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【映画】ベトナム戦争の傷跡を真摯に描く『グリーン・アイズ(原題)』
2016年06月28日 (火) | 編集 |


面白い映画を観たので日本未公開のテレビムービーですが記録に残します。

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グリーン・アイズ(原題)(1977)アメリカ
原題:Green Eyes
監督:ジョン・アーマン
脚本:デヴィッド・セルツァー
出演:ポール・ウィンフィールド/リタ・トゥシンハム/ジョナサン・ゴールドスミス/ヴィクトリア・ラチモ/レミ 



ベトナム戦争で負傷したアメリカ陸軍兵士(GI)ロイド(ポール・ウィンフィールド)は帰郷を果たすものの職探しに難航。
帰還兵に対する世間の理不尽な対応にも憤りを覚え、戦地入院中に送られてきた手紙で知った「緑の瞳」のわが子を探しにベトナムに戻る。



【感想 
元となるのは、『オーメン』の脚本で知られるデヴィッド・セルツァーによるドキュメンタリーです。
セルツァーはベトナム戦争の孤児を取材するため、サイゴン陥落の2年前にあたる1973年にベトナムを訪ね、
そこで10万に及ぶ混血児が孤児となり、50万人のベトナム人の子供が死んでいくという現実を知り大変なショックを受けたと言います。そうして作られたドキュメンタリーを元に、TVムービーとして制作されたのが本作です。


ベトナム人女性との間に生まれた子供を探しに再びべトナムを訪ねる黒人のロイド
まずは、子供の母親である恋人の実家を訪ねるが、彼女は子供とともにサイゴンに行ったと告げられ
かわりにその母親から愚痴をこぼされる。
多くの兵士は子供を作り、金を送ると言いながら女を捨ててそれっきりだという現実。
タクシーの運転手からは地雷で息子を亡くし、仏教徒なのに骨壺に入れる骨が足りないと嘆かれたり
ロイドは旅の途中で凄まじい戦争の爪跡を目の当たりにします。

特に里子あっせん施設で働く白人女性マーガレットとの会話からベトナム孤児の悲惨な現状を知っていく過程は、セルツァーが受けた衝撃をそのまま表現したものでしょう。
誰もが貧しく作物を育てる農場さえ灰と化したベトナムで、戦争孤児たちが生きることはたやすいことではない。
特に敵国兵との間に生まれた混血児は忌み嫌われ、捨てられ飢えて無情に死んでいくしかなかったんですね。

こういうベトナム戦争が一般市民に与えた影響を描いていて、それだけでも価値があるんですが
本作が素晴らしいのは映画ならではのツイストを加え、ロイドの成長を描くロードムービーに仕上げていること。
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歯に衣着せぬ言葉で厳しい現実を淡々と語るマーガレットに反発していたロイドが、
いつしか価値観を共有し、恋心(多分)を感じていくさまも微笑ましい。

ストリートキッズである少年トゥラングと出会い、まんまと詐欺にあう場面など
ユーモアの中に孤児のたくましさも描かれます。
二人の交流はハート・ウォーミングにして、最後には大きなカタルシスを感じるものへと変わっていきました。
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監督は『ルーツ』などのジョン・アーマン
ロケ地はフィリピンということだけど、市街を見せるシーンで時々ノイズのある生々しい映像が使われるのは
多分当時ベトナムで撮られた映像でしょうね。

タイトルの「緑の瞳」は勿論ロイドが探すわが子のこと
でも黒人とベトナム人のハーフがなぜ緑の瞳?との疑問も沸き、それも興味を持続させる部分。

ロイドを黒人に設定し、マイノリティの視点を入れていたり
マーガレットを(多分)イギリス人女性として戦争を客観的に描いているのもいい。

不思議なのは子供たちはみんなGIが大好きで、ロイドの周りにも子供たちがいっぱいなこと。
「ギブミーチョコレート」と米兵にねだった日本の戦後の子供たちと同じかもだけど
単にたかるというだけない、大きくたくましい兵士は憧れの対象でもあったのか。
あるいは純粋に心の美しさを見抜く力が子供には備わっているのかもしれないね。

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ベトナム戦争映画というと、アメリカ兵が受けた心の傷に焦点が当てられがちだけど
本作ではアメリカが戦争で何をしたのかを直視し、ロイドのフラッシュバックと反省とで、
その悔恨を素直に表現しているのは貴重ですね。
こういう映画が今やっとTCMで放送されたのは、時代が変わったのかなと感じます。
生存するベトナム戦争のベテランが少なくなったのもあるでしょうね。
真摯な反戦映画にして、心温まるヒューマンドラマ。傑作です。










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