映画の感想や好きな俳優の情報を発信します。新作以外はネタバレあり。
ロジャー・コーマン『侵入者』
2012年12月28日 (金) | 編集 |


 





侵入者(1962)アメリカ

原題:The Intruder 監督:ロジャー・コーマン
出演:ウィリアム・シャトナー、フランク・マクスウェル、ベヴァリー・ランスフォード、 ロバート・エムハート、レオ・ゴードン、チャールズ・ボーモント


学校における人種隔離が廃止される前日、南部の町に一人の男がやってくる。
男の名はアダム・クレイマー(ウィリアム・シャトナー)。
自らを改革推進者と名乗るこの男、黒人差別撤廃に反対する白人至上主義者だ。
男は地域住民を扇動してゆくが・・

 『コーマン帝国』を観たときに気になってた一本、ようやく観ました。
本作が作られた1962年というのは、公民権運動により差別撤廃にむけ社会が動き始めた頃ではあるものの、64年の公民権法制定の前でもあり、南部ではまだまだ厳しい差別が残っていたはず。
そんなときに、南部でロケを敢行し人種差別問題に真っ向から挑んだコーマン先生はチャレンジャーですね。
 ロケ中には殺人事件が起こったり、危険な目にもあい、
しかも興行にも失敗という痛い映画になったらしいのね。




しかし扇動者に煽られ差別心を爆発させていく住民たちが
みんなでやれば怖くない的な暴挙に出る様子にはゾッとさせられるし
ウィリアム・シャトナー演じるクレイマーの「実は小者」感も最高。
モノクロ映像を駆使し、地元住民も多数動員しての映像は
当時の空気をリアルに伝えることに成功しています。
公民権運動の過渡期における南部住民の葛藤と、時代の緊張をスリリングに切り取った秀作でした。

今ではIMDbでも7.8の高評価。
世に出るのが少し早すぎたのかな。


フランケンシュタイン 禁断の時空
2012年10月30日 (火) | 編集 |
東京国際映画祭も終わりましたね。
86歳で審査員長を務められたロジャー・コーマン監督に敬意を表し
今日は監督の作品から『フランケンシュタイン 禁断の時空』を。
21世紀で最終兵器の研究をする科学者が、その副作用からタイムスリップし
フランケンシュタイン博士に逢うというSFホラーです。




フランケンシュタイン 禁断の時空
製作:1990年(アメリカ)
原題:Frankenstein Unbound
監督:ロジャー・コーマン

出演:ジョン・ハート、ラウル・ジュリア、ブリジット・フォンダ


2031年、ニュー・ロスアンゼルスで次世代兵器の開発を行う科学者ブキャナン(J・ハート)。だが、その実験によって時空に歪みが生じ、ブキャナンはコンピュータ搭載のスーパーカーと共に19世紀のスイスへ飛ばされてしまう。そこで彼は“歴史上有名な”フランケンシュタイン博士(R・ジュリア)と出会い、彼が創造した人造人間とも遭遇する……。(Allcinemaより)




自分の開発した化学兵器の副作用で時空に歪みが生じ、200年前のスイスにタイムスリップしてしまった科学者ブキャナン(ジョン・ハート)。彼はそこでフランケンシュタイン博士(ラウル・ジュリア)とその創造物のモンスターと遭遇します。
村ではフランケンシュタイン博士の弟が殺され、少女がその罪を着せられ処刑されようとしている。けれども弟を殺したのはモンスターだと知ったブキャナンは、少女を救うべくフランケンシュタインに真実を告白することを迫るが・・・という話。



世界の安全のために研究開発したはずの最終兵器が、相次いで行方不明者を出すことになっても科学に犠牲はつきものと奢った考えだったブキャナンが、フランケンシュタインに遭遇し、科学者としての考えを新たにします。
人の命を奪ってしまう科学ってどうなんだ ってことですよね。

原題の意味もフランケンシュタインが再び解き放たれるという意味でしょうか。
実際ブキャナンが自分自身を「フランケンシュタインだ」と言うシーンもあり
過ちは繰り返されるのだと警鐘を鳴らしているのだと思います。




ま、そんなメッセージ性のある映画だけど
そこは、コーマン先生。
時空が割れるシーンなんかは、なぜか卑猥だしw
モンスターの造形はフランケンというより男前のレザーフェイスっぽいしw
フランケンシュタインの原作者メアリー・シェリー(ブリジット・フォンダ)を
登場させたかと思うと、ブキャナンとHさせちゃうしで結構やりたい放題。
一緒にタイムスリップしたスーパーカーとの会話も楽しくて
娯楽映画として大いに楽しめます。
一方19世紀のスイスの町並みの描き方は音楽の効果もあってとても優雅で
遊びを効かせた部分とのギャップも面白いところでした。

日本でまだDVDになってないのはどうしたわけか。
今のところコーマン最新作(20年前だけど)だし
コーマン先生に敬意を表し、日本でもぜひDVDリリースしていただきたい。


★★★☆

 


 


ワイルド・エンジェル
2012年04月18日 (水) | 編集 |
コーマン帝国』を観て気になったのがこれ。
ロジャー・コーマン映画最大のヒット作であり、
『イージー・ライダー』に繋がる一本だったんですね。


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ワイルド・エンジェル
1966年(アメリカ)
原題:The Wild Angels
監督:ロジャー・コーマン
出演:ピーター・フォンダナンシー・シナトラブルース・ダーンルー・プロコピオマイケル・J・ポラードゲイル・ハニカットダイアン・ラッドディック・ミラー
【ストーリー】
無軌道な暴走族エンジェルを率いるリーダー、ブルースは、警官に撃たれて重傷を負った相棒を連れ戻すため、病院へと潜入するが……。(映画.comより)


ヘルズ・エンジェルというのは1948年に結成されたバイカーのグループで
麻薬や売春などの犯罪にも手を染めてきた組織らしいのね。
って、知らなかったんですけど^^;

この映画が製作された60年代というのは、アメリカン・ニューシネマが幕を開ける頃でもあり
体制に反撥する映画が多く作られていますね。これもそういう一本。
映画に出てくる暴走族は本物のヘルス・エンジェルスのメンバーを使っているというから驚き!

内容は、警察に撃たれ重症を負った仲間ルーザー(ブルース・ダーン)を奪還すべく
ヘルズ・エンジェルのメンバーたちが、病院に潜入するというもの。

グループのリーダー、ブルースを演じるピーター・フォンダがカッコいいのねぇ。
世間に反撥するブルースの姿は、否が応でも
父を憎み、反撥し生きてきた男、ピーター本人の姿に重なります。

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乱痴気騒ぎに身を任せ、道徳心くそくらえな若者の姿や
牧師に理由を問われても、「自由でいたいから」としか答えられないブルースにはやるせなさを感じるところだけど、彼らにとっては紛れもない青春。

ちなみに当時は無名のピーター・ボグダノヴィッチが脚本の大部分と、助監督を担当し
編集はモンテ・ヘルマンだそうです。

なかなか魅力的な作品でした。

★★★☆


『コーマン帝国』に感動!
2012年04月11日 (水) | 編集 |
低予算の帝王、B級映画の帝王と呼ばれるロジャー・コーマンの人生を描くドキュメンタリー
『コーマン帝国』観ました~。

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コーマン帝国
2011年(アメリカ)
原題 Corman's World: Exploits of a Hollywood Rebel
監督:アレックス・ステイプルトン
出演:ロジャー・コーマンジャック・ニコルソンマーティン・スコセッシロン・ハワードジョナサン・デミピーター・フォンダクエンティン・タランティーノデビッド・キャラダインピーター・ボグダノビッチジョン・セイルズイーライ・ロス
【ストーリー】
監督として約50本、プロデューサーとしては400本以上もの作品を世に送り出してきたコーマンは、「早く、安く、利益を出す」という理念のもと、奇抜なアイデアで作品を連発。ジャック・ニコルソン、フランシス・フォード・コッポラ、ロバート・デ・ニーロ、マーティン・スコセッシ、クエンティン・タランティーノらがコーマンの率いる低予算作品の現場から巣立っていった。そんなコーマン門下生らのエピソードや代表作のフッテージとともにコーマンの軌跡を追う。。(映画.comより)

血のバケツ』を観たときに、同時に『リトル・ショップ・オブ・ホラー』を撮ったという話を聞き、
低予算で合理的な仕事をするロジャー・コーマンという監督のことを知りました。
B級映画の帝王とも聞いていたので、私の中で勝手にケチな親父というイメージが膨らんでたのだけど
今回初めて拝見したお姿は、映画の中でも誰かが言ってるように英国の大学教授風で
篠沢教授を髣髴とさせるw穏やかで知的な老紳士なんですね。
こんなまじめな雰囲気で、B級モンスターものを撮ってたのかぁとまずビックリ。

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本ドキュメンタリーでは、ニコルソンやスコセッシをはじめとするそうそうたる門下生たちが
コーマンの映画作りやその姿勢について語ってくれています。
『イージー・ライダー』からインディーズの世界が広がっていったことや
『ジョーズ』や『スターウォーズ』がドライブイン・シアターを消すことになったことなど
コーマンの人生を知ることは、まさにアメリカの映画の歴史を知ることでした。

低予算にこだわったことで、大作と呼べる作品は残してないし
コーマン門下生も目指すものの違いからやがては彼の元を去ることになる。
それでもみんなコーマンを愛しているのが伝わってくるから、後半はもう涙。
コーマンを語りながら思わず泣いてしまうニコルソンにも胸が熱くなりました。

ちなみに本編で紹介されたB級作品はどれも面白そうでしたが
異質なところで、南部の黒人差別を描く『The Intruder』という62年の作品に興味を持ちました。
今では『ヘルプ~』などの南部ものもコメディタッチで描かれる時代になったけど
ムーブメント前の当時にはアンタッチャブルな題材で
コーマンも共産主義者呼ばわりされ、身の危険を感じることもあったのだとか。
IMDbで7.8という高スコアをたたき出す作品ではあるけれども、興行は散々。
もしもこれがヒットしていたら、コーマンの映画人生も違ったものになっていたかもですね。

『コーマン帝国』は4/7から公開中。
アカデミー賞功労賞受賞のシーンでは、タラティーノらとともに
スタンディング・オベーションでコーマンの映画人生を称えたくなりますよ。
★★★★☆