映画の感想や好きな俳優の情報を発信します。新作以外はネタバレあり。
星の旅人たち
2012年05月13日 (日) | 編集 |
マーティン・シーンミリオ・エステヴェスの父子が、『THE WAR 戦場の記憶』以来
実に15年ぶりに父子役で共演を果たした本作は
息子の果たせなかった巡礼の旅を決行する父親の姿を描くヒューマンドラマです。



星の旅人たち
2010年(アメリカ/スペイン)
原題:The Way
監督:エミリオ・エステヴェス
出演:
マーティン・シーンエミリオ・エステヴェスデボラ・カーラ・アンガーヨリック・バン・バーヘニンゲンジェームズ・ネスビットチェッキー・カリョ

【ストーリー】
マーティン・シーン演じる眼科医のトムに、
息子ダニエル(エミリオ・エステベス)の訃報が入る。
巡礼の途中で命を落とした息子に代わり
トムはサンディエゴ・デポステーラへ巡礼の旅に出ることを決める。


本作はエミリオの息子とマーティンが、8年前、スペインに巡礼の旅に出ようとして
準備不足から断念したことからインスピレーションを得た作品だそうです。




シーン演じるトムは、分かり合うことのできないまま
息子ダニエル(エステヴェス)を亡くし、深く傷ついている。
息子は巡礼の旅に何を求めたのだろう。。
遺体の確認に現地に赴いたトムは、ダニエルに代わり
旅を完結させることを決め、バックパックを背負った。






途中出会ったワケあり男女3名と行動をともにしながらの珍道中。
最初はすれ違い、ストレスを感じていたトムが
徐々に彼らを理解し価値観を変えていく
You don't chose a life ,you live one.は、最後に会話したとき
ダニエルがトムに言った言葉。
自然の中に身を置き、ひたすら歩を進めることで、
トムは自分の価値観のなんとたわいのないものであったかに気づきます。
それはダニエルの導きでもあったのでしょう。
『イントゥ・ザ・ワイルド』にも通じるところです。

巡礼者の寝泊りする宿や巡礼の途中で出会う異国の人々に
それぞれの文化を見せたり、外国人から見るアメリカ人の描き方に
ユーモアを交えた作りにも、監督のセンスを感じます。
最後にたどり着く寺院での宗教の儀式の荘厳さには
鳥肌がたつほどに感動し、ひたすら涙でした。

死んでしまった息子と心を通わせる・・というのはおかしな表現だけど
『THE WAR~』の最後があまりに辛かったこともあり
本作で人として成長していく父を、温かく見守るエステヴェスの姿に一層泣けるんですよね。
エステヴェスは父に最高のキャリアを与え、父はその期待に見事にこたえた。
父子で作り上げた最高の作品ですね。

人は誰も完全ではないけれど、努力すれば少し高いところを目指すことができる
そんなメッセージの込められた優しい作品です。
美しい音楽、異国情緒溢れる風景にも癒されますよ。

日本公開は6/3~     
      *旧ブログの記事に加筆しています。


★★★★☆






エミリオ・エステヴェス監督作品『THE WAR 戦場の記憶』
2012年05月12日 (土) | 編集 |

PTSDという言葉が広く使われるようになったのは湾岸戦争からでしょうか。
エミリオ・エステヴェスの3本目の監督作品である本作は
ベトナム戦争後に心に傷を抱えた青年と家族との葛藤を通し戦争の痛みを真っ向から描く作品でした。


 THE WAR 戦場の記憶 1996年(アメリカ)
原題:The War at Home
監督:エミリオ・エステベス
出演:エミリオ・エステベスキャシー・ベイツマーティン・シーンキンバリー・ウィリアムズ

【ストーリー】ベトナムから帰還したジェレミーは、帰国して1年たっても悲惨な体験をぬぐいきれない。必要以上に明るく振る舞う母や、あくまでも厳格な父、自分の事しか考えられない妹に、彼のイライラは募る一方だった。やがて感謝祭の日、ジェレミーの我慢は限界に達し……。(映画.comより)


ベトナムからの帰還兵ジェレミーを演じるのは監督も努めるエミリオ・エステベス
ジェレミーは戦争のトラウマから明らかに心的外傷後ストレス障害(PTSD)を患ってるんですが
当時、人々の間ではまだその病名自体あまり知られてなかったんですね。
 
帰還後一年経っても、ジェレミーはしばしば戦場にいる幻覚に囚われる。
そんなジェレミーを気にする一方で、家族もストレスを募らせていき感謝祭の日、互いのストレスは頂点に達してしまうのです。
 
今のように、病気として認識されていれば、家族の心構えも違うのだと思うけど
家族代々戦争を経験し、自らも戦争を戦った父はジェレミーの弱さを理解できず、世間体を気にしてしまう。

ムードメーカーである母親(キャシー・ベイツ)は、家族の円満は自分の責任とばかりに守り立てに必死になるが、上手くいかない。
 
 

みんなジェレミーを愛し、家族が元通りに機能することを願っているのに結果的には互いの傷を深め合う。

話がこじれにこじれ、個々のエゴに発展していく様子には『大人のけんか』並のおかしみを感じる部分もあったのだけど
これが思いのほかシリアスで、エステベスが描こうとしているのは、安易な家族ドラマでないことを思い知らされます。
 
べトナム戦争で人はどれほど傷ついたか家族を含め、周囲はどれほど理解がないのか痛切に描くこの作品
おそらくはアメリカにとって、イタ過ぎる映画だったでしょうね。
テレビで放映されたのを観たこともないですもん。

ジェレミーの父親を演じるのがエステベスの実の父マーティン・シーン
二人は、まもなく日本で公開されるエステベス監督作品『星の旅人たち』でも確執を抱えた親子を演じています。

しかし『星の~』は、息子の死後に父親が息子を理解していく姿を描くもので今思うと本作の続編とも言えるものだったと気づきます。
 
痛々しい物語ですが、反戦のメッセージというだけでなく家族関係を深く描く秀作でした。
未見の方は『星の旅人たち』の前に、ぜひご覧ください。
 
★★★★☆