映画の感想や好きな俳優の情報を発信します。新作以外はネタバレあり。
【映画】遙か群衆を離れて
2015年11月04日 (水) | 編集 |
さてと、うらうらシニア選手権をはじめます。
これね、英国男優だけでは間が持たないので、急遽ヨーロッパに範囲を広げて
欧州シニア選手権とします(笑)。

何人いけるか分からないので順位はないですが、基本カウントダウンで。
まずは今も現役で沢山の映画に出演し渋い魅力を放つテレンス・スタンプを選出。
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【作品情報】
遙か群衆を離れて(1967)イギリス
原題:Far from the Madding Crowd
監督:ジョン・シュレシンジャー
脚本:フレデリック・ラファエル
出演:ジュリー・クリスティ / アラン・ベイツ / テレンス・スタンプ / ピーター・フィンチ/ プルネラ・ランサム

【ストーリー】
伯父から受け継いだ農場を切り盛りしている若き女主人バスシーバは、羊飼いのゲイブリエル(ベイツ)から求婚されるが、それを断り、女中の恋人だった軍曹トロイ(スタンプ)と結婚する・・

【感想】

トーマス・ハーディの原作小説をテレンス・フィッシャーが映画化した、ビクトリア時代の農場に暮らすヒロインの波乱万丈な生き方を描く大河ドラマです。
今年『偽りなき者』のトマス・ヴィンターベア監督、キャリー・マリガン主演で再び映画化されたものを劇場鑑賞してたので、色々比べてしまいましたが、3人の男に求婚されるさまが唐突な気がして笑ってしまったヴィンターベア版に比べると、170分でじっくり描いた本作はそれぞれの心理描写が明確でストーリー展開がスムーズでした。

ヒロインバスシーバにジュリー・クリスティ
農夫ゲイブリルにアラン・ベイツ、隣の大農場主ボールドウッドにピーター・フィンチ
そして軍曹トロイを演じるのがテレンス・スタンプです。

スタンプは29歳くらいかな。
農場の女中ファニーと恋仲にあって、結婚までしようとしたスタンプですが
式当日ファニーが教会を間違えたことで、恥をかかされたトロイが激怒し2人は離別。

FarFromTheMaddingCrowd2

その後道すがらにバスシーバと出会い、バスシーバの方がトロイの方に熱を上げてしまう。
バスシーバに求婚し返事を待っていた隣の大農場主フィンチは、これをヤバイと思い
トロイに昔の恋人ファニーと結婚する費用を出すからここを出て行けと促します。
しかしそれに反抗したトロイが見せ付けるようにバスシーバに接近し、2人は結婚。
でも悲しいことにトロイはファニーを愛してたんですよね。

ヴィンターベア版ではバスシーバはどうしてトロイに惹かれたんだろうと思ったのだけど
本作ではバスシーバがトロイを深く愛していたことに納得するほどテレンスが危険で奔放な魅力を放ってました。
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ただし、バスシーバに剣の腕を見せるシーンはあかん。
ヴィンターヴェア版ではこのシーンがとても官能的で、
S的なトロイにバスシーバのM的な内面の目覚めを感じさせる大事なシーンだと思ったんですが
スレシンジャー版からは官能を感じらないばかりか、ダサくて笑ってしまった。

後に身を隠しサーカスの一員となったトロイの剣捌きから、バスシーバがトロイの面影を重ねるというシーンがあり、その伏線になってはいるものの、2人の愛が加速するシーンというのが印象付けられなかったのは残念。

比較ついでに書くと、ジュリー・クリスティは結婚なんて興味ないと、独立心旺盛の気の強い前半は良かったのだけど、恋する乙女になってからは失速。
弱さと強さを兼ね備えた柔軟性という意味でキャリー・マリガンに軍配。

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新作ではただのいい人に感じられたボールドウッド役のマイケル・シーンでしたが
ピーター・フィンチは権力を使ってでも老いらくの恋を成就させようとする執拗さが極まっていて見事。

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新作ではマティアス・スーナールツが静かにバスシーバの愛を貫き通すゲイブリエルを演じ、ほぼ主役の存在感でしたが、アラン・ベイツはいい人どまりで印象薄し。

映画全体として観れば、農場の人々や、祭りに沸く民衆など
時代背景を捉えた土地の見せ方が秀逸で、170分という長い作品なのに全く飽きない。
雄大な農場の風景も美しい面白い作品になってました。

ちなみに今回はテレビ放送を録画しての鑑賞でしたが
劇場上映のように、途中インターミッションをとってるのが印象的でした。
 


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【映画】華やかな情事
2015年09月11日 (金) | 編集 |
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【作品情報】
華やかな情事(1968)アメリカ/イギリス
原題:Petulia
監督:リチャード・レスター
脚本:ローレンス・B・マーカス
出演:ジョージ・C・スコット、ジュリー・クリスティ、リチャード・チェンバレン、シャーリー・ナイト、ジョセフ・コットン

【感想】
あるパーティの席で医師アーチー(ジョージ・C・スコット)を見かけたぺチュリア(ジュリー・クリスティ)は、同伴の夫を無視し、アーチーをアバンチュールに誘い会場をあとにする。
ところが、その後向かったモーテルでは何もなし。
しかし、アーチーの手に触れた瞬間ぺチュリアは涙を流すのだった。

リチャード・レスター監督、ジュリー・クリスティ主演のドラマです。
日本ではDVD化されてない作品で、映画サイトの解説ではかなりダメな作品のように説明されていて(allcinema)、しかもあらすじ(kinenote)さえ的外れ。
実は物凄く繊細で好きな作品だったので、ここでは映画の名誉のため、ネタバレ込みで擁護します。

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一見不思議ちゃんで掴みどころのない尻軽女に見えるぺチュリアだけど、彼女がアーチーに声をかけたのは、面識があったから。
時々挟まれるフラッシュバックで分かるように、彼女はメキシコ旅行中、車に乗り込んできた少年オリヴァーと旅を共にする。そのオリヴァーが事故に遭い、手術を担当したのがアーチーだった。
手術の様子をガラス越しに見ながらぺチュリアはアーチーの美しい手に心を奪われていたのだ。

アーチーの手がぺチュリアに触れると、彼女は魔法を解かれたかのように素の表情を見せる。
そんなぺチュリアにアーチーは惹かれていった。

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サイトの解説では「ぺチュリアは結局夫の情熱を取り戻したいだけ」みたいに言われているけどそこは違うと思う。
ぺチュリアは暴力夫から逃げ出したい。本当はアーチーに連れ去って欲しいと思ってる。
でもアーチーの迷惑になることを怖れ、それができないんですよね。

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映画で鮮明には語られないけれど、夫デイヴィッド(リチャード・チェンバレン)がオリヴァーに異常な愛情を持っていることは明らかで、おそらくはオリヴァーに性的暴行を加えたのでしょう。
デイヴィッドには富豪の親という後ろ盾がある。いかにも田舎ものの成金であることは家の装飾からも覗えるところだけど、ジョセフ・コットン演じるデイヴィッドの父親はデイヴィッド以上に怖い存在で、ぺチュリアはこの親子から逃れることはとても出来ない。そこが悲しいのですよ。
ジグソーパズルのようなポスターにも、そんなぺチュリアの儚さを感じます。

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オリヴァーを預けた移民家族の暮らす集落や、時々挟まれるバンドの演奏、駐車場で繰り広げられるマフィアとの取引など、リチャード・レスターはところどころに60年代らしい時代背景を覗かせています。
そんな一見無意味に思える演出から推察するに、本作は単なる家庭内暴力に悩むぺチュリアの物語ではなく、成り上がり的な力に翻弄されがんじがらめになったアメリカの姿そのものを象徴してるかもしれないな。

なんにせよ「華やかな情事」なる邦題は的外れではないかと思うし、大手サイトの解説でダメ扱いされているのはとても残念に思います。
知的で深く、とてつもなく悲しいけど好きな作品です。

DVD化希望。