映画の感想や好きな俳優の情報を発信します。新作以外はネタバレあり。
【映画】さざなみ
2017年03月08日 (水) | 編集 |
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 さざなみ(2015 イギリス
原題:45 Years
監督/脚本:アンドリュー・ヘイ
出演:シャーロット・ランプリング/トム・コートネイ/ジェラルディン・ジェームズ/ドリー・ウェルズ


【あらすじ】
イギリスの片田舎で穏やかな毎日を送る老夫婦のジェフとケイト。5日後に結婚45周年の記念パーティを控える中、スイスの警察から1通の手紙が届く。それは、50年前にジェフと登山中にクレパスに転落して亡くなった当時の恋人カチャの遺体が、氷漬けのまま発見されたことを知らせるものだった。


【感想】
夫のかつての恋人が氷山の中から発見された

ある日突然そんなニュースを知らされたら、少なからずショックでしょう。
普通であれば、長い間平穏に結婚生活を送ってこれたことに勝る真実はないはずなんですが、
もしも、その恋人が夫の心をずっと支配し続けていたとしたら・・
猜疑心は、小さなさざなみとなって、妻の心をきしませるのです。
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この映画で描かれるのは、たったの5日間。
なんたってシャーロット・ランプリングがうまいやねぇ。
台詞のないシーンでも彼女の中に渦巻く疑念が手に取るように伝わります。

夫を演じるトム・コートニイのこのままボケ散らかすんじゃないかと思えるような呆然とした演技も秀逸で
夫ジェフのイノセントさが余計に妻を傷つけていく。
次第に亀裂を深めていく2人の関係が非常にスリリングでリアリティがありました。

ラストシーンのあと、夫婦がどうなるのか
その解釈は観るものの結婚観に委ねられる気がしますね。

一つ言えるのは、そんな結果になろうとも
ケイトの中には、どうしたってわだかまりが残るだろうということ。

知らない方が幸せなことが、世の中にはあるんです。
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適度な生活感がありながらセンスのいいケイトの家のインテリアが
バキバキにお洒落なアメリカのインテリア雑誌のそれより数段自分向けで、参考にしたいと思ったな。


お気に入り度4.2

【映画】『スプリット』23+1の人格を持つ男の物語が思わぬところに繋がってビックリ
2017年02月22日 (水) | 編集 |

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 スプリット(2016)アメリカ
原題:Split
監督/脚本:M・ナイト・シャラマン
出演:ジェームズ・マカヴォイアーニャ・テイラー=ジョイ/ジェシカ・スーラ/ヘイリー・ルー・リチャードソン/ベティ・バックリー

【あらすじ】
3人の女子高生ケイシー、クレア、マルシアは、クレアの誕生日パーティーの帰り道、見知らぬ男に拉致され、密室に監禁されてしまう。

【感想】
ジェームズ・マカヴォイが多重人格者を演じて話題の、M・ナイト・シャラマンの新作です。

多重人格者が出てくる映画で一番古典的なのは『ジキル博士とハイド氏』でしょうか。
『殺しのドレス』『アイデンティティ』など別人格の起こす犯罪を主題にした映画は多いですね。


本作でマカヴォイ演じるケヴィンは23の人格を持つ男。
表向きには治療でコントロールされ、10年間仕事もしている。
しかしながら彼の中のデニスという人格が高校生を拉致監禁してしまうんですね。
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これはまずマカヴォイの演技に拍手でしょう。
よくもまぁ瞬時に別人格を、それとわかるように演じ分けたもんです。
おそらく『Xメン』のあとの撮影だったんでしょう。
この坊主頭がタートルネックにスカートといういで立ちの、女性キャラの異様さを際立たせて非常にナイスw
予告を何度も目にしていたので新鮮味はないものの、3人の高校生の驚きや絶望感には大いに共感してしまった。

ここでひとつ疑問に思ったのは、パトリシアというキャラが他人格と会話してること。
『サイコ』でもそうだったけど、別人格同士が会話するというのは実際には可能なの?と
清水アキラの谷村新司と研ナオコの物まねを思いだしつつ思っちゃったな(笑)
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拉致された高校生の一人、ケイシーを演じるのは『The Witch』のアーニャ・テイラー=ジョイ。
他の二人とは明らかに違う、冷静さの中に彼女の背景が透けて見える演技が秀逸。
他に良いところを言うと、3人が拉致された場所に色々とお役立ちグッズがあって、抗う余地があったこと
24番目のキャラ出現のマカヴォイにはなにこれと思いながらもパフォーマンスとして楽しめます。
Anya Taylor Joy Split Movie
でも映画として面白かったかと聞かれると疑問で、ふーんと終わりかけたところで
え??とラストシーンに目がテン(!!!)
マジか、そう繋がるのか

シャマランから明かすなと(トレーラーで)くぎを刺されてるので言及しませんが
シャマラン映画をそこそこ観てる人ならビックリ&ニマニマできるはず。

日本公開は5月です。

お気に入り度3.6

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【映画】『幸せなひとりぼっち』ひとりぼっちはやっぱり寂しい
2017年02月10日 (金) | 編集 |
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幸せなひとりぼっち(2015) スウェーデン
原題:En man som heter Ove
監督/脚本:ハンネス・ホルム
出演:
ロルフ・ラッスゴード/イーダ・エングヴォル/バハール・パルスll

【あらすじ】
最愛の妻ソーニャを病で亡くし、長年勤めてきた仕事も突然のクビを宣告されてしまった59歳の孤独な男オーヴェ。絶望し、首を吊って自殺を図ろうとした矢先、向いに大騒ぎをしながらパルヴァネ一家が引っ越してきた。


【感想】
 オスカー関連作品。今日は外国語映画賞にノミネートされたスウェーデン発ヒューマンドラマです。

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集合住宅の一軒に一人で住む主人公のオーヴェは、住人のゴミの出し方をチェックするようなオヤジで、敷地内への車の乗り入れには特にうるさい。いつも苦虫をかみつぶしたような不機嫌なオーヴェは新しい住人にうるさがられる存在です。
しかし最近妻を亡くし、仕事までクビになったオーヴェは自ら死を選ぼうとしている。
そんな時、向かいに若いイラン人の家族が越してきます。


様々な国籍の人と接触して思うのは、お国が違うと、文化やものの考え方が違うということ
例えばアジアンマーケットのパーキングでは毎週のように、駐車スペースから出ようとしている車に驚くほど近づいて待ってる車を目にします。十分なスペースを空けてあげれば出やすいのに、近づきすぎるから何度も切り返して出なきゃならず時間がかかるだけ。日本人やアメリカ人は絶対にしないことを他のアジアの国の人はするんだわ。
そういうの見るにつけ、「もう、〇〇人は」と愚痴ってしまう。悪い面ばかりが気になるもの。
でも付き合ってみると、日本人にはないいい面もあるんですよね。

本作に登場するイラン人はオーヴェに平気でものを頼み一見図々しいのだけど、食事を持っても来てくれる。
他人と距離を保ってきたオーヴェは戸惑うものの、その距離の近さがオーヴェに変化をもたらすのです。

と、こう書くと「ははぁ、イラン版『グラントリノ』やね」と思うかもしれない。
でもこの映画は、過去と現在を交錯させ、オーヴェの頑固さがどこから来るのかを掘り下げます。
彼の頑固さには理由があって、本当はまじめでひたすら妻を愛した人であることが分かってくるんですが
そんなオーヴェが自ら命を絶つことを考えるのは本当に悲しい話。
他人との関係が希薄なのはスウェーデンも都会の日本と少し似てるのかもですね。
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最後は自分の過去を語り始めるオーヴェに涙。
心を開いて初めて人は人と近づけるのだということに、ものすごく心を動かされる作品でした。
猫も可愛くてね。これはよかったわぁ



ちなみに原題は「オーヴェという男」という意味。
邦題の「幸せなひとりぼっち」がどういうことを言うのか、よくわかりませんでした。
ひとりぼっちはやっぱり寂しいよね という映画だと思ったな。

若い頃のオーヴェを演じた役者さんが声の深みもあり、違和感がなくてよかった。




オーヴェ59歳・・・  え?
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お気に入り度4.2



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【追悼】ジョン・ハート『殺し屋たちの挽歌』
2017年02月02日 (木) | 編集 |
The Hit 1984
殺し屋たちの挽歌(1984
イギリス
原題:The Hit
監督:スティーヴン・フリアーズ
脚本:ピーター・プリンス
出演:
ジョン・ハートティム・ロス/ラウラ・デル・ソル/テレンス・スタンプ/フェルナンド・レイ

【あらすじ】
強盗仲間を裏切り、スペインで隠れ住む男の元へ二人の殺し屋が現れた。二人の目的は、組織のボスが待つパリへ男を連れていくこと。そこへ誘拐事件に巻き込まれた少女が加わり、奇妙な4人組の旅が始まった……。

【感想】
  ジョン・ハートの追悼2本目です。
本作でジョン・ハートが演じるのは渋い殺し屋ブラドック。
彼の任務は、強盗仲間を裏切り10年間もスペインに隠れ住んでいたウィリー・パーカー(テレンス・スタンプ)をパリのボスのもとまで連行すること。相棒に若いチンピラ、マイロン(ティム・ロス)、ひょんなことからマギーという15歳(多分ウソ!)の女性まで巻き込んで、4人の奇妙な旅が始まります。
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ところが間もなく、パーカーの落ち着きはらった態度が2人の殺し屋の心をざわつかせるんですね。
マイロンはパーカーが何か企んでいるのではと気が気じゃない
また、ブラドックは、死を恐れていないように見えるパーカーの心を理解できないのです。

殺し屋映画も数々あれど、殺す側、殺される側の心情にここまで踏み込むものは少ないんじゃないでしょうか。
10年間、いつ暗殺者がやってくるかと怯えて過ごしたはずのパーカーは、しかしついにその時が来て、むしろ喜んでいる。
読書家の彼はいくつもの本を読み、運命を受け入れ、最後の舞台を自分の納得のいく形で終わりたいと思っている。
それでも死の受容のステージは、ちょっとしたことで後戻りするのが人間というもの。
テレンス・スタンプはそんなパーカーを見事に演じていて素晴らしい。

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ジョン・ハートはベテラン殺し屋ですが、心優しいゆえの詰めの甘さに、自分が一番落ち込むという複雑な役どころ。
ティム・ロスは若気の至りのどチンピラを奔放かつ繊細に演じていて、3人ともが怪演ですね。
でも本作で最もたくましいのが紅一点のマギー。セクシー投入だけの要員じゃなかったのね。
ブラドックが用なしになったマギーを殺せないのは、単に優しいからだけでなく、マギーのたくましさへの憧憬と尊敬の気持ちがあったのかな。
それぞれの関りが4人の心模様を複雑に絡め合うという卓越した脚本。しかも半分コメディかと思うほどの可笑しみも交えて描き出したフリアーズ監督の演出の素晴らしいこと。

長い旅の終わりを微笑みとウィンクという穏やかな表情で決めたブラドック。
スーツ姿の寡黙なジョン・ハートももちろん最高でした。
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舞台はスペイン。フラメンコギターの音色も心にしみた、これ間違いなく傑作。


お気に入り度4.7

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【映画】ジャッキー/ファーストレディ最後の使命
2017年01月28日 (土) | 編集 |
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 ジャッキー/ファーストレディ最後の使命(2016 アメリカ/チリ
原題:Jackie
監督:パブロ・ラライン
脚本:ノア・オッペンハイム
出演:
ナタリー・ポートマンピーター・サースガード/グレタ・ガーウィグ/リチャード・E・グラント/ビリー・クラダップ/ジョン・ハート

【あらすじ】
1963年11月22日、テキサス州ダラスを訪れたケネディ大統領が、パレード中に何者かに射撃される。妻ジャクリーンは悲しむ間も与えられず、葬儀の取り仕切りや副大統領の大統領就任式への出席等対応に追われ・・


【感想】
  ケネディ元大統領夫人ジャクリーン・ケネディの視点で大統領暗殺を描く伝記ドラマ。
ナタリー・ポートマンがアカデミー賞主演女優賞にノミネートされています。

ケネディが銃弾に倒れた直後、ジャクリーン夫人が後ろに飛んだ頭蓋骨のかけらに手を伸ばそうと、リムジンのトランクに這い上がる映像は、世界中で何度も再生されたであろう衝撃的瞬間です。
夫人がどんな思いでその悲劇に対峙したのかに興味もあり、劇場に足を運びました。


もともとはダーレン・アロノフスキー監督、レイチェル・ワイズ主演で企画が進んでいたらしいですが、破局によりレイチェルが降板。製作に回ったアロノフスキーの代わりにチリのパブロ・ララインがメガホンを取り、ナタリー・ポートマンを主演に迎えて制作にこぎつけました。映画は暗殺直後のジャクリーヌ夫人(ポートマン)が、ファーストレディとしての最後の使命を果たす姿を描いていきます。


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大統領の仕事は待ったなしなので、目の前で夫を殺された2時間後には血の付いたままのスーツで次期大統領の宣誓式に臨むジャッキー。すぐにホワイトハウスからの退去も余儀なくされるわけで・・
大統領夫人の肩書も失い、自身の存在価値さえなくことになるなんて残酷ですねぇ。

彼女は大統領の記憶を最高のものとして後世に残したいと、暗殺から一週間後には雑誌ジャーナリスト(ビリー・クラダップ)を招きます。クラダップのインタビューに答える形でランダムなイベントがフラッシュバックで再現される中、ジャッキーの発言に段々と違和感を感じる部分が出てくるんですよね。ずっと煙草を吸ってるのに「タバコは吸わない」と言ってみたり。
言ったばかりの言葉をなかったことのように否定するシーンでは会場中が「へっ?!」でした。

ジャッキーはすでにPTSDに近い状況だったのか。
その辺が少し曖昧で、ジャッキーが変な人に思えてしまった。

終盤ジャッキーの孤独な悲しみと『キャメロン』の歌詞が重なり、その心情も理解できるのだけど、それまでにすでに心が離れてしまっていたのは残念。これレイチェル・ワイズがやった方が似合ってたかもなぁ。顔もレイチェルの方が似てますよね。

左は本物のジャクリーヌ夫人。 ポートマン(右)はファッションも再現

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大統領暗殺の瞬間をジャッキーの視点で見せる映像は新鮮で、本作のハイライトでした。
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終盤、神父役でジョン・ハートが登場します。
随分と歳をとったという印象で、一瞬彼とわからなかったんですが、まさかその日に訃報に触れることになるとは。
わずかな登場時間でも、含蓄のあるお言葉で映画にしっとりした余韻を残すのが流石でした。
心からご冥福をお祈りします。

追悼は次記事で。




お気に入り度3.4
・ジャッキーの喪失と困惑も最後には理解できるけれど、いい映画を観たという満足感を得られなかった。
・ポートマンの喋りに方に違和感。ジャッキーに似せたのだろうけど生理的になんか嫌w
などの理由で低めです。

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