映画の感想や好きな俳優の情報を発信します。新作以外はネタバレあり。
【映画】マン・ダウン 戦士の約束
2017年03月17日 (金) | 編集 |
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マン・ダウン 戦士の約束
(2015)アメリカ
原題:Man Down
監督:ディート・モンティエル
脚本:アダム・G・サイモン/ディート・モンティエル
出演:シャイア・ラブーフ/ジェイ・コートニー/ゲイリー・オールドマン/ケイト・マーラ/クリフトン・コリンズ・Jr/トリー・キトルズ
【あらすじ】
愛する妻ナタリーと息子ジョナサンを故郷に残し、アフガニスタンでの任務へと旅立った米軍海兵隊の兵士ガブリエル・ドラマー。やがて死と隣り合わせの戦場で過酷な体験をすることに。その後、ようやく妻子の待つ故郷へと帰還した彼だったが、そこに待っていたのは、まるで終末世界を思わせる荒れ果てた街の姿だった。状況を飲み込めぬまま、姿を消した妻と息子を求めて荒廃した街を彷徨うガブリエルだったが…。(allcinemaより)

【感想】
アダム・G・サイモンの原作の映画化。
アフガニスタンからの帰還兵の心の傷を描く戦争ドラマです。

アフガニスタンからの帰還兵、ガブリエルにシャイア・ラブーフ
過酷な任務を終え、妻子の待つ故郷に戻ったガブリエル。
しかしそこは荒れ果て、住民もいない・・。

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時間は兵役中のアフガニスタンに戻り、ガブリエルはゲイリー・オールドマン扮するカウンセラー、ペイトンと面会。
ペイトンから勤務中のあれこれを聴かれ答えていくガブリエル。

映画は時間軸を交錯させ、2人の会話を再現する形で進むんですが
時々挟まれる、ガブリエルが故郷で妻子を探すというシークエンスが謎。

帰還したらわが町は終末世界の荒廃ぶり?アメリカで?
どゆこと??
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荒廃した街はカトリーナの爪痕の残るニューオーリンズで撮影されていて、傷んだビルも倒壊した橋もすべて本物。
それぞれの時間軸の色合いも変えていたり、帰還後のガブリエルがひげもじゃ(トムハに似てる!)だったりするので、時間が交錯すること自体には混乱しなくて済む作り。
どうしても終末世界を思わせる故郷のシークエンスが謎で最初から当惑してしまうんですが、この構成だから、終盤一気にすべてが繋がる瞬間に心をえぐられるんです。

タイトルの「マン・ダウン」というのは、ガブリエルと息子が「I love you」の代わりに言おうと決めた秘密の合言葉。
ただ、息子を、愛する家族を守りたい。
そんなガブリエルの思いが非常にやるせない。
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兵士の心の闇を描く作品はいくつも作られているけれど、本作では過酷な任務の中でどれだけ人の心は傷つくのかを思い知らされる。最近は反トランプで過激な言動が話題になるシャイア君だけど、これだけ繊細な演技ができる人だったことを改めて知りました。

キーワードを入れて深く書くことも可能だけど、情報を入れずに観て楽しめたので’、あえて浅く。
わかり難いとかスローということで、低く評価されがちな本作ですが、私には心に響く傑作でした。


【映画】ムーンライト
2017年03月01日 (水) | 編集 |
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ムーンライト(2016 アメリカ
原題:Moonlight
監督/脚本:バリー・ジェンキンズ
出演:ト
レヴァンテ・ローズ/アンドレ・ホランド/ジャネール・モネイ/アレックス・R・ヒバート/ナオミ・ハリス
マハーシャラ・アリ

【あらすじ】
マイアミの貧困地域で暮らす内気な少年シャイロンは、学校では「チビ」と呼ばれていじめられ、家庭では麻薬常習者の母親ポーラから育児放棄されていた。そんなシャイロンに優しく接してくれるのは、近所に住む麻薬ディーラーのフアン夫妻と、唯一の男友達であるケビンだけ。やがてシャイロンは、ケビンに対して友情以上の思いを抱くようになるが・


【感想】
  歴史に残る今年のアカデミー賞で、大どんでん返しの作品賞をかっさらった『ムーンライト』
実は劇場で寝てしまい(咳止めの副作用でとにかく眠かった)記事も書けずじまいだったので、DVDで再見しました。


貧困地域に暮らすシャイロンの少年時代から、青年、大人になるまでを描く本作は、自分探しの青春映画にして、これは黒人社会への応援歌ですね。

この映画を観てまず思うのは、貧困地域で生まれ育った人間が、まっとうな道を歩くのは簡単ではないということ。
父親がいなくて母親はジャンキー、しかも少しだけ女の子っぽい歩き方をするシャイロンは学校でもいじめられ、悪がきに追い回されてます。この生まれながらにハンディを背負っているとも言えるシャイロンがやがて道を外すのは必然にも思えるんですが。。
でもある日彼は、偶然出会ったフアンに声をかけられ、初めて父性のようなものに触れる。
同級生のケヴィンとも馬が合い、彼はケヴィンに友情以上のものを感じ始めるのです。
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現実的で絶望的と思えたシャイロンの物語が、そうした「大事な出会い」によって希望を感じさせるものに変わっていくところがこの映画の凄いところでしょうね。

フアンの会話の中で「月明りに照らされると黒人の肌は青く見える」というキューバのお年寄りの言葉が語られます。
黒人だから、貧困地域に生まれたからと言って人生をあきらめてはいけない。
黒い肌が月明りで蒼く輝くように、人は輝くことができる。どんな人間になるかを決めるのは自分自身。
『ムーンライト』というタイトルにはそんな作り手のメッセージを感じました。
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ロマンスとしては非常に控えめで、むしろ本当の自分をみつけることの大切さを感じる描き方です。

アカデミー賞助演男優賞を獲得したマハーシャラ・アリのあたたかい演技も印象的ですが、強烈なのはフアンの母を演じたナオミ・ハリス!登場シーンごとにジャンキー度を強め、廃人化していく姿が壮絶でうまいのなんのって。
息子を思うように愛すことができなかった後悔を伝えるシーンでは泣けました。麻薬はアカンでー。
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麻薬ディーラーが出てくるからと言ってドンパチがあるわけでもなく、淡々とした作風故退屈に感じる人もいると思う。
おそらくはそれほど制作費もかかっていない、こういうインディーズな映画がオスカーを取る時代なんだなと、少し複雑に感じるのは私だけかな。

個人的な好みとしてはやっぱり『ラ・ラ・ランド』でした(笑)

お気に入り度4.0



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【映画】マギーズ・プラン 幸せのあとしまつ
2017年01月24日 (火) | 編集 |
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 マギーズ・プラン 幸せのあとしまつ(2015 アメリカ
原題:Maggie's Plan
監督/脚本:レベッカ・ミラー
出演:グレタ・ガーウィグイーサン・ホークジュリアン・ムーア/ビル・ヘイダー/マーヤ・ルドルフ/トラヴィス・フィメル
【あらすじ】
ニューヨークの大学で働くマギーは、妻子持ちの文化人類学者ジョンと恋に落ちる。仕事ひとすじで家庭を顧みない妻ジョーゼットに愛想を尽かしたジョンは離婚を決意し、マギーと再婚。数年後、ジョンとマギーは子どもにも恵まれ幸せな毎日を送っているかに見えたが、小説家になるため仕事を辞めたジョンとの生活にマギーは不安を感じていた。

【感想】
 ニューヨークを舞台に3人の男女の奇妙な関係を描くハートフルコメディです。

グレタ・ガーウィグ演じるマギーは、数学に秀でた男性の精子の提供を受け、シングルマザーになることを計画中のニューヨーカー。偶然知り合った小説家志望で妻子持ちのジョン(イーサン・ホーク)と小説を通じて親しくなり、やがて求婚され結婚するマギー。数年後、マギーには可愛い女の子が生まれています。

ところがジョンと幸せな結婚生活を送っているはずのマギーの心境は複雑。
元妻との間にできた子供たちの世話もマギーに任せ小説に没頭するジョンとの暮らしに不安を感じ、マギーは、まだジョンに思いを残す元妻ジョゼットにジョンを返すことを計画するのです。

グレタ・ガーウィグは実はたまたま観た出演作2本があまりピンとこなくて、これまで興味を持てない女優の位置づけでしたが、本作を見てイメージが変わりました。今やメグ・ライアンに代わるニューヨークの似合うラブコメ女優とされるグレタ。
決して垢ぬけてはいないし、メグ・ライアンみたいにキュートというのでもないけれど、不器用でも前向きに、自分らしく生きるヒロインがハマります。
ストーリーだけ読んだらまるで共感できそうにないマギーというキャラも、グレタだと嫌味がなくて自然に受け入れられるんですよね。

マギーの両親のエピソードに触れているから、マギーがシングルマザーを目指していたことも、結婚生活で孤独を感じることには耐えられないことも理解できる。マギーの部屋のインテリアや友人との会話からも、マギーの飾りっ気のない正直さがうかがえる演出は、脚本も手掛ける女性監督レベッカ・ミラーのうまさでしょう。
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ジョンにイーサン・ホークをキャスティングしてるのも絶妙ですよね。
そもそも好きな小説を書くことが最優先で、それを支えてもらいたいだけのジョンこそがトラブルの元凶なわけだけど、そんな優柔不断な役も大人子供が板についたイーサンだと憎めない。得な男だよねぇ。

『アリスのままで』とはまた違った種類のハイソな知的さを漂わせつつも、可愛い大人の女の情念と懐の深さを演じてみせるジョゼットにジュリアン・ムーア。お団子ヘアにモフモフファッション、フレンチ訛りもかわゆす。
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ビル・ヘイダーは相変わらず信頼できるバイプレイヤーだし、ガイ役のトラヴィス・フィメルもいい。

ラストシーンから想像するに、おそらくマギーはジョンに気兼ねなくオリジナルのプランに戻るのでしょう。
パパ付きのプランBもいいのでは?など想像を膨らませてみるのも楽しい。

複雑で滑稽で、でもそれぞれの方法で幸せを探そうとするニューヨーカーの生きざまを小粋なラブコメにした本作
ウディ・アレンほどくどくなく、終始ニマニマになる面白さがありました。これ好き。
でも邦題の副題「幸せのあとしまつ」っていうのはなんか違う気がするなぁ。



ちなみに監督のお父さんは劇作家で『クルーシブル』などの脚本も手掛けるアーサー・ミラー。
夫はなんとダニエル・デイ=ルイスだそうです。





お気に入り度★★★★


今年からお気に入り度で好き加減を(★5つで満点)記録に残すことにしました。
世間の評価とはかけ離れるものもあるかと思いますが、ご了承ください。


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【映画】マリアンヌ
2016年11月26日 (土) | 編集 |
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 マリアンヌ
(2016)アメリカ
原題:Allied
監督:ロバート・ゼメキス
脚本:スティーヴン・ナイト
出演:ブラッド・ピットマリオン・コティヤール/ジャレッド・ハリス/サイモン・マクバーニー/リジー・キャプラン
日本公開:2017/2/10

【あらすじ】
パラシュートで砂漠の地に降り立ったカナダ人諜報員のマックスはカサブランカでフランス軍レジスタンスのマリアンヌと会う。彼らのミッションは夫婦を装い、パーティの席でドイツ大使を殺害すること・・。

ブラッド・ピット、マリオン・コティーヤールを主演に、ロバート・ゼメキスがメガホンをとったラブストーリーです。
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序盤はかの『カサブランカ』同様に、第二次世界大戦中のカサブランカが舞台。
ここで主人公2人に与えられたミッションはドイツ大使の殺害です。
自由を求めてアメリカに渡りたいお金持ちが集まる、複雑な土地にして社交界の縮図のようなカサブランカで夫婦を装うスパイカップルのブラピとマリオンが美しい。
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いつしか愛し合うようになる2人は、ミッションを成功させた後イギリスで本当の夫婦として新生活をスタートさせる。子宝にも恵まれ幸せな日々を送るある日、マックスは
上官からマリアンヌにスパイの疑いがあることを告げられるんですね。

愛する妻は本当にスパイなのか? という以上にブラピの若返りはボトックスかCGか?が話題ですがw
確かにブラピが久々に美しいんです。
40年代のカサブランカの上流な装いも、イギリスでのユニフォーム姿もファンにはたまらないのでは。
猜疑心と愛とのはざまで苦悩する姿もよし。
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ただしゼメキス映画と思って観ると少し違う感じがするかも。
ところどころスリリングなシーンはあるものの、全編にわたってテンポはゆっくり
私なんか同じスパイ夫婦ものの『Mr&Mrsスミス』みたいなバトルを期待してたので
終盤少し寝てしまいました(笑)

でもムードたっぷりのロマンス映画として観ればしっとり素敵。


なにせ二人がスクリーンに現れると一面に薔薇の香りの漂うがごとしで
格の高さを感じてしまうのですよ。これがスターというものでしょうかね。
マリオンの美しさと演技力も際立ってました。

残念だったのはフランス語シーンの英語字幕が速くて、読み終えないうちに消えてしまうことw
アメリカ人が字幕映画を嫌う理由がわかるってもんです。

色んなバージョンのポスターもいいよ
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【映画】『マーシュランド』ネタバレでラストシーンの解釈を追加しました
2016年11月20日 (日) | 編集 |

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 マーシュランド(2014)スペイン
原題:Marshland
監督:アルベルト・ロドリゲス
脚本:ラファエル・コボス/アルベルト・ロドリゲス
出演:ラウール・アレバロ/ハビエル・グティエレス/アントニオ・デ・ラ・トーレ

【あらすじ】
1980年、スペインのアンダルシア。湿地帯にある小さな町で、10代の姉妹の行方がわからなくなる。やがて姉妹は拷問を加えられた果てに殺され死体となって発見された。ベテラン刑事のフアン(ハビエル・グティエレス)とペドロ(ラウール・アレバロ)は、これまでにも似た事件が起きていたことを知る。


ミステリー祭り5本目

スペインのアカデミー賞にあたるゴヤ賞で10部門を受賞した本作は
フランコ死去から5年のスペイン、アンダルシア地方を舞台に、連続少女殺人事件の真相を追う本格ミステリーです。

この映画まず面白いのが、その複雑さですね。
早々に犯人と思しき人物が浮上するものの、被害者のストッキングに付着した精液と血液型が一致しないなど、捜査は混乱を極めます。複数の被害者それぞれに関わる参考人から様々な情報を得て、新たな容疑者を特定していくという緻密な捜査を展開し、全てを105分に収めるというのは凄いこと。それだけ無駄がないわけですが、ぼんやり見ていると置いていかれること必至。人の顔も覚え、情報提供者の言葉一つ一つを聞き逃さないようにしないといけないのでトランプの神経衰弱みたいに記憶力と集中力を試されますね。
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まぁ複雑な割に捜査が早いのは、ベテラン刑事フアンの暴力的な尋問によるところが大きいんですけどねw
容疑者だろうと参考人だろうと女だって殴って脅して本音を吐かせる。でもこれも実はあることの伏線でした。
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息抜きになるのは協力者の存在。彼らは貧しいゆえ情報を提供するのに見返りを求めてくるんですが、それでも報酬の分はしっかり協力する律義さがあって、一風変わったバディものの趣で楽しめます。



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監督のアルベルト・ロドリゲスは、マーシュランドを撮影した写真家アティン・アヤの写真展でその美しさに感銘し、マーシュランドを舞台にした映画を作ろうと思ったんだそうです。
この美しい風景にふさわしい映画をと考えたとき、監督の頭に浮かんだのがフランコ政権からの移行を描くことだったのだとか。事件の背景にある権力や暴力、組織との癒着といった部分がフランコ政権のメタファーであり、それは亡霊のように新しい世代にも受け継がれていくといった不気味さを湛えている。
最後にみんな引き寄せられるように入っていくマーシュランドこそが、映画の主人公でした。


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ペドロを演じた役者さんはショーン・ペンに似てました。
ペドロはフアンのよからぬ噂を聞いていて、はじめは反発してましたが、次第にフアンの実力も認め始める。
それでもどうしても受け入れられない部分が二人の関係を複雑にします。

映画の中で霊能者がフアンに「死者があなたを待ってる。もうすぐその時がくる」と言うのも印象的。
いつ危険が迫るのかとハラハラさせられましたから。

フアンを待っている死者とは、おそらくは過去に関わった人たちなのでしょう。
フアンは排尿時に血尿が見られ、時々苦痛に顔をゆがめ薬を服用してました。そのことになんの説明もなかったけれど、彼はがんだったのかもしれませんね。自分の業はフアン自身が一番わかってるんじゃないかな。
それでも一度染み付いた習癖は簡単には消えない。

とはいえ、巷で言われているフアン犯人説には反対です。

≪追記≫
記事を書き上げたあと、Filmarksのレビューを見てみると多くの人が「犯人」と「ラストシーンの意味」について考えあぐねているようです。そこで自分なりの考えをネタバレで書いておくことにしました。

未見の方はご注意ください。
興味のない方はスルーでお願いします。








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