映画の感想や好きな俳優の情報を発信します。新作以外はネタバレあり。
大人の見る絵本 生まれてはみたけれど
2013年09月24日 (火) | 編集 |
タイトルの「大人の見る絵本」で妄想に走ったあなた残念でした。
今日は小津作品なんですよ。
大人の見る絵本 生まれてはみたけれど(1932)日本
監督:小津安二郎
出演:斎藤達雄、 吉川満子、 菅原秀雄、 突貫小僧、 坂本武、 早見照代 、 加藤清一日本
公開:1932/6
郊外に越してきた吉井家幼い二人の兄弟にとって父親は世界で一番偉い人。
しかしある日、会社で上司にペコペコし変顔までする父親の映った8ミリビデオを見てしまい・・・。


小津安二郎監督によるサイレント映画です。
トーキーの黎明期の32年に、あえてサイレントにこだわり、その完成形を目指したというだけあって
本作のクオリティの高さと面白さに驚きました。

大人の世界の一端を知りショックを受ける兄弟と子供たちを導く両親の普遍的な関係を描いているのですが
30年代という時代のほのぼの感もあいまって、アイロニカルなだけでなく実に優しく可愛らしい映画になってるんですね。
子供たちの日常の描写もユーモアたっぷりでチャップリン映画を観てるよう。
それが日本だから余計微笑ましいんですよね。

子供たちの中には、背中にこんな貼り紙をしてる子供もいてねw

おかしいやら可愛いやら今時の子供は、いくらこの年齢でも嫌がるでしょ。
親の権力がまだ絶対だった頃なんでしょね。

体の大きな、ジャイアン的存在の子供はいつもうずら卵を食べてる。卵は強さの源?
スタローンはきっとこの映画を観て『ロッキー』に応用したんでしょうね(笑)
あと、うずら卵が賄賂みたいな役割をしたりして
子供の間にも、偽大人社会が存在するという描き方も面白い。
子供に現実を教えることは、親にとって時にとても切ないこともあるでしょう。
それでも父は厳しく、母は一歩引いて、でも優しく、ともに子供に向き合うんですね。

現代人が失いつつある家族の形がそこにありました。
ありふれた日常を切り取っただけかもしれないけれど日本人の原点みたいなのをいっぱい感じた作品でした。       



東京物語
2013年01月31日 (木) | 編集 |





恥ずかしながら初小津監督作品です。

東京物語(1953)日本
監督:小津安二郎
出演:笠智衆、東山千栄子、山村聡、三宅邦子、村瀬禪、毛利充宏、杉村春子、原節子、香川京子



地方から老いた夫婦が上京し、成人した子供たちの家を訪ねる。子供たちははじめは歓迎するが、やがて両親がじゃまになって熱海に追いやられる。戦死した息子のアパート住まいの未亡人だけが親身になって面倒をみてくれた。

戦後の日本の家族の親子関係の崩壊を描く本作は、家族をテーマに描き続けたとされる小津作品の中でも代表作とされる一本ですね。
笠智衆、東山千栄子演じる老夫婦が上京し、息子や娘の家を訪ねるものの、都会で暮らす子供たちは忙しさにかまけ、ついには邪魔者扱い。
親をないがしろにする子供たち、親に乱暴な言葉を吐く孫、
戦後の高度成長の中、家族の関係は変わってしまったのだという嘆きが伝わります。





そんな中で戦死した次男の嫁(原節子)のみが、親身に世話をしてくれるという皮肉。
親と暮らす次女(香川京子)の古風な佇まいが本来の日本女性の姿であり
尾道での家族の姿があるべき親子の象徴だったのでしょう。

一見小学生の劇のように見える抑揚のない台詞回しは、小津監督の徹底した指導によるものだそうで、独特のペーソスと味を生んでいます。
そういえば小津を崇拝していると聞くアキ・カウリスマキ監督の淡々とした台詞回しに通じるものがありますね。

昔は子供たちももう少し優しかったのになぁと嘆きつつも会えた事を喜び、自分たちの人生は幸せな方だと笑いあう老夫婦を観ていると、かくありたいと思う一方で、涙がこぼれて仕方がなかった。
多くを求めず穏やかに生きる夫婦の台詞の一言一言が琴線に触れ、親孝行もままならなかった自分自身の後悔ともシンクロしたのかもしれないな。

今回観たのはTCMというクラシック映画専門チャンネルでしたが、解説者によると、『東京物語』がアメリカで知られるようになったのは製作から20年ほどたってからとのこと。
あまりに日本風と思われた本作も今では世界の名作のトップ10に入るほどだとか。
日本古式の家族の姿は古臭くもあるけれど、今も昔も変わらない親の思いや情けに触れ、家族を大事にしたいという思いに駆られる。
日本の美しさも醸しだす本作が、世界で受け入れられるのにも納得の秀作でした。