映画の感想や好きな俳優の情報を発信します。新作以外はネタバレあり。
オール・イズ・ロスト ~最後の手紙~
2013年11月16日 (土) | 編集 |



賞関係、今日はゴッサム賞でロバート・レッドフォードが男優賞にノミネートの『オール・イズ・ロスト~最後の手紙』を観てきました。

オール・イズ・ロスト ~最後の手紙~(2013)アメリカ
原題:All is lost
監督:J・C・チャンダー
出演:ロバート・レッドフォード
日本公開:2014/3
ロバート・レッドフォードがインド洋を単独航海中遭難した、名もなき男を演じる海洋ヒューマン・アドベンチャーです。 

「あらゆる努力をしたけどだめだったよ。全てをなくしてしまった」
そんなことを綴った最後の手紙を書いたあと、画面は8日前に戻ります。

家具をしつられた自家用ヨットで、水漏れに気づき目覚めた男(レッドフォード)は
ヨットが漂流コンテナにぶつかり船体に穴が開いてしまったことを知る。
そこから始まる、男の壮絶なサバイバルを描く作品です。
監督は初監督作品『マージン・コール』がアカデミー賞脚本賞にノミネートされるなど高い評価を得たJ・C・チャンドラー。レッドフォードとはプレミア上映されたサンダンス映画祭でつながりがあったんですね。

出演者はレッドフォード一人。天下のレッドフォードは独り言も言わないw
台詞により物語を補足することなしに、106分にスリルと希望と絶望感を織り交ぜたチャンドラーは只者じゃない。




 レッドフォード役に名前はありません。
分かるのはしたためた手紙から、彼には家族があるのだろうということ。
海を知り尽くしたプロには、気づけば船に穴が開いていたとか、気づけば嵐だったなんて部分に不満を感じるようだけど、それも主人公のバックグラウンドとして想像できる部分。決してスーパープロのヨット乗りでないかもしれないけれど、少なくとも次に何をすべきかを判断し、冷静に行動する知力を備えた男だということもわかる。だからこそ、彼の行動に一喜一憂し、画面から目が離せないのです。

 台詞がないことで、船を打つ波の音や、窓を叩く雨の音、帆のはためきなど、自然の音が否が応でもクローズアップされますね。見ている私たちも恐怖を共有し、同時に、対峙すべき自然の偉大さを思い知ることにもなります。

70代中盤という歳でこの役を演じきったレッドフォードもまた驚異的です。
ランナウェイ』では風貌の劣化を感じたけれど、本作ではいつしか精悍で美しいレッドフォードが蘇っていた。役者としても凄い人なんだと改めて感じたし、体力的にも厳しかったであろうこの役に挑む役者魂にも感服。

 最後の最後のシーンで、後ろの席のご婦人が喉から搾り出すような声を上げ
同時に私も涙ポロポロ・・

 CG満載のエンタメアクション映画がたくさん作られる中、低予算で作られるインディーズ映画はその対極にあるもの。でも低予算でもこんなに大きな人間力に感動する秀作が作れるんですよね。
レッドフォード主催のサンダンスから新鋭が生まれ、映画界に新たな風を吹き込むことを期待してやまないし、インディーズ映画を支援するレッドフォードの志をリスペクトしたいと思いました。

      

トラックバック一覧

  1. 1. たった1人で、

    • [笑う社会人の生活]
    • September 30, 2014 08:05
    • 17日のことですが、映画「オール・イズ・ロスト 〜最後の手紙〜」を鑑賞しました。 自家製ヨットでインド洋を航海中の男。 突然、海上の浮遊物がヨットに衝突したことから浸水や無線のトラブル、さらには天候悪化に見舞われ・・・ 海でたった1人の遭難劇、ただ それだ...

雨のニューオリンズ
2013年10月10日 (木) | 編集 |




ゾンビマンさんのところで知った『雨のニューオリンズ』を観ました。
シドニー・ポラック監督、ナタリー・ウッド&ロバート・レッドフォード主演の悲しいドラマです。
雨のニューオリンズ(1965)アメリカ
原題:This Property is Condemned
監督:シドニー・ポラック
出演:ナタリー・ウッド/ロバート・レッドフォード/ケイト・リード/チャールズ・ブロンソン/メアリー・バダム

オーウェンという青年がミシシッピーの小さな町に下りたち、下宿屋スターに宿をとる。
サロンも兼ねた宿は、美しい長女アルバ目当ての客で賑わっていたが経営は厳しく、
母親はアルバを金持ちの初老のオヤジの愛人にすることに躍起になっている。
アルバはハンサムなオーウェンに魅かれるが、オーウェンはつれない。
実は彼は鉄道会社の人員整理をするために派遣された男だった。


恐慌の時代の南部の田舎町を舞台に、下宿屋の娘と都会からやってきた青年の恋を描くドラマです。
古い作品ということもあり、今日はネタばれで書いてますので
これからご覧になるかたはご注意ください。




アルバにナタリー・ウッド、オーウェンにロバート・レッドフォード
アルバは田舎町を出たいという思いを抱きながら、それは叶わぬことと諦めてもいる。
男たちにちやほやされ、店の看板娘として華やかに過ごすことで
かろうじて自分の存在意義を見出そうとしてるんですね。
しかし、オーウェンとの出会いがそんなアルバに変化をもたらします。

映画の中に登場する重要アイテムがスノードーム。
ガラスボールの中の雪の世界を夢見心地で見つめるアルバに
オーウェンは「そんなのは偽物だ」と言い放つ。
美しいスノーボールは、ごまかしで覆い尽くされたアルバそのもの

一方、オーウェンもアルバに「仕事は楽しいのか」と聞かれ動揺する。
こうして心を裸にされたもの同士が、共感し合い、惹かれていく過程が秀逸です。

一度は誤解から喧嘩別れをするものの、アルバがオーウェンを追ってニューオリンズに行く形で二人は再会する。ひととき、鳥のように愛し合う二人が微笑ましい。

二人の恋を描くだけならばタイトルは邦題のように「雨のニューオリンズ」でいいはずなのに
なぜ原題が「This Property is Condemned 」というムードもかけらもないものなのかと考えあぐねました。
This Property is Condemned とは、差し押さえのあった家などに使われる法律上の文言で
本作では、数年後、廃墟となったアルバの家に張り紙された紙に書かれていました。

そう、この映画が興味深いのは、アルバの恋の物語を、
数年後に妹のウィリーがトムという少年に語る回想の形をとっていること。



ウィリーは年の頃はまだ13、4なのに、差し押さえられた家に、法律の目をくぐって一人隠れ住んでるんですね。遺品となったアルバのドレスを着て線路を歩くホームレス状態のウィリーはあまりにも悲しい。
それでもウィリーがそこにい続けるのは何故か。
アルバの恋は結局は悲劇に終わり、一家を離散させたけれど、そこには確かに自分の殻を破り
スノードームから飛び出したアルバがいた。ウィリーはそんな姉に憧れてもいたのでしょう。
線路はニューオリンズへと続くもの。
ウィリーの存在により、アルバの悲恋はかつてあった華やかな時代への郷愁とともに、いとしく蘇る。
それは『タイタニック』のラストシーンにも似た感慨をもたらすのです。

息も詰るような閉塞感を演じきったナタリー・ウッドが凄くよかった。

共同脚本にフランシス・フォード・コッポラ
チャールズ・ブロンソンが母親の愛人ながらアルバに思いを寄せるというちょっと変わった役で登場します。


しみじみとして、いい映画でした。ゾンビマンさんに感謝です。







ランナウェイ/逃亡者
2013年09月17日 (火) | 編集 |



『手錠のまゝの脱獄』から、もうひとつ「逃亡」繋がり
ロバート・レッドフォード監督&主演で、元過激派メンバーの逃走を描く『ランナウェイ/逃亡者』です。
ランナウェイ/逃亡者(2012)アメリカ
原題:The Company You Keep
監督:ロバート・レッドフォード
出演:ロバート・レッドフォード、 シャイア・ラブーフ、 ジュリー・クリスティ、 テレンス・ハワード、 リチャード・ジェンキンス、 アナ・ケンドリック、 ブリット・マーリング、 スタンリー・トゥッチ、 ニック・ノルティ、 クリス・クーパー、 スーザン・サランドン
日本公開:2013/10/5
かつて世間を騒がせた過激派、ウェザーマンのメンバーの一人(スーザン・サランドン)が、30年のときを経て逮捕された。これに興味を持った若き新聞記者ベン(シャイア・ラブーフ)が調査に乗り出し、弁護士として暮らすジム(ロバート・レッドフォード)がメンバーの一人であることを突き止める。


日本でも学生運動や赤軍が世間を騒がせていた頃、世界の各地で若者が政府に反対する活動を起こしていた。やがてムーブメントも終わりを告げ、多くの若者も振り上げた拳を下ろし、世間に同調していくのですが、犯罪者として追われる身となってしまっては、そうはいかない。
ロバート・レッドフォード演じるジムは、ベトナム戦争に反対し行動した元過激派グループウェザーマンのメンバーですが、銀行強盗の際に警備員を死なせた罪で30年間FBIに追われているのです。
名前を変え今は弁護士として、11歳の娘とともに暮らすジムの元に、新聞記者ベンがインタビューにやってきたことから、ジムは逃走を始めるという話。



まず、レッドフォードらしいまじめな社会派サスペンスですね。
逃走劇といっても、カーチェイスなどのアクションに走ることなく
過激派として生きた人間の葛藤を、ベテラン俳優陣を惜しげもなく投入し描いています。
特に冒頭のサランドン姐さんの逮捕劇から見ごたえ十分で
登場時間は短いながらも、30年間の逃走に疲弊し、心の平安を求めつつも、
何かを変えようと生きた自分を受け入れるサランドンの渋い演技には舌を巻きました。

真相に迫っていく若き新聞記者ベンを演じるシャイア君もいい。
描く視点によっては、頭の切れるベンの大活躍ということになるのだけど
この映画では、彼は英雄にはなれない。
ベンはジェネレーションギャップの象徴でもあり、その対比によって、ムーブメントの時代を生きた人々の思いを浮かび上がらせるというレッドフォードの演出もうまいです。

ただ、もうひとつその存在感があやふやなのがレッドフォード自身。
ジムの逃走の目的が途中までピンとこないのは、意図されたものであるとして
結果として彼の求めたものにちょっと白けるというか・・。
結局自己チューやん と思ってしまったのは私だけかな。




しかもレッドフォードっていくつやねん。
11歳の娘の父親というのに、絵的にも無理があったし
申し訳ないけど、歳とったレッドフォードは魅力に欠けて見てて辛い。
ジョギングする姿なんて正直、幽体離脱中の抜けがらか、ゾンビに見えたわ。
逃走に備え老体に鞭打ってトレーニングするという痛々しさは出ていたけれどもね。

劇中 ジュリー・クリスティに「歳より老けて見える」と言われていて、
うんうんと大きく頷いてしまった。監督に専念するほうがいいかも。


ということで、今日はこれから映画を観てきて
明日は「幽体離脱」に繋げますw
何を観るか見え見え?(笑)



リンカーン暗殺を法廷劇で描く『声をかくす人』
2012年06月13日 (水) | 編集 |
あのリンカーンはヴァンパイアハンターだった!という『リンカーン秘密の書』の公開にあわせ
今週はリンカーンに関連する映画を観ていきます。
まずは、リンカーン暗殺にまつわる陰謀を法廷劇に仕上げた
ロバート・レッドフォード監督による『声をかくす人』。


声をかくす人
2011年(アメリカ)
原題:The Conspirator
監督:
ロバート・レッドフォード
出演:ジェームズ・マカヴォイロビン・ライト、ケヴィン・クライン
エヴァン・レイチェル・ウッドダニー・ヒューストン



去年の4月の公開時に劇場鑑賞していた作品ですが、記事を書かずじまいになってました。

南北戦争終了間際の1865年、リンカーン大統領は観劇中に撃たれ死亡。
やがて犯人である俳優のブースほか同志である南部の若者数人と
暗殺の密議が行われたとする下宿屋を経営するメアリー・サラットが捕まり
裁判にかけられることになります。
裁判の行方は、、という話。




メアリーを演じるのがロビン・ライト
息子を守りたい気持ちから口を閉ざすメアリーを
ノーメークでストイックに演じています。
裁判でメアリーの弁護を担当エイクンを演じるのがジェームズ・マカヴォイ
戦争を闘った英雄でもある彼は弁護士としてはこれが初のトライアル。
誰もがメアリーの処刑を望む中、エイクン自身も有罪を信じていたのですが、
メアリーと接するうちに、メアリーの無実の可能性を感じるようになり、
懸命に弁護します。求めるものは真実のみ。
同時に、彼は政府の姿勢に疑問を感じ始めるんですね。

正義感に燃える若き弁護士エイクンを演じたマカヴォイの
真摯な演技が光る作品です。
史実を基にしていることから、裁判の結果も明らかなのだけど
映画を楽しむためにここでは言及しません。
ただ、終盤にきてタイトルの『陰謀者』というのが、
リンカーン暗殺者たちを差すだけでなく、
もうひとつ意味を重ねていることに気づくことになりました。

「戦争の時代にあって、法は沈黙を守ることもある」
という印象的な台詞に「ノー」を突きつけ
報復と正義を履き違えてはいけないというストレートなメッセージを託す
社会派レッドフォードらしい作品ですね。見ごたえがありました。

ちなみにこの裁判のあと、市民による陪審員制度が始まったそうです。

日本公開は10月

★★★★