トミーの存在が映画をより人間味のあるものに仕上げていていいんですが、捜査の場面でのウォルバーグの活躍は作り事だったの?と思うと、実録ものとしての信頼性が低下する気がしてちょっと複雑な気分。

それでも、事件解決後のボストン市民の一体感は、ニュースからも伝わるところで、愛をもって事件をポジティブな視点で見つめているのがいい。
日本で「愛国心」というと右寄りなものを想像してしまうけれど、元来愛国心というのは純粋に国を愛するということ。
悲惨な事件を体験して人々が助け合い支え合う姿が感動的で、どんな邪悪な敵にも愛をもって立ち向かうことができると・・
文字にするときれいごとだけど、そのメッセージには心を揺さぶられます。

ただ、アルカイダにしろ北朝鮮にしろ、邪悪な敵の皆さんも彼らなりの愛国心を持っているんだよね、きっと。
愛国心をテーマにするのなら、爆弾犯の動機などにも触れないと偏ったものになるんじゃないかという気はしましたね。
とはいえ、捜査の全容を明かしつつ、事件現場のカオスを緊張感たっぷりに描いた実録スリラーとしては大変面白く見ごたえもたっぷりでした。


お気に入り度4.0


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【映画】ジーサンズ はじめての強盗
2017年04月29日 (土) | 編集 |
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ジーサンズ はじめての強盗
(2017)アメリカ
原題:Going in Style
監督:ザック・ブラフ
脚本:セオドア・メルフィ
出演:マイケル・ケイン/モーガン・フリーマン/アラン・アーキン/アン・マーグレット/マット・ディロン/クリストファー・ロイド

【あらすじ】
鮮やかな銀行強盗の現場を目撃したジョーは、長年勤めた会社の年金がもらえない事態になったことから、自分たちの金を取り戻そうと、仲間に銀行強盗を持ち掛ける・・


【感想】
こちらではご無沙汰してます。引っ越しの予定が少し延びてちょっと中休み。
ということで、モーガン・フリーマン、マイケル・ケイン、アラン・アーキンの共演が話題のクライム・コメディ『ジーサンズ はじめての強盗』を観てきました。邦題凄いねw

これマーティン・ブレストが監督した『お達者コメディ/シルバー・ギャング』(1979)のリメイクなんですね。
オリジナルはお年寄りの哀愁がにじみ出て好きな作品でした。

本作でも、冒頭からマイケル・ケインに年寄りネタやらせて笑わせてくれたり、健康問題やらも仕込んではいるものの
なんだろ、哀愁少なめなのは3人にあまり爺さん臭さがないからだろうか。
アラン・アーキン演じるアル爺さんなんか、まだあちらも現役ですからね。
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今回、老後の暮らしが保障されないという社会問題を含有しているのは時代の変遷というべきか。
実際日本でも年金支給年齢は上がる一方で、老後には一抹の不安があるよね。
年寄りが働こうと思っても、機械化や安い賃金で働く外国人の労働力により、チャンスは減る一方。
穏やかで何もない日常から逃れるための強盗だったオリジナルに比べると設定は随分と世知辛くなりました。
年寄りが犯罪を犯してでも自分で何とかするしかないことが現実的なのが怖い話でもありますね。
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正直友情とか家族の問題とかは表面的で、もっと深められただろうにと思わないでもないですが
この3人がコメディで共演して銀行強盗までやらかしてくれるんだから、そりゃ貴重ですよ。
実際3人の醸し出すケミストリーでそこそこ楽しめるし、お久しぶり!のマット・ディロンが刑事役で出てたり、アン・マーグリットとアラン・アーキンのデュエットまで聴けて、クリストファー・ロイドのお姿まで拝めたのだからありがたや。
観て損はない一本かと。
日本公開は6月24日です。

お気に入り度3.8


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【映画】『ライフ』そいつを地球に持ち帰ってはヤバい
2017年04月02日 (日) | 編集 |
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ライフ
(2017)アメリカ
原題:Life
監督:ダニエル・エスピノーサ
脚本:レット・リース/ポール・ワーニック
出演:ジェイク・ギレンホール/レベッカ・ファーガソン/ライアン・レイノルズ/真田広之/アリヨン・バカレ/オルガ・ディホヴィチナヤ
【あらすじ】
国際宇宙ステーション(ISS)のクルーは火星探査機の回収に成功した。探査機が持ち帰ったサンプルを分析した結果、地球外生命体の存在を示すものであることが判明。喜びに沸くクルーだったが


【感想】
『デンジャラス・ラン』『チャイルド44 森に消えた子供たち』のダニエル・エスピノーサ監督の新作は、宇宙空間で繰り広げられる未知の生命体とのバトルを描くSFスリラーです。

『チャイルド44~』のと聞いたところでちょっと嫌な感じがしてましたが、冒頭からの独白による説明が退屈で、眠りこけそうになりました。でも謎の生命体と対峙するところから一気にスリラーが加速!
むっちゃ怖かったがな。
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生命体と思われるサンプルを調べていたら、そいつが意外な凶暴性を示したことから
「やっちまいな!」になり、「生命体」VSクルーのバトルが幕を開けます。
宇宙空間で繰り広げられるサバイバル劇は確かにエイリアン的。

しかし、本作の「そいつ」はエイリアンよりももっと頭がよさそうで
ヒトデ型の小さな生命体相手に苦戦を強いられるこになるんですね。

タイトルの『Life』はおそらく「生命体」とクルーの命や、生きる力を表現しているんでしょうけど
知力の上回るものが生き延びる これ世の常あるね。

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ジェイク・ギレンホールライアン・レイノルズ他、われらが真田さん等、インターナショナルなキャストが豪華。
スケジュールの都合で主演をジェイクに渡したライアンは、「なるほど時間がなかった」な出演ながら
結構なグロに貢献しております。

スリラーの種類としては「追いかけっこ」がワンパターンなのは少し残念。
「生命体」をやっつけるという決断も意外とすんなりなされているけど、そこもう少しためてクルー感の確執を描いてもよかったかも。
それでも「ヤツ」の能力が未知で、そんなことまでできるのかという恐怖と『遊星からの物体X』的な疑心暗鬼をスリリングに描いていて面白い。最後まで生き延びるのは誰かを予測する楽しみもありますね。

脚本のレット・リースとポール・ワーニックは『デッドプール』のコンビとあって
最後のオチにさり気にコメディを配したのは納得。

冒頭の宇宙ゴミも後半への伏線だったんだなと。


お気に入り度4.0


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【映画】20センチュリー・ウーマン
2017年03月30日 (木) | 編集 |
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20センチュリー・ウーマン(2016)アメリカ
原題:20th Century Women
監督/脚本:マイク・ミルズ
出演:アネット・ベニングルーカス・ジェイド・ズマン/エル・ファニング/グレタ・ガーウィグ/ビリー・クラダップ
【あらすじ】
1979年のカリフォルニア州サンタバーバラ、自由奔放なシングルマザーのドロシア(アネット・ベニング)は、15歳の息子ジェイミー(ルーカス・ジェイド・ズマン)の教育に頭を悩ませ、間貸ししているアビー(グレタ・ガーウィグ)と、近所に暮らすジェイミーの幼なじみジュリー(エル・ファニング)に相談する。


【感想】
『人生はビギナーズ』で、ゲイをオープンにした実の父親の物語を描いたマイク・ミルズ監督6年ぶりの新作です。

40歳で子供を産み、夫とは早くに別れたドロシアは15歳の息子を持つシングルマザー。
息子ジェイミーを心から愛しているけれど「アイラブユー」を連発するタイプでもなく、思春期の息子の冒険にも不安な思いをぐっと飲みこんで様子を見守る、ドロシアはそんな女性。
大恐慌時代を生き抜いてきた彼女は、近所で助け合って子供を育てた自分の時代に習って、身近な2人の女性に15歳になった息子ジェイミーの教育をお願いする。

前作で実の父親を描いたように、今回もドロシアには監督のお母さんを投影
これは育ててくれた女性陣へのラブレターであり、監督自身の青春のひと時を描くヒューマンドラマです。

甘酸っぱくて胸がきゅんとする作品でした。
アネット・ベニングがとにかくいい。
自分が得られなかった幸せを息子には目いっぱい感じて欲しいと願う母親。
さっぱりしてある意味男前な彼女は、その思いをストレートに表現しないことから確執を生むこともあるけれど、次第に親子が心を通じ合わせる過程に静かに感動。くりくりヘアーのルーカス・ジェイド・ズマン君もナチュラルにジェイミーの心情を表現していて巧いです。

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唯一の大人の男性として登場するビリー・クラダップのちょっとずれてるけど誠実な感じとか
赤いヘアーでがん患者を演じるグレタ嬢の切実なパンク感とか、大人と子供のはざまで背伸びしてるエルちゃんとか
出演者のキャラを引き立てる脚本もよし。(アカデミー脚本賞ノミネート)

70年代が舞台ということで、当時流行った音楽もたくさん出てくるし、『カサブランカ』の挿入歌「Time goes by」などドロシアが好んで聴くオールディーズも多くかかって、これがまた心地よいのです。

最近、ニュースで昔は宅配の品を近所で預かり合ったりしていたけれど今はそれがなくなったと言っていた。
この映画の舞台の70年代には、日本にもまだ近所で助け合う風潮があった気がするなぁと、自分の子供時代のことも思いだされる。そんなノスタルジーを引き出してくれるのもこの映画の魅力ですね。

しみじみといい作品。これはお薦め。

お気に入り度4.5

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【映画】エル(原題)
2017年03月23日 (木) | 編集 |
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エル(原題)
(2016)フランス
原題:Elle
監督:ポール・ヴァーホ―ヴェン
脚本:
デヴィッド・バーク
出演:イザベル・ユペール/ロラン・ラフィット/アンヌ・コンシニ/シャルル・ベルリング/ヴィルジニー・エフィラ/ジョナ・ブロケ

【あらすじ】
テレビゲーム制作会社のディレクター、ミシェル(ユぺール)は自宅で覆面の男に襲われる。
警察に通報しないのは、過去を蒸し返されたくないからだ。
その後、犯人と思われる男からEmailが届き、その日の服装をどこかで観ているらしき内容に恐怖を覚えるミシェルは・・


【感想】
ポール・ヴァ―ホ―ヴェンが監督し、イザベル・ユペールがアカデミー主演女優賞にノミネートされたサスペンスドラマ。
DVDで鑑賞しました。

あらすじを見て「あれ?ヒロインはエルという名前じゃないの?」と思った人がきっといると思う。
私も完全にそう思ってました。
じゃタイトルの【Elle】は何かというと、「彼女」という意味のフランス語らしいのね。
常識?すみません。。

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冒頭から強烈な強姦シーン
男が立ち去った後、ユペール演じるミシェルは割れた食器の散乱する床を掃き、湯船につかる。
表面に赤い血が浮かんでくる描写も生々しいけれど、
両の手でそれを揺らして混ぜ、何事もなかったかのように無表情のユペールに
なぜ彼女は静かにことを受け流そうとするのか と ここまでのシークエンスだけですでに衝撃的。

ミシェルが警察に通報しないのは、実は過去に関係があり、彼女は蒸し返されたくない秘密を持っている。
ところが、犯人からと思われるEmailが身近なものの犯行を匂わせたことから、誰がやったんだということに。
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90年代ならば、ヒロインの過去を暴きつつ、犯人を捜しリベンジするエロチックスリラーになりそうだけど
本作はそれだけに終わりません。
レイプをきっかけにミシェルの中で何かが弾け、ある転機とも重なって、彼女に変化をもたらす。

時にユーモアを湛え、ヴァーホ―ヴェンらしいインモラルな部分も盛り込みつつ
湯船のシーンのように、たおやかにことを受け流し前を向くヒロインを筆頭に
女はみんなサバイバーというヒューマンドラマが意外にも爽快でした。
還暦すぎとは思えない美しい肢体にも驚くけれど
ヒロインを辛辣に、でも正直で可愛らしく演じたユペールが最高。
受賞は逃したけど、間違いなくオスカー級!!

お気に入り度4.1



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