映画の感想や好きな俳優の情報を発信します。新作以外はネタバレあり。
【映画】デンゼル・ワシントン監督&主演『フェンス』
2017年01月26日 (木) | 編集 |
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フェンス(2016 アメリカ
原題:Fences
監督:デンゼル・ワシントン
脚本:オーガスト・ウィルソン
出演:デンゼル・ワシントンヴィオラ・デイヴィス /スティーヴン・マッキンレー・ヘンダーソン/ジョバン・アデポ /ラッセル・ホーンズビー/ミケルティ・ウィリアムソン

【あらすじ】
1950年代のピッツバーグ。ごみ収集員として家族を養うトロイだったが・・

【感想】
  アカデミー賞のノミネーションが発表になりましたね。
今日は作品賞主演男優賞デンゼル・ワシントン)、助演女優賞ヴィオラ・デイヴィス)、脚色賞にノミネートされた『フェンス』を観てきました。オーガスト・ウィルソンの有名な戯曲をデンゼル・ワシントン監督で映画化した家族ドラマです。
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舞台は50年代のピッツバーグ。デンゼル・ワシントン演じるトロイは黒人リーグで活躍したプロ野球の選手でしたが、学もなく、引退後はごみ収集員として妻子を養う日々。昔の栄光を誇りに思いつつも、社会的立場の弱い自分に憤りを感じています。ある日妻ローズから塀を立てることを依頼されたトロイはフットボールに没頭し家の手伝いを怠りがちな息子とともに作業しますが、息子との確執は深くなっていきます。トロイは息子が自分を超えるのではないかと嫉妬していて、また、プロの世界に入れば黒人差別に遭うことも危惧してるんですね。
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タイトルの『フェンス』はおそらくトロイの心のバリアを表すもの。
差別社会で押しつぶされながら生きるトロイは、自分の弱さを見せたくないから家族に威圧的にふるまう。自分を塀の中の王にすることで自尊心と劣等感のバランスに折り合いをつけているんでしょう。

先日トランプがメキシコとの国境に塀を建設する大統領令にサインしましたけど、この映画を観てなんとなく共通点を感じてしまった。トランプは移民を排除すればアメリカが良い国になると言っているけど本当にそうか?
シャットアウトしたつもりで、実は悪は壁の内側にあって、じわじわと人の心を浸食していく気がしてならないんですよね。
相手を理解することを拒み壁を作れば摩擦が生じる。
トロイが自分を遮断することで、家族の溝が深まっていくように。

ただし、映画はマイナスな面だけを描いて終わるわけではありません。
それをどう打破すべきかを示唆しているのが素晴らしいんです。
息子との喧嘩の中で、トロイが息子に突き飛ばされて塀にぶつかるシーンは象徴的でしょう。
トロイは壁を壊さなければならない。それはおそらくローズも同じ。

やがて外からやってきた、家族を脅かす存在に思えたものを受け入れることで、ローズは変わっていく。
最後はその存在(ネタバレしたくないのでこんな表現になりますが)が懸け橋となって、家族の確執を溶かしていく様子に感動します。これは家族の再生の物語。

ただ元が舞台劇ということで会話が多いんですね。
しかもデンゼルは驚くほどにセリフが多いんですが、強い南部訛りのため私には聞き取りにくく困りました。

50年代ほどではないにしろ、いまだに黒人差別がはびこるアメリカ。
昨年の「オスカー・ソー・ホワイト」も記憶に新しいところだけど、デンゼルが今これを映画化したのはそれに対抗する意味があったのかなと勝手に思ったり。

差別を叫ぶ前に、自分たちの渾身の演技で実力を示せばいい!!
デンゼルとヴィオラの演技にはそんな気概を感じます。
ちなみに二人はリバイバル版の舞台劇でも同じ役を演じ、揃ってトニー賞の主演男優賞、女優賞をとってるので、うまさは折り紙付き。
最後、スピリチュアルな意味合いで使われる「道をつける(あける)」という言葉にも、作り手の思いを感じます。
幻想的な演出にもしみじみ感動。今こそ観るべき映画ですね。

登場人物は誰も力強いパフォーマンス。映像もよかった。





お気に入り度★★★★



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【映画】マグニフィセント・セブン(2016)
2016年10月01日 (土) | 編集 |
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 マグニフィセント・セブン(2016 アメリカ
原題:The Magnificent Seven
監督:アントワーン・フークア
脚本:ニック・ピゾラット/
リチャード・ウェンク
出演:デンゼル・ワシントン
クリス・プラットイーサン・ホーク/ヴィンセント・ドノフリオ/イ・ビョンホン/
マヌエル・ガルシア=ルルフォ/
マーティン・センスマイヤー/ヘイリー・ベネット/ピーター・サースガード
日本公開:2017/1/27

感想
黒澤明監督の名作『七人の侍』のハリウッドリメイク『荒野の七人』の再リメイクです。
監督は『トレーニング デイ』『サウスポー』などのアントワーン・フークア

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非道な実業家バーソローミュー・ボークに牛耳られたローズ・クリ―クの町
目の前で夫を殺されたエマ(ヘイリー・ベネット)ら町の住人の依頼により、賞金稼ぎのサム・チザム(デンゼル・ワシントン)を筆頭に7人のならずものが集結する。


「誰にも気を許せない時代」の緊張感をピリピリに漂わせるの酒場のシーンから秀逸です。
無法地帯を生き抜くには必ずしも善人ではいられないわけで、集まった7人も例外ではない。
そんな彼らが雇われて戦ううち、いつしか縁もゆかりもない町のために仕える侍と化す。
ドラマ部分は控えめではあるものの、個々にトラウマや闇を抱えているがゆえに、戦いを通して自分を克服し、仲間と絆を深め命をかける様にグっとくるんだな。
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リメイクとはいっても別ものというだけあって、今回、7人は黒人、アジア人、ヒスパニック、ネイティブ・アメリカンなど多様な人種の集まりとなっています。これも時代の流れでしょうか。
黒づくめのリーダー、デンゼルはさしずめユル・ブリンナー。ユーモアで盛り上げるクリス・プラットはマックイーンでしょうね。
ナイフ使いで惚れ惚れするほどキレのいいアクションを見せるイ・ビョンホン、一回り大きくなった体で敵に体当たりをくらわすヴィンセント・ドノフリオ(あの高い声はなんやねんw)など、各々の個性が光ります。

なんといっても
この映画の核はアクション!
縦横に馬を走らせる銃撃戦の迫力たるや!
今どきこれほどリアルなアクションで魅せてくれる映画も少ないでしょ。
デンゼル・ワシントンの馬上からの銃さばきにも感心してしまった。61歳には見えませんから。
クリスもデンゼルも銃をクルクルっとしてホルスターに収めるのがカッコいい。相当練習したんでしょうね。

最近悪役が多くなったピーター・サースガードは、本作でもジメっとした悪党ぶりがナイス。

残念に思う点は、夫を殺されたエマを除いて町の人々の存在感がやや弱いこと。
これでは新たな悪党が現れたら、住人はまた苦境に追いやられるのではと不安になる。
『七人の侍』は村人に力を感じさせたところが巧かったんだと思う。
『七人の侍』の「白いご飯」に相当するものを求めるのは無理かもだけど、住民との繋がりをもう少し感じられるとよかったね。

でももう一度観たいと思うほど楽しめました。
あの方が生きているのを最後の最後まで期待して待ってしまったけれど・・

日本公開は来年だそうです。


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【映画】『クリムゾン・タイド』
2014年11月14日 (金) | 編集 |



クリムゾン・タイド(1995)アメリカ
原題:Crimson Tide
監督:トニー・スコット
出演:デンゼル・ワシントン/ ジーン・ハックマン/ ジョージ・ズンザ/ ヴィゴ・モーテンセン/ ジェームズ・ガンドルフィーニ/ マット・クレイヴン
クーデターが勃発しロシア情勢は一気に悪化、反乱軍が核施設を制圧した事で世界は第三次大戦の危機を迎えた。米海軍はベテランの艦長と新任の副長を乗せた原潜アラバマを派遣するが・・・。



ドン・シンプソン、ジェリー・ブラッカイマー製作、トニー・スコットがメガホンをとった潜水艦ものです。
艦長にジーン・ハックマン、副艦長にデンゼル・ワシントン
実践豊富で叩き上げの艦長は、エリートで臆せず自分の意見を言うデンゼルさんを最初から警戒。

2人がまさしく水面下で溝を深める中、魚雷攻撃のダメージにより、軍からの指令を受ける通信システムが停止。ミサイル発射の指示が中途半端な状態で止まってしまい、その判断をめぐって2人が完全に対立。
核戦争に突入するかどうかの究極の選択をタイムリミット付きで見せるのだから面白くないわけないですよね。



とにかくハックマン、デンゼルさんのキャラが立ちまくりで、2人の対立に説得力があります。
ハックマン演じる艦長はそもそも黒人エリートのデンゼルさんが気に入らない。
長い間培われた差別精神は簡単には変わるもんではないでしょう。
馬にたとえて差別発言が飛び出したのには「えげつな!」で、両者が溝を深めていく過程がとにかくスリリングで面白い。しかし、人として完全でない艦の長が核ミサイル発射の権限を持つというのには恐怖を感じましたね。
アメリカには赤い州と青い州があるのはご存知でしょう。
コンサバな共和党派が赤、リベラルな民主党派が青
ハックマン派が赤、デンゼルさん側が青のキャップをかぶるシーンは象徴的でした。
ヴィゴやギャンドルちゃんはじめ豪華な共演者たちも、それぞれ究極の判断を迫られる状況を手堅く演じてました。

頑固な指導者が似合いすぎるハックマンですが、本作は彼を必ずしも悪役に描いていないのもいい。
デンゼルさんとて、ときには非情な判断をせざるを得ない。
長い間現場を指揮するハックマン艦長が国を守るという使命感のもと、独裁的になっていっただろうことも容易に想像できますから。
軍記破りのペット持込みなどやりたい放題だけど、ワンちゃんがハックマン大好きだったもんね。
動物に好かれる人に悪い人はいないはず。
ラストシーンの後ろ姿に一抹の寂しさは感じるものの、わんことの穏やかな暮らしを想像して少しホッとした。

私の平和ボケのせいか、核戦争勃発の危機をイメージし難くかったという印象ではあるものの、人間を主体としたサスペンスとして見ごたえありました。



デンゼル・ワシントン『フライト』
2013年02月08日 (金) | 編集 |




フライト
(2012)アメリカ
原題:Flight
監督:ロバート・ゼメキス
出演:デンゼル・ワシントン、 ドン・チードル、ケリー・ライリー、 ジョン・グッドマン、 ブルース・グリーンウッド
 メリッサ・レオ


旅客機で機長を務めるウィップ・ウィトカーは、高度3万フィートで起きた不慮のエンジントラブルからとっさの判断で不時着に成功し、多くの人命を救う。マスコミはその偉業を称え、一夜にして国民的英雄となったウィップだったが、血液中からアルコールが検出され……。

奇跡的な不時着を成功させ、大惨事となるはずだった飛行機事故から多くの人命を救うことになったパイロットのウィップ・ウィトカー(デンゼル・ワシントン)。
ところが血中からアルコールが検出されたことから、一転、疑惑の人となってしまいます。
彼はヒーロー?それとも犯罪者?

監督は『キャスト・アウェイ』以来実写を監督するのは12年ぶりというロバート・ゼメキス
やっぱりゼメキスにはアニメやCGファンタジーでなく、実写の世界に帰ってきて欲しいですよ。




トラブル発生から不時着までの数分間の緊張と迫力はさすがゼメキスと思うところ。
しかし、この映画はパニックアクションものではなくて
その後のウィトカーの葛藤が主軸なわけですね。

映画の前半、ウィトカーが喫煙のために病院の非常階段に行き
マリファナ中毒で収容されたヒロイン(ケリー・ライリー)と出会うシーンがあります。
そこにやってくる一人の癌患者の台詞が、この映画のテーマでもあったと思います。
「自分が癌になったことも、ウィトカーが事故を経てヒロインに出会ったことも
神の意思によるもの。全ては神にコントロールされている。」

と書くと宗教くさくてピンと来ないし、癌患者のたわごとと軽く見過ごせるシーンなんですが、
これが意外にもあとに大きな意味を持ってくるのです。

神に象徴されるのは結局は人としての尊厳。
そう気づくとき、映画はとても爽快で感動的なものになりました。

適度にユーモアを交えているのもゼメキスらしさでしょう。
コメディ部門を担当するのはジョン・グッドマン。デンゼルとのタッグが痛快です。
 ドン・チードルはウィトカーを無罪に導こうとする弁護士役。
登場人物中、ウィトカーのことを本当に考え、正しく導く者は誰なのかを見極めながら鑑賞するのもいいでしょう。

アカデミー賞脚本賞ノミネート
珍しく意思の弱いグレイゾーンの主人公を演じたデンゼル・ワシントンですが、最後にはきっちりカッコいいところを見せてくれます。アカデミー主演男優賞にノミネート

日本公開は3/1~

★★★★