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港町の人情寓話『ル・アーヴルの靴みがき』
2012年08月17日 (金) | 編集 |
ヨーロッパ映画強化月間でして、
今日はアキ・カウリスマキ監督がフランスを舞台に描く港町人情劇です。





ル・アーヴルの靴みがき
2011年(フィンランド・フランス・ドイツ)
原題:
Le Havre
監督:アキ・カウリスマキ
出演:アンドレ・ウィルムカティ・オウティネンジャン=ピエール・ダルッサン
ブロンダン・ミゲル



アンドレ・ウィルム演じるマルセルは、北フランスの港町ル・アーブルの駅前で
靴磨きを生業にする初老の男。
妻アルレッティ(カティ・オウティネン)と愛犬ライカとともに、つましく暮らすある日、
港に不法移民が乗ったコンテナが漂着。
マルセルは港に潜伏する移民の黒人少年と出会う。





最初にこの映画の話を聞いたときには、アキ監督がフランスを舞台に、
しかも移民問題を絡めてることに少し驚いたのだけど
固い社会派な作品に仕上げているわけではなく
監督らしいペーソスは健在で、下町の人情をにじませてくれているのが嬉しい。

それでもあえて移民問題を題材にしているところに監督のメッセージが感じられる。
登場人物の中ではベトナムからの移民の青年が
アイディンティティを偽って今の暮らしがあるのだと語るシーンがある。
けれど、どうやら港町の他の面々も、
マルセルはじめどこかからの移民なのかなぁと感じる風情。

だからこそ、終盤、急展開で繰り広げられるドタバタ劇が一層楽しく
感動的なまでに温かい。

人の靴を磨くのが仕事なのに、自分の靴は埃まみれ。
そんな夫の靴を、夜に黙々と磨くのは妻のアルレッティ。
家賃を払うことはできない貧しさの中でも
夫が酒場に集わせる妻もなんだか粋だし
移民少年のためにサンドイッチの袋の中にお金をしのばせる
マルセルも優しい。

けれど、この映画は末期の病を告げられた妻の描き方がそうであるように
非現実的ともいえるもので、
監督にしてみれば、移民青年を助けるこの下町の人情劇さえも
寓話に過ぎないということなとなのでしょう。

せめて映画の中だけでも、こんな人情劇があってもいいじゃないか。
そう思うとちょっぴり切ないけれど
一切の無駄を省き、究極の人情を描きあげる本作に、
監督の熟練味を感じますねぇ。
アキ監督の世界、たまりません。

★★★★☆