映画の感想や好きな俳優の情報を発信します。新作以外はネタバレあり。
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【映画】『ザ・ステイトメント(原題)』マイケル・ケインは哀しき逃亡者
2015年03月27日 (金) | 編集 |

南米の強豪チームが活躍するサッカーのワールドカップの中継を、モサドがナチ残党の捜索に利用していると言うのが話題になったことがあります。
『ブラジルから来た少年』などでも描かれているように、ナチスドイツ崩落後、ナチス幹部の一部は南米に逃亡。そのため、アルゼンチン側にいながらドイツの勝利に歓喜する90歳超えの老人は、ナチス残党の可能性があるとしてスクリーンをチェックしているというんですな。
そういう人がスタジアムに出向くかというのははなはだ疑問で、信憑性には乏しいところですけど・・・

前置きが長くなりましたが、今日紹介するのは、ちょいと変則なナチ残党もの。
フランスのヴィシー政権下でナチスドイツに協力し戦犯となった元フランス人オフィサーの逃亡生活を描く作品。ブライアン・ムーアの原作小説『逃走』をノーマン・ジュイソンが映画化した社会派スリラーです。




ザ・ステイトメント(原題)(2003)カナダ、フランス、イギリス
原題:The Statement
IMDbデータ


冒頭、モノクロ画面で描かれるのは1944年フランスで起きたユダヤ人迫害のシーン。
その後映画は現代にシフトし、カフェで封筒を受け取る一人の老人を映し出します。老人は冒頭のシーンで指揮をとったフランス人警察ピエール・ブロッサード(マイケル・ケイン)。
7人のユダヤ人を殺した罪で死刑判決を受けるも逃走し、40年以上に渡って逃亡生活を送るブロッサードですが、ここに来て彼の周囲に不穏な空気が立ち込めます。
カフェを出たブロッサードは見知らぬ男に追われ、殺されそうになるところを咄嗟に射殺。
男の車からは「ブロッサードをユダヤ人殺害の罪で処刑する」との声明文(statement)が見つかります。ブロッサードの命を狙う組織とは?彼は逃亡生活を続けることができるのか? 


この映画、面白いのが、ブロッサードの暗殺を目論む組織自体をすぐに明かさず、ミステリー仕立てでその実態に迫っていくところ。それにブロッサードの逃亡を密かに助ける組織が複雑に絡み合う点が不思議な緊張感を生みます。

実はこれ2003年の作品ながら、日本では未公開でソフトにもなってないので、半分明かしますが、ブロッサードを匿い、経済的に支える組織のひとつがカトリック教会なんですね。その表向きの理由はブロッサードが信仰に篤いクリスチャンであることを挙げているのだけど、ブロッサードの台詞として無宗教の共産主義を非難していたりと、ナチスとヴァチカンの関係を垣間見せていて、奥が深い。ブロッサードは罪の意識に苛まれてはいるものの、懺悔し、神に赦されればいいと思っていて、それもある意味キリスト教批判に取れます。



マイケル・ケインは 心臓に問題を抱えながら逃亡を余儀なくされる哀れな老人ながら、危険が迫れば簡単に人を殺し、時にはキレて妻を脅してみたりと、身勝手で冷徹な面を併せ持つモンスターを好演しています。自分は教会の集会にもいけないと嘆くブロッサードに「あなたは隣に黒人が膝まづくのが許せないだけでしょ」と、妻の言葉でさりげなく彼のレイシストな一面を明かす脚本もよし。


共演者はティルダ・スウィントンシャーロット・ランプリングキアラン・ハインズアラン・ベイツなど実力者ぞろい。





両方の鼻から煙草の煙をプハーーッと吐き出す男前の裁判官ティルダと大佐(ジェレミー・ノーサム)が協力してブロッサードを追いつめるところは探偵ものの趣。しかしなんで裁判官と大佐が?と、フランスの司法とかの仕組みがよく解らない私には戸惑う点も多かったんですよね。最後もイマイチすっきりしなかったし。

マイケル・ケインは熱演ながら、ご自身が「過去の出演作で一番嫌い」と言うくらい彼らしくない役どころだったのは残念でした。余裕と気品とユーモアのないケイン様なんてクリープの入ってない・・古いからやめとこw
そもそも、監督はフランス人のナチ公になんで彼を使ったんでしょ って、そこか(笑)


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少年は残酷な弓を射る
2012年07月08日 (日) | 編集 |
ライオネル・シュライバーの原作を女性監督リン・ラムジーが映画化した衝撃のドラマ。
DVDでの鑑賞です。



少年は残酷な弓を射る
2011年(イギリス)
原題:We Need to Talk About Kevin
監督:リン・ラムジー
出演:ティルダ・スウィントン
ジョン・C・ライリーエズラ・ミラー

猟奇的な少年犯罪が起きると、その家庭環境はどうだったんだろうという話になる。
親との関係、育て方に問題があることがわかれば、妙に納得し安心すらする。
しかし、この映画に描かれる少年の場合はどうでしょう。

ティルダ・スウィントン演じる母親エヴァは、
ケヴィンが生まれた瞬間から育児に悩まされることになります。
一日中泣き止まない赤ん坊は、小さなティラノザウルスのごとき。
乳母車に乗せ街に連れ出せば、通行人が
どうして泣かせるままにしてるのかとばかりに、エヴァに無言の非難を向ける。
道路工事現場でドリルの音にケヴィンの声が瞬間かき消されるのを
静けさをむさぼるかのような表情で佇むシーンが印象的です。

幼少期になっても一向にエヴァに懐かないばかりか
エヴァにのみ敵意をむき出しにするケヴィンに
この子はどうなってしまうのかという漠然とした不安を感じるようになるのですが
その不安は、時間軸を交錯させ、ある事件の輪郭を見せる演出から確信となり、
私たちは、緊張しながらその瞬間を待つことになるんですね。
これはもうホラーです。





原題は「We Need to Talk About Kevin」
ケヴィンのことを話し合わないといけない
楽天的な夫(ジョン・C・ライリー)が、もう少し妻の言葉に耳を傾け
あるいは、妻が弱さをさらけ出し、夫婦でとことん話し合っていたら
何か違ったのかもしれないと思う。
夫婦で解決できないときには、公的な手助けも必要かもしれない。
そういう意味では、社会派な問題を含む作品だろうと思います。

「母親としての責任」にがんじがらめにされながらも
子供への違和感からどうしてもその溝を埋められない
母親エヴァを演じたティルダの演技が素晴らしい。
まれにケヴィンが可愛いそぶりをしたときに見せるエヴァの微笑みは本物で
彼女は育児を放棄したいわけでもなく、異常な母親では決してない。
それでも子供は母親の微妙な不安や嫌悪感を察知し、
得られない愛に歪んだ精神を形成するのだとすると、なんとも恐ろしい。
難しさにため息が出る思いです。


親子の関係を緊張感溢れるスリラーに仕立てた本作
後味は悪いですが、ケヴィン役エズラ・ミラーの不敵な演技も印象的で
一見の価値ありです。

★★★★



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