映画の感想や好きな俳優の情報を発信します。新作以外はネタバレあり。
『ウディ・アレンのザ・フロント』は赤狩りの実態を描く社会派コメディの傑作
2014年04月04日 (金) | 編集 |
 

小説家が出てくる映画を特集してましたが、ここからは少し範囲を広げて、脚本家が出てくる映画を2~3。
今日はハリウッドを震撼させた赤狩りを描く社会派コメディ『ウディ・アレンのザ・フロント』です。
ウディ・アレンのザ・フロント(1976)アメリカ
原題:The Front
監督:マーティン・リット
出演:ウディ・アレン/ゼロ・モステル/マイケル・マーフィ/G・ジョンソン 
  ソ連と冷戦下にあったアメリカは、共産主義者による諜報行動などの脅威から、共産主義者とそのシンパを「赤」として排除。映画界も例外ではなく50年代には「赤狩り」によって多くの映画人がブラックリストに載せられ、ハリウッドから追放されることになったんですね。

役者や監督は表に出ることが出来なければどうすることもできない。
けれど脚本家は密かに執筆を続け、別の人の名前を借りて作品を発表していた様子。
表に出ることの出来ない脚本家たちに変わって名前を貸し、表に出る人物をさすのがタイトルの「フロント」。
『ローマの休日』のダルトン・トランボがイアン・マクレラン・ハンター名義でクレジットされていたことなどがその例。
本作ではウディ・アレン演じるハワード・プリンスが「フロント」の役割を担っています。
 
 

ウディ演じるハワードは、元はしがないバーのレジ係。
賭け事で金をスっては給料の前借を頼み込むようなダメダメ人間なんですが、フロントを請け負い(偽の)脚本家デビューするや、業界から注目されようになる。羽振りもよくなると同時に名声まで得てくると、まるで自分が偉くなったような錯覚に陥り、妙な自意識が前面に出てくるのが可笑しいんですよ。

前半はウディ・アレンの好演もあって、シニカルコメディとして笑って楽しめるんですが、自体は段々に深刻になり、お気軽ハワードがもはやお気軽でいられなくなる。。という話。  

邦題には「ウディ・アレンの」とあるけれど、監督はマーティン・リット

実は監督のリット、脚本のウォルター・バーンスタインや俳優人の主なところがみな赤狩りの憂き目にあった面々とのこと。
それゆえ、単なるコメディに終わるはずはなく、社会派なメッセージが込められた作品に仕上がっています。

役者にスパイ行為まで強要する調査委員会の実態など、赤狩りが魔女狩り的にハリウッドに浸透していったことに驚くと同時に大変興味深いものがありました。
スパイ行為に及んだ有名俳優が自殺する事態に発展していて、作り手の憤りの大きさも感じます。
ヒッキーを演じるゼロ・モステルはこれが遺作となりました。
 
 

終盤のウディ・アレンのカッコいいこと。
時代を映す貴重な作品だと思います。これは面白かった。
 


『ブルージャスミン』:ケイト・ブランシェットの主演女優賞なるか
2014年01月24日 (金) | 編集 |




オスカー特集
今日ウディ・アレン監督のシニカルドラマ『ブルージャスミン』をDVD鑑賞しました。


ブルージャスミン(2013)アメリカ
原題:Blue Jasmine
監督:ウディ・アレン
出演:ケイト・ブランシェット / アレック・ボールドウィン/ サリー・ホーキンス/ルイス・C・K / ボビー・カナヴェイル/ アンドリュー・ダイス・クレイ/ ピーター・サースガード/ マイケル・スタールバーグ
日本公開:2014・5・10
ニューヨークでのセレブ生活が崩壊したジャスミンは、サンフランシスコに住む妹ジンジャーのアパートを訪ね、一緒に暮らし始める。全て失いお金もないジャスミンだが、簡単な仕事につくことはプライドが許さない。
自分に合ったインテリアの資格を得るため、まずはコンピューターの学校に通い始めるのだが・・

ケイト・ブランシェットがヒロイン ジャスミンを演じ、オスカー前哨戦を独走中という一本。



 
破産し全てを失ったにも拘わらず、ブランド品を身にまとい、ファーストクラスに乗るジャスミン。
スーパー勤めの妹の世話になりながら、妹やその恋人までも見下すいけ好かない女です。
映画は、夫ハル(アレック・ボールドウィン)とのニューヨークでのセレブな暮らしぶりをフラッシュバックで見せつつ、ジャスミンの転落生活を描き出すというもの。

オスカー主演女優賞にノミネートケイト・ブランシェットが評判どおり素晴らしい。
ハルとの新婚時代や、新しい恋人にときめく様子はやたら可愛らくて、彼女いくつだっけ?と確認したくなるほど。一方、精神的に破綻したジャスミンは悲しいまでに凄まじい。いけ好かないぶりは笑ってしまうほど。



しかし、ジャスミンはどうしてこんな女になったのか?
実はジャスミンは妹とは血の繋がりがない。二人とも養子として育てられたんですね。
おそらくは里親の愛情を得るために、常に努力したであろうジャスミンは、容姿端麗学業優秀なパーフェクトな女性に成長。夫に見初められセレブな暮らしを謳歌するわけですが、ジャスミンの価値観を決定付けるのに、この養子として育ったという背景はキーになる部分だと思います。

ジャスミンが培ってきた価値観は間違えてるんだけど、それが愛を得るための手段であったことを思うと、なんだか切ないんですよね。




同じく養子で育った妹ジンジャーにサリー・ホーキンス
容姿も10人並のジンジャーは、美しいジャスミンにおよそ勝ち目がない。
「遺伝子だから」と諦め、自分に見合った暮らしをし、自分に見合った恋人を選ぶジンジャー。
両極端な姉妹を対比させることで、価値観や本当の幸せについて考えさせる作りもうまい。
ジンジャーはジャスミンにあることで恨みも持っているのだけど、血の繋がりはないながら、二人は唯一の身内でもあるんですね。少しだらしないながら、ジャスミンへの複雑な愛情も滲ませるジンジャーを演じるサリー・ホーキンスの演技も絶妙で、オスカー助演女優賞にノミネートされています。

98分という時間にこれだけの人生模様を盛り込むウディ・アレンの脚本はまさに職人技。
会話中のキーワードから、過去にフラッシュバックしていく切り替えも巧妙で
これまたオスカー脚本賞にノミネートです。

シニカルで辛らつだけど、底に流れるのは悲しいまでの愛。
観終わって切なさに泣いてしまったけれど、とっても面白い作品でした。
ケイト・ブランシェットの主演女優賞に異議なしです。

マンハッタン
2013年12月19日 (木) | 編集 |



土地名タイトルシリーズ、
今日はマンハッタンを舞台に揺れる男女の恋の行方を描くウディ・アレンの『マンハッタン』です。
マンハッタン(1979)アメリカ
原題:Manhattan
監督:ウディ・アレン
出演:ウディ・アレン/ダイアン・キートン/マリエル・ヘミングウェイ/メリル・ストリープ/
ウディ・アレンが監督、脚本・主演を努める名作『マンハッタン』で、彼が演じるのは、二度の結婚に失敗し、気に入らない仕事を自らやめ、将来にも減り行くヘアーにも不安を感じる42歳。現在交際中の恋人トレイシー(マリエル・ヘミングウェイ)がいるが、なんたって17歳。歳相応の相手を見つけなさいというしかないじゃないか。そんな時、親友の不倫相手のメリー(ダイアン・キートン)と出会い、二人は急速に仲良くなるが・・




アイザックとメリー、この二人の共通点は、将来に不安を抱き、現状に焦燥感を感じているところ。
アパートの物音が気になって仕方ないところも、二人よく似ていた。
だから、大人の街マンハッタンで出会った似たもの同士が、互いに傷を舐めながら心を結んでいく・・・
なーんて話だと勝手に思っていただけど、、ちょっと違ってねw 
思いがけない展開に、私の目がシロクロしちゃったわ(笑)

そもそも、ウディ・アレンって、その風貌でなんでラブコメ?と思ってきたんだけどw
今回彼の秘技を見せてもらった気分。

終盤、彼があることを嘆願する。
小首を傾げ、子犬のような瞳で「ごめん」ってやられたら、もう許すしかないじゃない。
「なんじゃそれ~!?」と思いながらも、なんかニマニマしてしまう自分がいたもんな。
大きな間違いなんじゃ?と不安は感じるものの、後は野となれ山となれ。
恋愛なんてどう転ぶか分からないんだし、自分にないものを持つ相手とデコボコ部分を埋めあうのもいいかもしれないね。うん。




雨の打つ窓や、橋を臨む夜明けの公園等、陰影を生かしたモノクロの映像の美しいこと。
ところどころ会話がミュートとなり、クラシカルな音楽で見せるシーンは、往年のサイレント映画の趣
エンディングには古典の名作を観終わったような胸の高鳴りがありましたよ。

マンハッタンをひた走るウディ、まだ若かったのね。

 


ミッドナイト・イン・パリ
2012年02月19日 (日) | 編集 |



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てことで、今日は昨年の6月に観たウディ・アレンの『ミッドナイト・イン・パリ』
パリを舞台に、アメリカ人作家ギルにおきた不思議な出来事を綴るファンタジーです。

アカデミー賞の作品賞、監督賞、脚本賞、美術賞にノミネートされましたね~。
一番有力なのは脚本賞でしょうか。
ミッドナイト・イン・パリ(2011)アメリカ     
出演:オーウェン・ウィルソン/レイチェル・マクアダムズ/マリオン・コティヤール/マイケル・シーン/コリー・ストール/キャシー・ベイツ


オーウェン・ウィルソン演じるのはハリウッドで脚本家として働くギル。
そこそこ成功を収めていはいるが、彼は制約の多い脚本家よりも
自由に書きたいものを書ける小説家になることを夢見ている。
そんなギルが崇拝するのが、1920年代に活躍した作家たち。
彼らを生み出したパリもまた ギルの最も愛する場所で
婚約者イネス(レイチェル・マクアダムス)との婚前旅行にパリを選んだのも そんな理由からだった。

もうね、冒頭見せるパリの風景が凄~く素敵なのですよ。
川面はまるでモネの絵から抜け出たようだし、
雨に濡れる暮れなずむ街並みの美しさにはため息がでるほど。
 
ある晩、友人とダンスに繰り出すイネスと別行動をとったギルは何故か道に迷う。
すると、深夜を回ったところで、どこからともなくクラシックな大型タクシーが現れ
ギルは乗客たちに誘われるままに、ある酒場へと同行するのですが、
酒場に集う面々のなんとレトロなこと! これって何?  ってお話ね。

ちょっとネタばれしちゃいますが、ギルが足を踏み入れるのは、彼が愛してやまない1920年代!
そう、これはタイムスリップものなんですよね~。
名だたる小説家や画家たちが こんな風に集っていたのか、と想像するだけでもワクワクでしょ。
勿論まだ彼ら自身が、後世に名を残す大物になるとは知らないわけで
彼らの輝かしい業績を知るギルだけがテンション高し(笑)
そこで交わされる会話が絶妙で、楽しいのですよ。

ウディキャラを演じるオーウェンが、このファンタジーに溶け込んでとてもいい。

ギルが見たのはなんだったの?なんて野暮な説明は一切なしに
不思議でロマンティックなお話に仕上がってます。

旅というのは、何かと自分を見つめなおすきっかけになるもの。
古きを愛し憧れることは、時として現実逃避かもしれない。
けれども、人には一番くつろげる居心地のいい場所というものがあって
それを見つけられたら本当に幸せ。

ウディ作品には苦手意識があったのだけど、これは本当に素敵な作品でした!!
日本公開は5月!