映画の感想や好きな俳優の情報を発信します。新作以外はネタバレあり。
【映画】『彼は秘密の女ともだち』オゾン監督ならではのエンディングだけど解釈が分かれてるのが面白い
2016年04月29日 (金) | 編集 |
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彼は秘密の女ともだち(2014)
フランス
原題:The New Girlfriend
監督/脚本:フランソワ・オゾン
出演:ロマン・デュリス /  アナイス・ドゥムースティエ/ ラファエル・ペルソナーズ / イジルド・ル・ベスコ/ オーロール・クレマン/ ジャン=クロード・ボル=レダ 

 【あらすじ
子どもの頃からの大親友ローラを亡くした主婦のクレール(
アナイス・ドゥムースティエ)。深い悲しみに暮れる彼女は、ローラの死からなかなか立ち直ることができない。しかし、残された夫ダヴィッドと生まれて間もない娘を守るとの約束を思い出し、2人のもとを訪ねる。彼女がそこで目にしたのは、ローラの服を着て娘をあやすダヴィッドの女装姿だった。

【感想
女装癖で記憶に新しいのは『リリーのすべて』ですが、本作ではロマン・デュリスが女装癖のあるダヴィッドを演じています。女装時の名前はヴィルジニア。

そもそもは女装癖があったようなんですが、妻の死装束のウェディングドレスを着せたことが、女装癖復活の引き金になったらしい。そのあたりもリリーに通じるものがありますね。
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心から愛した大親友のローラを亡くしたクレールでしたが、女装したダヴィッドとショッピングや食事を楽しむことはクレールにとってローラが自分のもとに帰ってきてくれたような錯覚を覚えるものだったんでしょうね。
一方ダヴィッドも自分の女装癖を受け止めてくれるクレールは、ローラ亡きあと、唯一心を開ける相手だったに違いありません。秘密のデートを重ねるうち二人の心は近づいていく。
でもクレールは自分の中のある秘密に気づくことになるんですね。
ダヴィッドとクレール、そしてクレールの夫ジルとの関係はどうなっていくの?という話
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監督の最近の作品の傾向を見ると、監督はご自分の子供を持つことを模索されてるのかなぁと想像します。

で、勝手に言わせていただけば『ぼくを葬る』『ムースの隠遁』と本作で「父への道」三部作ですね。

個人的にはこれっきゃないという究極のロマンスなんですが、面白いのは、観る者によってエンディングの捉え方が違っているということ。
そのあたり内容に触れずに語るのは難しいので以下ネタバレします。

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危険なプロット
2013年10月17日 (木) | 編集 |



フランソワ・オゾン監督の新作『危険なプロット』は、舞台劇をもとにしたコメディ・サスペンスです。
危険なプロット(2012)フランス
英題:In The House
監督:フランソワ・オゾン
出演:ファブリス・ルキーニ、 クリスティン・スコット・トーマス、 エマニュエル・セニエ、 エルンスト・ウンハウアー、 ドゥニ・メノーシェ、 バスティアン・ウゲット
日本公開:2013/10/19
小説家を目指しながらも果せず、しがない国語教師に甘んじるジェルマン(ファブリス・ルキーニ)は、生徒たちのくだらぬ作文の添削に辟易していた、ところがある日、提出された課題の中から、才能を感じる一作をみつける。
それは生徒クロードが同級生ラファの家で見聞きしたことが書かれているのだが、続きが気になったジェルマンは、クロードに続きを提出させる。やがて小説の書き方を教える課外授業へと発展し、物語の展開を模索する二人だったが。。。



In the Houseという原題はクロードが家の中で起きることのみに興味を持ち、小説の題材にするところからきています。
国語教師が生徒の作文の指導をする。
これだけのことが危険をはらむことになるのは、小説にのめり込む二人が、現実と虚実の境をあいまいにしていくから。
絵に描いたような幸せ家族の歪がクロードによって暴かれ、やがて小説がその歪を広げる役割を果すことになる様子がスリリングで、どこまでいくんだ~とハラハラしながらも巧さに唸ります。
途中思わず「おもろ~」と叫んじゃいましたから。




クロードを演じた エルンスト・ウハウハ。。もとい、エルンスト・ウンハウアーがいいですね。
喜びや優越感を表現するときに、はにかむように口元を上げるのが印象的。
美しいお顔に時々邪悪さを覗かせ、大人を翻弄するしたたかさを見せるものの
その基盤にある寂しさや子供らしさも描かれるため、彼を嫌いにはなれない。

色んな崩壊が描かれる一方で、再生を垣間見せるところが優しく
『裏窓』を思い出すラストシーンにもうまさを感じます。
ま、一方で、新しい形のBL?と、オゾン監督らしさに苦笑いするやらホッコリするやら(笑)

シナリオの持つ力に驚き、物語に翻弄されることに快感を感じる知的なエンターテインメントでした。

      



オゾン監督の描く母性と父性『ムースの隠遁』 :三大映画祭週間 特別上映作品
2012年08月04日 (土) | 編集 |
さて、三大映画祭週間 乗っかかり企画一本目は
特別枠として上映されるフランソワ・オゾン監督の『ムースの隠遁』を。
他界した恋人の子供を宿し、世間から離れ暮らすヒロイン、ムースが
ある結論を出すまでを描くヒューマンドラマです。






ムースの隠遁
2009年(フランス)
原題:
Le refuge 
監督:フランソワ・オゾン
出演:イザベル・カレルイ=ロナン・ショワジーメルビル・プポー


 
ムース(イザベル・カレ)とルイ(メルビル・プポー)は幸せなカップルだったが、
いつしかドラッグに溺れルイが急死、同時にムースは妊娠を告げられた。
ルイの葬儀の場で、ルイの両親から堕胎を示唆され、
傷ついたムースはパリから遠く離れた町で一人隠遁生活を送り始めた。
数ヵ月後、お腹の大きくなったムースのもとをルイの弟ポール(ルイ=ロナン・ショワジー)が訪ねる・・・。






邦題のムースというのはヒロインの名前。
ムースはお腹の赤ちゃんは恋人の生まれ変わりと感じ
赤ちゃんの誕生を楽しみにしているのだけど
それは恋人との再会を待ち望むようなもので
母性というのと少し違う気がします。

そんな時に現れたルイの弟ポール。
実は彼はゲイなのだけど、ある理由から母体との繋がりに特別の思いがある。


見終えた時の率直な感想は、オゾン監督らしいゲイ視点だなぁということでした。
ともすれば、母性軽視とも思える描き方なんですが
ムースの出す結論も、母親としてのひとつの愛の形かもしれないと思うようになりました。

人間、妊娠したからと言って、必ずしも速攻母性を獲得するわけでもないんでしょう。
愛する人と共にいて、お腹の赤ちゃんへの愛情も育くまれていくのかもですね。

オープン・ゲイであるオゾン監督は
『ぼくを葬(おく)る』でもそうだったけど
自分の子供を持つということに大きな関心があるのかなぁと思いますね。

2009年のサン・セバスチャン国際映画祭審査員賞受賞。

アブノーマルかもしれないけれど、男女それぞれの
新しい「命」への思いが詰まった繊細な作品でした。

★★★★

赤ちゃんはやっぱり天使『Ricky リッキー』
2012年07月26日 (木) | 編集 |
今日は子役が可愛い映画ということで、
フランソワ・オゾン監督の『Ricky リッキー』を。




Ricky リッキー
2009年(フランス/イタリア)
原題:
Ricky
監督:フランソワ・オゾン
出演:アレンクサンドラ・ラミーセルジ・ロペスアンドレ・ウィルム
ジャン=クロード・ボル=レダ
メリュジーヌ・マヤンス


 
娘のリザと暮らすシングルマザーのカティ(アレクサンドラ・ラミー)は、
勤め先の工場の新入り外国人パコ(セルジオ・ロペス)と出会い、一緒に暮らし始める。
間もなく赤ちゃんを授かり、リッキーと名づけるが
何故か泣いてばかりのリッキーに二人は疲れ果て、やがてパコは家を出る事態に
そんなとき、リッキーの背中に翼が生えはじめ、やがて部屋を自由に飛び回るようになるが・・


バツイチ同士の結婚が、翼の生えた赤ちゃんの誕生によって揺らぐという話です。
オゾン監督には珍しいファンタジーな題材だけど、
描かれるのは母性であり、家族の再生ですね。



リッキーがとにかく可愛い。
赤ちゃんが可愛いのは、生き抜くために備わった生けるもの全ての特典であり、
両親の愛情を受け、家族を形成していくための源でもあるよね。

ところが、本作のカティとパコは「親」としては未熟。
結婚前のカティは娘のリザを置いて、新しい恋人パコとのデートに夢中になる
女の身勝手さの描き方において、オゾン監督はちと厳しい視点を持ってますね。

赤ちゃんを授かってからも、何故か泣き止まないリッキーに疲れ果てるカティ。
やがて背中にアザのようなものを見つけ、パコの虐待を疑うと
パコは怒って家を出てしまう始末。

けれどもアザかと思った背中の部分から翼が生え始めると
カティは母親の表情を見せ始めるのね
手羽w(これが意外にグロい)の長さを測ったりする様子はシュールだけれど
初めて翼を羽ばたかせ空を飛ぶリッキーを見つめる瞳は
驚きながらも子供の成長に目を細める親の姿と変わりない。
赤ちゃんの誕生に自分の存在危機を感じていた娘ちゃんも
ママを助けようと、懸命にリッキーの世話をしていてけなげです。

でも、空を飛ぶ赤ちゃんを世間が放っておくはずもなく
映画はある事件を迎えることに・・



この映画の中のリッキーの役割はなんだったのか
それはやはり「翼」に象徴されるように「天使」だったんでしょうね。

未熟な両親への予行練習、、と言うと変かもしれないけれど
ぎこちなかった家族がリッキーの出現により揺さぶられながらも
結局は心を繋げていく。

最後は、パコのバイクで登校する娘ちゃんが、
パコの背中に回した手に力を込める
それだけで新しい家族の再生を感じさせる素敵なシーンだよね。

クライマックスで空を羽ばたくリッキーに向けるカティの瞳は
成人し親元を離れるわが子を、寂しいけど誇らしくみつめる母のそれに似て
ラストシーンの柔らかな表情に重なりました。
子育てに疲れた夫婦、これから親になる若いカップルにもぜひ観てほしい作品です。


       *旧ブログ記事を移動、加筆しています

★★★☆