映画の感想や好きな俳優の情報を発信します。新作以外はネタバレあり。
【映画】人生はシネマティック!
2017年11月15日 (水) | 編集 |

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人生はシネマティック!(2016
イギリス
原題:Their Finest
監督:ロネ・シェルフィグ
出演:ジェマ・アータ-トン、サム・クラフリンビル・ナイ、ジャック・ヒューストン、エディ・マーサン


【あらすじ】
第二次世界大戦中の1940年のロンドン。コピーライターの秘書として働くカトリンだったが、人手不足で代わりに書いたコピーが情報省映画局の特別顧問のバックリーの目に留まり、新作映画の脚本陣に加わることに。ダンケルクで双子姉妹が兵士を救出した感動秘話の映画化が決まったが・・


【感想】
戦時下のロンドンで、プロパガンダ映画の製作を任された映画陣の奮闘を描くコメディドラマです。

イギリスはゲイや女性、労働者階級など弱者が力を合わせて頑張るお話が得意ですよね。『キンキーブーツ』『カレンダー・ガールズ』『フルモンティ』、最近では『パレードへようこそ』など、実話ベースの秀作がいくつも作られています。
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本作の舞台となるのは映画製作の現場とあって、市井の物語とは少し違うんですけど、ジェマ・アータートン演じる名もないコピーライターのカトリンを主人公にした女性進出の話でもあり、窮地に立たされた人々が、問題をクリアしながら、仲間と心を一つに大きな仕事を成し遂げていくというところも、前述の映画たちに通じるところがありますね。

ただ、カトリンが脚本家として認められる過程が思いのほかスムーズのため、彼女の物語としては達成感がやや薄い。
映画製作の現場でも女性はすでに男性に引けを取らない働きをしていたし、ビル・ナイ演じる往年のスターのエージョントの後釜にその姉がすんなり座るというのもへーという感じで、この時代のイギリス女性の社会的な地位は実際にはどうだったんだろうと、懐疑的に観てしまった。

プロパガンダ映画を求める政府にしても政治的な悪意は感じられず、製作側とも「国民を励ましたい」という思いを共有していたことになります。悪者が登場しないのが本作のいいところではあるけれど、問題打破の物語として観れば物足りないところでもあるかな。

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とはいえ、映画製作の現場が舞台であり、ビル・ナイが安定の可愛らしさでこれでもかの大活躍をしてくれるのだから面白くないわけがない。今まで特に意識したことのなかったジェマも笑顔や泣き顔が美しく好きになったし、お気に入りのサム・クラフリンがちょび髭+丸眼鏡でいつもと違う感じを楽しめました。今回はキュート系のエディ・マーサンの多彩なキャラづくりにも感心。
ノーランの『ダンケルク』を観ていたので、劇中劇にも入り込みやすかったですね。

監督は大好きな『17歳の肖像』のロネ・シェルフリン。
イギリス映画らしいアイロニーを漂わせながらも、笑いあり涙ありで心を揺さぶってくる。
数秒後の命の保証などない戦時下で、「生」の輝きを伝える脚本が秀逸。

空襲が頻発していても映画館で映画を楽しむ人々の姿に、イギリスの懐の深さを見た思いでした。

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【映画】ライク・ア・キラー 妻を殺したかった男
2017年11月10日 (金) | 編集 |
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オーストラリア在住のブロ友guchさんに教えていただいた作品です。
『太陽がいっぱい』のパトリシア・ハイスミス原作の殺人ミステリーとあっては観ないわけにはいきません。
ライク・ア・キラー 妻を殺したかった男(2016アメリカ
原題:A Kind of Murder
監督:アンディ・ゴダード
出演:パトリック・ウィルソン/ジェシカ・ビール/エディ・マーサン/ヴィンセント・カーシーザー/ヘイリー・ベネット


【あらすじ】
1960年代、ニューヨークに暮らす建築家のウォルター(パトリック・ウィルソン)は 富を築いた勝ち組の男。しかし幸せだったはずの結婚生活には暗雲が垂れ込めている。ウォルターは嫉妬深い妻クレア(ジェシカ・ビール)に嫌気がさし始めたのだ。彼の趣味は短編ミステリー小説を書くこと。殺人事件を伝える新聞からインスパイアされた物語をタイプライターに打ち込んでいく。
ウォルターはある殺人事件に興味を持った。
古本屋を営む中年男キンメル(エディ・マーサン)の妻がナイフで惨殺されたその事件はいまだ未解決。
警察はキンメルを疑っているようだが、キンメルにはアリバイがあった。
事件に思いを巡らすうち、ウォルターはキンメルのことが気になって仕方なくなっていく。

原題は『A Kind of Murder』。
「ライク・ア・キラー」とか変な邦題がついてるけど、「ある種の殺人」くらいが意味近いんじゃないかなぁ。
副題の「妻を殺したかった男」は原作小説の邦題ですね。

タイトルからネタバレみたいなものなので書きますが、ウォルターの妻クレアはウォルターとの言い争いの後、危篤の母の元にいくとバスで出かけたまま、翌日、橋の下で死体となって発見されます。

そこが古本屋の妻殺害現場付近とあって、警察は二つの事件の関連を疑い色めき立つのです。
キンメルは妻殺しの犯人なのか、はたまたクレアの死の真相は
ってことで、これがなかなか面白かった。

ハイスミスの原作が出版されたのが代表作『太陽がいっぱい』とほぼ同時期とあって、さり気に通じる部分があります。
ウォルターがリッチで華やかな世界にいる人間なのに対し、妻殺しの容疑のかかるキンメルは小さな古本屋を営むうだつの上がらない男。『太陽がいっぱい』はドロンさまが美しかったですが、貧しいリプリーとリッチなフィリップの対比は物語のキーとなる部分でしたよね。

『太陽がいっぱい』に通じると思ったのは、金持ちウォルターのイノセントな残酷さが描かれる点です。
例えばウォルターはキンメルの店で本を予約する際、キンメルに差し出された鉛筆を受け取らず、自分のペンを取り出して名前を書く。あるいは、事件を執拗に追うコービー刑事の差し出す煙草はスルーで、マイ煙草を吸う。
建築家仲間のタバコは普通に受け取り吸うのに・・です。
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こうした「金持ちの無意識の優越感が貧乏人の憎しみに火をつける」さりげない演出がいい。
パトリック・ウィルソンは、悪気はないけど人の気持ちに無頓着なリトル・チルドレン系がハマるんですわ。
マーさんが陰鬱でサイコパスな容疑者にどんぴしゃなのは言うまでもなく、2人をキャスティングしただけでもこの映画は70%成功。
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自分の頭脳を過信し、周囲に認めさせるために画策する刑事のエゴ含め、三人三様の心理描写が秀逸で、それらが重なり合って新たな罪を生んでいく構図も面白く、俄然引き込まれます。

ただラスト10分くらいから雲行きが怪しくなるんですよね。
キンメルがお金を求めてゆするところなんか、彼の本質から逸脱してる気がしてしっくりこない。
いきなりハードボイルドに移行するのは、その時代を感じさせる演出と理解はできるのだけど、
ノアール調で〆るのなら、ラストシーンに余韻を感じさせる落ち着いたものにして欲しかったなと。

あとキンメルの動機に関わる部分がやや不明瞭なのは残念。
断片的に想像はできるのだけど、トニーとの関係含め確信できない部分が出てくるのです。
私の理解不足を棚にあげてなんですが、勝手に想像するのでなく、腑に落ちる形だったらより満足できたと思います。

それでも雪降るマンハッタンの風景等、緑がかった映像が美しく、ヘイリー・ベネットの歌声(!!)など映画としての雰囲気がとてもよくて間違いなく好きな作品。監督はTVドラマ界で活躍する新鋭のようですが、劇場映画の分野での活躍も期待したいです。
次回作は要チェック!
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【映画】ブレードランナー 2049
2017年10月13日 (金) | 編集 |
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 ブレードランナー 2049(2017アメリカ
原題:Blade Runner 2049
監督:ドゥニ・ヴィルヌーヴ
出演:ライアン・ゴズリング/ハリソン・フォード/ロビン・ライト/ジャレッド・レトー/アナ・デ・アルマス



【感想】
前作から30年が経過した2049年を舞台にした『ブレードランナー』の続編です。
リドリー・スコットは製作総指揮に回り、カナダの新鋭ドゥニ・ヴィルヌーヴがメガホンをとりました。

2049年、前作でレプリカントを製作していたタイレル社に代わって、ウォレス(ジャレッド・レトー)が従順なレプリカント「ネクサス9」を労力として世に送り出している。
ライアン・ゴズリング演じるLAPDの刑事「K」はすでに解任されたタイレル社製の「ネクサス8」をハンティングするブレードランナー。
レンガの壁も平気で破る頑強ぶりからkが生身の人間でないことがうかがえます。
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デッカードがレプリカントか否かは35年に及ぶ議論を呼んできたのに
今度はいやにあっさりと・・と思ったのだけど、いやはや
それがそう簡単でもなくってね。
ハンティングしたレプリカント、モートンの言葉から、kは自分のアイデンティティを模索することになり
私たちは謎を解き明かすミステリーを楽しむのです。



いや~、面白かった。
ハリソン・フォードの登場は思いのほか遅いんですが
彼がそのまんまの役で登場することが貴重だし、逃避行後の思いを知る過程ではノスタルジーも相まって感無量になります。でも監督が凄いのは、単なる懐古主義に終わらせず、映画のさらなる深みに観客を誘ってくれるところ。

デッカードや新ブレードランナーkは勿論のこと
kのバーチャルな恋人AIのジョイ(『ノック、ノック』のアナ・デ・アルマス!)や
ウォレス社で製作される新しいレプリカントらなど
それぞれが背負わされた運命と彼らの葛藤をしっかり描いてくれていて深い。
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結局デッカードはレプリカントなのか?については明白な答えは出していませんが
この映画は彼がレプリカントかどうかを追及する映画ではないのだと思いましたね。
それよりも人間以上に「人」としての人生を渇望するレプリカントやAIの姿が切なく
私たちは果たして彼らの手本になれる存在だろうかと思ってしまいます。

人としてどう生きるかを問う映画なのでしょう。

序盤は正直少し眠くなるところもあるんですが、あの涙は・・等々
言動の一つ一つに意味があったことに気づいて、今はもう再見したい気持ちでいっぱい。

映像と音に言及すれば
ダウンタウンの猥雑とした世界観を継承していて嬉しいし
美しい近未来映像も秀逸で、撮影関連でオスカーに絡んでくることは間違いなし。
地面に響く音響には、自分がそこにいるかのような感覚に陥るし、体感する映画になっている点で
ドゥニ監督のが新しい時代をけん引する監督なのを実感しました。

ロスに降り積もる雪が印象的。
二時間44分という尺ですが、色んなミステリーが解き明かされることもあり
後半長さを感じることはありませんでした。
美しく物悲しい 珠玉の一本です。




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【映画】『ブレードランナー』を大スクリーンで。新作への準備が整いました。
2017年10月07日 (土) | 編集 |
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ブレードランナー(1982アメリカ/香港
原題:Blade Runner
監督:リドリー・スコット
出演:ハリソン・フォード/ルトガー・ハウアー/ショーン・ヤング/エドワード・ジェームズ・オルモス/ダリル・ハンナ/ブライオン・ジェームズ/ジョアンナ・キャシディ

【あらすじ】
植民惑星から4体の人造人間=レプリカントが脱走し、“ブレードランナー”デッカードは、地球に潜入したレプリカントたちを追うが……。


【感想】
新作の前に前作を観ておかなくっちゃと思っていたところ、近所の映画館のレトロ枠でやってくれました。
このレトロ枠というのは不定期の水曜日に古い映画を16時と19時の二回上映してくれるレトロ・ナイトという企画です。二階席もある大きなシアターのグランドスクリーンで上映されてお値段も5ドルぽっきりという、ありがたーいものなんですが、この時間帯主婦にはちと厳しくて、これまでに一度も利用してなかったんですよね。
でも今回は頑張って行ってきました!

『ブレードランナー』はいくつかバージョンがあるらしいですね。
私が唯一観たのがファイナルカット版。他のを観てないので今回観たのがどのバージョンかよくわからないんだけど、バージョン違いのキーらしい「ユニコーンの夢」のシーンがあったので、多分ファイナルカット版だったかも。

総体的な感想は2008年にブログに書いたものとそんなに変わりません。
だけど、スクリーンで観ると静寂感やレプリカント追走劇の迫力と刹那感のどれもが際立って感動もひとしおでした。

もう語りつくされているだろうと思うので書きますけど、
前作では「デッカードはレプリカントなのか?」と示唆する終わり方になっています。

続編では30年間行方の分からないままになっているデッカードを、ライアン・ゴズリング演じる若いブレードランナーが探すという話らしく、ハリソンも出演してるので、必然的にデッカード=レプリカント説の答えも明らかになるわけかな。

おそらくは4年間の命を終えたであろうレイチェルと別れ、自らもレプリカントであることを知ったとしたら・・。
レプリカントを殺す任務についていたデッカードの長い苦悩を思うと胸が痛みます。
今回監督を任せられたのは『灼熱の嵐』『メッセージ』のドゥニ・ヴィルヌーヴ。
アイデンティティを模索する映画を撮り続けるドゥニ監督が、デッカードの葛藤をどう描いているのか、
そしてゴズリングがどう絡んでくるのか、これはもう確認しないわけにはいきません。

というわけで、新作近いうちに観てきます。



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【映画】『エンド・オブ・トンネル』トンネルの先に光はあるのか
2017年10月03日 (火) | 編集 |
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エンド・オブ・トンネル(2016
アルゼンチン
英題:At the End of the Tunnel
監督:ロドリゴ・グランデ
出演:レオナルド・スバラーリャ/ 
パブロ・エチャリ/ クララ・ラゴ /フェデリコ・ルッピ

【あらすじ】
孤独に暮らす車いすのコンピューター・エンジニア、ホアキンの元に、間貸し希望の親子が現れる。2人の姿に亡き妻子の姿を重ねるホアキン。時を同じくして、仕事部屋である地下室の壁伝いに人の声と音が聞こえるようになる。興味本位に盗聴するうち、やがてそれは隣接の銀行の金庫を破るべく強盗団が地下にトンネルを掘る音だと知ることになるが・・・


【感想】
今日は珍しくアルゼンチン産クライム・スリラー。
トム・ハンクス主演の『レディー・キラーズ』もトンネルを掘ってカジノの金庫を破る話だったけど、本作では銀行の金庫を破るべく、悪い奴らが地下にトンネルを掘っている。

この映画が珍しいのは、主人公のホアキン(レオナルド・スバラーリャ)が悪党の一味ではなく、物音を聞きつけた隣の家の住人なこと。
普通なら警察に通報すりゃいいんでしょうが、ホアキンさんはそうしない。
というのも、妻子を失くして以来引きこもってた彼はそろそろお金が尽きてきた。
さらに、間借りにやってきた訳あり母子に妻子の面影まで重ね、親子と自身の未来のため、無謀にも強盗のおこぼれに預かろうと画策するわけです。
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プロの悪党相手に、素人に何ができるのかというのがまずは本作の見どころでしょう。
車いすが必要な人ゆえトンネル内を逃げるときの緊迫度はかなりなもの。
しかし背景が殆ど説明されないため、主人公が善人なのか悪人なのかわからないのはミソ。
妻子が不在なことについても、もしかしたら主人公が殺したのか?と観客をミスリードする。
主人公が母子のために行動するという部分もちょっと唐突な気がしてしっくりこない。

切羽詰まった状況下とはいえ、それはあんまりじゃないか?と思うところもあったりで少しモヤモヤするんだなぁ。
伏線を張り巡らせた脚本はうまいと思うし、先が読めない面白さはあるけど、
サバイバル意識の低い私には、痛快な気持ちになれないのは残念でした。
トンネルの先に光はあるのか?と題したのはそういうところから。

主人公のレオナルド・スバラーニャは渋かっこよくて、演技も秀逸。
でもトンネルの中を這って逃げるシーン
下半身不随のはずなのにちょっと膝を立ててなかったか?細かいか(笑)






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