映画の感想や好きな俳優の情報を発信します。新作以外はネタバレあり。
【映画】母の残像
2016年09月27日 (火) | 編集 |
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 母の残像(2015 ノルウェー/フランス/デンマーク/アメリカ
原題:Louder Than Bombs
監督:ヨアキム・トリアー
脚本:エスキル・フォクト/ヨアキム・トリアー
出演:ガブリエル・バーン
ジェシー・アイゼンバーグイザベル・ユペール/デヴィン・ドルイド /エイミー・ライアン
レイチェル・ブロズナハン
日本公開:2016/11/26

感想
ラース・フォン・トリアーを叔父に持つノルウェーの精鋭ヨアキム・トリアーによる家族ドラマです。
英国男優50人斬り、今日は渋いところでガブリエル・バーンいきましょう。

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ガブリエル・バーン演じるジーンは戦争写真家として活躍した妻イザベル(イザベル・ユペール)を3年前に交通事故で亡くしている。
イザベルの回顧展が開かれることになり、長男ジョナ(ジェシー・アイゼンバーグ)も帰省し、親子3人が顔をそろえた。
ジーンはこの機に次男のコンラッド(デヴィン・ドルイド)に、イザベルの死の真相を話すことを決心するが、心を閉ざしがちなコンラッドと向き合う機会を持てないでいる・・・



監督の前作『オスロ、8月31日』はルイ・マルの『鬼火』にインスパイアされて撮ったという、自殺を決めた青年の2日間を描く繊細な作品でした。

本作は「イザベルの死は自殺の可能性が高い」ことを軸に、そこに至るイザベルの思いや、残された家族の3年間を浮き彫りにしていく作りで、登場人物は違えど前作の続編に近い形ではないかと思います。

今回もイザベルの虚無感が画面いっぱいに広がるのだけど、前作と違うのは虚無感を生むきっかけや原因が少しずつ差し込まれていること。
理解ある振りをしすぎて無関心と取られたり、すれ違う夫婦が痛々しい。
でも、こういうのが亀裂を生むと気づけば、自身を振り返ることもできるんですよね。

ゲームや幻想に没頭し、死にとりつかれたように見える次男コンラッドが初めて涙をこぼすシーンは印象的です。
母の姿を重ねていた同級生のメラニーの生々しさに触れたあの瞬間、彼は母の幻影から解き放たれ、生を実感したのではないか。
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コンラッド役のデヴィン・ドルイドは思春期の危うさと成長をみずみずしく演じ、演技派の共演者の中にあって一番の存在感でした。

一見何の問題もないように見えたジョナも壊れかけている。
そんな一家が集い、言葉を交わし合うことで、何かが変わり始める様子もあたたかい。
いい映画でした


しかし!

個人的にはラストシーンに2つの思いがよぎったんだよね。

そこネタバレになるので未見の方はご注意ください。






















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【映画】愛と死の谷
2016年08月04日 (木) | 編集 |
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愛と死の谷(
2015) フランス
原題:Valley of Love
監督/脚本:ギョーム・ニクルー
出演:イザベル・ユペール  /ジェラール・ドパルデュー/ダン・ワーナー  
 

【あらすじ
元夫婦のイザベルとジェラールは半年前に死んだ息子から届いた手紙に従ってデスバレーにやってきた

【感想
お盆も近くなったので、スピリチュアルな映画を観ていこうと思います。
まずは、イザベル・ユペール、ジェラール・ドパルデュー共演のミステリードラマから。

イザベルと俳優のジェラールは、自殺した息子から受け取っていた手紙に導かれカリフォルニアのデスバレーにやってきた元夫婦。手紙には日付と場所が明示されていて、そこで死んだ息子と再会できる旨が書かれていたんですね。
そうして久々に顔を合わせる二人が酷暑のデスバレーで過ごす一週間を描きます。
果たして二人は死んだ息子に逢うことができるのでしょうか。
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バカバカしいと思いつつも、元妻イザベルに会うことを内心楽しみにしている風のジェラール
一方のイザベルは半信半疑ながら息子に会いたいと思っている。夫との再会は息子に会うための「条件」でしかなく、ジェラールが岩のように太っていようが、別にどーでもいいといった様子。
その温度差が滑稽でもあって、ベテラン二人の演じる元夫婦のかみ合わなさが絶妙です(笑)

そんなわけでシュールなコメディなのかと思いきや、悲嘆が画面を覆ったり、ついにはスーパーナチュラルな方向へと展開していきます。

実は監督自身がデスバレーで不思議な体験をしていて、それがこの映画を作るきっかけになったとのこと。
デスバレーに神秘性があるのかどうかは知りませんが、気温が50度を超える異様な空間だからこそ精神が研ぎ澄まされ、人は限界まで心をさらけ出せるのかもしれない。
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小さなユペールとデカすぎるジェラール
喪失のリアリティと大自然とスーパーナチュラルと
それらのアンバランスが絶妙なバランスを保った不思議な映画。

彼らの体験に明確に答えを打ち出すものではないけれど、何か心が浄化される気がしました。

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【映画】天国の門
2015年03月25日 (水) | 編集 |



天国の門(1981)アメリカ
原題:Heaven's Gate
allcinemaデータ

(あらすじ)
ハーバード大学で青春時代をともに過ごしたエイブリルとアービン。20年後、保安官となったエイブリルは、ワイオミング州で牧場を営むアービンと再会を果たす。牧場主リーダーが牛泥棒根絶を名目に移民たちの殺害を計画していると知ったエイブリルは想いを寄せる娼婦館のエラにワイオミングを去るよう告げるが・・


『ディア・ハンター』でアカデミー賞監督となったマイケル・チミノ監督が次に撮った本作は、19世紀末のワイオミングで農場主と東欧からの移民らの間で実際に起きた争いを基にした一大叙事詩です。
その時代にタイムスリップした感覚に陥る重厚な映像と、壮絶なバトルシーンなどスケールの大きい作品に仕上がってはいるものの興行は振るわず、巨額な制作費が老舗映画会社を倒産に追い込んだのは有名な話。関わったものにとっては地獄の門となってしまったわけですねぇ。

80億も使う前に誰かお財布の紐を締める者はいなかったのかと思うところだけど
そもそも、なぜこれがそんなに受け入れられなかったんだろうか。

一つにはアメリカの暗部をほじくる作品のテーマ自体が受け入れられなかったというのはあるでしょうね。西部劇は廃れ、アメリカンニューシネマの時代も終わった80年代、観客はもっとポップなものを求めていた。あるいは、3時間越えで制作されたものを監督の監修なしに149分にカットして上映されたらしいので、チグハグな部分が出てもおかしくないでしょう。

今回私は2012年に監督自身が監修しデジタル修復された229分の完全版をテレビで観たんですが、すでに失ったフィルムは取り戻せなかったようで、時間が長く無駄が多い割りに、肝心なところが説明不足なんですよね。

以下、内容に触れているので未見の方はご注意願いたいんですが・・



個人的に気になるのが保安官のジム・エイブリル(クリス・クリストファーソン)と、娼婦エラ(イザベル・ユペール)と、ネイト・チャンピオン(クリストファー・ウォーケン)の関係性と人物像。
この三人は三角関係にあるのだけど、エラはチャンピオンよりもエイブリルを想っているのは、チャンピオンからはお金を取るという彼女なりのけじめをつけていることから判ります。
でもエイブリルとエラとのなり染めも描かれず、新任して来た保安官がエラとどの位長い付き合いなのかもわからない。エイブリルは殺害リストに挙がっているエラにワイオミングを去るよう説得するものの、一緒に行こうとは決して言わない。そもそも彼の部屋には女性と写った写真が飾られていて、しかもラストシーンから推察すれば、エイブリルは最初から結婚していた可能性さえあるんですよね(汗)




まぁ、そんなだから一途にエラを想うウォーケン演じるネイト・チャンピオンが一層切なく見えるのですけどね。あばら家を精いっぱいに整え、エラを迎える準備万端のウォーケンが可愛かったなぁ。
ネイトの愛に気づくユペールの表情もいい。でも彼女の背景が説明されてない故に、そこに留まろうとするエラの入植者としての意地とかを全て理解するのは難しかった。



ま、そんなこんなで気になるところはあるものの、映画的な魅力もたくさんあって
特にタイトルと同じ「ヘヴンズ・ゲート」という社交場で入植者たちがバンドの演奏をバックにローラースケートを楽しむシーンは躍動感あってお気に入り。
終盤のバトルシーンも生身の迫力があり、三角関係のほろ苦さも相まって作品としてはとても好き。儚き時代の愛と友情と悲しみを描く壮大な物語を楽しみました。

豪華客船から海を見つめるエイブリルのアンニュイな表情を映して終わるラストシーンは
冷酷に入植者を排除したアメリカへの揶揄を込めたのかな。
豊かな時代を迎えようと心は晴れるはずないよな。って




ジョルジュ・バタイユ ママン
2013年08月15日 (木) | 編集 |









おそれ多くもユペール様特集中~。

ジョルジュ・バタイユの遺作『聖なる神』三部作の『わが母』を映画化した作品。
母親を演じるのがイザベル・ユペールです。
ジョルジュ・バタイユ ママン(2004)フランス
原題:Ma Mere
監督:クリストフ・オノレ
出演:イザベル・ユペール、ルイ・ガレル、 エマ・ドゥ・コーヌ、 ジョアンナ・プレイス、 ジャン=バティスト・モンタギュ 、 ドミニク・レイモン、 オリヴィエ・ラブルダン
普段祖母と暮らす17歳のピエール(ルイ・ガエル)は、夏休みを過ごすため両親の住むカナリア諸島にやってくる。ところが「仕事」へと出かけた父親(実は愛人のもとへ)は事故で急死。ここで母ヘレナ(ユペール)は自分を崇拝、溺愛する息子に告白する。

「実は私、ビッチな生き方しか出来ない淫乱女だから。」
戸惑う息子に、母はちょっとイケイケなルル(実は自分の愛人)を紹介し、
ピエールに愛の手ほどきを受けさせるのだった。

 


退屈な人生をやり過ごすために淫乱に生きていると言ってはばからない母親ヘレナは、夫が事故で急死した後、息子をアブノーマルな性の世界に導きいれる。最初は無垢な息子の成長を描く、母親版マニュエル夫人かと思ったらどうも様子が違う。

というのも、ヘレナにとって息子は望まず生まれた子であり、愛人もいる夫との関係は冷え切っていたから。そうなると、息子への愛情と思ったものは、もしかしたら復讐なのかもと思えてくるんですよねぇ。

息子は母に思いを残しながらも、性を覚えていく。
けれど彼は信仰と非モラルの狭間で苦悩することになります。

SMや同性愛など、過激な性が描かれるものの、そこには悦楽は感じられない。
途中挿入される砂漠の景色は性の空虚さを映しているようにも感じます。
ユペールはというと常に無表情で、その心の中を読みにくいんですが
だからこそ、最後の展開が予測不能で驚いたし凹みましたわ。

ラストは愛なのか究極の復讐なのか。
原作はどうなってるのかなと興味が沸きました。
母と息子の物語というくくりで見れない、ちと難解な作品でしたね。

母と女と、複雑な女の顔を幾重にも重ねたヘレナ
どこか死のにおいのする空虚感を醸し出すところもさすがユペールと思うところでしたが、最後の解釈に繋がる演出がもうひとつ欲しかったと思うのは私だけかな。


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Tracked from まつたけ秘帖 at 2013-08-16 00:50 x


タイトル : 教えてママ堕落の悦びを
 ちょっと聞いてヨ!思いっきりウェブ相談! バイクの後輪がパンクしたので、修理に出さなきゃと思いつつ、しばらく放置してました。そしたら、私の留守中、兄が私の部屋から勝手にバイクの鍵を持ち出して、勝手にバイクに乗って、転んで膝を軽傷。ケガを私のせいみた......more








デッドマン・ダウン
2013年08月10日 (土) | 編集 |





今年はイザベル・ユペールの出演作品が日本で5本公開されるんだそうです。これは凄いことですよね。
シャブロルやハネケ作品でおなじみのユペール
今彼女が求められるのは何故か。
この機会にその魅力を探るべく、ユペールの出演作品を観てみようと思います。
まずは、秋に公開予定の本作から。



 

デッドマン・ダウン(2013)アメリカ
原題:Dead Man Down
監督:ニールス・アルデン・オプレヴ
出演:コリン・ファレル/ノオミ・ラパス/ドミニク・クーパー/テレンス・ハワード/イザベル・ユペール


『ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女』のニールス・アルデン・オプレヴ監督のハリウッドデビュー作品です。

コリン・ファレル演じるビクターは、ニューヨークのギャングのボスの右腕的存在。
実はあることから組織に恨みを持ち、ビクターはひそかに復讐計画を実践しているんですね。
そんな彼が知り合うのが、アパートの向かいに暮らすベアトリス(ノオミ・ラパス)。
交通事故で顔に傷が残ってしまったベアトリスは、ビクターと「復讐」という共通項で繋がっていくのです。

組織内に潜入しつつ、ひそかに脅しをかけボス(テレンス・ハワード)を追い詰めていくコリンは静かな怒りを秘めた悲しきアウトローが似合いますよね。

一方ノオミ演じるベアトリスは、復讐に身を焦がし、本来ある人間性さえなくしかけた女。
そのベアトリスをかろうじて救っているのが、ユペール演じる可愛らしい母親です。

でもね、これユペールじゃなくてもいいわぁ。

聴力障害という設定や、ユペールを起用したことが後半きっと意味を持ってくるだろうという期待は裏切られ物足りなさを感じます。
一度は出演を断ったユペールにノオミ・ラパスが長いE-mailを書き説得したようだけど。。
ふむ、名前で映画に格を添えた以外に、彼女の価値を感じられなかったのが残念ですよ。
ナタリー・バイとか、フランス語を喋るおっとり系の女優さんはいくらでもいると思うんだけどね。





静かなスリルにグロテスクなバイオレンスが盛り込まれているのはミレニアムの監督らしいところ。
そこにちょっぴり恋愛風味を加味したいという狙いは分かるけど
個人的にノオミに魅力を感じないのもあって、ロマンス部分にときめきはなかった。

何かとリアリティに欠け、ユペールの使い方にも不満を感じるけれど
コリンファンなら一見の価値あり。

 

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Tracked from ここなつ映画レビュー at 2013-11-13 13:57 x

タイトル : 「デッドマン・ダウン」
いや~B級作品でした。何がB級かって、唐突に流れてくるラップ調の音楽のせいでもなく、テレンス・ハワードに大物感がゼロだからでもなく、ともかく、女がステレオタイプというか、古い考え方や趣味に凝り固まっている設定でイライラ。「男は胃袋で掴むのよ」なーんて、イマドキあなた…。交通事故で顔に傷はお気の毒だけど、だからって轢いた相手を殺してやりたいなんて、女のどろどろはそこかい?しかもノオミ・ラパスが顔の傷が似合っちゃうようなイメージだもんだから尚更収まりが悪い。頼まれたメール便も「あなたのためを思って」中......more