映画の感想や好きな俳優の情報を発信します。新作以外はネタバレあり。
【映画】 You Ain't Seen Nothing Yet!(原題) アラン・レネの死生観
2014年06月07日 (土) | 編集 |



You Ain't See Nothing Yet !(2013)アメリカ
原題:You Ain't Seen Nothing Yet !
監督:アラン・レネ 
出演:サビーヌ・アゼマ/ピエール・アルディティ/アンヌ・コンシニ/ランベール・ウィルソン/マチュー・アマルニック/ミシェル・ピッコリ
日本公開:
フランスの劇作家アントワンが死に、舞台劇『ユーリディス』でアントワンと仕事をした13人の役者たちのもとに訃報が届く。
遺言によりアントワンの家に集結した彼らは、地下のシアタールームに案内され、若者によるコンテンポラリーな『ユーリディス』のデモビデオを鑑賞する事になる。
アントワンは彼らに、新しい劇団の『ユーリディス』上演を許可すべきかの判断を委ねたのだった。


今年の3月に91歳でお亡くなりになったアラン・レネ監督の2012年の作品です。



劇作家のアントワンがスクリーンの中から盟友ひとりひとりに言葉をかけるシーンに、監督自身の姿を重ね、思わずしんみりしちゃいました。
13人の面々は監督のミューズでありプライベートでもパートナーであるサビーヌ・アゼマはじめ、ピエール・アルディティミシェル・ピッコリといった監督作品で活躍した常連たち。彼らを実名で登場させるところにも特別な思いを感じるし、当時90歳の監督のこれは遺言的な作品になるのかなぁと。


ところがね、しばらくするとそんなおセンチ気分も吹っ飛びます。
と言うのも、画面を観ていたピッコリ爺ちゃんあたりが自分が演じた役の台詞をボソボソと唱え始めると、他のメンバーもそれに続き、やがてスクリーンの役者たちと言葉を交し合う。さらに舞台はいつのまにか駅やホテルに変わっていて、現実と虚構の境も曖昧になっていくんですよね。

元となるギリシャ神話の知識がまるでなかったこともあって、途中でちんぷんかんぷんw
お助けマンのwikiで概要を調べ、ようやくついていくことができたけれど、知らないとちょっと厳しいかな。
『オルフェ』の知識もあったほうが理解しやすいはず。

監督作品はまだ4本しか観てないんですが、いずれも「死」に関わりがありますね。
本作も「死んだ妻を黄泉の国まで迎えにいき、蘇らせる」という『ユーリディス』の内容からして「死」に通じていて、晩年の監督の死生観が反映された作品といえそう。
マチュー・アマルリックの台詞にその全てが詰まっているようで印象的でした。

それにしても、3組のユーリディスとオルフェを登場させ台詞を畳み掛けたり
分割画面で見せるなどの演出も、とても90歳とは思えない仕事ぶりで驚きます。



↑一代目



↑2代目


最後にダブルでツイストを持ってくるあたりも渋い。
でもラストシーンは「やっぱり若いおねえちゃんが好き」ってことかな・・・(笑)
音楽も名優たちの演技も秀逸でした。

ちなみに監督はこのあと91歳で遺作となる『Life of Riley』を撮ってるんだから凄いことです。
 



【映画】 夜と霧
2014年06月05日 (木) | 編集 |


日本では早くも真夏日を記録したり、もう入梅したところもあるようですね。
蒸し暑い季節をやり過ごすには映画で背筋を冷やすのもよろしいかと。
しばし涼しくなる映画をお届けしますね。






夜と霧(1955)フランス
原題:NUIT ET BROUILLARD
監督:アラン・レネ
ナレーション:ミシェル・ブーケ

ナチスのユダヤ人虐殺を主題にしたアラン・レネ監督によるドキュメンタリー。
テレビで監督の作品を特集していて観ました。

冒頭 映し出されるのは、映画製作当時に撮影されたアウシュビッツの強制収容所の映像です。
これまでいくつかアウシュビッツを舞台にした映画を観てきて、外観はそれらとよく似ているのに、本物の迫力というのか
廃墟と化した施設を映すくすんだカラー映像から漂うただならぬ気配に なにか寒いものが走ってしまいました。

一般的なドキュメンタリーのように誰かの話を聞いたり、何かを検証するというものではなく、ここで何が起きたのかを詩的ともいえるナレーションとともにひたすら映し出す作品です。
しかし、これがもう完全にトラウマもの。
ブルドーザーで積み重ねられた死体の山、無造作に桶に集められた頭(!)など
どんなホラー映画も、おぞましさにおいてこれを超えるものはないでしょう。
そして何が怖いって、人間が本当にこんなことをしたとのだという事実。

 ホロコーストという言葉は、元はユダヤ教の「犠牲」を意図する宗教的な言葉らしく、ユダヤ人の大虐殺のことをホロコーストと呼ぶのは、ユダヤ人を神に捧げる意味合いとなりユダヤ人を侮辱することになるという説もあるようで、これを使っていいのかどうか迷うところですが、あえて使わせてもらうとして、、
先日観た『レイル・ウェイ 運命の旅路』のIMDbのメッセージボードのコメントに
日本人はこのホロコーストをどう受け止めているのかという書き込みがあって
ホロコーストはユダヤ人虐殺を意味するだけの言葉ではないという事実にいまさらながらハッとしたんですよね。





歴史の中で過ちを犯してきたのはドイツ人だけではない
一歩間違えば、私たちは悪魔になりえるのだということ
だからこそ、二度と同じ過ちを犯さないために何をすべきかを考えなければいけない
監督がこの映画で訴えたかったことはそういうことだと思います。





32分という短い作品で、ユダヤ人虐殺野すべてを語るものではないけれど、まだ自分たちの運命を知ることもなかった人々がやせこけやがて、死体となって転がる その推移を見るだけでも意味があると思ったしだい。



◆記事リンクありがとうございます!

夜と霧 - CINEmaCITTA' - Yahoo!ブログ どんなに素晴らしい "反戦映画" でさえ、このわずか30分足らずのドキュメンタリー・フィルムの前では沈黙するしかないでしょう。




ヒロシマモナムール(二十四時間の情事)
2013年02月22日 (金) | 編集 |
『愛、アムール』でオスカー主演女優賞にノミネートのエマニュエル・リヴァ、初の主演作です。





ヒロシマモナムール(二十四時間の情事)(1959)フランス/日本
原題:Hiroshima,Mon Amour
監督:アラン・レネ
出演:エマニュエル・リバ、岡田英次、ステラ・ダサス、ピエール・バルボー、ベルナール・フレッソン


戦後のある8月6日の日本
反戦映画のロケに広島を訪れていた一人のフランス人女優(エマニュエル・リヴァ)は
滞在最後の日、建築家の日本人男(岡田英次)と一夜の情事に耽る。



男と女の情事の後の会話が延々と続く
互いに名前を訊くでもなし
男は女が広島で見たというものを、ことごとく否定するという不意義な会話
夜が明け別れを告げるものの、男は未練から女のロケ地を訪れ二人は再会
別れまでの一日をともに過ごす。

フランス人女性と日本人男性の熱い恋物語なのかと思っていたら
酒場での話から、女の思いがけない過去が見えてきます。
それは若き日の禁断の恋。
男に話しながら、今もその愛と喪失に囚われていることに気づき戸惑う女。
けれども、封印していたものを解き放つこと
それは女の再生の始まりでもあるんですよね。
新たな愛を見つけることもできるのだという。

映画の冒頭に映し出される原爆後の写真と映像は悲惨で恐ろしいものだけれど
戦争の痛みを抱え、生の感覚を失ったふたりが
一夜の出会いにより人生に新たな光を見出す。
再生する広島にも希望を込めた作品なのかなと思いました。



監督は『アメリカの伯父さん』『風にそよぐ草』のアラン・レネ
女(役名なし)を演じたリヴァさんはこのとき32歳でしょうか。美しいですね~。

★★★★