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マリア・ブラウンの結婚
2013年01月28日 (月) | 編集 |


ニューシネマの旗手として、37歳の生涯を終えるまでに、年齢を上回る数の作品を残したというライナー・ヴェルナー・ファスビンダー
没後30年として昨年日本でも監督の作品が上映されたようなので、私も乗じて、
まずは監督の代表作であり、西ドイツ三部作の一本『マリア・ブラウンの結婚』を。





マリア・ブラウンの結婚(1979)西ドイツ
原題:Die Ehe der Maria Braun
監督:ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー
出演:ハンナ・シグラ、クラウス・レービッチェ、イバン・デニ、ギーゼラ・ウーレン、エリザベト・トリッセナー


時下で結婚式を挙げたマリアとヘルマンだったが、ヘルマンはすぐに東部戦線へと送り出される。戦争が終わってもヘルマンは戻らず、マリアは夫の戦死を知らされる。やがてマリアは黒人兵士ビルと結婚し、平穏な生活を手にするが、そこへ死んだと知らされていたヘルマンが戻ってくる。

第二次大戦後の西ベルリンで混乱の10年を生き抜く悲劇のヒロインを描く作品です。





結婚生活わずか1夜と半日。
瓦礫の中、戦争から戻らぬ夫を探し駅に通っていたマリア(ハンナ・シグラ)は
ある日それをやめ、GIバーで働き始めます。
美貌を武器に、男に身体を許しながらも、
自分の愛は夫にあることを公言してはばからないマリア。
戦死したと思った夫が戻り、あることから夫は獄中生活を送ることになるのですが、
夫の消息がわからないときも、その後も、マリアが男を踏み台にしながら
地位を高めていくのは、夫を支えるためという目的があるからこそ。







でもね、観ていて、マリアは本当に夫を愛しているのだろうかと疑問に思ってくるんですよね。
仕事に没頭し、綺麗に着飾るにつれ、マリアは周囲の愛にもぞんざいになっていく。
ついに大きな家を構え移り住むことになった時、マリアの高圧的な口調はヒトラーをも思わせます。

この後は映画の結末に触れますので、未見の方はご注意ください。

ファスビンダーはマリアの姿にドイツの姿を重ねたんでしょうね。
夫ヘルマンはさしずめ愛国心の象徴でしょうか。

へルマンが自分の無事の証として月に一本の薔薇を送るエピソードもそれを思わせます。
マリアの部屋に飾られた薔薇たちは最初生き生きと美しい。
けれど、終盤には花瓶の薔薇は枯れしおれてしまっている。
思えば一ヶ月以上も前の花がいつまでも美しいはずがなく、当然の姿なのに
夫のためと懸命になっているときには本当の姿が見えないんですよね。
信じてきたものが幻だったと気づくとき、彼女は失った愛の大きさも知るのです。

ラストシーン、ワールドカップを中継するラジオがドイツの勝利を高らかに称える中
マリアが最期の時を迎えるのも象徴的。
戦争ってなんだったんだ。虚しさが残りますね。

途中ため息がでるほどに上手さを感じたし
考えれば考えるほど深みに嵌ってしまえる作品です。
ファスビンダーの世界をもっと知りたいと思いました。