映画の感想や好きな俳優の情報を発信します。新作以外はネタバレあり。
【映画】ニースの疑惑 カジノ令嬢失踪事件
2016年11月23日 (水) | 編集 |
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 ニースの疑惑 カジノ令嬢失踪事件(2014)フランス
原題:L'homme qu'on aimait trop/In The Name of My Daughter
監督:アンドレ・テシネ
脚本:セドリック・アンジェ/ジャン=シャルル・ル・ロー/アンドレ・テシネ
出演:カトリーヌ・ドヌーヴ/ギョーム・カネ/アデル・エネル /ジュディット・シュムラ

【あらすじ】
76年、南仏ニース。カジノの筆頭株主である女性実業家ルネの娘アニエスが、結婚に失敗して故郷へ戻ってくる。ニースではイタリアのマフィアがカジノ経営権を狙っていたが、ルネは顧問弁護士モーリスの助言によってカジノの新社長の座に就く。一方、母ルネに強い反発心を抱くアニエスは、モーリスと恋に落ちてルネと対立する立場にまわり……。


ミステリー祭り6本目

アンドレ・テシネがフランスのニースで実際に起きた事件を映画化した作品です。
タイトルの「失踪事件」につられましたけど、ミステリーとはちょっと違った(汗)
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ギョーム・カネ演じるモーリスはルネ(ドヌーヴ)の顧問弁護士を務めながら、ルネのカジノの共同経営者に収まることを目論んでいる。しかしその野心を見抜いたルネはモーリスを解雇。すると今度は娘のアニエスに取り入るわけです。甘いお顔でとんでも強欲なギョーム・カネのワルっぷりが半端ない。
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アニエス自身、空港に迎えに来た初対面のモーリスと運転手を待たせて海で泳いだりする奔放かつ自己中な女性。母に対してそれほど美人でない自分に引け目を感じてか、どこか卑屈な雰囲気も。
そんな女の子が恋に落ちると、周りなんか見えやしない。
妻子や愛人までいるモーリスを愛し、冷たくされ始めると自殺するぞと脅す始末。
いや、モーリスでなくても殺したくなるかも・・。

実際彼女は自殺未遂を起こしてしまい、電話に出ないからとモーリスは警察に通報。
しかし、このときモーリスはアニエスの住所を間違えて伝えるんですよね。
発見が遅れることを期待したんでしょ、これ。
幸い(不幸にも?)アニエスは一命をとりとめる。
しかし、間もなくアニエスは忽然と姿を消してしまいます。

アニエスはどこに?

と思っていたら、映画はいきなり20年後に飛んでみんな急に老けた(笑)
アニエスの失踪に関する20年前の裁判結果を受け入れられないルネが、再びモーリスを訴え裁判を起こす。10年争って新たな判決が出るんですが・・。

カジノ社長時代の華やかさは影を潜め、老けて質素な佇まいのドヌーヴが悲しかったなぁ。
疎まれ、裏切られても母は娘を愛し、その捜索と裁判に実に30年の月日と財を投じたんですね。

邦題はいかにもミステリーを思わせますが、英題はIn The Name of My Daughter
謎を解くというより、娘の名にかけて真実を追求しようとする悲しき母の物語ということでしょう。
ただ、ドヌーヴの心境は映像でおもんぱかる部分が殆ど。それならミステリー部分を際立たせる演出にした方が面白かったかも。


終盤、悪夢に目覚める若きモーリス。間を置かず映し出される、同じように夜間目を覚ます現在のモーリスの姿に、彼が30年間、こうして夜を過ごしてきたであろうことを知ることになりました。この演出はよかった。

娘の裏切りにより社長の座を追われたルネがカジノを後にするとき
カーラジオから聴こえてきた『うわさの男』(イタリア語バージョン!)を運転手の青年とやけっぱちで歌うドヌーヴさまを貼っておきます。









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アンドレ・テシネ『かげろう』
2014年03月13日 (木) | 編集 |



ホワイトデー特集用に観たのだけど、ロマンスにジャンル分けするのは難しいかなぁという一本。
アンドレ・テシネ監督で、第二次世界大戦中のフランス、パリを舞台にしたドラマです。
かげろう(2003)フランス
原題:Les Egares
監督:アンドレ・テシネ
出演:エマニュエル/ギャスパー・ウリエル/グレゴワール・ルプラス・ラング/クレメンス・メイヤー
 
冒頭、避難者の流れに乗って車を移動中、ドイツからの空爆に遭うオディールと2人の子供たち。
低飛行から、人の波に向け爆撃してくるシーンは、『禁じられた遊び』でも描かれていましたが、すぐ隣で人が吹っ飛ぶ中さまはリアルで本当に恐ろしい。
なんとか生き延びた一家はイヴァンという青年に導かれ森の奥へと移動します。
やがて人の住まない屋敷にたどり着き、ひと時穏やかな時間を過ごす4人でしたが・・



アンドレ・テシネ監督はドヌーヴ主演の『夜を殺した女』しか観てないんですが
アイテムに深い意味を持たせるのがお得意な監督とお見受けします。
本作では、冒頭の空爆でエマニュエル・ベアール演じるヒロインが恐怖のためお漏らししてしまうところもポイント。
7歳の娘に「ママのスカートどうして濡れてるの?」と訊かれ、素直に失禁を告白するオディール。
イヴァン(ギャスパー・ウリエル)がもしはじめにオディールのこの弱さを目にしていなければ、アウトローで一匹狼な彼が気丈なオディールに魅かれることはなかったのではないかと思うのです。
オディールが気丈に振舞うのは、戦争で夫を亡くし、子供を守る義務を痛感してるから。
教師でもあるオディールは、サバイバル能力に長け食料を調達してくるイヴァンを重宝しながらも、道に横たわる死体から金品を盗むイヴァンを軽蔑する。やがて子供たちがイヴァンを慕い始めると、その念は嫌悪から嫉妬、親の立場を奪われる危機感へと変わっていきます。
「お漏らし」から、人間関係の機微を描ききるテシネ監督はさすが。


また、オディールも、イヴァンが読み書きができないことを知ると態度を軟化させる。
人間って不思議だけど、相手の弱みを知ることで身近に感じられることもある。
やがて2人は身体を重ねることになるんですねぇ。
戦争未亡人のベアールの熟れたお尻の美しいこと。
17歳だというのに、イヴァンがベアールの知らないテクニックで彼女を悦ばせるというのもテシネ監督らしい。

しかし、ひと時の快楽は長く続かない。
戦争の終わりとともに、2人は引き裂かれるのです。
森を離れるとき、壊れたワイパーにより、森の景色は雲り歪んで見えた。
このあたりも意味深です。

イヴァンは孤独な青年でした。
それゆえ、オディールを愛し、一家を支えた時間は、彼にとって至極の時間だったのでしょう。
そのことを痛感することになるラストが切なすぎる。

ある誤解から、イヴァンを信じることが出来なかったオディールは
一生そのことを悔いて生きるのではないかな。

それもこれも、戦争のもたらした悲劇ですね。
本作はひとりの女性のメモワールがもとになってるのだそうです。

      


夜を殺した女<未>
2012年02月22日 (水) | 編集 |
今日はドヌーヴ作品から、86年製作の日本未公開映画をご紹介。
ドヌーヴが逃亡中の犯罪者とつかの間の情事に溺れる人妻を演じる サスペンスドラマです。

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夜を殺した女(1986) 
監督: アンドレ・テシネ 出演: カトリーヌ・ドヌーヴ/ヴィクトル・ラヌー/ヴァデック・スタンチャック
    ニコラ・ジロディ/ダニエル・ダリュー/ジャン=クロード・アドラン

リリ(カトリーヌ・ドヌーヴ)は夫と離れ、小さな田舎町で息子のトーマと暮らしていた。
そんなある日、彼女の経営するダンス・クラブにひとりの男が現れる。
男の名はマルタン、脱獄し仲間のリュックと逃亡中の犯罪者。マルタンはリリの美しさに魅かれ、
彼女もまたマルタンに魅かれてゆく。

名匠と紹介しながら、監督作品は一本も見たことなかったのですが、
ドヌーヴ様とは『海辺のホテルにて』『夜の子供たち』などでもコンビを組んでるとのこと。

本作は冒頭、リリの息子13歳のトーマが何ものかに襲われ翌日までに金を持ってこいと脅されます。
それが脱獄したマルタンとリュックだとわかってきますが、トーマは家族にも言えないまま、
何とかお金を作り二人に渡すものの凶悪なリュックはトーマを殺そうとし、マルタンと仲間割れとなります。
そんなマルタンがリリと出会い、惹かれあってしまうというお話なんですね。

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誰にも言うなと脅され、一人恐怖の中葛藤する息子トーマ。
そんなトーマの葛藤を知りながら、情事に走る母親・・・。
 途中までは、自分の結婚の失敗も母親のせいにして、
どこか地に足が着いていないドヌーヴに共感できず
一家で一番まともなのは、バラバラな家族を何とかまとめようと頑張る
しっかりもののおばあちゃんだけだなぁ などと思いながら観続けるのですが
最後になって、ドヌーヴの心の闇は母親の支配によるものだったこともわかり
思わぬ感慨を呼ぶのですよ。

 一見すると、全て悪い方向に向かってしまう不条理なドラマに見えるのだけど
観終わった印象は、意外に清々しいのは、
これがドヌーヴの心の再生を描く作品だったと思えるから。
92分というコンパクトなつくりなのに、無駄のない演出で
登場人物の思いのたけを描ききる監督の手腕に恐れ入りました。

一夜の情事を過ごす家の鍵を渡され、雨の中取り落とすマルタン。
それだけのシーンから、彼は招かれざる客、あるいは行ってはいけない場所であることを思わせたり
 マルタンの仲間の女のサングラスが、後に涙を隠すためのアイテムだったかと思えば
その予想をはるかに超える使い方をしていたりと、
とにかく小物使いの上手さにもうなりました。さすが名匠ですね。

DVDにもなっていないのは本当に残念。面白いですよ。