映画の感想や好きな俳優の情報を発信します。新作以外はネタバレあり。
【追悼】ジョン・ハート『The Naked Civil Servant (原題)』
2017年02月05日 (日) | 編集 |
 
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The Naked Civil Servant(原題)(1975) イギリス
原題:The Naked Civil Servant 
監督:ジャック・ゴールド
脚本:クエンティン・クリスプ(自伝)、フィリップ・マッキー(脚本)
出演:
ジョン・ハート/パトリシア・ホッジ

【あらすじ】
強盗仲間を裏切り、スペインで隠れ住む男の元へ二人の殺し屋が現れた。二人の目的は、組織のボスが待つパリへ男を連れていくこと。そこへ誘拐事件に巻き込まれた少女が加わり、奇妙な4人組の旅が始まった……。

【感想】
  ジョン・ハートの追悼最後は、役者ジョン・ハートの名を一躍有名にしたとされる『The Naked Civil Servant』
作家、モデル、役者、パフォーマーなどで活躍したクエンティン・クリスプ氏が1968年に出版した自伝小説の映画化です。
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こちら本物↑

ハート演じるクエンティン・クリスプは、10代の頃から「ホモセクシャル」をオープンにし、化粧にマニキュア、派手な衣装に身を包み堂々と生きてきた人。
まだ女装をする前から、道を歩けば同性愛者に見初められ、そちらへと流れていくのも極自然。
しかし、まだまだゲイに不寛容な時代ということで、時にはあらぬ暴力を受けたり、警察に捕まったり。
それでも、彼はどんなに辛い目に遭っても人を恨むことなく、その時々を飄々と生き抜いていくわけですねぇ。
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ジョン・ハートはいわゆるおかまちゃんなクエンティンを滑稽なほど大げさに演じているのに、不思議と可憐で品を損ねず、内面の美しさを感じさせるのが凄い。もともと小柄で色白なので女装した姿も自然だし、脱ぐとまたきれい。
時代を感じさせる音楽もいいし、どこか可笑しくて、どこか寂しいハートの演技も心地よい。

自分らしく生きるクエンティンの生き方に、ゲイの権利を感じずにはいられません。
長い年月をかけてようやく手に入れたものを、トランプの政策で奪われることがないよう願いたいですよ。

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TVムービーということで、日本ではソフトになってないようですが、youtubeに全編(8本に分けて)アップされてます。タイトルのNaked civil servantは裸体のモデルとして生計を立てることを決めたクエンティンが、自身をそう呼ぶところから。そのシーン含むパートの動画を貼っておきます。






ちなみに続編『An Englishman in New York』でもハートはニューヨークに舞台を移し活躍した老齢のクエンティンを演じているそうです。

若き日のクエンティン 美しい
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お気に入り度3.8


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【追悼】ジョン・ハート『殺し屋たちの挽歌』
2017年02月02日 (木) | 編集 |
The Hit 1984
殺し屋たちの挽歌(1984
イギリス
原題:The Hit
監督:スティーヴン・フリアーズ
脚本:ピーター・プリンス
出演:
ジョン・ハートティム・ロス/ラウラ・デル・ソル/テレンス・スタンプ/フェルナンド・レイ

【あらすじ】
強盗仲間を裏切り、スペインで隠れ住む男の元へ二人の殺し屋が現れた。二人の目的は、組織のボスが待つパリへ男を連れていくこと。そこへ誘拐事件に巻き込まれた少女が加わり、奇妙な4人組の旅が始まった……。

【感想】
  ジョン・ハートの追悼2本目です。
本作でジョン・ハートが演じるのは渋い殺し屋ブラドック。
彼の任務は、強盗仲間を裏切り10年間もスペインに隠れ住んでいたウィリー・パーカー(テレンス・スタンプ)をパリのボスのもとまで連行すること。相棒に若いチンピラ、マイロン(ティム・ロス)、ひょんなことからマギーという15歳(多分ウソ!)の女性まで巻き込んで、4人の奇妙な旅が始まります。
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ところが間もなく、パーカーの落ち着きはらった態度が2人の殺し屋の心をざわつかせるんですね。
マイロンはパーカーが何か企んでいるのではと気が気じゃない
また、ブラドックは、死を恐れていないように見えるパーカーの心を理解できないのです。

殺し屋映画も数々あれど、殺す側、殺される側の心情にここまで踏み込むものは少ないんじゃないでしょうか。
10年間、いつ暗殺者がやってくるかと怯えて過ごしたはずのパーカーは、しかしついにその時が来て、むしろ喜んでいる。
読書家の彼はいくつもの本を読み、運命を受け入れ、最後の舞台を自分の納得のいく形で終わりたいと思っている。
それでも死の受容のステージは、ちょっとしたことで後戻りするのが人間というもの。
テレンス・スタンプはそんなパーカーを見事に演じていて素晴らしい。

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ジョン・ハートはベテラン殺し屋ですが、心優しいゆえの詰めの甘さに、自分が一番落ち込むという複雑な役どころ。
ティム・ロスは若気の至りのどチンピラを奔放かつ繊細に演じていて、3人ともが怪演ですね。
でも本作で最もたくましいのが紅一点のマギー。セクシー投入だけの要員じゃなかったのね。
ブラドックが用なしになったマギーを殺せないのは、単に優しいからだけでなく、マギーのたくましさへの憧憬と尊敬の気持ちがあったのかな。
それぞれの関りが4人の心模様を複雑に絡め合うという卓越した脚本。しかも半分コメディかと思うほどの可笑しみも交えて描き出したフリアーズ監督の演出の素晴らしいこと。

長い旅の終わりを微笑みとウィンクという穏やかな表情で決めたブラドック。
スーツ姿の寡黙なジョン・ハートももちろん最高でした。
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舞台はスペイン。フラメンコギターの音色も心にしみた、これ間違いなく傑作。


お気に入り度4.7

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【追悼】ジョン・ハート『10番街の殺人』
2017年01月30日 (月) | 編集 |
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 10番街の殺人(1971 イギリス
原題:10 Rillington Place
監督:リチャード・フライシャー
脚本:クライヴ・エクストン
出演:リチャード・アッテンボロー
ジョン・ハート/ジュディ・ギーソン/パット・ヘイウッド/イソベル・ブラック/ミス・ライリー

【あらすじ】
アパートの管理人クリスティ(R・アッテンボロー)は、医師と偽って女性に声をかけ、部屋に連れ込んでは次々と殺していた。ある日、上階に住む若い夫婦が妊娠をめぐって争っている事を知り、二人に中絶を持ちかける・・・

【感想】
  ジョン・ハートの追悼に出演作品をいくつか観ます。
まずは初期の出演作品から、リチャード・フライシャーが実際にあった殺人事件を題材に描く犯罪サスペンス。
若い夫婦がアパートに越してきたらば、そこの管理人がとんでも連続殺人犯だった!という怖い話。

カタカナで書くとわからないけど、ジョン・ハートのハートはHurt 痛み。
映画の中で何度も死んだハートは、『エイリアン』の死にざまに代表される身体的な「痛み」はもちろん、広い意味の「痛み」を伴う役が多い気がしますね。
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本作でジョンが演じるのは10番街にあるアパートに越してくる妻子持ちの工員ティム。
妻が新しい命を宿しても、育てる余裕も、堕胎するお金さえなく、そのことがすべての不幸を呼ぶことになるのがなんとも痛い。
結果的に妻はリチャード・アッテンボロー演じる猟奇殺人犯、クリスティの餌食になるが、ティムは「不幸な夫」だけでは済まない。クリスティに丸め込まれ、死体遺棄を手伝い、あげく殺人の罪に問われることになるのです。

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見どころとしては、クリスティを演じたアッテンボローの怪演をあげないわけにはいかないですが
不条理に巻き込まれていくジョン・ハートの浮遊感が、映画を面白くしてるとも言えます。
呆然自失の中、虚脱感、憤り、恐怖、悔恨・・色んな思いが駆け抜ける
のちの『エレファントマン』を彷彿とさせる最後のお姿も印象的でした。

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監督のリチャード・フライシャーはじめじめと生々しい殺人事件を再現するのが上手いですね。
本作の舞台は、実際の事件の現場となったアパートだというから恐ろしい。
薄暗いアパート、死体を埋めた穴を掘り返そうとする犬、泣き止まない子供 
土からのぞく足、壁の中の背中等の演出の不気味さも極まる面白い作品でした。

ジョン・ハートの若く美しいお姿を見れたのもよかったなぁ。
というか、知ってる誰かに似てると思いつつ思いだせない・・



お気に入り度3.8

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