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『ザ・マスター』の謎を考える
2013年03月25日 (月) | 編集 |





ポール・トーマス・アンダーソン監督の『ザ・マスター』が日本公開になりました。

第二次世界大戦の帰還兵フレディと新興宗教コーズの創始者ドッド(マスター)との
出会いと交流を描く作品。
コーズのモデルとなるのが、トム・クルーズも信仰する実在の新興宗教、サイエントロジーということでも話題になりました。


初見の感想は別ブログで書きましたが
今回は、頭から離れないいくつかの疑問点を取り上げながら
そこから導いた自分なりの妄想解釈をまとめてみました。

以下、完全にネタバレにつき、未見の方はご遠慮ください。

      ***********


1950年、コーズの創始者ドッドは、トラウマを抱えたフレディと出会い、独自のセッションでフレディの心の闇を取り除くことに務めます。
そのままに受け取れば、フレディと新興宗教家マスターとの交流
監督の言葉を借りれば2人の愛にも似た物語
戦後の激動の時代にあって、フレディの存在はトラウマに苦しむ多くの帰還兵を象徴するものであり、そんな時期に台頭する新興宗教の実態も興味深く観ることができます。

ただ、気になる点がいくつか。

まず時間の経過が謎なんです。
フレディがドッドと知り合うのも、ドッドがフレディを題材にした2冊目の本を刊行するのも1950年。妊婦であるドッドの妻ペギーのお腹が大きくなる様子はそれ相当なのですが
フレディが服務中に想いを寄せていた16歳のドリスは23歳になり、いつのまにか結婚して2人の子供がいるという。実際にフレディがコーズにいたのはどのくらいだったのか。時間が合わない気がして仕方ない。

また、劇中登場人物の女性だけが全裸になって映し出されるという場面もあり
コーズでの出来事が現実なのかどうなのか解らなくなるんですね。
そして、もしもコーズが非現実だとすると「マスター」は何を意味するのか

終盤、映画館にいるフレディにイギリスにいるドッドが電話をかけてくるシーンがあります。
フレディがそこにいることなど、彼以外に知るはずもないことで、これも非現実的。
映画館で上映されていたのは『キャスパー』で、それも時代が混乱するんですが、キャスパー=幽霊と考えると、マスターも幽霊のように姿のない存在。すなわち、フレディの中に潜む彼自身のスピリットではないかと思えてくる。映画の中の「キャプテンは船から降りないよ」という台詞も、2人の出会いが船であったことを思うと意味深・・って考えすぎかなw

浜辺のマスターベーションシーンに始まり、退役時のロールシャッハテストで全てのものが女性性器(と男性性器)に見えていたりと、フレディの性への渇望は明らか
ドッドが妊婦である妻に、手でイかされるシーンを描くのも、妻の全支配下にあるという以外の意味を感じるところで、ここでもマスター=フレディの構図が見えてくる
フレディは「マスター」に癒しを求め、もがき苦しみ、やがて失望し彼の元を去るけれど、それは彼の精神の葛藤を表しているに過ぎないのかも と思うのです。

しかしフレディとドッドは最後に再会し、ドッドはフレディに心の開放を言い渡します。
ドッドと再会する場所に居る人々が後ろ向きだったり顔がボケてるのも印象的
ずっと妊娠していたペギーのお腹もすっきり。
ラストシーン、砂で作った女性像と浜辺に寝そべるフレディを
最初から何も変わっていない と取るかは観るものに委ねられるところ
彼はようやく心の苦しみから解放され新たな一歩を踏み出す・・ととりたいけれど
ベッドをともにする女性にドッド式の質問を繰り出すフレディを見ると
ハッピーエンドと言っていいかは疑問。
結局はドッド同様に闇を抱え続けるのかもしれない。

とまぁ、長々と勝手な妄想感想を書き連ねました。お付き合いいただきありがとうございました。
ポール・トーマス・アンダーソンの映画は台詞の一つ一つ、画面、音楽に至るまで
緻密に練られてる気がして好きです。


 

■トラックバックいただいてます
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