映画の感想や好きな俳優の情報を発信します。新作以外はネタバレあり。
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【映画】 単騎、千里を走る。
2014年05月16日 (金) | 編集 |




 

単騎、千里を走る。(2005)中国/日本 
英題:Riding Alone for Thousands of Miles
監督:チャン・イーモウ
出演:高倉健/寺島しのぶ/リー・ジャーミン/チュー・リン他


 

ストーリー

高田の元に東京で暮らす息子が入院したとの連絡が届く。長年確執があり面会も拒まれた高田だったが、息子の仕事を録画したテープから、息子が中国の仮面劇の俳優と再会の約束を交わしながら果たせていないことに気づき、単身中国へと赴く・・



 

 日本版『南極物語』で検索し、残念ながら『南極物語』はなかったのですが、代わりに高倉健さん主演の本作を見つけたのでレンタルしてみました。

 中国映画界の巨匠チャン・イーモウが監督し、日本撮影の分は日本のスタッフに任せる形で日中共同で製作された本作は、長年疎遠であった父と息子が最後に心を通わせる究極のヒューマンドラマです。

息子が再会を約束していた舞踏家と会い、三国志の一篇である仮面劇「単騎、千里を走る。」をビデオに収める。
3日くらいでやりとげられると思ったその仕事は、思わぬことから困難を極めることになり、健さん演じる父は言葉も通じない異国の地でひたすら息子の思いを遂げようとふんばります。

 

息子に依頼されたわけでもない、
それが息子にとって重要なことかどうかもわからない。
けれど、父は息子がその地で何を見て何を想ったのかを知りたい
そうすることでしか、息子に近づく術を思いつかなかったんですねぇ。

 



映画に登場する皆さんが本当に素朴でね、

健さんを迎えるために狭い路地にテーブルをいくつも連ねて
村人総出とも思える食事会を開いてくれたり
携帯のシグナルを求めてみんなで坂を上り詰めてみたり
チャン・イーモウの映画には、日本人には想像もできない映像とともに私たちが忘れてしまった素朴さや心の美しさが反映されてるのが好き。
そんな中国で、健さんが少しづつ変わっていきます。
寡黙な彼が自分の目的を語り実直にお願いしたり、わが子に向けるようなまなざしで舞踏家の子供ヤンヤンに向き合う。すべては息子に対しすべきだったこと。その過程が息子との溝を溝を埋めていくのだと感じて もう途中から涙が止まらなくなるのです。
お歳を召して、なお渋い健さんの 思いがけない弱さや素直さを感じさせてくれる奥深い演技もいい。

もちろん山間の色合いや空の青さなど、美しい風景を切り取ったチャン・イーモウの映像も特筆すべきものがありました。

残念ながら三国志にもまったく詳しくなく、「単騎、千里を走る」がどんな一節であるのかもわかりません。でもきっと単身中国にわたり、困難を乗り越え目的に近づこうとする主人公に言葉を重ね合わせているのでしょうね。

心洗われる珠玉の一本です。

 

 

チャン・イーモウ作品ではこちらもお勧め

あの子を探して』(1999)(シネマ・クレシェンド)

 

 

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時代の痛みを切り取る『キャタピラー』
2012年06月04日 (月) | 編集 |
今月は邦画もということで、まずは比較的新しいところから『キャタピラー』を。
主演の寺島しのぶベルリン国際映画祭で最優秀女優賞を獲得しました。




キャタピラー
2010年(日本)
原題:キャタピラー
監督:若松孝二
出演:寺島しのぶ大西信満吉澤健粕谷佳五
増田恵美河原さぶ石川真希飯島大介地曵豪
ARATA篠原勝之


江戸川乱歩の『芋虫』は読んだんだったか、記憶があいまいなのだけど
オムニバス形式の『乱歩地獄』(2005)に収録されていた『芋虫』は観ました。
『芋虫』では、戦争で四肢を失った夫と妻が身体を重ねる姿が
官能的に描かれいびつさが際立っていたけど
戦時中の日本を、それほど感じさせるものではなかったと記憶しています。





さて、本作は久蔵を戦争に送り出すところから始まりますが
やがて久蔵は戦地で負傷し、四肢を失くした達磨さんのような姿で帰還。
勲章を与えられ、人々に生ける軍神として崇められる。
妻のシゲコは仕事の傍ら、夫の食欲と性欲を満たすことに明け暮れるのみ・・。

痛々しいほどに正直な映画でした。
「お国のため」という魔法の言葉に操られ、戦争に立ち向かう人々の姿は
滑稽でさえあり、なんとも虚しい。
中にはシゲコのようにやるせない思いを抱える者もいたでしょうけど
それを表に出せるはずもない、そういう時代。
この映画が正直だと思うのは、まず久蔵が戦時中に犯した蛮行を
断片的に見せていること。
これは邦画ではなかなかできなかったことでしょう。
久蔵がトラウマからPTSDに堕ちていくのも、
日本の戦争映画としては新しい描き方でしょうか。

妻シゲコはというと、こんな姿になっても、食欲と性欲だけは旺盛で
傲慢に振舞う夫を憎みながら、一方では子供に感じるような愛情も感じていく。
それもこれも戦争のためと戦争を憎みながらも
夫に尽くす良き軍人の妻として、人の尊敬を受けることに
辛うじて存在価値を見つけるしか、自分を慰める術が無い。
けれども、そのシゲコの振る舞いは次第に夫を苦しめ、
夫を苦しめることが小さな報復となって、妻の心の隙間を埋めていく・・
結局はともに深く深く傷ついていく夫婦の姿に、戦争の実態を見る思いでした。

シゲコを演じた寺島さんの演技の素晴らしいこと。
その虚しさに共感し、一緒に泣いてしまいましたね~。





誰もが自分を見失うしかなかった戦争の真っ只中にあって
少々頭の弱そうな男を演じた篠原勝行が、唯一
「時代」を傍観する姿が印象的でした。

戦争の痛みを切り取った秀作だと思います。

★★★★

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