映画の感想や好きな俳優の情報を発信します。新作以外はネタバレあり。
【映画】ハドソン川の奇跡
2016年09月24日 (土) | 編集 |
 
Sully-2016.jpg
ハドソン川の奇跡(2016 アメリカ
原題:Sully
監督:クリント・イーストウッド
脚本:トッド・コマーニキ
出演:トム・ハンクスアーロン・エッカード
/ ローラ・リニー/アンナ・ガン/ オータム・リーサー

【あらすじ
09年1月15日、乗客乗員155人を乗せた航空機がマンハッタンの上空でコントロールを失う。機長のチェズレイ・“サリー”・サレンバーガーは必死に機体を制御し、ハドソン川に着水させるが・・

感想

2009年、ハドソン川に着水し、乗員乗客155人が生還した航空機事故から7年
当事者であるサレンバーガー機長の手記をもとにクリント・イーストウッドが監督した実話に基づくドラマです。

機長の偉業をたたえ、事故時の緊迫をスリリングに描き作品だと思っていたら、なにやら最初から雲行きが怪しい。
というのも、映画はいきなりサレンバーガーことサリー機長に、その判断が誤りだった可能性をたたきつけるのですよ。
Sully-2.jpg

極寒のハドソン川に浮かぶエアクラフトの翼に立ち、静かに救出を待つ乗客の姿を映すニュース映像と、機長が最後まで機内に残り、避難誘導してくれたと話す乗客の言葉も鮮明に覚えているこの事故に、そんな裏の話があったことは知らなかった。

機長はヒーローか、あるいは乗客を危険にさらしただけなのか 
イーストウッドはわずか98分という上映時間でそれを検証し、真実を浮かび上がらせる。

数度にわたり見せる事故映像の、回を重ねるごとに、機長の技術力や人間性、夫婦および副機長との信頼関係、乗客同士、レスキューチームとの連携、ふれあい、感謝などのヒューマンな部分を積み上げていく盛り上げ方のうまいこと。
Sully_1-1024x576.jpg
サリー役にトム・ハンクスは抑えた中に揺れる心情を描き、静かなヒーローを演じていて素晴らしい。
『アメリカン・スナイパー』しかり、イーストウッドは真のヒーローが世間に理解されないことが許せないんだろうな。
機長を信頼し支える副機長アーロン・エッカードと妻ローラ・リニーのあたたかい存在感も気持ちいい。
数秒判断が遅れたら奇跡は起こらなかったと思うと、改めて凄い事故だったと思う。
でも事実を伝えるだけではいい映画にならなかったはず。
自信を持ちながらも、もしも自分の判断が間違えていたらと苦悩するのは、人命を預かるが重責を知るからこそ。安全のために調査も大切であることや、それをしっかり受け止める機長らのプロフェッショナル。奇跡に感謝する人やともに喜ぶ人たちなど、人間の姿がしっかり描かれ一体感と爽快感を感じるからこそ感動に繋がった。

短くても中身は充実。
86歳のイーストウッド あっぱれです。


ブログパーツ






[READ MORE...]
【映画】サンダーボルト
2015年11月27日 (金) | 編集 |
Thunder-1_convert_20151127183048.jpg

サンダーボルト(1974)アメリカ
原題:Thunderbolt and Lightfoot
監督/脚本:マイケル・チミノ  
出演:クリント・イーストウッドジェフ・ブリッジス /ジョン・ケネディ/ジェフリー・ルイス

【あらすじ】
銀行破りで奪った50万ドルをめぐり、かつての相棒から追われる身となったサンダーボルト。旅の道づれライトフットを巻き込み再び銀行破りを決行するが……。

【感想】
場所を移してシニア選手権続けます。
今日はクリント・イーストウッド!!

教会で説教する牧師(イーストウッド)の前に大男が現れ、ライフルをぶっ放す。
教会を走り出た牧師は、車を盗んで逃走中の若者に拾われ難を逃れる。実は牧師はその手口からサンダーボルトと呼ばれた元銀行破りのジョン。彼は盗んだ金を巡るトラブルから元相棒のレッド(ジョージ・ケネディ)から命を狙われていた。
やがて彼らは再び銀行強盗を敢行することを決め、ライトフットも相棒として協力することになるが・・

イーストウッドは監督になってから好きになった俳優さんだけど、若い頃の作品を見直すと昔は昔でカッコいい。
セクシーな牧師姿での登場も、この頃ではサービスショットだよね。

監督はこれが監督デビューのマイケル・チミノ
銀行強盗にキャノン砲を使うという、『ダーティハリー』のパワーアップが売りかもしれないけれど
ロード・ムービー風に描くジョンとライトフットの交流に、この映画のよさがあります。


70年代、ジョンやレッドのように戦争を戦ったことのある中年に対し、若者は目標も持てず宙ぶらりんな存在でライトフットもそういった青年。しかし彼はヒッピーのように周りとつるむことはなく孤独な瞳をしている。
そんな彼が偶然ジョンを助けたことに自分の存在意義を感じたのか、ジョンを気に入り友だちになりたいと思う。歳が離れたライトフットをキッドと呼び、子ども扱いだったジョンもいつしか彼に信頼を置き、やがて2人は相棒となっていくんですね。

しかし中盤レッドにお腹を蹴られるシーンで、レッドの言う台詞は終盤への悲しき伏線。
ラスト、消えゆく意識の中にあって、達成感に満面の笑みを見せるブリッジスが切ないですが、ジョンという友を得てライトフットの瞳が輝いていたことが忘れられない。
彼を軸に見ればちょっと遅めのアメリカンニューシネマですね。

原題は「サンダーボルトとライトフット」なのに、邦題がサンダーボルトだけになってるのは淋しいよ。

【映画】『アメリカン・スナイパー』
2015年01月18日 (日) | 編集 |
americansniperposter.jpg
アメリカン・スナイパー (2014)アメリカ
原題:American Sniper
監督:クリント・イーストウッド
出演:ブラッドリー・クーパー/シエナ・ミラー/ジェイク・マクドーマン/ルーク・グライムス
日本公開: 2015/2/21
 
米ネイビーシールズのメンバーとしてイラク戦線で活躍した伝説のスナイパー、クリス・カイルの回顧録をブラッドリー・クーパー主演、クリント・イーストウッド監督で映画化した一本。

アカデミー賞の作品賞、主演男優賞など6部門にノミネート
土壇場になってイーストウッドが存在感をみせますね。

予告が面白そうだったので初日に観てきました。
米軍史上最高のスナイパー、クリス・カイルを一回り大きく身体を作り込んだブラッドリー・クーパーが演じます。カイル氏は255人に上るイラク軍やアルカイダを射殺し、その正確さからも伝説とされる方。
映画はカイルの射撃の凄さをひたすら見せます。見せます。見せるんですが・・
正直途中から帰りたくなりました。

銃撃シーンが長いんですよね。
勿論それが戦争のリアリティだと思うのだけど、カイルの腕を見せる部分は所詮個人プレイなので
戦場での仲間同士の繋がりとか、作戦とか、葛藤とかを期待していた私にはちょっとあてがはずれました。
正義のために命をかけた愛国心の塊のような男が、4回の出兵ごとに徐々に戦争に心を蝕まれていくのはやるせないですが、それもどうしても『ハートロッカー』の二番煎じに感じてしまうしね。

americansniper.jpg

終盤カイルの心のひずみが表面に現れ始めてようやく面白くなります。
彼は戦場で戦ったのと同じぐらい、家庭復帰することにもがくことになる
ま、でも気がつけば乗り越えていたというか(汗)
その過程をもう少し丁寧に描いて、家族の力にフォーカスしていたらもっと良かったと思うのだけど
妻を演じたシエナ・ミラーの活躍がもうひとつ見えてこないのは残念でした。

とは言え、最後には実話の重みをずっしり感じ余韻に浸ることにはなるので、鑑賞後感は悪くない。
ただ、イラクを舞台にしながら、ポリティカルな視点をまるで入れない戦争映画ってなんだろうと
ちょっと複雑な気持ちになりました。
関係ないけど赤ちゃんが人形だったのはちょっと白けたよ(笑)

baby.jpg



【映画】『ジャージー・ボーイズ』
2014年12月14日 (日) | 編集 |
クリスマスまで12日となりました。
12デイズ・オブ・クリスマスというクリスマス・ソングがプチお気に入りで、昨年はハワイアン・バージョンを記事にしました。覚えてくださってる方もいるかな。
これは愛しい恋人からクリスマスの12日間に贈られるプレゼントを数え歌にしたクリスマスソング。
クリスマスの12日とは12月25日から1月6日までをさすようですが、日本では25日過ぎたらいきなりお正月モードに突入してしまうので(笑)、当ブログでは12 days of Christmas を勝手に12 days to Christmasに変え、今日からクリスマスまでの12日間、クリスマスソング付きで映画記事をお届けします。

まずはクリント・イーストウッド監督『ジャージー・ボーイズ』を。





ジャージー・ボーイズ (2014)アメリカ
原題: Jersey Boys
監督: クリント・イーストウッド
出演:ジョン・ロイド・ヤング/ エリック・バーゲン/マイケル・ロメンダ/ ヴィンセント・ピアッツァ/ クリストファー・ウォーケン/ マイク・ドイル/ レネー・マリーノ/ エリカ・ピッチニーニ
 
 60年代から70年代に活躍したフォー・シーズンズの成り立ちからの歴史を描く物語です。
正直特に思い入れのないグループでしたが、ボーカルのハイトーンボイスは印象的で、『シェリー』『君の瞳に恋してる』などの私でも耳にしたことのあるヒット曲が登場するとつい気持ちもノッてきます。
フランキー・ヴァリを演じたジョン・ロイド・ヤングの歌声も映画が進むにつれ冴えを見せ、グループのパフォーマンスを見てる分には楽しめますね。



時代背景もあって、イタリアからの移民の若者が、ニュージャージーの貧しい町からのし上がっていくさまやモブと絡んでいた点など興味を惹かれます。ただしスターの栄光と挫折の話としては、特に目新しい物がなく、ましてやメンバーについて何の知識も思いいれもない私には、彼らの物語にもさほど感じ入るものがなかったのは残念。

イーストウッド人気もあり、日本では好評のようでしたが
アメリカでは興行も振るわず結構なコケ作品となっているのも無理ないかなぁと。
勿論、フォーシーズンファンとか、この時代の音楽をお好きな方は楽しめると思うんですけどね。
年齢的にイーストウッドは、まさにドンピシャな世代ということになるのかな。
メンバーの見ているテレビのワンシーンに登場してみせるイーストウッドの遊び心も楽しい。

個人的に面白かったのは、メンバーの一人で、フォー・シーズンズのヒット曲の多くを手がけたボブ・ゴーディオを連れてきたのがジョー・ぺシだったこと。ちっとも似てなかったですが(笑)

色々あった彼らが再会する終盤には少しうるる。
挫折した者、頑張り続けた者、それぞれの人生における選択を誰も否定できませんよね。

ラストシーン、唐突に訪れるボリウッド映画並みの大団円は最高でした。

ということで、本日のクリスマスソングは、フォー・シーズンズの歌う『Jungle Bells』です。


イーストウッド『人生の特等席』
2012年09月27日 (木) | 編集 |
クリント・イーストウッドが役者として4年ぶりにスクリーンに帰ってきました。
老齢のスカウトマンと娘の人生の再起を描くヒューマンドラマです。




人生の特等席
2012年(アメリカ)
原題:Trouble with the Curve
監督:ロバート・ローレンツ
出演:クリント・イーストウッドエイミー・アダムスジャスティン・ティンバーレイクジョン・グッドマン



ガス(クリント・イーストウッド)は老齢ながら現役のスカウトマン。
長年に渡り球団に貢献してきたガスだったが、視力の衰えに不安を感じる日々。
そんなガスを心配するGM(ジョン・グッドマン)が、娘のミッキー(エイミー・アダムス)にガスに変わりはないかを訊ねたことから、ミッキーは父の仕事に同行し様子を観察することにする・・


イーストウッド演じるガスは、安モーテルを転々とする仕事ながら、仕事を愛し、長年球団に貢献してきた男ですが、近頃の視力の低下が彼を不安にさせます。それを察知するのが親友でもあるジョン・グッドマン。ガスが自分から言い出さない限り、リタイアを言い渡すのも気が引ける。けれど・・

映画を観る前から『Trouble with the Curve』という原題は何を意味するんだろうと気になってました。終盤に差し掛かり、カーブ(を打つ事)が苦手なある新人選手をさすのだと気づきなるほどと。実際イーストウッドがこのフレーズを口にするシーンでは、会場で拍手する人がいて、同じようにタイトルの意味を考えあぐねていたんだろうなと、共感するやら可笑しいやら。

これでスッキリといきたいところだけど、
そんなのがタイトルになるかな?と新たな疑問が湧き上がり
「curveカーブ」の意味するところを自分なりに考えてみました。

ひとつ思うのは、曲線に形どられた女体wでしょうか。
この映画の場合、殆ど女子は登場しない
その中でトラブルの相手はガスと長年に渡って確執のある娘のミッキー(エイミー)。
映画は娘との過去に対峙するロードムービーでもありますね。


もうひとつは、妻を亡くして27年、娘とも上手くいかず孤独に苛まれ、老齢に差し掛かったガスの曲がりくねった人生そのものを指しているようにも思います。

冒頭からイーストウッドの加齢ネタ炸裂で笑わせてくれるけれど、悲哀も感じます。
人は老いから逃れることは出来ず、熟練を極めたキャリアでも諦めなければならないときは誰にも必ずやってくる。けれど、自分の培ってきたものが誰かに継承され、心を繋いでいけるなら、それは幸せなことではないか。

本作の監督は、イーストウッドとは17年来、ともに映画作りをしてきたロバート・ローレンツ
正直脚本がもうひとつと思うところもあり、映画の完成度は高くはないですが、一度は俳優廃業と言われたイーストウッドがこの監督の初監督作品に出演したのも、自分の映画スタイルを受け継ぐものを応援したかったのかなという気がします。
実際、映画のテイストはクラシックなイーストウッド印。




コンピューターやデータでははじき出せない選手の弱点を彼なりのノウハウでキャッチするガスはアンチ『マネーボール』を地でいく男。ガスの姿に今日のハリウッド映画への警鐘が込められているように感じたのは私だけかな。スピルバーグを信じて映像技術に頼った『ヒアアフター』は失敗しただろ。。みたいな(笑)

新人スカウトマンを演じたジャスティン・ティンバレイクは、イーストウッド父娘の緊張をほぐし、二人の距離を縮める役割を果たす役どころ。映画にも新鮮な空気を送り込みました。
野球を愛する人にはたまらない作品でしょう。

日本公開は11月23日から
東京国際映画祭の特別招待作品としてクロージングを飾るようです。

★★★☆