映画の感想や好きな俳優の情報を発信します。新作以外はネタバレあり。
【映画】『アイ・イン・ザ・スカイ(原題)』アラン・リックマン遺作のドローン戦争映画
2016年04月05日 (火) | 編集 |
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アイ・イン・ザ・スカイ(2015)
イギリス
原題:Eye in the Sky
監督:ギャヴィン・フッド
脚本:ガイ・ヒバート
出演:ヘレン・ミレンアラン・リックマン/アーロン・ポール/ バーカッド・アブディ
日本公開:2016 

 【あらすじ
英国軍大佐キャサリン・パウエルは、ナイロビの爆弾テロ事件の犯人を捕らえるべく、遠隔操作による偵察を指揮している。犯人の拠点と目星をつけた建物で決定的な瞬間を迎え、空爆の指示を仰ぐパウエルだったが・・
 
【感想
アラン・リックマンの姿を見れる最後の作品ということで劇場に駆けつけました。

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ドローンを使った最先端の戦争を描く軍事スリラーというと、『ドローン・オブ・ウォー』が記憶に新しいですが
今回はさらに小さな昆虫型ドローンなんかも登場して、技術の進歩に単純にビックリ。

『ドローン・オブ~』では劇中何度も何度も空爆するシーンがあったけど、今回はなかなかスイッチを押さない。

予告にもあるので書きますが、
彼らが空爆にゴーサインを出さないのは一つには、幼い少女がターゲット内にいてどいてくれないから(汗)・・

監督上手い!と思うのは、フラフープをする少女の姿をドローンが早くから捉えていて、緊張した司令室の中でその子がオアシス的存在になっているというシチュエーションを最初から作り上げていること。
誰もその子を巻き添えにしたくないし、観客もその子の無事を祈らずにおれず、緊張感にも拍車がかかります。
しかし一人の少女を救うことで数百人の市民の命が奪われるとしたら・・
さて軍はどういう決断を下すのかという作品ですね。
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ともすれば会議室の討論会になりそうなところを、ケニアの現場のアクションや、役者のリアクションなど
ときにブラックユーモアを交えた見せ方で飽きさせません。
『キャプテン・フィリップス』で海賊を演じた バーカッド・アブディがナチュラルな演技で現場の緊張を盛り上げて最高。
一発屋じゃなかったことを証明しましたね。またオスカーノミネートもあるかも。


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長年追ってきたテロリストのアジトを掴み、米国の協力を得てドローン偵察を指揮するパウエル大佐を演じたヘレン・ミレン
脚本の時点では男性が想定されていたというこの役にヘレン・ミレンを抜擢した人選の素晴らしさ。
強さと冷徹さの中に女性ならではの優しさもあってかっこいい。
ピアスに薄ピンクのマニキュアも仕事が出来れば男女平等というあえてもの演出でしょう。
「これまでで一番飾り気のない衣装だわ」と仰ったらしい迷彩ユニフォームだってお似合いですから!

アラン・リックマンも台詞の絶妙の間(ま)に上手さが光ります。
知性とユーモアがあって、シニカルだけど確固とした信念を持ち誠実な軍人を
威厳を前面に出したステレオタイプにせず、ナチュラルに演じきったリックマン先生に惜しみない拍手を送りたい。
その美声ももっともっとお聴きしたかった。
ミレンさまとリックマン先生のライン(じゃないってw)のやり取りにも萌えました~。

監督は『ツォツィ』『国家誘拐』のギャヴィン・フッド。後で知ったのだけど中佐役で出演もしています。

最後の判断をくだすまでの過程にモラルや政治的な建前等、現代の戦争の様々な側面を描いてみせるところが非常に知的でスリラーとしても面白い映画でした。







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【映画】トランボ ハリウッドに最も嫌われた男
2016年03月27日 (日) | 編集 |
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トランボ ハリウッドに最も嫌われた男(2015)
アメリカ
原題:Trumbo
監督:ジェイ・ローチ
脚本
:ジョン・マクナマラ
出演:
ブライアン・クランストン/ ダイアン・レイン/ ヘレン・ミレンジョン・グッドマン
日本公開:2016/夏
オフィシャルサイト

 【あらすじ
脚本家トランボはハリウッド黄金期に第一線で活躍していたが、冷戦の影響による赤狩りの標的となり、下院非米活動委員会への協力を拒んだために投獄されてしまう・・・


【感想
先月帰国時に淀川長治さんの本を買ってきて読んでるもので、古い映画を観たくてたまらなくなってるんですが
もうちょっとアフター・オスカーシリーズ続けます。

今日は主演のブライアン・クランストンが主演男優賞にノミネートされた『トランボ ハリウッドに最も嫌われた男』を。
赤狩りに遭いながら『ローマの休日』などの名作を生み出した脚本家ダルトン・トランボの伝記です。

共産主義が社会悪とみなされた第二次世界後の1940年代後半
ハリウッドでも共産主義者を排斥する赤狩りが行われ、ハリウッド10といわれる10人が収監されたこと
その後、ブラックリストに載った多くの映画人がハリウッドでの仕事を失っていったことは周知の事実でしょう。

無茶な時代ですよね。
日本でいうと、共産党の党員は勿論のこと、党を支持するものまでもいきなり捕まって
仕事を失ってしまうということ。

共産主義者が作る映画が社会に何か悪影響を与えるとか、そんな事実もないままに人権を侵害し
冷戦の恐怖を赤狩りに変えた時代の愚かさと恐ろしさ。


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そんな中、偽名を使ったり他人の名義で脚本を書き続けたトランボの奮闘が描かれる本作は
単に彼の才能に感嘆する映画ではなく、その裏には愛すべき家族がいて、
方向を失いそうになるトランボを叱咤し支え続けた妻の愛があったことが感動的。


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トランボを演じるブライアン・クランストンは殆ど知らない役者だったけど
信念の人を深みのある演技で演じていてお見事。
妻役のダイアン・レインと長女役のエル・ファニングも凄くいい。

他人の名前を挙げることで失職の憂き目から逃れようとした人々の葛藤など
赤狩りの実体を非常に分かりやすく描いていて面白いし
ジョン・ウェインやカーク・ダグラス、オットー・プレミンジャーなど知ってる役者たちが
赤狩りにどう係わっていたのかというところ、赤狩りの終焉にも興味津々でした。

こちら本物のダルトン・トランボ。お風呂でまで執筆を続けた根性のひと
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がむしゃらなまでに脚本を書き、生涯かけて闘ったダルトン氏が早くに亡くなったのは
赤狩りの無理がたたったのではと思わずにいられない。
彼の作品は『パピヨン』『ジョニーは戦場へ行った』『ローマの休日』くらいしか観てないので
これから観ていこうと思います。

ジェイ・ローチはおバカ映画から政治的な作品にシフトしてますが
エンタメ的な見せ方を知っているので、分かりやすくていい。

それにしても今年は50年代を描く映画が頑張った年でしたね。

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【映画】黄金のアデーレ 名画の帰還
2015年11月05日 (木) | 編集 |
裏でうらうらシニア選手権やってまして
今日はチャールズ・ダンスを選出しました。
デビュー当時はテレビドラマの出演が多く、レトロ作品として取り上げたいものがなかったので、今日はこちらで新作を紹介することにします。


黄金のアデーレ 名画の帰還(2015)アメリカ/イギリス
原題:Woman in Gold
監督:サイモン・カーティス
出演: ヘレン・ミレン/ ライアン・レイノルズ / ダニエル・ブリュール / ケイティ・ホームズ/チャールズ・ダンス
日本公開:2015/11/27

1998年ロサンゼルス。マリア・アルトマン(ヘレン・ミレン)は、姉のルイーゼの葬式に参列している。マリアは姉が故郷のオーストリア政府にナチスに没収された絵画の返還を求めようとしていたことを知り、弁護士の助けを求めていた・・

『マリリン 7日間の恋』のサイモン・カーティスヘレン・ミレンを主演に
クリムトの名画「黄金のアデーレ」の返還を求めてオーストリア政府に訴訟を起こした女性の実話を描く作品です。


冒頭はお葬式のシーン。
姉へ別れを告げるマリア(ヘレン・ミレン)の喋りと棺に施された星のマークから彼女がヨーロッパからやってきたユダヤ人であることがわかります。

マリアは姉の遺志を継ぎ、ナチスドイツに奪われた「黄金のアデーレ」を取り戻したいと思っている。絵に描かれたアデーレは共に暮らした彼女の叔母だったのです。


これは物凄く面白かった。
映画は絵画を巡る訴訟を描くものですが、単なる法廷ものにはなっていません。
途中フラッシュバックでナチスの支配下にあるオーストリアの状況なども描かれるため、マリアの祖国への思いが痛いほどに伝わるのですよ。

家族を殺され財産を奪われ、たった一人の肉親である姉が死んでしまった今
「黄金のアデーレ」は唯一マリアと家族を結びつけるもの

深い悲しみを背負いながらも、美しいものを好みはつらつとして
正義と家族の絆のため、全てのユダヤ人の悲しみに報いるかのように訴訟に挑むマリアを演じたヘレン・ミレンが圧巻の演技。

マリアを助ける若き弁護士を演じたライアン・レイノルズも、
無力感に苛まれつつも、いつしか自分のアイデンティティに目覚め裁判に身を投じていくランディを熱演。
赤ちゃんをあやす様子が微笑ましくて、実生活でパパになったライアンの素の姿を重ねてしまったな。
奥様は『アデライン、100年目の恋』のブレイク・ライヴリーですもんね。羨ましい。

チャールズ・ダンスは、ランディの法律事務所の長を演じてまして
相変わらず朗々としたお声で、威厳に満ちたお姿を見せてくれています。
最近は軍人など厳格な役が嵌るダンスさんだけど、『ドラキュラZERO』ではこんな怪物を演じてたり、その振り幅の大きさも魅力ですね(笑)


ナチスに奪われた美術品を奪還する『ミケランジェロ・プロジェクト』が一度は劇場公開見送りとされながら上映されることになったのは、本作のおこぼれにあづかったかたちかしら。同じテーマを扱っても描き方はそれぞれなのが面白いですね。

芸術に満ちたオーストリア
映像も音楽も美しかった。

祖国を捨てなければならない人の思いに、深く心を打たれた作品でした。


ヒッチコック
2013年04月11日 (木) | 編集 |



ヒッチコック(2012)アメリカ
監督:サーシャ・ガヴァシ
出演:アンソニー・ホプキンス、ヘレン・ミレン、スカーレット・ヨハンソン、トニ・コレット、ダニー・ヒューストン、ジェシカ・ビール、ジェームズ・ダーシー、マイケル・ウィンコット
 『サイコ』の制作秘話を通し、アルフレッド・ヒッチコックの知られざる素顔に迫る伝記ドラマです。



『サイコ』がエド・ゲインの事件にインスパイアされたというのは、る~さんの記事で知ったのですが、
ヒッチコックの代表作品とも言える『サイコ』製作にあたっては、映画会社からゴーサインが出ず、財産を投げ打つ覚悟で自主制作的にスタートしたというのは意外でした。
そんな作成秘話の中、描かれるのは妻アルマとの関係。



金髪女優にご執心の夫ヒッチコックへのあてつけのように、野心家の脚本家とデートを重ねる妻。
『サイコ』の衝撃のシャワーシーンも、ヒッチのフラストレーションが作り上げたと言っても過言じゃないことを思うと、ヒッチコックのキャリアにおいて、妻の果した役割は大きいですね(笑)
サスペンスの神のような存在のヒッチコックの可愛らしい一面を微笑ましく観ました。




でも『サイコ』での覗き穴そのもののような、ヒッチの本性の描き方も興味深く
ヒッチコックをあまり知らない私にはよい入門編になりました。

当時のスターたちを演じた役者たちの中では、アンソニー・パーキンス役のジェームズ・ダーシーのクリソツ振りが楽しかった。スカヨハは昔の女優喋りを駆使し、意外に芸達者なところを見せてくれました。

アンソニー・ホプキンスはいつのまにこんな巨漢に?と思ったら、肉布団など特殊メイクを駆使してたんですね。シニカルな表情や、ヒッチのシルエットなどイメージはよく演じていたのではと思いますが、その心情などは妻アルマを演じたヘレン・ミレンの方がうまかったですね。

初上映時の様子は楽しかったし、ラストシーンもほっこり
普通に楽しめました。






      

長く熱い週末<未>
2012年04月07日 (土) | 編集 |
今日もグッド・フライデイ繋がり。
ロンドンを舞台に、暗黒街を仕切る男が体験することになる、
グッド・フライデイからの二日間を描く日本未公開作品です。


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長く熱い週末
1980年(イギリス)
原題:The Long Good Friday
監督:ジョン・マッケンジー
出演:ボブ・ホスキンスヘレン・ミレン、エディ・コンスタンティーヌ、デイヴ・キング、ピアース・ブロスナン


ロンドンの暗黒街を牛耳るハロルドを演じるのはボブ・ホスキンス
美しく賢い愛人(ヘレン・ミレン)と暮らすハロルドは
更なるビジネスの拡大を図るべく、ニューヨークマフィアのチャーリーと契約を交わす段取りだ。

ところがハロルドの周りで思わぬ事件が続けざまに起きる。
昔馴染みでもある部下が殺され、ハロルドを狙ったと思われる爆破事件が続発
誰が何のために?しかも、なんだってこんな大事な時に!!

日本未公開、未DVD化ながらトマトメーター95%、
英国誌が選ぶ「犯罪映画」オールタイム・ベスト25の19位に選ばれるなど
高い評価を得ている作品です。

ハロルドを亡き者にしようとしているのは誰なのかを追っていくストーリーだけど
一連の事件の原因となるものが冒頭で描かれるというのも構成の面白さです。
殆ど台詞のないそのシーンは、情報が詰まっているため一瞬たりとも見逃せません。

単純にグッド・フライデイからの二日間を描く作品かと思いきや、
ハロルドが裏切り者をユダと呼んだり、手に杭を打つシーンがあったり
ちゃんと「キリストの受難」を投影しているんですね。
何よりも理不尽なラストシーンに、その意味合いを痛感させられるのも上手いところで
ホスキンスさんの万事休すの表情が最高でした。

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人気の理由は、ホスキンスさん演じるハロルドの魅力にもあるでしょうね。
オールドファッションで残虐性もあるけれど、仲間を大事にし義理人情に厚いハロルドのクルクル変わる表情に目が離せない。
ヘレン・ミレン演じる愛人ビクトリアも、死の危険におののきながらも、ハロルドを男前にサポートする姿が健気でカッコいい。
脇ではまだ駆け出しの若きピアース・ブロスナンが色気と残忍な不気味さを漂わせるIRAのテロリスト役で登場します。
プールのシーンでギャランドゥーな裸体とともに、なかなかのインパクト(笑)

テーマ曲となるフランシス・モンクマンのスコアもアップテンポでカッコいいんですよね~。
どこかで聴いたことあると思うのだけど思い出せない。判る方いますか?
曲は30秒くらいから始まります。


これは面白かった。DVD化を希望したい一本ですよ。


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